『奥の部屋』ロバート・エイクマン/今本渉編訳(ちくま文庫)★★★★★

国書刊行会〈魔法の本棚〉版に「何と冷たい小さな君の手よ」「スタア来臨」の二篇を加えた文庫版。 「学友」(The School Friend,1964)★★★★☆ ――学生時分の友人サリーは大学に進み、私たちは疎遠になりましたが、四十一の年、私は両親の元へ出戻りと相成り…

『御子柴くんの甘味と捜査』若竹七海(中公文庫)★★★☆☆

倒叙作品集『プレゼント』に出てくる探偵役の小林警部補の部下、御子柴刑事が主人公です。長野県警から警視庁に出向し、そこで遭遇する5つの事件を描いた短篇集。タイトルになっている「甘味」とは、県警からは東京みやげを、東京の人間からは長野の名物を…

『よりぬきウッドハウス1』P・G・ウッドハウス/森村たまき訳(国書刊行会)★★★☆☆

「ハニーサックル・コテージ」(Honeysuckle Cottage,1925)★★★☆☆ ――「幽霊をお信じになりますか」マリナー氏が言った。マリナー氏の遠縁の探偵小説家ジェイムズ・ロドマンは、ロマンス小説家である叔母の屋敷を相続した。ところが書斎でタイプライターに向…

「ポーターズ」桐山古舟、『一日三食絶対食べたい』3

『good!アフタヌーン』2020年02月号(講談社) 「亜人」75「未知への飛翔」桜井画門 オグラ博士の想像する亜人誕生の瞬間。いずれ佐藤の倒し方に関わってくるのだと思うのですが……。「デーリィズ」8「にゆごこうざ」めごちも 「そうめん」「王家」「父娘の…

『ナボコフの文学講義』(上)ウラジーミル・ナボコフ/野島秀勝訳(河出文庫)★★★★☆

『Lectures on Literature』Vladimir Nabokov,1980年。 以前は入手困難だった『ヨーロッパ文学講義』の改題文庫化。 「良き読者と良き作家」 あの有名な「ひとは書物を読むことはできない、ただ再読することができるだけだ」を含む評論。 「ジェイン・オー…

「擬曲」『モネルの書』(国書刊行会『マルセル・シュオッブ全集』より)★★★★☆

シュオッブ全集より「擬曲」『モネルの書』を読む。 「擬曲《ミーム》」大濱甫訳(Mimes,1893)★★★☆☆ ――「お前を鞭で打たせてやろう。お上が禁じているのに、どうして八目鰻を売っていたんだ?」「御禁制とは知りませんでした」「このあばずれ、裸にひんむ…

「政略結婚したくない!」、『リボーンの棋士』5、『アルマ』1、『金剛寺さんは面倒臭い』5、『ドラえもん』0

『アフタヌーン』2020年2月号(講談社)「おおきく振りかぶって」159「はじまりの冬3」ひぐちアサ 母校やかつて在籍していた少年野球チームにスカウトに。こういうのはほかのスポーツ漫画では描かれないので新鮮に感じつつ、高校生に何やらせてんだよと思う…

『S-Fマガジン』2020年02月号No.737【創刊60周年記念号】

記念号としての目玉は、思い出の号について語った60人によるエッセイなのでしょうけれど、それこそ他人の思い出話ばかりで面白いものではありませんでした。作家の資料としては価値があるのでしょうけれど、たぶん字数が短すぎて思い出+αを工夫する余地がな…

『完全犯罪に猫は何匹必要か?』東川篤哉(光文社文庫)★★★★☆

豪徳寺邸で起こった十年前の未解決殺人事件、探偵による豪徳寺家の猫さがし、十年前と同じビニールハウスでの殺人事件、どれも無関係ではないに決まっているのだけれど、少なくとも序盤では関連性は明らかになりません。 それどころか鵜飼と砂川警部もなかな…

『スターウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(米,2019)★★★★☆

『Star Wars: The Rise of Skywalker』 監督・脚本J・J・エイブラムス。デイジー・リドリー他出演。 つきあいで観ました。7・8未見。4~6のテレビ吹替え版しか観たことがなかったので、いままでチューイのことを中尉だと思っていました。ハン・ソロだけ…

