『シフォン・リボン・シフォン』近藤史恵(朝日文庫)★★★★☆

「第一話」★★★★☆ ――帰り道にあった書店が閉店し、ランジェリーショップになっていた。佐菜子の母親は背骨を折ってからリハビリを怠けていたため、寝たきりになってしまった。駅前の書店まで寄り道している時間はない。胸の大きさにコンプレックスのある佐菜…

『となりに』basso(茜新社 EDGE COMICS)

オノ・ナツメのBL名義の新作です。志村貴子のBLは脳内で男女に置き換えようとしても気持ち悪くて読めないのだけれど、basso作品の場合はすんなり読めました。ベッドシーンのある志村作品に対し、basso作品の場合はオノ・ナツメ名義でも基本的にベッドシ…

『気球に乗って五週間』ジュール・ヴェルヌ/手塚伸一訳(集英社文庫)★★★☆☆

SF

『Cinq semaines en ballon: voyage de découvertes en afrique par trois anglais』Jules Verne,1863年。 記念すべき驚異の旅シリーズ第一作です。 果敢な冒険に沸き立つ人々と、無謀だと反対する友人。冒頭からすでに後年のヴェルヌらしさが見られます。 …

『もしもし、還る』白河三兎(集英社文庫)★★★★☆

目覚めたらサハラ砂漠。落ちてくる電話ボックス。 荒唐無稽な導入ながら、内容や語り口はいたってシリアスです。 主人公は田辺志朗(シロ)。 電話だけでつながっているもう一人の「遭難者」や119番の相手口とのやり取りが繰り広げられる現在パートからは…

『コドモノセカイ』岸本佐知子編訳(河出書房新社)★★★★☆

「まじない」リッキー・デュコーネイ(Abracadabra,Rikki Ducornet,1994)★★★★☆ ――頭の中でブーンとハチみたいな音がする。彼は気づいてしまった。宇宙人が盗み聞きしている! 鏡の中の敵を攪乱するために、まじないとして顔をしかめ屁をひった。 子どもが…

『この恋はこれ以上綺麗にならない。』(1)舞城王太郎原作/百々瀬新漫画(集英社JUMP COMICS PLUS)

舞城王太郎の新作は漫画原作。潔癖症の小学生の女の子が殺し屋と出会い、片や“掃除屋”として、片や“君を護りに”交流が始まるという、もともと舞城作品には漫画みたいなところがあるのに、漫画にしてしまうと思ったより地味というか、漫画のなかに混じるとと…

『S-Fマガジン』2019年8月号No.734【『三体』と中国SF】

「天図」王晋康《ワン・ジンカン》/上原かおり訳(天图,王晋康,2017)★★☆☆☆ ――明日の科学に関するものだと言って老人が持ち込んだ図面は、交通事故で生き残った自閉症の少年が書いたものだった。科学者やサイエンスライターの交流を企画する会社社長・易…

『アドリア海の復讐』(上・下)ジュール・ヴェルヌ/金子博訳(集英社文庫)★★★☆☆

SF

『Mathias Sandorf』Jules Verne,1885年。 冒頭でデュマ・フィスに(というよりもその父親に?)捧げられており、デュマ・フィス自身も父親の『モンテ・クリスト伯』の名前を出してそれに答えています。デュマの『モンテ・クリスト伯』はめっぽう面白い作品…

『尾かしら付き。』2 佐原ミズ(徳間書店 ZENON COMICS)

衝撃的な第1巻のラストに続き、2巻も衝撃的な終わり方でした。純粋な人たちの恋愛ものの名手という印象でしたが、こんなにギャグセンスと引きの上手い人だったとは。てか、グレたわけではなくひねくれただけだったんですね。

『最後のトリック』深水黎一郎(河出文庫)★★★☆☆

メフィスト賞受賞作『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!』改題文庫化。 冒頭から明らかになるように、「読者が犯人」に挑んだ作品です。常識的に考えてそんな作品など不可能なわけですから、本書もある特定の条件があって初めて成立するものです。だから…

『ナイトランド・クォータリー』vol.17【ケルト幻想~昏い森への誘い~】(アトリエサード)

