『屋上』島田荘司(講談社文庫)★★★★☆

『屋上』島田荘司(講談社文庫) 『屋上の道化たち』(2016)の改題文庫化です。 U銀行の屋上には、作者をはじめ関係者が次々と怪死しているという曰くつきの盆栽が並べられていました。ある日、行員の岩木俊子が盆栽に水をやりに屋上に行って転落死します…

『仮面幻戯』佐々木俊介(東京創元社Webミステリーズ!)★★★☆☆

『仮面幻戯』佐々木俊介(東京創元社Webミステリーズ!) 回想の殺人ものの青春ミステリ『繭の夏』の著者によるWeb連載です。2010年にWebミステリーズ!(→→)で連載され、現在のところ書籍化はされていません。長篇ではなく、工芸家・藤江恭一郎が作った仮…

『狼の王子』クリスチャン・モルク/堀川志野舞訳(ハヤカワ・ポケミス1876)☆☆☆☆☆

『狼の王子』クリスチャン・モルク/堀川志野舞訳(ハヤカワ・ポケミス1876) 『Darling Jim』Christian Moerk,2007年。 デンマーク出身の在米作家。 ここまでただ読むだけで苦痛な本は久しぶりでした。 どうでもいいレトリックでだらだらとくだくだしい文…

『絶望図書館 立ち直れそうもないとき、心に寄り添ってくれる12の物語』頭木弘樹編(ちくま文庫)★★★☆☆

『絶望図書館 立ち直れそうもないとき、心に寄り添ってくれる12の物語』頭木弘樹編(ちくま文庫) 絶望図書館とはものすごいタイトルですが、編者によれば本書は「絶望的な物語」でも「絶望から立ち直るための物語」でもなく、「絶望して、まだ当分、立ち直…

『黒衣の女 ある亡霊の物語』スーザン・ヒル/河野一郎訳(ハヤカワ文庫NV)★★★★☆

『黒衣の女 ある亡霊の物語』スーザン・ヒル/河野一郎訳(ハヤカワ文庫NV) 『The Woman In Black: A Ghost Story』Susan Hill,1983年。 霧のロンドンを離れ、ドラブロウ夫人の遺産整理に訪れるキップス弁護士。列車に乗り合わせた地元の者によれば、町の…

『還りの会で言ってやる』八重野統摩(メディアワークス文庫)★★★★☆

『還りの会で言ってやる』八重野統摩(メディアワークス文庫) ミステリ・フロンティアから刊行されている『ペンギンは空を見上げる』が面白かったので、デビュー作である本書も読んでみました。2012年刊行。 タイトルからてっきり小学生の話だと思っていた…

『黄泥街』残雪《ツァンシュエ》/近藤直子訳(白水Uブックス 海外小説永遠の本棚)★★★★☆

『黄泥街』残雪《ツァンシュエ》/近藤直子訳(白水Uブックス 海外小説永遠の本棚) 『黄泥街』残雪,1986年。 残雪のデビュー作。 幻想というよりはラチガイ。 マジック・リアリズムというよりは、中国の田舎の現実(の誇張)。 会話も理屈も成立しないよ…

『ミステリマガジン』2021年5月号No.746【特殊設定ミステリの楽しみ】

『ミステリマガジン』2021年5月号No.746【特殊設定ミステリの楽しみ】「お迎え」辻真先「ウィンチェスター・マーダー・ミステリー・ハウスの殺人」斜線堂有紀★★★☆☆ ――ウィンチェスター家の銃で死んだ人たちの霊の為に家を建てなさい。建築を止めてはならない…

『ゴーグル男の怪』島田荘司(新潮文庫)★★★★☆

『ゴーグル男の怪』島田荘司(新潮文庫) 解説にもあらすじにも一切書かれてはいませんが、2011年のNHKドラマ『探偵Xからの挑戦状!』の同名原作をもとに加筆して長篇化したものです。 ドラマ原作集に収録されていた短篇の方は、何が何でも奇想を見せちゃる…

『キャッツ・アイ』R・オースティン・フリーマン/渕上痩平訳(ちくま文庫)★★☆☆☆

『キャッツ・アイ』R・オースティン・フリーマン/渕上痩平訳(ちくま文庫) 『The Cat's Eye』R. Austin Freeman,1923年。 語り手アンスティが偶然遭遇した銃殺事件。盗まれていたのは価値のない宝石だけ。犯人は指紋を残しており逮捕は容易かと思われた…

