『増補 オオカミ少女はいなかった』鈴木光太郎(ちくま文庫) 副題に「スキャンダラスな心理学」とあるように、心理学にかかわる都市伝説的なエピソードの噓を暴き、「ウサン臭さのある学問という心理学のイメージを多少は払拭できるかもしれない」という意…
『太陽の帝国』J・G・バラード/山田和子訳(創元SF文庫) 『Empire of the Sun』J. G. Ballard,1984年。 著者少年期の体験をもとにした作品です。 死の影はいたるところにあるわりには命の危険はそこまでではないところがバラードっぽいとも感じます。…
『人間動物園』連城三紀彦(双葉文庫) 親本2002年刊行。 娘が誘拐された――通報を受けた発田と朝井が駆けつけたところ、娘のように可愛がっている飼い犬がいなくなったという人騒がせな出来事があった。ところが翌日、そのおばさん――坂上礼子からまた通報が…
『ボーンヤードは語らない』市川憂人(東京創元社) 『The Boneyard Never Speaks』2021年。 マリア&漣シリーズ第四作にして初の短篇集です。 「ボーンヤードは語らない」(2020)★★★★☆ ――A州ツーソン市郊外の空軍基地には『飛行機の墓場』という異名があ…
『犬はどこだ』米澤穂信(創元推理文庫) 『The Citadel of the Weak』2005年。 生まれ故郷の八保市で犬捜し専門の調査事務所を開いたというのに、紺屋長一郎に舞い込む依頼は犬とは無関係のものばかりでした。隣接する小伏町から〈紺屋S&R〉を訪れた佐久…
『私の人生の本 〈東欧の想像力エクストラ1〉』アレクサンダル・ヘモン/秋草俊一郎訳(松籟社) 『The Book of My Lives』Aleksandar Hamon,2013年。 ボスニア゠ヘルツェゴビナ出身のアメリカ作家。柴田元幸編の少年少女小説アンソロジー『昨日のように遠…
『黒いハンカチ』小沼丹(創元推理文庫) 『Black Handkerchief』1958年。 小沼丹なのでミステリとしては期待していないし、実際その通りだなと思っていたら、意外とツボを押さえていたりするから油断なりませんが、どの話もあっさり終わってしまうので物足…
『ガラスの鍵』ハメット/池田真紀子訳(光文社古典新訳文庫) 『The Glass Key』Dashiell Hammett,1931年。 ハメットの第四長篇。サム・スペイドでもコンチネンタル・オプでもなく、それどころか探偵でもない男が主役を務めます。つまりはこのネッド・ボー…
『エクトール・セルヴァダック 〈驚異の旅〉コレクションⅢ』ジュール・ヴェルヌ/石橋正孝訳(インスクリプト) 『Hector Servadac』Jules Verne,1877年。 〈驚異の旅〉コレクション最終配本。 恋敵ティモシェフ伯爵との決闘を間近に控えたエクトール・セル…
『リフレイン』沢村凜(角川文庫)★★☆☆☆ 1992年刊行。 カバーイラストを見て学園小説かと思いましたが、『瞳の中の大河』や『黄金の王 白銀の王』同様のファンタジーでした。 アンタミア標準暦四七五九年二月五日、三日前に母星キサノアを出発した星間宇宙船…
『マクベス夫人症の男』レックス・スタウト/山本博訳(ハヤカワ・ミステリ文庫) 『Please Pass the Guilt』Rex Stout,1973年。 ネロ・ウルフものは謎解きミステリではなくて、言ってみれば刑事ものの連続ドラマのようなものだと思うのですが、アーチーと…
『S-Fマガジン』2025年12月号No.772【火星SF特集】「マールスの子どもたち」西宮建礼/sakajunイラスト ★★★★☆ ――ロムとレムはコンテナトラックに乗って、都市に向かっていた。ハビタットに戻ったら、都市への密航について大人たちに散々叱責されるだろう…
『などらきの首』澤村伊智(角川文庫) 比嘉姉妹シリーズ第4作にして初の短篇集。初版(?)のカバーはホラー文庫特有の趣味の悪いイラストではなく、『ぼぎわんが、来る』映画化に伴う文字だけ仕様のものです。 「ゴカイノカイ」(2018)★★★☆☆ ――五十平米…
『無伴奏』太田忠司(創元推理文庫) 『Unaccompanied』2011年。 阿南省吾は姉・仁恵から父・太市危篤との報せを受けて実家に戻ったが、実際には認知症の父親の介護をさせようという兄・拓馬が企んだものだった。ヘルパーに頼むのは体裁が悪いという兄に対し…
『天国の破片《かけら》』太田忠司(創元推理文庫) 『A Little Piece of Heaven』1998年。 コンビニでアルバイトをしていた阿南は、強盗の少年を説得して五十万円を貸した。犯罪を未然に防いだはずだった――。だが後日、再びコンビニ強盗が発生し、少年は店…
