『ヒッチコック劇場 第二集1』(ユニバーサル)
「兇器」(Lamb to the Slaughter,1958)★★★☆☆
――メアリーは献身的な妻だった。しかしある日、“愛人がいるので別れたい”と夫から突然告げられ…カッとなったメアリーは衝動的に夫を殺してしまう。そして、夫が強盗に襲われたように見せかけるのだが…。(ジャケット裏あらすじ)
第106話。原作・脚本ロアルド・ダール、バーバラ・ベル・ゲデス主演。
言わずと知れたダール「おとなしい凶器」の映像化。映像で見ると、形としては倒叙もので、いつコロンボが出てきてもおかしくないような展開です。実際、原作とは違い、刑事がかなり突っ込んでメアリーに尋問しているし、かなり近いところまで疑惑に迫っています。結果として原作よりもサスペンスを重視した作りになっていましたが、幕間にヒッチコックによってメアリーのその後が語られることで原作のようなユーモアをたたえた味わいを醸し出していました。最後の笑いは原作のイメージとは違って、勝利の高笑いのようでした。
「亡霊の見える椅子」(Banquo's Chair,1959)★★★☆☆
――1903年、ロンドン南東の街ブラックヒースの、とある邸宅に集まった3人の男…屋敷の主人フィンチ少佐、退職したブレント警部、そして舞台俳優のストーン。2年前にここで起きた殺人事件を解決するため、彼らは夕食会にやってくる人物に、あるトリックを仕掛けるつもりだった。/……その屋敷の前の持ち主だった老婦人が殺され、犬が吠えなかったことから顔見知りの犯行の可能性が高く、甥が容疑者の一人だった。警部は老婦人の幽霊が出たふりをして容疑者を罠にかけようとする。(ジャケット裏あらあすじ+補足)
第146話。ルパート・クロフト゠クック原作、フランシス・クックレル脚本。ジョン・ウィリアムズ、ケネス・ヘイ、レジナルド・ガーディナー出演。
作中でもシェイクスピアに言及されますが、原題にしろ、殺した相手の幽霊という趣向といい『マクベス』が下敷きにされています。犬の吠え声の時点から罠を張る細やかな仕掛けに唸らされながらも、〝幽霊〟が姿を見せる場面はさすがに失笑を禁じ得ませんでしたが、ファーガスンの鬼気迫る演技によってそんな軽い気持ちは吹っ飛んでしまいました。どうも原作はもともと戯曲のようですね。それを考えると、シェイクスピアを下敷にするのは面白い仕掛けだと思います。
「女性専科第1課 中年夫婦のために」(Mrs. Bixby and the Colonel's Coat,1960)★★★☆☆
――ビクスビー夫人は夫には叔母に会うと偽り、ニューヨークからボルティモアへ浮気旅行。ところが、せっかく会いに来た夫人にはお構いなしで、お相手の大佐は馬の競売にかかりきり。そして夫人は大佐から別れの手紙と、手切れ金のつもりか最高級ミンクのコートを贈られてしまった。このままコートを持ち帰ってはマズイと感じた夫人は…。(ジャケット裏あらすじ)
第192話。ハルステッド・ウェルズ脚本。ロアルド・ダール「ビクスビー夫人と大佐のコート」原作。オードリー・メドウズ、スティーヴン・チェイス、レス・トレメイン出演。
夫である歯医者の治療シーンから始まるのが、本筋には関係ないとは言え、不安感を煽ります。浮気相手は馬に夢中だし、夫は専門馬鹿だしで、奥さんに同情したくもなるなあ……と感じていたところからの、オチでした。夫を専門馬鹿っぽく描いているのも演出のうちだったようです。それにしても、拾った質札を請け出すというのは普通のことなのでしょうか。
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