「都市伝説パズル」法月綸太郎(講談社文庫『法月綸太郎の功績』より)

「都市伝説パズル」★★★☆☆ ――先輩を起こさないように暗闇のなか忘れ物を取って戻った翌日。先輩は死体で発見され、壁には「電気をつけなくて命拾いしたな」の文字が。都市伝説そのままに起こった殺人事件。法月警視の話を聞いた綸太郎は、メッセージを書くこ…

『琅邪の鬼』丸山天寿(講談社文庫)★★☆☆☆

古代中国を舞台にした――というと、すぐに伝奇小説を連想しましたが、本書にはさほど伝奇要素はありません。 確かに巫医は登場し、卦を立てたり思念を聞いたり五里霧を起こしたりします。忍者のような戦闘集団も登場します。真相はどろどろしたものでした。 …

『マノロブラニクには早すぎる』永井するみ(ポプラ文庫)★★★☆☆

一応はミステリの形が取られているものの、海外文学希望だったのに女性ファッション誌に配属されてしまった主人公が、偶然から関わりになるカメラマンについて、「本当に撮りたかったのは野生動物だったのかもしれないが、(中略)女性ファッション誌での撮…

『その女アレックス』ピエール・ルメートル/橘明美訳(文春文庫)★★★★☆

『Alex』Pierre Lemaitre,2011年。 道を歩いていた女が白いバンに連れ込まれ誘拐監禁されたが、犯人の素性も被害者の身許も不明――。妻を誘拐殺害された経験を持つ警部カミーユが、あろうことか誘拐事件の指揮を執ることになってしまいます。監禁されたアレ…

『ジャック・リッチーのびっくりパレード』ジャック・リッチー/小鷹信光編・訳(早川書房ポケミス1903)★★★☆☆

『Jack Ritchie's Wonderland Part 2』 小鷹信光編によるリッチー・ポケミス第二弾です。 「Part I 1950年代」「恋の季節」松下祥子訳(Always the Season)★★★☆☆ ――リンダはタイプの手を休め、法律事務所の窓から外のバス停にいる男をうっとりと眺めた。名…

『S-Fマガジン』2019年12月号No.736

「第7回ハヤカワSFコンテスト受賞作先行掲載」『オーラリーメイカー(冒頭)』春暮康一『天象の檻(冒頭)』葉月十夏 今回は大賞なし。選考委員選評あり。 「小川隆追悼」 「巣」ブルース・スターリング/小川隆訳(Swarm,Bruce Sterling,1982) 「追悼…

『おとなになっても』(1)志村貴子、『レディ&オールドマン』(8)オノ・ナツメ、「獅子狩り」稲見独楽、『アルマ』三都慎司(ヤングジャンプ 44号)

『おとなになっても』(1)志村貴子(講談社KC Kiss) 志村貴子の新作。とつぜん女同士の恋愛に目覚めてしまって旦那も巻き込んで相手にも旦那にも迷惑をかける天然で肉食な人妻・綾乃と、意外と純粋な朱里の物語。 『レディ&オールドマン』(8)オノ・ナツ…

『メダリオン』ゾフィア・ナウコフスカ/加藤有子訳(松籟社 東欧の想像力12)★★★★☆

『Medaliony』Zofia Nałkowska,1946年。 ポーランドの作家による、証言聞き取りの形を取ったホロコースト文学。 「シュパンナー教授」(Profesor Spanner) ――そこには何百体もの死体があった。委員会の前で若い男が証言している。教授は死体標本の製作者と…

『物語ること、生きること』上橋菜穂子/瀧晴巳構成・文(講談社文庫)★★☆☆☆

作家・上橋菜穂子が誕生するまでの、幼いころの思い出から研究者としての経験を経てデビューするまでを綴った、エッセイ風インタビュー集。 わたしが期待したような、書物にまつわる記述は意外と少なく、文字通り生い立ちの記録といった内容でした。作家の伝…

『シャーロック・ホームズの愉しみ方』植村昌夫(平凡社新書)★★★★☆

著者がブログで発表していたホームズ関係の文章から主要なトピックを抜粋してまとめたものです。 著名人のホームズ・エッセイ&論考。「バリツ」とは何か? 「プロの美女」「アーミー・コーチ」の訳語の問題。大まかに言ってこの三部から構成されています。 …