今号から編集長が岡和田晃に変わったそうです。「井村君江インタビュー “General Literature”としての幻想文学とケルト研究」大和田晃「ケルト妖精譚とホラー映画の微妙な関係」深泰勉「~夜の国の幻視録~(1)Visionary celtic」藤原ヨウコウ「アーサー・…

『なんでもない一日』シャーリイ・ジャクスン/市田泉訳(創元推理文庫)★★★★☆

『The Smoking Room and Other Stories: A Collection』Shirley Jackson。 死後発見された未発表原稿および単行本未収録作品を集めた『Just An Ordinary Day』から、水準に満たない作品を除く短篇23篇およびエッセイ5篇・序文・エピローグを選び再編集し…

『インド王妃の遺産』ジュール・ヴェルヌ/中村真一郎訳(集英社文庫)★★★★☆

SF

『Les 500 millions de la Bégum』Jules Verne,1879年。 インド王の未亡人と結婚していた大伯父/大叔父の遺産を受け継いだ二人の科学者が、それぞれの理想を掲げて都市を築きます。フランス人科学者サラザン博士は人間が長生きできる衛生的な都市フランス…

「九谷京の不可避な事情」神木啓、「スイカ」森とんかつ、『夢で見たあの子のために』4、『あさひなぐ』30

『good!アフタヌーン』2019年7月号(講談社)「亜人」69「海斗」桜井画門 佐藤との対決はちょっとお休みして、海斗と永井のむかしの話でした。「ぐらんぶる」53「収録現場」井上堅二・吉岡公威「ギャルゲーの達人にごまかしは利かない」のあおりに笑いまし…

『ミステリーズ!』vol.95 2019年6月(東京創元社)

北村薫×宮部みゆき対談が掲載されているから購入したのですが、文庫創刊60周年記念で公開されていた動画の一部の採録でした。

『お好みの本、入荷しました 桜庭一樹読書日記』桜庭一樹(創元ライブラリ)★★★★☆

桜庭一樹読書日記その3。 ジョン・サザーランドの「謎」シリーズ(pp.12~17)は、古典のペーパーバック用の気軽な解説を集めたものだったんですね。 近藤史恵は好きな作家なのだけれど、時代小説『にわか大根』はいまいちでした。が、12ページのK島氏によ…

『早稲女、女、男』柚木麻子(詳伝社文庫)★★★★☆

タイトルからもわかるとおり、早稲田の女は女ではないそうです。 いつもの柚木ヒロインのような、何だかんだ迷いながらも、がっぷり正面から人生に挑んでいるような、気持の良い大学生・早乙女香夏子が主人公です。それをそばから支える(たぶん)しっかりも…

『マルセル・シュオッブ全集』「黄金仮面の王」マルセル・シュオッブ(国書刊行会)

第一短篇集『二重の心』に続いて第二短篇集『黄金仮面の王』を読む。『黄金仮面の王』(Le Roi au masque d'or)「黄金仮面の王」多田智満子訳(Le Roi au masque d'or)★★★★☆ ――この都は仮面をつけた歴代の王が支配するようになって久しい。僧侶たちですら…

『聖ペテロの雪』レオ・ペルッツ/垂野創一郎訳(国書刊行会)★★★★★

『St. Petri-Schnee』Leo Perutz,1933年。 アムベルクは目覚めると病室のベッドの上だった。あの人は死ななかった。わたしが銃弾の前に立ちはだかったからだ。なのに医師や看護婦は、わたしは車にはねられて五週間前から入院していると嘘をつく……。父の知己…

「鉄のつめ」三橋一夫(盛林堂ミステリアス文庫『三橋一夫作品集成 第1巻 ジュニア小説篇』より)

「鉄のつめ」(1952~1953) ――手術で救った投手からもらったサインボールは、登の父親・井上博士の宝物だった。父親の講演旅行中に、小学校のみんなに自慢したくてこっそり持ち出したサインボールを、悪少年の立次に奪われてしまった。登は奪い返しにいくが…

『ミステリマガジン』2019年9月号No.735【クイーン再入門】

新訳が好調な一方で、「若い読者からは忘れられつつある」そうです。そのわりに「入門」ではなく「再入門」とあるように、若い人向けではなく年配者向けでした。思い出話にしろ入門書案内にしろ、寄稿者のほとんどがベテラン勢です。クイーンの稚気溢れる作…