『刑事コロンボ完全版』vol.1 DISC 1(ユニバーサル)★★★★☆

刑事コロンボ廉価版の1枚目。「殺人処方箋」(Prescription: Murder,1967)★★★★☆ ――結婚十年になる精神科医フレミングは女優のジョーンとの浮気がばれて、妻のキャロルに離婚を切り出されて名声と財産も失う危機に陥った。サプライズの結婚記念旅行を計画…

『南十字星共和国』ワレリイ・ブリューソフ/草鹿外吉訳(白水Uブックス 海外小説永遠の本棚)★★★☆☆

『Земная ось』Валерий Яковлевич Брюсов,1911年。 「地下牢」(В подземной тюрьме,1901-1905) ――征服された軍司令官の娘はスルタンの大宰相になびこうとしなかったため、地下牢に入れられた。牢番に犯され、殴られたが、マルコという青年受刑者と恋に落…

『親指のうずき』アガサ・クリスティー/深町真理子訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★★☆

『By the Pricking of My Thumbs』Agatha Christie,1968年。 正確に言えば「積ん読」ではありません。大好きなトミーとタペンス・シリーズは全部で5冊しかないので、わざと大事に取っておいたのです。これで残るはあと1冊……。 クリスティーの巻頭言がうれ…

『完全な真空』スタニスワフ・レム/沼野充義・工藤幸雄・長谷見一雄訳(国書刊行会)★★★★☆

レム作品のなかでもかなり有名な、架空の書物の書評集です。 まずはヤラレタ!と思ったのが、序文自体がすでに書評という体裁になっていることでした。本書『完全な真空』の序文が、レムの書いた書籍『完全な真空』についての書評になっているのです。ここま…

『桜は本当に美しいのか 欲望が生んだ文化装置』水原紫苑(平凡社新書)★★★★☆

桜は本当に美しいのか――なかなか挑発的なタイトルですが、実際に万葉集のころには桜の歌よりも萩や梅の歌のほうが多いという事実もあるそうです。 本書は、歌人である著者が、歌集を中心とした文学作品に詠まれた桜の意味の変遷を読み解いてゆく作品になりま…

『カルパチアの城』ジュール・ヴェルヌ/安東次男訳(集英社文庫)★★★☆☆

SF

『Le Château des Carpathes』Jules Verne,1892年。 ヴェルヌ作品のなかでもかなり異色の作品です。 誰も住んでいないはずの城から煙が立ちのぼっていたことから、勇敢な林務官ニック・デックと臆病なパタク医師が確認しに行こうとした直後、「城には行くな…

『神の守り人 来訪編・帰還編』上橋菜穂子(新潮文庫)★★★☆☆

守り人シリーズ初めての前・後編です。 バルサがたまたま助けた少女が、体内に「神」を宿す血筋だったことから、刺客に追われることになります。何しろ多勢に無勢、本書のバルサは(特に後半は)押され気味で、これまでのような活躍を期待するとやや消化不良…

『11枚のとらんぷ』泡坂妻夫(角川文庫)★★★☆☆

泡坂氏の長篇は、奇想に溢れる短篇と比べると、手堅いという印象を持ちます。本書にしてもそれは例外ではありませんでした。 公民館でのアマチュア奇術ショウで披露される十一の奇術に加えて、作中人物の著述『11枚のとらんぷ』に書かれた十一の奇術、という…

「凡天」倫の助、「さよなら、ホームラン」松田中大地(『good!アフタヌーン』2020年1月号)、「ハコヅメ出向編」(『警察公論』2020年01月号)

『good!アフタヌーン』2020年1月号(講談社)「亜人」74.5「フラッド2」桜井画門 今回はあまり話に進展がありません。 「さよなら、ホームラン」松田中大地 ――怪我をした野球選手ウオズミは、行方不明になった幼なじみの投手トリカイのことを案じながら、…

『バタフライ和文タイプ事務所 日本文学100年の名作 第10巻2004-2013』(新潮文庫)★★★★☆

「バタフライ和文タイプ事務所」小川洋子(2004)★★★★★ ――学会シーズンを迎えて、事務所は忙しくなってきました。私以外のタイピストは二十年以上のベテランです。その日、糜爛の糜の活字が欠けてしまいました。「活字管理人に新しいのを出してもらいなさい…