『ヤオチノ乱』(3)、番外編「あちらの世界」泉仁優一、「くじらの背中」藤田直樹、『ULTRAMAN 公式アンソロジー』園田俊樹他

『ヤオチノ乱』(3)泉仁優一(講談社コミックDAYSコミックス) いつの間にか第3巻が出ていました。しかも連載が終了していました。最終巻です。いい漫画なんですけどね。 第1巻、第2巻では、主人公コンビが一流の忍びとして認められるべく、チーム対…

『銀髪少女は音を視る ニュクス事件ファイル』天祢涼(講談社タイガ)★★★☆☆

タイトルからも窺えるように、『キョウカンカク』の音宮美夜が再登場する作品です。 この作品から、講談社文庫から講談社タイガに移籍したようです。 すわミステリ色よりもキャラクター色が強まったのかな……?と勘繰りたいところですが、そんな心配は無用で…

『黄昏の彼女たち(下)』サラ・ウォーターズ/中村有希訳(創元推理文庫)★★★★☆

『The Paying Guests』Sarah Waters,2014年。 上巻で明らかになったある事実に対しリリアンが選んだ決意から、物語は意外な展開を見せることになります。 正確に言えば、意外とはいっても過去のミステリに照らせば定跡どおりなのですが、中盤過ぎにフランシ…

『アイロンのある風景 日本文学100年の名作 第9巻 1994-2003』(新潮文庫)★★★☆☆

「塩山再訪」辻原登(1994)★★★★☆ ――どこかへつれてってよ、と有子にせがまれ、電車にとび乗った。車掌が来て、私は塩山までの切符を買い直す。「エンザン?」「どこかへつれてゆけというから、つれてってやるのさ」有子に向かって、この町で私は生まれたの…

『かまいたち』宮部みゆき(新潮文庫)★★★☆☆

「かまいたち」★★★★☆ ――江戸の町は辻斬りに怯えていた。医者である父親・玄庵の帰りが遅いのを心配したおようは、提灯を手に父を迎えに出た。そこでおようは辻斬りの現場を目撃してしまう。ずれた頭巾から見えた若い顔……。 ミステリ流に言うなら死体消失の謎…

『おちゃっぴい 江戸前浮世気質』宇江佐真理(徳間文庫)★★★☆☆

「町入能」★★★★☆ ――大工の初五郎は、朝な夕なに江戸城の富士見櫓を仰ぎ見ていた。お城の御用達の大工になれば、お城に入る機会はある。だが長男に大工の修行をさせたかったし、今の親方に恩もある。大家の幸右衛門から、町入能の話があった。勅使に見せる御…

『黄昏の彼女たち(上)』サラ・ウォーターズ/中村有希訳(創元推理文庫)★★★★☆

『The Paying Guests』Sarah Waters,2014年。 現代に差し掛かろうかという時代、斜陽階級のレイ母娘が屋敷に下宿人を置くことから物語は始まります。いわばお嬢様から見た庶民、古い時代から見た婦人参政権などが生まれた新しい時代、そうした通常とは異な…

『闇の守り人』上橋菜穂子(新潮文庫)★★★★☆

故郷に帰ってきたバルサが、ジグロと自分が故郷を離れなくてはならなくなった原因と、ついに対峙します。 『ネムキ』で連載されている結布による漫画化を何回か読んでいましたが、ほぼ原作通りのようです。……というか、一回読んでいるはずなのに完全に忘れて…

『神様は勝たせない』白河三兎(ハヤカワ文庫JA)★★★☆☆

中学最後の公式戦。PK戦を0-2で負けている状況――。 この絶体絶命の状況から、主立ったサッカー部員たちに6人よる回想によって、物語は進んでゆきます。 「全国大会初出場」を目標に掲げていたはずでした。「神様は勝ちたくない者を勝たせない」のだか…

『日時計』シャーリイ・ジャクスン/渡辺庸子訳(文遊社)★★★★☆

『The Sundial』Shirley Jackson,1958年。 ハロラン家の長男ライオネルが死んだ。これで一家の実権は現当主の妻オリアナが握ることになった。当主のリチャード・ハロランは足も萎え痴呆が始まっている。オリアナが殺したのだ、とライオネルの妻メリージェー…

