『青い城』モンゴメリ/谷口由美子訳(角川文庫)
『The Blue Castle』L. M. Montgomery,1926年。
以前に読んだときはあまりの辛気くささに気が滅入ったのですが、山崎まどか『優雅な読書は最高の復讐である』で「新乙女クラシック10冊」の1冊に選ばれていたので、いつか再読しようと思っていました。
しかしやはり、主人公の魅力のなさについていけませんでした。
主人公のヴァランシーは29歳のオールド・ミス。家族からネチネチと未婚をあげつらわれ、好きな読書にすら親のチェックが入る始末です。この家族というのがほんとうに精神的にキツイ人たちで、口答えは許しません、毎回つまらないジョークを繰り返します、結婚でマウント取ります、本人の嫌がるあだ名(ドス)で呼びます……という感じで、他人が幸福になるのが許せなさそうな嫌な人たちばかりです。
これに対してヴァランシーの方もひたすら耐え忍びながら、心のなかでネチネチと唱えているだけなのは、やっぱり同じ家族だなあと思ってしまいました。だいたいこのヴァランシーときたらこじらせすぎなんですよね、子どものころに牧師に勘違いから怒られたことや、学校の休み時間に作っていた泥まんじゅうを一つにまとめられたことを、いつまでもトラウマにして根に持っていて。
そんなヴァランシーが、狭心症で余命一年だと医師から知らされます。ここで、根に持って耐え忍んできたのが活きてきました。怖いものなんかないと吹っ切れて、家族たちに暴言の数々をぶつけるのです。しかしこれが爽快とは程遠い。機知に富んだ毒舌というよりは、ただの性格の悪い人同士の争いでした。
しかもここから先が面白くなるというわけでもなく、別のタイプのつまらなさに切り替わっただけでした。
青い城というタイトルの通り、ブスで貧しく不幸な主人公を王子さまが見初めてくれてお金持ちになって幸せに暮らしましたとさ――というお伽噺を読まされました。
みんなから犯罪者じゃないかと偏見の目で見られている余所者のバーニイ・スネイスに会ってみたら結構いい奴で、好きになったのでお互い「余命一年です」「部屋には入るなよ」の約束で結婚しました。でも列車に轢かれそうになったとき本当に愛していることに気づきました。狭心症は手紙で知らせた医者の患者取り違えでした。実はバーニイは大会社の御曹子で、お金目当ての婚約者に幻滅して隠遁していました。しかもバーニイは開かずの部屋では原稿を書いていて、ヴァランシーの好きな作家でもありました。ご都合主義で突っ走るハッピーエンドです。
文春文庫で刊行中の新訳〈赤毛のアン〉シリーズは「大人の文学」という触れ込みに偽りありませんでしたが、本書は大人が読むにはキツイと思います。
貧しい家庭でさびしい日々を送る内気な独身女、ヴァランシーに、以前受診していた医者から手紙が届く。そこには彼女の心臓が危機的状況にあり、余命1年と書かれていた……。悔いのない人生を送ろうと決意した彼女がとった、とんでもない行動とは⁉ ピリッと辛口のユーモアで彩られた、周到な伏線とどんでん返し。すべての夢見る女性に贈る、心温まる究極のハッピー・エンディング・ストーリー。幻の名作がついに文庫化!(カバーあらすじ)
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『青い城』