『死を忘れるな』ミュリエル・スパーク/永川玲二訳(白水Uブックス 海外小説 永遠の本棚)★★★★☆

『Memento Mori』Muriel Spark,1959年。 歳を取れば丸くなる。脂っ気がなくなる。――そんなのは嘘です。 何しろ本書に登場する老人たちは、揃いも揃ってわがままで生に執着しています。恋の鞘当てみたいな場面まであって、すべての場面の後ろに(年齢)をつ…

『象牙色の嘲笑 新訳版』ロス・マクドナルド/小鷹信光・松下祥子訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★☆☆

『The Ivory Grin』Ross Macdonald,1952年。 なるほど詩的表現といっても、チャンドラーのようなインテリ嫌味なところを楽しむような意地の悪い面白さではなく、修辞技法がすっと溶け込んでいるので、読んでいて引っかかりを覚えることがありません。それが…

『やまびと えほん遠野物語』柳田國男原作/京極夏彦文/中川学絵(汐文社)★★★★☆

京極夏彦による遠野物語えほんシリーズですが、中川学のファンなので、そちら目当てで読みました。遠野物語の第三段と第七段が絵本化されています。 まずは第三段・山女の話です。文章には書かれていませんが、当然ながら猟犬も一緒なんだな、と気づかされま…

『図書館の魔女』3・4 高田大介(講談社文庫)★★★★★

禁書についての議論、戦争回避のための外交戦略、狙われるマツリカ、外交本番……いよいよ興に乗って第三巻は留まるところを知りません。 禁書についてのくだりでは知的好奇心を刺激され、この世界を形作る壮大な絵図を改めて実感しました。マツリカを狙う刺客…

『ガソリン生活』伊坂幸太郎(朝日文庫)★★★★☆

本書ではなんと自家用車が語り手を務めます。 とうぜん視点に限りがあるので、情報は断片的にしか伝わってこない――かと思いきや、車には車のネットワークがあるらしく、自動車間の噂話を主に駐車場で仕入れており、むしろある部分では人間よりも情報通だった…

『ナイトランド・クォータリー』vol.19【架空幻想都市】

1年ごとの定期購読を継続していた『ナイトランド』ですが、編集長も変わって新体制になり、いよいよわたしの好みとは離れて来てしまいました。もともとクトゥルー色が強かったので趣味に合わないものも多く、新紹介作家のなかから思わぬ拾いものに遭遇する…

「どク」中田祐樹、『ハコヅメ』10、「青頭巾」相田裕

『アフタヌーン』2020年1月号(講談社) 「おおきく振りかぶって」158「はじまりの冬 2」ひぐちアサ ふたたび理論編。連載だと試合は流れがぶつ切れてしまうので、理論編の方が面白く感じます。 「ヴィンランド・サガ」167「西方航路1」幸村誠 ようやくタ…

『ミステリマガジン』2020年1月号No.738【ミステリが読みたい!2020年版】

海外編一位は昨年『カササギ』で高い評価を得たアンソニー・ホロヴィッツ『メインテーマは殺人』。国内編一位は意外にも謎解きものの短篇集伊吹亜門『刀と傘 明治京洛推理帖』。 ジャンル別総括のなかでは、「復刊・新刊」欄で紹介されていた頭木弘樹編訳『…

『楽しい夜』岸本佐知子編訳(講談社)★★★★☆

『変愛小説集』1&2、『居心地の悪い部屋』『コドモノセカイ』に続く、岸本佐知子による編訳集。「ノース・オブ」マリー=ヘレン・ベルティーノ(North Of,Marie-Helene Bertino,2007)★★★☆☆ ――その年の感謝祭、わたしは実家にボブ・ディランを連れて帰…

『シャーロッキアン!』1~4 池田邦彦(双葉社ACTION COMICS)

家の整理をしていたら出てきたので久しぶりに読み返しました。 シャーロッキアンの大学教授・車路久と女子大生・原田愛里がホームズにまつわる事件を通して、人の心の機微に触れ、ホームズ物語の謎や周りの人たちの悩みを解決してゆくストーリー。 以前に読…


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