『開化鐵道探偵』山本巧次(東京創元社ミステリ・フロンティア)★★★☆☆

明治初期を舞台にした鉄道(の工事現場)ミステリです。 元八丁堀同心が探偵役を務めますが、捕物帳をリスペクトしているわけではなく、明治期の鉄道を舞台に選んだ関係上、警察官ではない私立探偵ポジションであっても不自然ではない存在として元同心が選ば…

『謎の館へようこそ 黒 新本格30周年記念アンソロジー』はやみねかおる他(講談社タイガ)★★☆☆☆

新本格30周年記念の館ものアンソロジー第2弾です。新本格のスタートという位置づけの『十角館』にちなんでの館ものなのでしょう。同じく30周年記念の『7人の名探偵』が新本格第一世代の作家たちであるのに対して、この『謎の館へようこそ』は孫・曾孫世代…

『謎の館へようこそ 白 新本格30周年記念アンソロジー』東川篤哉他(講談社タイガ)★★★☆☆

副題にあるとおり新本格30周年を記念した、館がテーマの書き下ろしアンソロジーです。綾辻行人的な〈館〉ものもあれば、舞台となるのが文化会〈館〉なだけのものもありましたが、意外なことに一族のお屋敷ものやクローズド・サークル的な意味での〈館〉もの…

『蒸気で動く家 〈驚異の旅〉コレクションIV』ジュール・ヴェルヌ/荒畑邦博・三枝大修訳(インスクリプト)★★☆☆☆

SF

『La Maison à vapeur. Voyage à travers l'Inde septentrionale』Jules Verne,1880年。 シパーヒーの反乱(セポイの乱)の指導者だったドゥンドー・パント(ナーナー・サーヒブ)がボンベイに現れたという情報がもたらされた。だがナーナーに妻を殺された…

『奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い』木犀あこ(角川ホラー文庫)★★☆☆☆

第24回日本ホラー小説大賞の優秀賞受賞作「幽霊のコンテクスト」と書き下ろし「逆さ霊の怪」を収録。 ホラーというよりは、怪異(都市伝説)を狩猟してゆくキャラクター小説です。怪異を渡り歩くのは、ゴーストハントではなく飽くまで取材のためです。取材の…

『怪談撲滅委員会 幽霊の正体見たり枯尾花』黒史郎(角川ホラー文庫)★☆☆☆☆

存在しない幽霊を退治するのではなく、実際に害を及ぼしている怪談を撲滅する――こうしたあらすじとタイトルだけ見たなら、怪談を自然現象として解体したり科学的に解明したりする話だと思ってしまいますが……。 実際のところは違います。 幽霊は「幻覚」だそ…

『シャーロック・ノート 学園裁判と密室の謎』円居挽(新潮文庫nex)★★★☆☆

探偵士が社会的に認められている世界を舞台に、探偵養成学校に通う少年・成《なる》が遭遇する三つの事件が収録されています。 一話目は新入生に紛れこんだ特待生(特究生)をさがす……というか、特究生を当てる推理ゲーム。 二話目は成がいかにして学園に入…

『幻想と怪奇』3【平井呈一と西洋怪談の愉しみ】(新紀元社)

「夢と嵐の海 平井呈一訳に導かれて」佐野史郎「A Map of Nowhere 03:マッケン「眩しい光」のカルディ島」藤原ヨウコウ「平井呈一のマッケン」南條竹則 「消えた心臓」M・R・ジェイムズ/平井呈一訳(Lost Hearts,M. R. James,1904)★★★☆☆ ――スティーヴ…

『冬雷』遠田潤子(東京創元社)★★★★☆

真琴のことが好きだった夏目代助は、愛美がストーカーの果てに自殺したことを愛美の兄・龍から今でも恨まれていた。行方不明だった義弟の千田翔一郎の死体が発見され、代助はかつての養父たちの住む町に戻って来た。愛美とのことで町ではあらぬ噂を立てられ…

『S-Fマガジン』2020年10月号No.741【ハヤカワ文庫SF創刊50周年記念特集】

「ハヤカワ文庫SF50年の歩み」渡辺英樹 「40年の歩み」に加筆修正したものだそうですが、さすがに十年前の記事は覚えていません。創刊当初はハヤカワ・SF・シリーズとの差別化を図ったスペース・オペラなどの大衆娯楽路線だったこと――今となってはS…

