『罪と祈り』貫井徳郎(実業之日本社)★★★★☆

2017~2019年連載。2019年刊行。 元警官の濱仲辰司が溺死体で発見され、頭には殴られた痕があった。事件を担当するのは、実の父親の死後、辰司が父親同然に世話し、辰司に憧れて刑事になった芦原賢剛だった。正義漢が強く、絵に描いたような下町のお巡りさん…

『遠まわりする雛』米澤穂信(角川文庫)★★★☆☆

『Little birds can remember』2007年。 古典部シリーズ第四作は初の短篇集。すべて奉太郎の一人称に戻っています。英題はクリスティ『象は忘れない』のもじりですね。 「やるべきことなら手短に」(2007)★★★☆☆ ――里志からひとりでに鳴るピアノの怪「神山高…

『屍人荘の殺人』今村昌弘(創元推理文庫)★★★★☆

『Murders at the House of Death』2017年。 各種ベスト10で四冠を達成したという、驚異のデビュー作です。第27回鮎川哲也賞受賞。 まずは映画研究部の合宿に届けられた脅迫状という、古式ゆかしい舞台が用意されていました。語り手・葉村の先輩である明智…

『SFショートストーリー傑作セレクション 異次元篇 次元を駆ける恋/潮の匂い』日下三蔵編/谷川千佳絵(汐文社)★★★☆☆

「次元を駆ける恋」平井和正(1965)★★★☆☆ ――トラックに轢かれて死んだ絢子のことが忘れられなくて、多元宇宙で生きている絢子のなかから絢子を選ぶべく、ぼくは次元転移した。だがたとえその次元の絢子を救ったとしても、そこにはその次元のぼくがいるのだ…

『よろず屋お市 深川事件帖』誉田龍一(ハヤカワ時代ミステリ文庫)★★★☆☆

2019年9月に新創刊されたハヤカワ時代ミステリ文庫の第一弾。 ミステリマガジン2019年11月号の著者インタビューで、『女には向かない職業』を偏愛する著者が「江戸のコーデリア・グレイ」に挑んだというので読んでみました。 両親を殺された8歳の少女が飼い…

『雪が白いとき、かつそのときに限り』陸秋槎/稲村文吾訳(早川書房ポケミス1948)★☆☆☆☆

『当且仅当雪是白的』陆秋槎,2017年。 ポケミスがとち狂った――と言いたくなるような、若者向け小説の表紙のようなイラストです。原書と同じイラストを使用しているらしく、青春小説という触れ込み通りのイラストです。 相変わらず会話が書き割りで読んでい…

『SFショートストーリー傑作セレクション ロボット篇 幽霊ロボット/ヴォミーサ』日下三蔵編/旭ハジメ絵(汐文社)★★☆☆☆

収録作家5人中、4人が『時間篇』と重複しています。この4人は続く『異次元篇』『未来篇』でも重複していて、アンソロジーとしてはお得感がまったくありません。権利の関係でほかの作家を収録できなかったのか、黎明~黄金期にかけての日本SFはほかに収…

『時空旅行者の砂時計』方丈貴恵(東京創元社)★★★☆☆

第29回鮎川哲也賞受賞作。 カバー装画とタイトルだけ見ると、おタンビーでロマンチックなファンタジーのようですが、惹句には「タイムトラベル×本格ミステリ」とあるうえに、略歴によれば京大ミステリ研出身ということで、意外と本格派でした。 自分が死ぬの…

『紫蘭の花咲く頃』佐々木俊介(佐々木ミステリ部,2017)★★★★☆

鮎川賞候補『繭の夏』でデビューした佐々木俊介氏が著者ホームページで公開している作品です。『繭の夏』『模像殺人事件』『仮面幻戯』『魔術師』に続く第五作目に当たります。『魔術師・模像殺人事件』は先ごろ文庫化されたばかりです。 あまりにも人工物め…

『S-Fマガジン』2021年12月号【スタニスワフ・レム生誕100周年/ハヤカワ文庫JA総解説PART3[1001〜1500]】

「原子の町」スタニスワフ・レム/芝田文乃訳(Miasto Atomowe,Stanisław Lem,1947/2005)★★★☆☆ ――テムズ川の水位が例を見ないほど下がっていた八月、私は上司から呼ばれた。「君はアメリカに三年いたことがあったな? 英語以外ではドイツ語を話せるな?」…