「荻野」『アフタヌーン』2019.07、ハコヅメ7、レディ&オールドマン7

『アフタヌーン』2019年7月号(講談社)「無限の住人~幕末ノ章~」滝川廉治原作/陶延リュウ漫画/沙村広明協力 ――アメリカから日本に戻ってきた万次。「今度は人の命を護ってみてはどうじゃ」という坂本龍馬の言葉に動かされ、京を訪れた万次は、新撰組と…

「82黒髪の長きやみぢも明けぬらむおきまよふ霜のきゆる朝日に」~「93 あかつきはかげよわりゆく燈火に長きおもひぞ一人きえせぬ」塚本邦雄『定家百首/雪月花(抄)』より

82・83いずれも遊び心のある歌(いにしえの歌人を読み込んだ歌と、各歌の頭をつなげて言葉にする歌)です。「ありつつも君をば待たむうち靡くわが黒髪に霜の置くまで」を本歌にした82の歌については、「おきまよふ」の一語にのみ反応しています。「83 昨日ま…

『窓 〈フィルム・ノワール ベスト・コレクション〉』株式会社ブロードウェイ(米,1949)★★★☆☆

コーネル・ウールリッチ原作。テッド・ラズラフ監督。ボビー・ドリスコール、アーサー・ケネディ、ポール・スチュアート出演。 ニューヨークのアパートで両親と暮らすトミー少年は、日頃から自分の空想した作り話を人に聞かせては両親を困らせていた。ある蒸…

『死刑台のエレベーター』ノエル・カレフ/宮崎嶺雄訳(創元推理文庫)★★☆☆☆

『Ascenseur pour l'échafaud』Noël Calef,1956年。 映画化があまりにも有名な作品の、原作小説です。 浮気性の夫と、嫉妬深い妻のやり取りから、小説は始まります。夫のジュリアンは何か企んでいるらしい。やがて夫は同じビルの高利貸しを訪ね、借金の猶予…

『闇の聖母』フリッツ・ライバー/深町眞理子訳(ハヤカワSF文庫)★★★☆☆

『Our lady of Darkness』Fritz Leiber,1977年。 クラーク・アシュトン・スミスの遺した日記がきっかけとなって、スミスにかけられた呪いに怪奇作家が巻き込まれるという、かなりバカバカしいお話。 都市と建造物を利用した魔方陣というアイデアが、本書を…

『ディナーで殺人を(上)』ピーター・ヘイニング編(創元推理文庫)★★★☆☆

「はしがき」ピーター・ヘイニング/高田惠子訳「第一部 当店のお薦め――有名作家たちの作品」「特別料理」スタンリイ・エリン/田口俊樹訳(The Speciality of the House,Stanley Ellin)★★★★☆ ――ラフラーはコステインをスビロの店に招待した。コステインは…

『地球の中心までトンネルを掘る』ケヴィン・ウィルソン/芹沢恵訳(東京創元社 海外文学セレクション)★★★★☆

『Tunneling to the Center of the Earth』Kevin Wilson,2009年。 シャーリイ・ジャクスン賞&全米図書館協会アレックス賞受賞作。 「替え玉」(Grand Stand-In)★★★★☆ ――この仕事のコツは、自分こそがお祖母ちゃんだと常に思い込むことだ。「祖母募集しま…

『ヤオチノ乱』2、熊倉献『生花甘いかしょっぱいか』「盤上兄弟」

『ヤオチノ乱』2 泉仁優一(講談社) 2巻はkindle版のみ。そりゃ宣伝もしていないのだから紙媒体が売れるわけもない。四季賞出身とはいえ四季賞準入選作「無常の霧音」は本誌には載らず、掲載は講談社漫画誌サイトの「モアイ」のみ。2巻の発売もたまたま…

「狐の嫁入り」「Letter」『good!アフタヌーン』2019年6月号、『リボーンの棋士』3

『good!アフタヌーン』2019年6月号(講談社)「亜人」68「破算」桜井画門 ついに佐藤の腕を狭い空間に放り込むことができましたが……。あのままで終わるはずがないとは思っていましたが、ここで「佐藤の性格」が出てくるとは予想できませんでした。 「狐の嫁…


防犯カメラ