『約束の果て 黒と紫の国』高丘哲次(新潮文庫)★☆☆☆☆

『約束の果て 黒と紫の国』高丘哲次(新潮文庫)

 2019年の日本ファンタジーノベル大賞受賞作「黒よりも濃い紫の国」改題作品。

 『百年の孤独』のラストを連想させるようなプロローグ。

 存在しない国の名が記された遺物という、ボルヘスじみた導入部。

 これだけでもうわくわくします。

 調査の結果、国の名は見つかったものの、書かれているのは通俗小説と偽史のみであり、やはり実在性には疑問符がつく――というところで、その二冊の書物が交互に引用されてゆきます。

 中国をモデルにした架空の国の、これまた中国古典のような文体に、気を引き締めながら読んでゆくと……開始早々に幼い壙《こう》国皇子と幼い臷南《じなん》国女王が出会ってほんとうにボーイミーツガールが始まって……、期待していただけに落差のがっかり感がとてつもないものでした。

 一方の偽史『歴世神王拾記』の方は、どうやら二つの国の成り立ちに関する書物のようです。弓で勝てずに螞九《ばきゅう》の前に現れた童女は、臷南国の瑤花《ようか》と名乗ります。「小さい板に矢を当てたひとはたくさんいたけど、大地を射抜いたのはあなただけだった」と元気づけるのも、ベタ過ぎて目も当てられませんでした。

 通俗小説『南朱列国演戯』篇では、滞在期間を過ぎて帰国した壙国皇子・真气《しんき》を追って臷南国女王・瑤花は壙国に向かいます。

 やがてナウシカ原作版のような異形が出てきたり、蟻の群体によるゾンビのような生命体がすべてをコントロールし、壙国の成り立ちと歴代皇子の由来が明らかになったりと、盛り沢山ではあるのですが。

 文体にしろ仕掛けにしろ悪くはないのに、どこかで見たような素材の組み合わせと、安っぽくて甘ったるいボーイミーツガールのせいで、台無しになっていると思います。

 「私たちのこと、忘れないでね」――そのとき、風が吹いた。大地に咲く紫の花が、一斉に空へと舞い上がる。かつて黄金の草原で、少年が少女に誓った約束が、五千年の時と遥かなる距離を越え、いま果たされる。偽史と小説――父から託された奇妙な古文書に秘められた謎。壙《こう》と臷南《じなん》、史伝に存在しない二つの国を巡る、空前絶後のボーイ・ミーツ・ガール。日本ファンタジーノベル大賞受賞作。(カバーあらすじ)

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 約束の果て 黒と紫の国『約束の果て 黒と紫の国』 


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