『ししりばの家』澤村伊智(角川ホラー文庫)★★★★☆

『ししりばの家』澤村伊智(角川ホラー文庫

 親本2017年刊行。

 比嘉姉妹シリーズ第三作。小学三年生のころの琴子と比嘉一家を変えてしまった事件です。

 学級委員長だった僕は、「比嘉さんと仲良くしてあげてね」という先生の言葉に従い、橋口の家にファミコンをしに行くとき比嘉さんを誘った。陰気で挙動不審で友達がいない比嘉琴子を。二階から足音と声が聞こえたが、そこには橋口の死んだ妹の部屋しかなかった。夜逃げした橋口家は翌年には荒廃して幽霊屋敷と呼ばれるようになった。純と功と僕と比嘉さんはその幽霊屋敷に探検に行き、砂だらけのなかで何かに襲われた。それ以来、純と功は廃人同然になり、比嘉さんは堂々として冷たく無表情になった。僕は頭のなかに砂が入って人と話すのが怖くなったまま、二十年近くが経った。

 勇大にせがまれて仕事をやめて転勤についてきたのに、勇大は仕事が忙しくてほとんど家にいない。「果歩?」そんなとき幼なじみの敏くんとばったり再会し、家に遊びに行ったが、奥さんの梓さんは調子が悪そうだった。床にはうっすらと砂が積もっていた。優しくしてくれたお祖母ちゃんも別人のようにすっかり変わってしまって、もうわたしのことはわからないらしい。悩みの晴れた梓さんは明るくなったが、床の砂は相変わらずだった。たまりかねてたずねると、梓さんからも敏くんからも「それがどうしたん?」という答えが返ってきた。

 今回の怪異は「ししりば」。砂を操り人に憑依し、見上げるような高さ。それ以外は一切不明です。小学四年生だった琴子たちを襲ったのはまだ怪異による理不尽な暴力として理解できるのですが、敏くんと梓さんをコントロールして砂やお祖母さんのことを普通のことだと思わせている理由がわからず、はっきりとした暴力の恐怖とは別の理解不能の不気味な怖さがありました。

 橋口家の事件から二十年弱後、現在の平岩家が元橋口家らしいことが決定的となり、どうやらししりばは家に憑くらしいと推測できます。それでも、平岩家が越してくる前に十五年以上も住んでいた青柳家には何も起こらなかったこともあって、ししりばはなかなか正体を摑ませません。

 そうこうしているなか、ホラー作品のヒロインに相応しくことごとく間違った方向ばかりを選んでしまう果歩には、もどかしさも感じつつ「違う違う!」と思わず心で叫んでしまいたくなってしまうのだから、まんまと作者の思う壺です。

 最初の事件にけりをつけるため、大人になった琴子が姿を現すと一安心――だと思ったのですが。思わぬピンチです。なるほどそうして伏線が回収されました。【※ネタバレししりばは家族を守るため、侵入した小学生たちを敵と認識して攻撃した。だが実は戦時中に当時の家族を守るため爆弾を防いだせいでエラーを起こしてしまい、守るべき家族がいない場合は疑似家族を作るようになってしまっていた。青柳家が無事だったのはししりばの苦手な犬を飼っていたから。

 それにしても今回のししりばの正体は完全に予想外でした。三作目ともなるとこういう変化球も必要なのでしょう。【※ネタバレ師後庭(ししりば)家を守る怪異。】そして正体がわかったところで詳細はわからないまま、というのが気持ち悪さをさらに膨らませていました。

 琴子の口から霊媒師・逢坂の名前が出ていることと、琴子と真琴のあいだに交流がないことから、『ぼぎわんが、来る』以前の出来事であることは間違いありません。

 おかしいのはこの家か、わたしか――夫の転勤に伴う東京生活に馴染めずにいた果歩は、幼馴染の平岩と再会する。家に招かれ、彼の妻や祖母と交流し癒される果歩だが、平岩邸はどこか変だった。さああという謎の音、部屋中に散る砂。しかし平岩は、異常はないと断ずる。一方、平岩邸を監視する1人の男。彼は昔この家に関わったせいで、脳を砂が侵食する感覚に悩まされていた。そんなある日、比嘉琴子という女が彼の元を訪れ……?(カバーあらすじ)

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