『ハコヅメ』9、『インハンド』2、『バードン』1、『大奥』17

『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』(9)泰三子(講談社モーニングKC) 桃木部長の仕事姿って初めてかも。この代はやっぱりお肉が報酬のようです。初めのころは真面目でボケボケの川合でしたが、数巻前からだんだん調子に乗ってきていて、この巻でも「実は今 …

『だれも知らない小さな国 コロボックル物語1』佐藤さとる(講談社文庫)★★★★☆

言わずと知れた児童文学の名作です。村上勉の絵は子供のころは可愛くなくて好きではありませんでしたが、大人になってみるとこの作品にはこの絵でないと、と思ってしまいます。 子どものころの秘密基地――自分で山を買って小屋を造って住む、だなんて、そんな…

『ミステリマガジン』2019年11月号No.737【ハヤカワ時代ミステリ文庫創刊】

「ハヤカワ時代ミステリ文庫創刊」「戯作屋伴内捕物ばなし――天火の怨念」稲葉一広 ★☆☆☆☆ ――化け損ないの狸みたいな外見の小男こそ、戯作屋の広塚伴内だ。女絵師のお駒が幽霊を見たと言って、伴内が書いた「天火」の瓦版を見せた。その火事で死んだはずのおも…

『薄情くじら 日本文学100年の名作 第8巻 1984-1993』池内紀他編(新潮文庫)★★★☆☆

「極楽まくらおとし図」深沢七郎(1984)★★★☆☆ ――本家の孫のカンちゃんというのが「コテン」を開くという。妙な絵があって題が“まくらおとし”と書いてあった。まくらおとしとはヒイじいさんが死んだときの病気の名だ。本家のジイさんは、まくらおとしで死に…

『私にふさわしいホテル』柚木麻子(新潮文庫)★★★★☆

売れない作家が自力で栄光を切り開いてゆく奮戦記です。 コンプレックスをバネに成長してゆく、というのは、『けむたい後輩』や『早稲女、女、男』にも見られるけれど、本書の主人公・加代子ほど上昇志向が強くて逆境にならないと力を発揮できない人間ではあ…

『黒いダイヤモンド』ジュール・ヴェルヌ/新庄嘉章訳(文遊社)★★★☆☆

SF

『Les Indes noires』Jules Verne,1877年。 かつて〈黒いインド〉と呼ばれ炭坑町として栄えた、スコットランド地方。そんな炭鉱町のひとつアーバーフォイルでは十年前に石炭を掘り尽くし、今では廃坑となっていた。ところが技師のジェームズ・スターの許に…

『修道師と死』メシャ・セリモヴィッチ/三谷惠子訳(松籟社 東欧の想像力10)★★★★☆

『Derviš i smrt』Meša Selimović,1966年。 弟のハルンが逮捕された修道師アフメド・ヌルディンは、後援者の老人を訪れた。老人の娘が語るには、卑しい結婚をした弟ハサンのことを父親は勘当したがっているから、ハサンのほうから縁を切るように説得してほ…

「NARROW WORLD」澤和佳、「ワールドエンドの童」平ショウジ、『リボーンの棋士』4

『good!アフタヌーン』2019年10月号(講談社)「亜人」72「限界」桜井画門 立ち去った佐藤に、這い上がってきたカイ。予想もつかない展開が待ち受けていました。「ワールドエンドの童」平ショウジ ――「だるいなあ、生きてくの。缶詰飽きたな、一年以上食べ…

『雨の日も神様と相撲を』城平京(講談社タイガ)★★★★☆

相撲好きの両親に育てられながらも、体格に恵まれなかった逢沢文季は、両親の死後、母方の叔父に引き取られ、中三の春から米どころの田舎で暮らすことになる。相撲とは縁が切れたつもりだった……。ところがその村は、相撲好きのカエルを神様と祀る、相撲の盛…

『ナイトランド・クォータリー』vol.18【想像界の生物相】

「Night Land Gallery 国立民族博物館・特別展「驚異と怪異――想像界の生きものたち」」「マンタム選 想像界の生き物図鑑」「塹壕からの「準創造」――『トールキン 旅のはじまり』」岡和田晃「開田祐治インタビュー ノイズの中から生まれるイメージ」「マンド…


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