『人形 デュ・モーリア傑作集』ダフネ・デュ・モーリア/務台夏子訳(創元推理文庫)★★★★☆

『The Doll and Other Stories』Daphne du Maurier,2011/1980年。 デュ・モーリア死後に再発掘された短篇と、初期の短篇からなる短篇集で、書誌情報がいっさい不明ですが、どうやら完全な日本オリジナル短篇集というわけではなく、2011年に出版された初期短…

『スインギンドラゴンタイガーブギ』1、『スキップとローファー』4 ★★★★★

『スインギンドラゴンタイガーブギ』1 灰田高鴻(講談社 MORNING KC) ――昭和26年。十代の少女「とら」は、6年前に疎開先の福井で姉・依音子がベーシストと過ごしているのを見てベースの魅力に打たれた。だが依音子は川で溺れ心神を喪失し、ベーシスト・オ…

『メルカトルと美袋のための殺人』麻耶雄嵩(集英社文庫)★★★★☆

再読。講談社文庫版も持っているのですが、今回は集英社文庫版で読みました。 「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」(1992)★★★★☆ ――昨夜初めて紹介されたときには何も感じなかったのに、その日の佑美子はまったく違って見えた。遊歩道沿いの杉林のなかで、転…

『文豪ノ怪談 ジュニア・セレクション 恋』東雅夫編/谷川千佳絵(汐文社)★★★☆☆

「幼い頃の記憶」泉鏡花(1912)★★★☆☆ ――五つくらいの時と思う。船に乗って、母の乳房を摘み摘みしていたように覚えている。そばに一人の美しい若い女のいたことを、私はふと見出した。今思ってみると、十七ぐらいであったと思う。いかにも色の白い、瓜実顔…

『首折り男のための協奏曲』伊坂幸太郎(新潮文庫)★★★☆☆

首を折って人を殺す殺し屋「首折り男」に関連する短篇と、探偵の黒澤が登場する短篇から成る、異なる媒体に発表された短篇を集めてまとめたオムニバス作品集です。 「首折り男の周辺」(2008)★★★★☆ ――定年後の若林夫妻がテレビを観ていて気づいた。「これ、…

『かくして殺人へ』カーター・ディクスン/白須清美訳(創元推理文庫)★★★☆☆

『And So to Murder』Carter Dickson,1940年。 ロマンス小説でデビューした牧師の娘モニカは、その過激な作品内容から家族の顰蹙を買ってしまいます。そして伯母から言われたのは、「せめて探偵小説だったなら」という台詞。そのせいでモニカは、探偵小説が…

『アヒルと鴨のコインロッカー』伊坂幸太郎(創元推理文庫)★★★★☆

アパートの隣人に誘われて、本屋から広辞苑を盗むはめになってしまう。 この冒頭の設定だけで、どんな話なのかと読みたくなってしまいました。 本書は二つのパートからなり、「現在」パートでは大学生の椎名が河崎という風変わりな隣人に振り回され、「二年…

『ぼくのアッコ』大海赫(復刊ドットコム)★★★★☆

一時期復刊ドットコムからの刊行が続いていた、『ビビを見た!』の大海赫の新作絵本です。 デ・ラ・メア「なぞ」のように、ひげの紳士や猫や蛇が次々とカバンのなかに消えてゆきます。 そんなストーリーもさることながら、「ぼくのアッコ」というのが、語り…

『文豪ノ怪談ジュニア・セレクション 獣』東雅夫編/中川学絵(汐文社)★★★☆☆

挿絵は泉鏡花の絵本でおなじみ中川学です。 「山月記」中島敦(1942)★★★★☆ ――隴西の李徴は博学才穎であったが、賤吏に甘んずることを潔しとせず、ひたすら詩作に耽った。しかし文名は容易にはあがらず、ついに発狂したまま二度と戻ってはこなかった。翌年、…

『J・G・バラード短編全集2 歌う彫刻』柳下毅一郎監修(東京創元社)★★★★☆

『The Complete Short Stories: J. G. Ballard』 「重荷を負いすぎた男」増田まもる訳(The Overloaded Man,1961)★★★★☆ ――フォークナーはゆっくりと狂いかけていた。妻にはまだ言っていないが、ビジネススクールの講師を二か月前に辞めていた。妻のキスは…