『あやかしの裏通り』ポール・アルテ/平岡敦訳(行舟出版)★☆☆☆☆

『あやかしの裏通り』ポール・アルテ/平岡敦訳(行舟出版) 『La Ruelle fantôme』Paul Halter,2005年。 日本では初となるオーウェン・バーンズものの翻訳です。 舞台は1902年のロンドン。ホームズ引退間近の時代ですね。 いかがわしい路地に迷い込んで殺…

『だから殺せなかった』一本木透(東京創元社)★★★★☆

『だから殺せなかった』一本木透(東京創元社) 各種ベストテンにランクインした「『屍人荘の殺人』と栄冠を争った第27回鮎川哲也賞優秀賞受賞作」。 「おれは首都圏連続殺人事件の真犯人だ」大手新聞社の社会部記者に宛てて届いた一通の手紙。そこには、首…

『怪異十三』三津田信三編(原書房)★★★★☆

『怪異十三』三津田信三編(原書房) 東西の怪奇小説十三篇に編者自身の単行本未収録作を加えたもの。四つの採録基準(一、編者自身がぞっとしたもの。二、有名作以外。三、入手困難作。四、国内7&海外6&編者書き下ろし)を満たせずに、著名作も含まれ編…

『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』ケン・リュウ編/中原尚哉他訳(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)★★★★☆

『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』ケン・リュウ編/中原尚哉他訳(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) ケン・リュウが英訳して編んだ作品集の重訳なので、訳文は読みやすい。編者が序文で、政治的な読み方のような欧米視点の上から目線の読み方はやめ…

『みんなの怪盗ルパン』小林泰三他(ポプラ文庫)★★★☆☆

『みんなの怪盗ルパン』小林泰三他(ポプラ文庫) 2016年初刊。出版社&イラストつながりでしょうか、みんなの少年探偵団シリーズに続いてルパン・トリビュートも刊行されています。が、やはり当たり外れが大きかったです。 「最初の角逐」小林泰三(2016)★…

『みんなの少年探偵団2』有栖川有栖他(ポプラ文庫)★★★☆☆

『みんなの少年探偵団2』有栖川有栖他(ポプラ文庫)「未来人F」有栖川有栖(2016)★★☆☆☆ ――明智先生がアメリカに行っている間に、せっかく捕まえていた二十面相にだつごくされてしまいました。数日後、「未来人F」をなのる男がラジオにしゅつえんし、国…

『猫は宇宙で丸くなる 猫SF傑作選』中村融編(竹書房文庫)★★★☆☆

類書との重複を避けて選んだ猫SF&ファンタジー傑作選。さすがにもう過去の作品を編んだものは落穂拾いなのかも……という感想です。 「地上編」「パフ」ジェフリー・D・コイストラ/山岸真訳(Puff,Jeffery D. Kooistra,1993)★★★☆☆ ――五歳になる娘のヘ…

『幻想と怪奇』5【アメリカン・ゴシック E・A・ポーをめぐる二百年】(新紀元社)

「〈幻想と怪奇〉アートギャラリー アーサー・ラッカム」「A Map of Nowhere 05:ダーレス「深夜の邂逅」のプロヴィデンス」藤原ヨウコウ「深夜の邂逅」オーガスト・ダーレス/荒俣宏訳「アメリカン・ゴシックの瞬間」巽孝之 「夢遊病――ある断章」チャールズ…

『厨師、怪しい鍋と旅をする』勝山海百合(東京創元社)★★★☆☆

一応のところは斉鎌《せい・れん》という料理人(厨師)が、李桃源《り・とうげん》という男から腹が空くと自分から餌を食べてしまうという鍋を預かり、次の職場を探しに行くまでの旅路で遭遇したあれこれの顛末――というおおまかな流れが採られています。 と…

『スインギンドラゴンタイガーブギ』3、「チェンジエンド」三都慎司、「分身の理由」つばな

『スインギンドラゴンタイガーブギ』3 灰田高鴻(講談社MORNING KC) もともとはお姉ちゃんの相手をさがしに来ていたとらでしたが、スターを目指すことに。 「チェンジエンド」三都慎司(『ヤングジャンプ増刊 バトル2』) ――経済的事情で卓球の夢を諦める…