『ずうのめ人形』澤村伊智(角川ホラー文庫)★★★★★

2016年初刊。 『ぼぎわんが、来る』に続く、比嘉姉妹もの第二作です。 本書は『リング』を意識したものになっており、『リング』が映画化されて貞子が市民権を得ている、現実と変わらない世界が舞台になっていました。 オカルト雑誌のライター湯水が目を抉ら…

『虹のような黒』連城三紀彦(幻戯書房)★★★★☆

2002年から2003年に雑誌連載されたまま単行本化されていなかった長篇作品が、連載時の著者の挿絵入りで刊行されたものです。帯に“最後の未刊長篇”とあるように、これですべての長篇は単行本化されたことになります。 商業誌に連載されていた以上は未定稿とい…

『クドリャフカの順番』米澤穂信(角川文庫)★★★☆☆

『Welcome to KANYA FESTA!』2005年。 ついに部誌の文集『氷菓』が完成し、初期三部作も文化祭とともに幕を閉じました。 古典部員は「カンヤ祭」の名称を使わないことにしているはずですが、英題が「KANYA FESTA」となっているところからすると、『氷菓』販…

『SFショートストーリー傑作セレクション 時間篇 人の心はタイムマシン/時の渦』日下三蔵編/456絵(汐文社)★★☆☆☆

東雅夫編〈文豪ノ怪談ジュニア・セレクション〉の汐文社から、日下三蔵編によるSFセレクションが刊行されています。日本SF黎明~黄金期の作品はほぼ読んだことがないし、こういう機会がなければ読む気もなかったので良い機会でした。 「御先祖様万歳」小…

『愚者のエンドロール』米澤穂信(角川文庫)★★★★☆

『Why didn't she ask EBA?』2002年。 古典部シリーズ第二作。 二年F組が文化祭の演し物で作ることになったミステリー映画は、脚本家の本郷真由が急病になってしまい結末が不明のまま。そこで白羽の矢を立てられたのが、映画プロジェクトの代表者・入須冬美…

『氷菓』米澤穂信(角川文庫)★★★★☆

『氷菓』米澤穂信(角川文庫) 『You can't escape』2001年。 古典部シリーズをまとめて読もうと思ったものの、設定を忘れていたので第一作を読み直しました。 現在は英題が『The niece of time』に変更されているそうです。「時の娘」ならぬ「時の姪」、真…

『月が昇るとき』グラディス・ミッチェル/好野理恵訳(晶文社ミステリ)★★☆☆☆

『月が昇るとき』グラディス・ミッチェル/好野理恵訳(晶文社ミステリ) 『The Rising of the Moon』Gladys Mitchell,1945年。 サイモンとキースの兄弟が町に来たサーカスを楽しみにしていたとき、サーカスの女芸人がメッタ刺しにして殺されるという事件が…

『夏、19歳の肖像 新装版』島田荘司(文春文庫)★★☆☆☆

『夏、19歳の肖像 新装版』島田荘司(文春文庫) 昭和! 青春の甘酸っぱさよりも、昭和のおっさん臭さを感じてしまいました。実際、三十代の男が十五年前を回想しているという設定なので、おっさん臭いのも仕方ありません。 入院中に窓の外の家を覗き見ると…

『チェコSF短編小説集』ヤロスラフ・オオルシャ・jr.編/平野清美編訳(平凡社ライブラリー)★★☆☆☆

『チェコSF短編小説集』ヤロスラフ・オオルシャ・jr.編/平野清美編訳(平凡社ライブラリー) 英米以外のSFの翻訳は少ないうえに、訳されたものの多くはSFというよりも幻想小説や風刺小説だったりするのですが、懸念は的中し、本書収録作も前半はそん…

『ミステリマガジン』2021年11月号No.749【機龍警察 白骨街道/ハヤカワ文庫JA総解説PART2】

『ミステリマガジン』2021年11月号No.749【機龍警察 白骨街道/ハヤカワ文庫JA総解説PART2】 予告されていた古畑任三郎特集は延期され、代わりに『機龍警察 白骨街道』特集に。予定変更が急だったためなのかどうか、本人のほかは作家や評論家ではなく書店…