『オシリスの眼』R・オースチン・フリーマン/渕上痩平訳(ちくま文庫)★★☆☆☆

『The Eye of Osiris』R. Austin Freeman,1911年。 フリーマン長篇2作目。 男が一人失踪した。希望する場所に埋葬されるという条件を満たせば、財産は弟に、満たされなければ財産は別の人間に――という奇妙な遺言を残して。死んでいるのか生きているのかわ…

『インハンド』04、『Q.E.D. iff』16

『インハンド』04 朱戸アオ(講談社イブニングKC) 「プシュケーの翅」の続きと「デメテルの糸」全篇です。 恵良(内調の牧野さんと一緒にいる黒服黒眼鏡)の友人・国際テロリズム対策課の米谷が死んだ。部屋に実験設備があったことからテロリストとの内通…

『ミステリマガジン』2020年9月号No.742【ハヤカワ文庫創刊50周年】

文庫創刊50周年とは言いつつ創刊第一弾はSF文庫なので、ミステリ文庫はまだ44周年、NV文庫でも48周年でした。「読者を育てた文庫の軌跡をたどる」三橋曉「ハヤカワ文庫創刊50周年エッセイ」有栖川有栖・池上冬樹・恩田陸・新保博久・月村了衛・山本やよ…

『ほうかご探偵隊』倉知淳(講談社ミステリーランド)★★★☆☆

なぜか「探偵団」ではなく「探偵隊」ですが描かれているのは紛れもなく少年探偵団です。5年3組で起こった不要なもの連続消失事件の謎を、語り手の高時くんと同じく江戸川乱歩好きの龍之介くんと、ニワトリ失踪事件の当事者成見沢さんと学級委員長の吉野さ…

『魔王城殺人事件』歌野晶午(講談社ミステリーランド)★★★☆☆

ミステリーランド第5回配本。2004年の作品です。 読む順番が逆になってしまいましたが、本書の冒頭で触れられていた「ダンシング・クイーン」の謎は、2010年刊の『舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵』最終話「母」で解決されていたのですね。 本書のトリ…

『シャーロック・ホームズの冒険』アーサー・コナン・ドイル/延原謙訳(新潮文庫)★★★★☆

『The Adventures of Sherlock Holmes』Arthur Conan Doyle,1892年。 「ボヘミアの醜聞」(A Scandal in Bohemia,1891)★★★☆☆ ――ホームズの許を訪れたのはボヘミア国王だった。若気の至りで女優と交際していたころ、一緒に写っている写真を渡したことがあ…

『S-Fマガジン』2020年8月号No.740【特集・日本SF第七世代へ】

先月号から通常月販売に戻っていたことに気づきませんでした。雑誌コーナーではなく『三体』コーナーに置いてありました。 「日本SF第七世代へ」 当たり前ですが執筆者のほとんどはハヤカワSFコンテスト出身者なので、新人ばかりの割りには既視感しかあ…

『象』スワヴォーミル・ムロージェック/長谷見一雄他訳(国書刊行会 文学の冒険)★★★★☆

『Słoń i inne opowiadania』Sławomir Mrożk,1974年。 初期の短篇集4冊の合本『象その他の物語』のうち、『実用的な半鎧』を除く3冊のなかから2/3ほど選んだもの+漫画集『デッサン集』から選ばれたものです。 『象』(Słoń,1957)「馬になりたい」沼…

『ブラウン神父の知恵』G・K・チェスタトン/南條竹則・坂本あおい訳(ちくま文庫)★★★☆☆

『The Wisdom of Father Brown』Gilbert Keith Chesterton,1914年。 ちくま文庫の新訳ブラウン神父の第二弾。 「グラス氏の不在」(The Absence of Mr. Glass)★★★☆☆ ――マギーが結婚したがっているトッドハンター青年は素性が知れない。相談されたブラウン…

『奇想、天を動かす』島田荘司(光文社文庫)★★★★☆

あまりにも強烈な作品ゆえに動機もトリックもはっきりと覚えてはいたのですが、改めて再読です。便山や主任のような絵に描いたようなクズ警官がいるから相対的に吉敷の身勝手が薄まっていますが、消費税殺人という動機に納得できないからという理由だけで単…


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