「捜索者」大倉崇裕、「東京の大銀行強盗」エラリー・クイーン、「この世でいちばん珍しい水死人」佳多山大地、「Do you love me ?」米澤穂信(『ミステリーズ!』)
「捜索者 《川に死体のある風景》第三回」大倉崇裕(2005)★★☆☆☆
――遭難の報せを受けた長野県警特別山岳警備隊の松山隊長らは、居合わせた山岳団体にも協力してもらい、遭難者の捜索を開始した。ところが捜索から戻ってみると、インナーが濡れてしまったため山小屋で待機していた団体のリーダー白井が、沢に落ちて死んでいた。恐らく捜索に加わろうとして足を滑らせたのだろう。その半年後、そのとき助けられた遭難者の高野が同じ山で沢に落ちて死んでいるのが見つかった。
『ミステリーズ!』vol.09(2005年2月)掲載。白井殺しが可能だったのは、そのとき所在が不明だった遭難者の高野である、という逆説は面白いものの、それを可能にするための入れ替わりによる二人一役は、トリックのためのトリックみたいで好きじゃありません。
「東京の大銀行強盗」エラリー・クイーン/飯塚勇三訳(Tokyo's Greatest Bank Robbery,Ellery Queen,1954)★★☆☆☆
――キヨシ・シムラは日本における名士という人種だったが、不注意な医師に狂犬病の予防接種を受けた結果、脳を冒す病気に感染してしまった。学者であり画家であり詩人であった男は粗野になり嘘つきなり詐欺師になった。積み重なる借金による破産を免れるためのある考えが頭によぎった。「銀行を襲うにはどうすればいいんだ」
『ミステリーズ!』vol.09掲載。探偵エラリーが聞き取ったという体裁の犯罪実話集『エラリー・クイーンの国際事件簿』の一篇。如何なる方法で銀行強盗を成功させたのかを明らかにするハウダニットとして書かれているので、知識として帝銀事件を知っている日本人が読んでも、答えの知っている謎解きを読まされているようです。クイーンが実話を如何に料理したのかというのを楽しむマニア向けの作品でしょう。
「この世でいちばん珍しい水死人 《川に死体のある風景》第四回」佳多山大地(2005)★★☆☆☆
――父が行方不明の兄に社長の座を譲って自分は徳川埋蔵金の発掘に生きたいと言い出した。かくして大学入学直前の僕は、父の命令で伯父・三平太を帰国させるべくコロンビアを訪れた。鴨志田という中年男性が迎えに来て、トーニョという男に引き合わされた。当時トーニョのボスだったサンチェスが投獄されていたウクカ刑務所で起こった事件を解決したのが伯父だった。刑務所の下流を水死体が流れていたというありふれた事件と、刑務所の中に居るはずのない男が脱走を企てて看守に射殺されたという怪事件だ。
『ミステリーズ!』vol.10(2005年4月)掲載。評論家・佳多山大地による唯一(?)の小説作品です。いるはずのない人間が殺されるという謎は魅力的ですし、二つの事件に【脱走用(実は暗殺用)のトンネルを掘っていたボスの部下たち】という一つの真相で説明をつけているのは非常にスマートではあるのですが、どうもいかにも犯人当て小説らしい無味乾燥臭のせいで魅力が半減しています。
「Do you love me ?」米澤穂信(2004)★★☆☆☆
――度会みことが大学からアパートに戻ると、冴えない顔つきのひょろりとした男の幽霊が待っていた。今谷順也、享年十九。彼女である菅沼菜摘に後ろから刺し殺されたのだが、どうして殺されたのかが分からないから相談に乗って欲しいという。初めて部屋を訪れたときは期待していたようなことも起こらず、二人で腕を横に伸ばしてどちらが長く我慢できるか競争をしただけだった。競争の前に『わたしのこと好き? 神かけて?』と聞かれ、それからもことあるごとに同じ質問をされた。
『ミステリーズ!extra』《ミステリ・フロンティア》特集(2004年11月)掲載。真相解明が推理や発想の転換などではなく、ただの知識【※菜摘の質問はすべて歴史上で生死を占うときに用いられたものだった】によるものであるうえに意外性もなく、何の面白味もありません。しかも今谷のようなボンクラ系ぐだぐだ男子にはユーモアではなく苛立ちを感じてしまいます。
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