『天国の破片(かけら)』太田忠司(創元推理文庫)★★☆☆☆

『天国の破片かけら太田忠司創元推理文庫

 『A Little Piece of Heaven』1998年。

 コンビニでアルバイトをしていた阿南は、強盗の少年を説得して五十万円を貸した。犯罪を未然に防いだはずだった――。だが後日、再びコンビニ強盗が発生し、少年は店員をナイフで傷つけて逃げていた。少年が落とした免許証に記されていた「梁川道浩」という名前と住所を頼りに、阿南は少年の行方を捜した。【だが梁川は二週間前に交通事故死していた。同乗者だった】梁川の友人・水無月マナに行き当たるが、追い返されてしまう。だが阿南の喧嘩の強さに感服したマナから、強盗した少年・須藤悟のことを聞き出すことに成功する。悟の父・琢士には追い返されるが、母・百合子から悟の中学時代の友人を三人紹介される。三人とも悟とはあまり親しくなかったが、一人が三日前に町で偶然悟と遭遇していた。「ノリコさん」という三十代の美女と一緒だったという。そのうえどうやら琢士はマナと知り合いのようだ。ノリコとは何者なのか、悟はなぜ五十万円が必要だったのか……阿南は独り調査を続ける。

 阿南シリーズ第三作。シリーズを読むのも久しぶりなので、阿南ってこんな人だったっけな?という戸惑いを覚えてしまいました。確かに生真面目というか青臭いというか独特のスタンスを持った人ではありましたが、会う人みんなからヘンな人扱いされながらも好意を持たれるとなると、これではまるでメンヘラか不思議ちゃんな阿南が「おもしれー女」扱いされているようにしか感じられません。

 探偵も歩けば手がかりに当たる偶然も、探偵が理由もなくヒロインから好意を持たれるのも、どちらもハードボイルドの常道とはいえ、あまりにもご都合主義です。特に最後のロマンス(?)はもうちょっと上手い書きようはなかったのかと思ってしまいます。しかし初出がケイブンシャノベルスと知って、何となく納得。おっさん向けなのでしょう。

 真相はそれなりに凝っているものの【※琢士が以前に手を出して捨てた教え子・紀子が、その後の不幸をすべて琢士のせいにして復讐のために悟に近づき、もともと横暴な琢士を憎んでいた悟を騙して借金をさせ強盗せざるを得ないよう仕向けたものの、阿南のおせっかいのせいで失敗し、次に悟をそそのかして琢士を殺させようとした】、そもそもの根本として家庭の悲劇というには小粒すぎました。これではほとんどただの反抗期です。

 思わせぶりなコンビニの迷惑客も結局メインストーリーには無関係でした。無理矢理タイトルに絡めて何となくそれっぽい希望らしきものをあれこれ語っているものの、白々しくて感動も何もありません。

 「君がどういう理由で金を欲しがっているのか、私は知らない。知る必要もない。だが、こういう手段を使うのは間違っている」目の前の犯罪を止めるべく、阿南はコンビニ強盗の少年に貯金の50万円を貸した。しかし後日、別のコンビニで傷害事件が発生。犯人が口にした言葉は「もっとないのか。他所じゃ50万くれたぞ」――責任を感じた阿南は少年の行方を追い始める。シリーズ第三弾。(カバーあらすじ)

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