『ミステリマガジン』2023年7月号No.759【アガサ・クリスティーの魔力】

『ミステリマガジン』2023年7月号No.759【アガサ・クリスティーの魔力】「見知らぬ人」アガサ・クリスティー/羽田詩津子訳(The Stranger,Agatha Christie,1932) ――婚約者のディックが何年かぶりに帰国するというのに、エニドの心は晴れなかった。不幸せ…

『トラベル・ミステリー聖地巡礼』佳多山大地(双葉文庫)★★☆☆☆

『トラベル・ミステリー聖地巡礼』佳多山大地(双葉文庫) 名作トラベル・ミステリーの現場を訪れ、現地に則して作品を紹介しつつ、作品の現代的意義などでまとめた紀行書評です。 好きな評論家であり、編者を務めた『線路上の殺意 鉄道ミステリ傑作選〈昭和…

『皇帝と拳銃と』倉知淳(創元推理文庫)★☆☆☆☆

『皇帝と拳銃と』倉知淳(創元推理文庫) 『Emperor and Gun』2017年。「運命の銀輪」(2009)★☆☆☆☆ ――伊庭は凶器の金槌を振り降ろした。友人であり仕事のパートナーでもあった和喜多。四季杜忍がこんな形で解消とはな……。自転車の隠し場所を目指すと、ホー…

『くにさきの鬼』中川学絵(六郷満山日本遺産推進協議会)★★☆☆☆

『くにさきの鬼』中川学絵(六郷満山日本遺産推進協議会)★★☆☆☆ 大分県国東市の日本遺産「鬼が仏になった里『くにさき』」のストーリーPR絵本。 まず「地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリー」という日本遺産の定義の「ストー…

『放課後探偵団2 書き下ろし学園ミステリ・アンソロジー』青崎有吾・斜線堂有紀ほか(創元推理文庫)★★☆☆☆

『放課後探偵団2 書き下ろし学園ミステリ・アンソロジー』青崎有吾・斜線堂有紀ほか(創元推理文庫) 『Highschool Detectives II』2020年。 新鋭による学園ミステリ『放課後探偵団』、10年ぶりの第2弾です。ほとんどが未読の作家でした。第一集とは違い、…

『法月綸太郎の冒険』法月綸太郎(講談社文庫)★★★☆☆

『法月綸太郎の冒険』法月綸太郎(講談社文庫)「死刑囚パズル」(1992)★★★★☆ ――有明省二の死刑執行日だった。非番だった中里刑務官は怪我をした同僚に代わって松山所長に呼び出された。松山は死刑囚へのはなむけとして、自分のポケットから最後の一服を勧…

『博奕のアンソロジー』宮内悠介リクエスト!(光文社文庫)★★☆☆☆

『博奕のアンソロジー』宮内悠介リクエスト!(光文社文庫) 編者リクエストによる書き下ろしアンソロジー・シリーズ第2期の1冊。 「獅子の町の夜」梓崎優(2018)★★★☆☆ ――仕事で訪れたシンガポールで、僕はバカンス中の老夫妻に出会った。シンガポールで…

『ドミノ in 上海』恩田陸(角川書店)★★★★☆

『ドミノ in 上海』恩田陸(角川書店) 文字通りドミノ倒しのように幾多の登場人物がパタパタと運命に押し倒され、やがて結末に向かってゆく名作『ドミノ』の続編です。『ドミノ』の連載開始が2000年なのでほぼ20年ぶりの新作となりますが、20年後に突然刊行…

『線路上の殺意 鉄道ミステリ傑作選〈昭和国鉄編〉』佳多山大地編(双葉文庫)★★★☆☆

『線路上の殺意 鉄道ミステリ傑作選〈昭和国鉄編〉』佳多山大地編(双葉文庫) 同じ双葉文庫から『トラベル・ミステリー聖地巡礼』を出していることからも、鉄道ミステリ好きなことが窺える佳多山大地氏による、国内傑作選です。埋もれた名作ではなく、「大…

『S-Fマガジン』2023年6月号No.757【藤子・F・不二雄のSF短編】

『S-Fマガジン』2023年6月号No.757【藤子・F・不二雄のSF短編】 短編といっても短編小説ではなく短編漫画の特集でした。そりゃそうか。「ヒョンヒョロ」藤子・F・不二雄(1971) ――マーちゃんが円盤にのったうさぎちゃんから手紙をもらったとママに見…