『不在の騎士』イタロ・カルヴィーノ/米川良夫訳(白水Uブックス 海外小説永遠の本棚)★★★★★

『不在の騎士』イタロ・カルヴィーノ/米川良夫訳(白水Uブックス 海外小説永遠の本棚) 『Il cavaliere inesistente』Italo Calvino,1959年。 鎧のなかに肉体は存在せず意思の力によって存在している――という観念的な設定からは思いも寄らないユーモア小…

『月の文学館 月の人の一人とならむ』和田博文編(ちくま文庫)★★★☆☆

『月の文学館 月の人の一人とならむ』和田博文編(ちくま文庫) 月がテーマの日本文学アンソロジー。ヒグチユウコによるカバーイラストに味があります。月の形を巻き貝という生き物で表現する発想と目の表情。姉妹編に『星の文学館』も。学者さんが編纂して…

『世界ショートショート傑作選1』各務三郎編(講談社文庫)★★★★☆

『世界ショートショート傑作選1』各務三郎編(講談社文庫) 1978年初刊。 「クライム&ミステリー」「走れ、ウィリー」ヘンリー・スレッサー/矢野浩三郎訳(Run, Willie Run,Henry Slesar,1959)★★★★★ ――ウィリーは監房の寝床に腰かけて、足を前後に動か…

『ザ・ロード』コーマック・マッカーシー/黒原敏行訳(ハヤカワepi文庫)★★★★★

『ザ・ロード』コーマック・マッカーシー/黒原敏行訳(ハヤカワepi文庫) 『The Road』Cormac McCarthy,2006年。 荒廃した世界で旅を続けながら生きてゆく父と息子の物語です。 いわゆる終末ものの多くで描かれるのが、変容してしまった世界であったりサバ…

『文豪ノ怪談ジュニア・セレクション 霊』東雅夫編/金井田英津子絵(汐文社)★★★☆☆

『文豪ノ怪談ジュニア・セレクション 霊』東雅夫編/金井田英津子絵(汐文社)「あれ」星新一(1975)★★★★☆ ――あるホテルの一室で、出張中の男が眠っていた。静かな真夜中。男はふと寒気を感じて目をさました。そばに人のけはいを感じる。一メートルほどはな…

『図書館の魔女 烏の伝言(上・下)』高田大介(講談社文庫)★★★★★

『図書館の魔女 烏の伝言(上・下)』高田大介(講談社文庫)★★★★★ 『図書館の魔女』の続編は、マツリカもキリヒトも出てこない場面からスタートします。前作での混乱によりニザマ国の一姫君と近衛兵たちが山の民・剛力の力を借りて亡命行の真っ最中でした。…

『緋の堕胎 ミステリ短篇傑作選』戸川昌子/日下三蔵編(ちくま文庫)★★★☆☆

『緋の堕胎 ミステリ短篇傑作選』戸川昌子/日下三蔵編(ちくま文庫)★★★☆☆ 創元・中公の小泉喜美子やちくまの仁木悦子に続いて刊行された、同じ日下三蔵編による戸川昌子の傑作選です。戸川昌子は『大いなる幻影』『火の接吻』『蜃気楼の帯』を読んだことが…

『幻想と怪奇』7【ウィアード・テールズ 恐怖と冒険の王国】

『幻想と怪奇』7【ウィアード・テールズ 恐怖と冒険の王国】「『ウィアード・テールズ』――ある雑誌の歴史と、表紙画家たちの横顔」 パルプ雑誌のカバーワークの良さはよくわかりません。 「パルプ・ホラーが映しだすもの」牧原勝志 「レッドフック街怪事件…

『ハコヅメ』18、『スインギンドラゴンタイガーブギ』5、『紙一重りんちゃん』1、『勇気あるものより散れ』1

『ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜』(18)泰三子(講談社モーニングKC) 時系列的には『別章アンボックス』の続きです。西川係長とカナがいなくなったことは、さらっと触れられていました。如月部長がけっこうガチで川合に気があるようで驚きます。牧高の変態…

『S-Fマガジン』2021年10月号No.747【1500番到達記念特集 ハヤカワ文庫JA総解説PART2[502〜998]】

『S-Fマガジン』2021年10月号No.747【1500番到達記念特集 ハヤカワ文庫JA総解説PART2[502〜998]】「ハヤカワ文庫JA総解説 PART2 [502〜998]」 「『日本SFの臨界点』編纂の記録2021」伴名練 中井紀夫・新城カズマ・石黒達昌の短篇集について。オ…


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