『文学の極意は怪談である 文豪怪談の世界』東雅夫(筑摩書房)
ちくま文庫の〈文豪怪談傑作選〉シリーズの副読本のような書籍ですが、評論とも紹介とも違う中途半端さは否めません。
アーサー・シモンズは、「文学でもっとも容易な技術は、読者に涙を流させることと、猥褻感を起させることである」と言っている。この言葉と、佐藤春夫氏の「文学の極意は怪談である」という説を照合すると、百閒の文学の品質がどういうものかわかってくる。すなわち、百閒文学は、人に涙を流させず、猥褻感を起させず、しかも人生の最奥の真実を暗示し、一方、鬼気の表現に卓越している。
序文で引用された三島由紀夫のこの言葉から、本書のタイトルは取られています。が、実は肝心の言葉自体は佐藤春夫の文章には見つけられないそうです。まるで文豪怪談シリーズのためにあるかのような言葉なのに、意外なものです。
文豪怪談という切り口自体が著者によるものでもあり、本書の出た2012年であれば“文豪怪談の入口”という役割を本書は充分に果たしていたのでしょう。しかしながら、その作家の怪談への興味を示す文章やエピソードを引用し、その作家に対する著名人の評価を引用したりしながら、その作家の生涯や業績を怪談の面でたどっている形式なので、一冊の書籍としては薄味でした。文豪怪談傑作選の巻末解説として書かれていたなら丁度よかったと思います。
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『文学の極意は怪談である』