『S-Fマガジン』2021年4月号No.744【小林泰三特集】

「小林泰三追悼座談会「ほんま頭のええアホやった。」」我孫子武丸×北野勇作×田中哲弥×田中啓文×牧野修 小林泰三がいかに変わった人だったかということをひたすら語る座談会。「さようなら、世界(2)ロシア宇宙主義は死者復活の夢を見る」木澤佐登志「書評…

『贖罪』湊かなえ(東京創元社)★★★★☆

十五年前に起こった殺人事件。 沙英・真紀・晶子・由佳が小学四年生のときです。空気のきれいな田舎町に機械工場ができて余所からたくさんの人が引っ越してきました。そうして工場の責任者の娘エミリが四人に加わり五人で遊ぶようになります。五人が夏休みの…

『ルパンの世界』ジャック・ドゥルワール/大友徳明訳(水声社)★★★☆☆

『Le Monde d'Arsène Lupin』Jacques Derouard,2003年。 アイテムや社会制度や風俗などに焦点を当てて、アルセーヌ・ルパン作品の時代背景を明らかにする副読本です。ルパン・シリーズに留まらず、ベル・エポックに関する資料集として役立ちそうです。日本…

『猫が足りない』沢村凜(双葉文庫)★★★★☆

印象的なタイトルです。 どんな意味かと読み進めてゆくと、わかりやすく言えば「猫成分が足りない」――猫が好きすぎてほとんどサイコパスな主人公の心情を指す言葉でした。主人公がサイコパス気味なのも当然、解説を読むともともとの出発点が「ピカレスクを」…

『名もなき王国』倉数茂(ポプラ社)★★★★☆

倉数茂の第四作にして最新作は、著者を思わせる語り手が幻の作家・沢渡晶の甥と出会い、晶の遺稿と甥の小説と語り手自身の作品をまとめたもの、という体裁が取られています。 語り手自身の来歴が著者とダブり、雑誌『牧神』や中井英夫の名が現れるなど、はじ…

『コールド・コールド・グラウンド』エイドリアン・マッキンティ/武藤陽生訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★☆☆☆

『The Cold Cold Ground』Adrian McKinty,2012年。 1980年代の北アイルランドが舞台の警察小説。たれこみ屋への見せしめ殺人がよくある事件として扱われ、聞き込みすら命がけという、我々にとっては非日常の世界で起こる非日常の殺人は、猟奇的な劇場型殺人…

『連城三紀彦レジェンド2 傑作ミステリー集』綾辻行人・伊坂幸太郎・小野不由美・米澤穂信編(講談社文庫)★★★★☆

四人の選者による連城ミステリ傑作選第二集。巻末対談には米澤も参加して鼎談に。 「ぼくを見つけて」(1989)★★★★☆ ――「はい、一一〇番です」「ぼく、ユーカイされてるみたいです。ハンニンがいないので電話しました。たすけてください」イシグロケンイチと…

『哲夫の春休み(上・下)』斎藤惇夫(岩波少年文庫)★★☆☆☆

ガンバ三部作の著者による新作です、が……。 夭逝した息子に託して少年時代の自分を省みるという、あまりにも私的すぎる内容でした。 父親世代の少年時代と現在の時代を行き来するタイム・ファンタジーなのですが、描かれる過去がまったくといっていいほど魅…

『カルパチアの城 ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密 ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクションV』ジュール・ヴェルヌ/新島進訳(インスクリプト)★★★☆☆

SF

驚異の旅コレクション第三回配本は、新訳版『カルパチアの城』と初訳の『ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密』のカップリングです。 『ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密』は現在、死後初めに刊行されたミシェル改作版とジュール・オリジナル版がいずれも…

『スペース・オペラ ジャック・ヴァンス・トレジャリー』ジャック・ヴァンス/浅倉久志・白石朗訳(国書刊行会)★★★☆☆

SF

『スペース・オペラ』白石朗訳(Space Opera,Jack Vance,1965)★★★☆☆ ――未知の惑星ルラールから来た〈第九歌劇団〉は素晴らしい演目を披露したあと、忽然と姿を消した……オペラの後援者デイム・イサベル・グレイスはその失踪の謎を解決するため、地球の歌劇…


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