『だいぶつさま おまつりですよ』苅田澄子文/中川学絵(アリス館)

『だいぶつさま おまつりですよ』苅田澄子文/中川学絵(アリス館) 『だいぶつさまのうんどうかい』に続く、〈だいぶつさま〉第2弾。 運動会に続いて今回はお祭りです。なるほど大人数が集まるのでもってこいです。 お釈迦様はわたあめ作り。阿弥陀如来は…

『半分世界』石川宗生(東京創元社)★★☆☆☆

『半分世界』石川宗生(東京創元社) 『Cloven World and Other Stories』2018年。 第7回創元SF短編賞受賞作を含む四篇収録。ワンアイデアを提示してその設定をひたすら詳細に書き連ねるだけで、アイデアからの発展は何一つありません。出オチをどこまで…

『敗残者』ファトス・コンゴリ/井浦伊知郎訳(松籟社 東欧の想像力17)★★★☆☆

『敗残者』ファトス・コンゴリ/井浦伊知郎訳(松籟社 東欧の想像力17) 『I humburi』Fatos Kongoli,1992年。 アルバニアの作家。 1991年、ヨーロッパ行きの難民船に乗り込むはずだった語り手のセサル・ルーミは、直前になって船に乗るのを取りやめます。…

『暗闇にレンズ』高山羽根子(東京創元社)★★★☆☆

『暗闇にレンズ』高山羽根子(東京創元社) 現代を舞台に監視カメラの死角で自撮りする女子学生二人が、やがて「エンバーミング」の映像を撮り始める「Side A」。 明治時代に始まり現代にまで連なる、カメラと映画に関わる嘉納一族の歴史をひもとく「Side B…

『ミステリマガジン』2023年5月号No.758【モリアーティ教授 ホームズ永遠の宿敵《ライバル》】

『ミステリマガジン』2023年5月号No.758【モリアーティ教授 ホームズ永遠の宿敵《ライバル》】「大佐でも伯爵でもない――「教授」だからこそ」日暮雅通「『憂国のモリアーティ』著者・三好輝氏メールインタビュー」「モリアーティ教授の不愉快な一日」黒谷知…

『雪旅籠』戸田義長(創元推理文庫)★★★☆☆

『雪旅籠』戸田義長(創元推理文庫) 『The Casebook of Detective Toda Sozaemon vol.2』2020年。 鮎川賞候補作『恋牡丹』の姉妹編。前作のその後の物語ではなく、前作各話の間を埋める八篇の作品集ということで、続編ではなく姉妹編ということのようです。…

『孤島の来訪者』方丈貴恵(東京創元社)★★★☆☆

『孤島の来訪者』方丈貴恵(東京創元社) 帯には「『時空旅行者の砂時計』に連なるシリーズ第2弾」とあるので、あれの続編とはどういうことなのかと不思議に思ったのですが、シリーズ第2弾とは続編という意味ではなく、前作の事件当事者だった竜泉家の親戚…

『さむけ』ロス・マクドナルド/小笠原豊樹訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★☆☆

『さむけ』ロス・マクドナルド/小笠原豊樹訳(ハヤカワ・ミステリ文庫) 『The Chill』Ross Macdonald,1964年。 裁判所に証人として出廷したアーチャーは、傍聴席にいたアレックスという青年から声をかけられる。結婚したばかりの妻ドリーが結婚初日に姿を…

『モリアーティ秘録(上・下)』キム・ニューマン/北原尚彦訳(創元推理文庫)★★★☆☆

『モリアーティ秘録(上・下)』キム・ニューマン/北原尚彦訳(創元推理文庫) 『Professor Moriarty: the Hound of the D'Urbervilles』Kim Newman,2011年。 タイトルからわかる通り、モリアーティ側を主役に据えたホームズ・パスティーシュです。前半は…

『20世紀ラテンアメリカ傑作選』野谷文昭編訳(岩波文庫)★★★☆☆

『20世紀ラテンアメリカ傑作選』野谷文昭編訳(岩波文庫) 一番新しい作品で1991年、古いものだと今から百年以上前の1912年の作品が収録されています。テーマごとに四つの部に分けられていますが、各テーマの範囲が広すぎてテーマ別に分ける必要性が感じられ…

