親本は2016年刊行。タイトルまんま、教場シリーズ第二作です。第一作と比べると、人間ドラマ度が薄まり、取って付け感が強まっていました。
「第一話 創傷」(2014)★★☆☆☆
――第百期短期課程警察手帳貸与式。校長から手帳を受け取っている南原という学生に見覚えのある気がした。「桐沢巡査」ふいに校長から名前を呼ばれて背筋が伸びた。「自分が犯罪者だとして、警察官から何を盗む?」「警察手帳です」「その通り。紛失などあったら辞めてもらうことになる」。明日からはゴールデンウィークだ。だが連休最終日には耐震補強工事による引っ越しに当てなければならない。引っ越し準備に追われるなか、南原のことを思い出した。二年前の夜、工事現場で鉄パイプが刺さったと言って来院した南原を診たのが、当直医師の桐沢だった。風間は何か気づいている様子で、桐沢と南原だけを射撃訓練場に残した。
あれ?こんなやっつけ感のある作風だったかな、とがっかりしました。風間教官は前作でたっぷり描かれているからいいとして、助教の朝永も厳しいだけの人なのか何なのかもわかりませんし、何より桐沢のキャラクターがただの元医者の警察官というだけに留まっていて何の個性もありません。元医者というその経歴も、創傷ネタのためだけでしかないうえに、南原に何かある【※二年前の傷は密造拳銃の暴発によるもの。警官になったのも恐らく拳銃を撃ちたいからか。】のはバレバレで、ミステリ度も低くなっていました。
「第二話 心眼」(2014)★★☆☆☆
――忍野がハーモニカの練習をしていると、同じ風間教場の坂根千亜季が困っている様子なのに気づいた。「どうしたの?」「マレットが見当たらなくて……」木琴を叩く枹のことだ。この一週間でファーストミットとマウスも消えていた。紛失か盗難か。教室内を捜していると、梅村と腰巾着の中内に頭を押さえつけられた。「これからポリグラフ検査を始めます。すべて『いいえ』で答えてください」忍野をいじめてゲラゲラ笑っている梅村を、教室に入ってきた堂本が引き離した。高校時代はラグビーをやっていたという。第二第四月曜には救急法の授業がある。脈を測る手本の実演者に、風間は千亜季と忍野と仁志川と桐沢を指名した。紛失した物品の関係者ばかりだった。
意味がわかりません。盗まれたものは千亜季がらみのものだと序盤で明らかにしておきながら、それを最後に意外な事実のように明かされても、意外でも何でもありません。男性ホルモンの分泌を促すトレーニングというのも、まさか動機を補強しているつもりなのでしょうか【※千亜季のことを好きな堂本が千亜季の触れたばかりのものを盗んでいた。】。取り敢えず忍野はいじめられっ子、堂本は筋肉バカな分だけ、前話の桐沢よりは個性がありました。
「第三話 罰則」(2015)★★☆☆☆
――津木田は食堂でアスパラを残している秦山を見つけ、好きだと自己暗示をかけるよう提案した。罰則は連帯責任という形で課される。三時限目になると、教場当番だった津木田はジャージ姿でプールサイドに立った。溺れたときの対処法を教えるという名目で教官の貞方に突き落とされ、同班の乾からは罰則を回避しようと溺れかけていた足をつかまれた。桐沢のおかげで水面に顔を出すことができたが、罰則として六班はガラス拭きを命じられた。四階のベランダから見下ろすと、三階のベランダの端に水の入ったバケツが置かれていた。何でも端に置くのは乾の癖だ。図らずも地上には貞方の筋トレ器具が置かれていた。風のせいにしてバケツを下に落とそうという考えが頭によぎった。
乾と貞方教官が嫌な奴だというのを前半で描くことに意味があるのはわかるのですが、その結果として起こった取り違え事件のあと、津木田が怯えるでもなく罪悪感に苛まれるでもなく小狡く立ち回るでもなく何もかも中途半端です。そのうえ秦山が記憶を失うというご都合主義でした(乾に寸止めの趣味があってよく失敗するという描写が事前にあるとはいえ)。秦山のアスパラ嫌いが【匂いと記憶】と結びつけられて【アスパラの尿の匂いで記憶を取り戻す】のは面白いと思いました。ただ、そのための繫ぎのクッションとして桐沢の部屋でテスト勉強をして【匂いと記憶】のエピソードを聞くという展開は、やや強引です。
「第四話 敬慕」(2015)★★★☆☆
――羽津希は自分の容姿に自信を持っていたし、テレビのインタビューにも慣れっこだった。それでも聴覚障害者にも配慮するという名目で、手話通訳として佑奈を引き立て役に選ぶほど抜かりはなかった。わざと間違った手話をさせ、こっそり風間教官への愛を伝えもした。だが風間にはすべて見透かされていた。身勝手な行動や仲間への敬意のなさを指摘され、一週間の猶予を与えられて退校届を突きつけられられた。職務質問や逮捕術の授業でも佑奈に水をあけられ、幼稚園児の見学を案内したときにも佑奈の活躍を目の当たりにした。そのこともあり広報誌のモデルを決める投票で、佑奈に破れるという屈辱を味わうことになる。だがそのとき風間から思いもかけぬ事実を聞いた……。
とっちらかっていた第三話と比べると、かなりわかりやすい作りの作品ですが、何でこんな人が警察官になろうとしたの?とは思ってしまいます。一応は、警察官一族だからという理由付けなのでしょうけれど。佑奈の好きな人というオチは唐突というか、まったくオチになっていないどうでもいい話でした。
「第五話 机上」(2015)★★★☆☆
――仁志川は刑事課の強行犯係を希望している学生と一緒になって、風間に特別授業を提案したことがあった。被害者の身元の特定から犯人像を推理するまでの流れを実際に捜査しながら学ぶのだ。だがそのとき風間から返ってきたのは、まずは基礎を学べという意味合いの言葉だった。そのときのことを覚えていたのだろう。その三人に加えて、能木が呼び出され、五日間だけの特別授業が開かれることになった。風間によると、実家がホームセンターを経営していて幼い頃から様々なものを目にしている能木のような人間こそ、鋭い観察眼を発揮するのだという。
刑事になりたいという気持ちばかりが先走っている仁志川は若者らしくていいキャラですし、自信なさげな能木との対比もはっきりとしています。模擬捜査の推理ひとつで自信の有無が逆転してしまうのは安易すぎるものの、それも若者らしさの表れだと思おうと思えば思えます。しかしながら、風間が言いたかったことに仁志川が気づくきっかけも経緯も一切の描写なく一足飛びなので、安っぽいという感想だけが最後に残りました。
「第六話 奉職」(2015)★☆☆☆☆
――美浦は桐沢をライバル視していたものの、知識でも実技でも勝てなかった。医者だった桐沢とは違い、美浦が育ったのは父親が万年巡査部長の貧しい家庭だった。卒業を控え、プレッシャーから体調もよくなかった。風間に呼び出されてスパーリングをしたものの、まったく動くことが出来ず、退校届を預けられる。
いい話にしようとしているものの、やはり散漫かつ唐突でした。
『教場2』