『四畳半神話大系』森見登美彦(角川文庫)★★★☆☆

 『太陽の塔』では、しょーもない人が屁理屈をこねてしょーもない情熱に燃えてる自虐的な饒舌体が冴えていたんだけど、本書のは理が勝っちゃてるというか。そもそも構成からしてそういう話なのかもしれないけれど。

 う〜ん。自虐度が低い、のかな? もっとひねくった文章を期待していた。

「何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。/なぜなら、私が間違っているはずがないからだ。」太陽の塔

「責任者に問いただす必要がある。責任者はどこか。」(四畳半)

 最初のページからの抜粋なんだけど、『太陽の塔』のひねくれ具合に比べて、『四畳半』のひねりのなさったらありゃしません。いや、確か吉本か何かで「責任者でてこい」みたいなギャグがあったような気がするから、関西ではこれで大爆笑なのかもしれないけれど、本書は全体的に「光源氏の赤子時代もかくやと思われる」だとか「馬術部の馬場には近づかないことにしていた」とか、ひねりの少ない文章でした。

 『太陽の塔』の語り手には、自虐と笑いと屁理屈と劣等感と逆恨みのセンスだけは溢れていたんだけれど、本書の語り手にはそこからさらに後退してしまったような物足りなさを感じました。

 私は冴えない大学3回生。バラ色のキャンパスライフを想像していたのに、現実はほど遠い。悪友の小津には振り回され、謎の自由人・樋口師匠には無理な要求をされ、孤高の乙女・明石さんとは、なかなかお近づきになれない。いっそのこと、ぴかぴかの1回生に戻って大学生活をやり直したい! さ迷い込んだ4つの並行世界で繰り広げられる、滅法おかしくて、ちょっぴりほろ苦い青春ストーリー。(カバー裏あらすじより)
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