『探偵は友人ではない』川澄浩平(東京創元社)★★☆☆☆

『探偵は友人ではない』川澄浩平(東京創元社) 不登校の少年と幼なじみの中学生を中心とした日常の謎と瑞々しい感性が印象深かったデビュー作『探偵は教室にいない』の続編です。ですが、どうしちゃったの……というくらいに出来が悪くなっていました。正確に…

『BUTTER』柚木麻子(新潮文庫)★★★★★

『BUTTER』柚木麻子(新潮文庫) 木嶋佳苗事件をモデルにしたという、これまでの柚木作品のイメージからはまったく想像できない内容紹介に、戸惑いを感じずにはいられません。 蓋を開けてみればいつもの柚木印ではありました。週刊誌記者の町田里佳は、友人…

『夏の花・心願の国』原民喜(新潮文庫)★★☆☆☆

『夏の花・心願の国』原民喜(新潮文庫) 原民喜というと原爆文学というイメージしかありません。編者の大江健三郎も一作家一テーマという持論によって戦後作品だけを採用しています。わたしの持っている『新潮文庫20世紀の100冊』というシリーズはカバーに…

『犯罪者書館アレクサンドリア~殺人鬼はパピルスの森にいる~』八重野統摩(メディアワークス文庫)★★★☆☆

『犯罪者書館アレクサンドリア~殺人鬼はパピルスの森にいる~』八重野統摩(メディアワークス文庫) 日常系を得意としてきた著者による第三作目は、裏社会(というより架空世界)を舞台にした謎解きものです。 父親の残した六千万円の借金のかたに身柄を買…

『パリ警視庁迷宮捜査班―魅惑の南仏殺人ツアー―』ソフィー・エナフ/山本知子・山田文訳(早川書房ポケミス1960)★★★★☆

『パリ警視庁迷宮捜査班―魅惑の南仏殺人ツアー―』ソフィー・エナフ/山本知子・山田文訳(早川書房ポケミス1960) 『Rester groupés』Sophie Hénaff,2016年。 パリ警視庁迷宮捜査班シリーズ第二作です。ユーモアミステリみたいな副題はどうにかならなかった…

『南風吹く』森谷明子(光文社文庫)★★★★☆

『南風吹く』森谷明子(光文社文庫) 俳句甲子園を題材にした『春や春』の続編――というか、同じ大会を舞台にした別高校の話です。 本書の方がドラマ性もあって楽しめました。 過疎の島なのでまずは出場人数が集まらないところからスタートするのですが、短歌…

『ミステリマガジン』2023年3月号No.757【ジョルジュ・シムノンの世界】

『ミステリマガジン』2023年3月号No.757【ジョルジュ・シムノンの世界】 なぜか『メグレと若い女の死』の新訳が刊行予定だったのは、なるほど映画化されたからでした。次いで『サン・フォリアン寺院の首吊人』、『メグレと超高級ホテルの地階』も新訳刊行予…

『紙魚の手帖』vol.08 2022 DECSEMBER【読切特集「冠婚葬祭」】

『紙魚の手帖』vol.08 2022 DECSEMBER【読切特集「冠婚葬祭」】「倫敦スコーンの謎」米澤穂信 ★★★☆☆ ――小佐内さんからメッセージが届いた。〈スコーンを見ます〉。放課後、小佐内さんに先導されて喫茶店に向かった。「それで、何があったの」「スコーンがお…

『星降り山荘の殺人』倉知淳(講談社文庫)★★☆☆☆

『星降り山荘の殺人』倉知淳(講談社文庫) 各章の冒頭に著者の説明書きがあり、それが一種の読者への挑戦のようになっていました。ここに伏線があります、とか、この人は犯人ではありません、とか。そして当然のごとく、それが【ネタバレ*1】にもなっていま…

『不安な童話』恩田陸(新潮文庫)★★★★☆

『不安な童話』恩田陸(新潮文庫) 二十五年前に夭逝した画家で童話作家の高槻倫子の展覧会。語り手の万由子は絵を見て既視感を覚え、自分が刺し殺される幻覚を見て気を失ってしまいます。 絵を見て知らないはずの記憶が甦ってくるという、クリスティを髣髴…


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