『刑事コロンボ 完全版』vol.1 DISC4(ユニバーサル)
「もう一つの鍵」(Lady in Wating,1971)★★★☆☆
――ベス・チャドウィック(スーザン・クラーク)は兄が眠っている隙に鍵束から鍵を抜き取った。ベスは社長である兄(リチャード・アンダーソン)から同じ会社のピーター・ハミルトン(レスリー・ニールセン)との交際を反対されていた。野心家のピーターと付き合っても不幸になるだけだと言うのだ。深夜に帰宅した兄が鍵がないため窓から入ろうとしたところを、強盗と間違えたふりをして撃ち殺す――ベスはそんな計画を思い描いていた。だが計画通りには行かず、兄はスペアキーで入って来た。ベスは突発的に兄を撃ち、警報器を鳴らした。折悪しく兄の手紙を読んで訪れたピーターが駆けつける。配達時間以後に発行された夕刊最終版が屋敷にあったことから、外出していないというベスの発言をコロンボは疑問に思う。だが査問会でベスの行為は過失と認められた。
第一シーズン第5話。計画殺人の描写だと思われたものが犯人の想像だったという、二段構えの犯行描写に戸惑います。計画が崩れたのも最初はただ単に運が悪かっただけだと思っていましたが、結局これも、すべて観てみれば犯人の考えのなさを表しているんですよね。あまりにも身勝手な犯人ですが、さらに身勝手な母親を登場させるのが巧いなあと思っていたところ、その母親がベスの問題点を的確に指摘するのが笑えました。その後、想像以上にベスが愚かさを見せつけるので、とんでもない凶悪犯は別にしてここまで応援できない犯人も珍しい。ミステリ的には決定打が見え見えではありますが、その分、身勝手な犯人の傍若無人ぶりを楽しむことが出来ました。
「死の方程式」(Short Fuse,1972)★★★★☆
――ロジャー・スタンフォード(ロディ・マクドウォール)は、義叔父であるバックナー社長(ジェイムズ・グレゴリー)から工場での研究や50万ドル使用や麻薬使用をネタにヨーロッパ行きを命令される。ローガン副社長をはじめとした合併反対派のなかには、社長を脅迫する者までいたため、ロジャーは社長の方針を諫めようとしていた。ロジャーは社長の車にあった葉巻ケースをすり替え、付き合っている秘書のビショップ(アン・フランシス)と夜を過ごす。その夜、運転手クインシーの運転で山荘に向かう途中、葉巻に仕込んだ爆弾が爆発する。ところが社長は死ぬ前に妻に電話をかけ、その話は留守番電話に録音されていた。
第一シーズン第6話。ロジャーはお調子者ではあるけれど馬鹿息子というわけではなく、化学の学位と弁護士の資格を持っている優秀な人間ということもあってか、なかなか核心となる尻尾を摑ませません。社長が脅迫されていて、爆弾の知識のある社員(=容疑者)も大勢いるという背景も考慮したうえで、爆殺を選んだのだとしたならたいしたものです。
再三ビショップが口にする写真というのが、ヌードなのかな?二人の関係を示しているだけで意味はないのかな?と訝しく思わせておいて、敢えて怪しい行動をすることで容疑圏外に出ようとするところも大胆さと計画性を兼ね備えていました。ビショップへの仕打ちといい、はじめから写真を利用しようとしていたのであればクインシー殺しも計画には必須だったことといい、実は非情な犯人なのですが、あまりにも無邪気な感じでそう思わせない不思議な魅力がありました。
このロディ・マクドウォール、『猿の惑星』のコーネリアス役の俳優さんだそうで、飄々とした役が似合う人なのかもしれません。しかも実際に写真家でもあったそうです。
最後はお決まりのコロンボによる引っかけですが、上手いなあと思うのは、コロンボは留守番電話の時点でロジャーが腕時計を気にしているのを見ているので、爆発まで何分かかるのかを大まかではあれ見当を付けているところです。ロジャーが尻尾を出さざるを得ないタイミングをちゃんとわかったうえで罠を仕掛けている。安易な追い詰め方とは言え、安易なりに細かいところに気が配られていました。
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