『ポンド氏の逆説』G・K・チェスタトン/南條竹則訳(創元推理文庫) 『The Paradoxes of Mr. Pond』G. K. Chesterton,1936年。 南條竹則氏による新訳版。『コリアーズ・ウィークリー』に掲載された「名前を出せぬ男」を除いて、すべて『ストーリーテラー…
『新編 怪奇幻想の文学1 怪物』紀田順一郎・荒俣宏監修/牧原勝志編(新紀元社) むかし新人物往来社から出ていた『怪奇幻想の文学』全7巻の企画を踏襲し、新たに編み直したもの。すべて新訳・改訳。 「変化」メアリ・シェリー/和爾桃子訳(Transformatio…
『紙魚の手帖』vol.25 2025 OCTOBER(東京創元社)「第35回鮎川哲也賞選評」青崎有吾・東川篤哉・麻耶雄嵩、「第3回創元ミステリ短編賞選評」大倉崇裕・北村薫・辻堂ゆめ 鮎川賞は受賞作なし。短編賞は二作同時受賞。 「中年交差点ゲーム」ジョウシャカズヤ …
『《ドラキュラ紀元》 われはドラキュラ――ジョニー・アルカード(下)』キム・ニューマン/鍛治靖子(アトリエサード) 『Anno Dracula: Johnny Alucard』Kim Newman,2013年。 後半に入ってだんだんと盛り上がってはきましたが、長篇三部作と比べると、やは…
『《ドラキュラ紀元》 われはドラキュラ――ジョニー・アルカード(上)』キム・ニューマン/鍛治靖子(アトリエサード) 『Anno Dracula: Johnny Alucard』Kim Newman,2013年。 創元版では刊行されていなかった第四作は、ドラキュラ紀元シリーズ初の(連作)…
『ジーヴズと婚礼の鐘』セバスチャン・フォークス/村山美雪訳(竹書房文庫) 『Jeeves and the Wedding Bells』Sebastian Faulks,2013年。 ウッドハウス財団公認のバーティ&ジーヴズものの続編(パスティーシュ)です。 アガサ叔母さんから逃れることとウ…
『七度狐』大倉崇裕(創元推理文庫) 『Fox That Played Tricks 7 Times』2003年。 1955年、杵槌村の公民館での口演を終えた春華亭古秋の楽屋を、佐藤知恵が訪れた。/同じ日の夜、祖父を探しに家を抜け出し公民館に向かった少女・亮子は、狐火を見て気を失…
『一九八四年[新訳版]』ジョージ・オーウェル/高橋和久訳(ハヤカワepi文庫) 『Nineteen Eighty-Four』George Orwell,1949年。 ディストピア小説として名高い作品の新訳版。 記録局で記録の改変(修正)の仕事をしているウィンストンは、古道具屋で見か…
『正月十一日、鏡殺し』歌野晶午(講談社文庫) 解説に引用されたノベルス版の著者のことばによると、「あえて探偵を廃し あえてトリックを抑え あえて論理合戦を殺《そ》ぎ落とし 絢爛《けんらん》豪華な謎もなく 物語はあくまで 日常で しかし精神は本格 …
『ジャーロ』No.9 2002.AUTUMN(光文社) 創刊2周年特大号と銘打たれています。 「追悼特集 安らかに、ヘンリー・スレッサー」木村仁良 欧米では主要紙に死亡記事が掲載されなかったそうです。寂しい気もしますが、一昔前のショートショート作家というとそん…
『ジャーロ』No.4 2001.SUMMER(光文社) 当時麻耶雄嵩の新作「白幽霊」だけ読んで積ん読していたものをようやく読みました。 「巻頭インタビュー Hello GIALLO」ヘンリー・スレッサー 「気に入った売り家」のアイデア元について話してくれていますが、本誌…
『翻訳、一期一会』鴻巣友季子他(左右社) 翻訳問答シリーズの三作目です。翻訳者や作家だけではなく、画家やミュージシャンも参加しています。 電子書籍版で読んだのですが、章のはじめに原文があって、本文と原文を行ったり来たりしながら読み進めるこう…
『マスグレイヴ館の島』柄刀一(原書房) 2000年刊行。 わたし一乗寺慶子は二年前に父母をなくし、親代わりの筧フミさんにお世話になっている。アガサ伯母さんが幹部を務める〈英国シャーロック・ホームズ・ソサエティ〉で働いている。去年クリスマスパーテ…
『銀河ヒッチハイク・ガイド』ダグラス・アダムス/安原和見訳(河出文庫) 『The Hitchhiker's Guide to the Galaxy』Douglas Adams,1979年。 英国発のSFコメディの古典です。 銀河バイパス建設のため強制排除されてしまった地球。図らずも役所から立ち…
「神国崩壊」獅子宮敏彦、「メェゾン・ベルビウの猫」椿實、「夕べにはパズルめいて」城平京、「明智小五郎の黄昏――誰が明智小五郎を殺したか?」「傀儡のように踊れ――江戸川乱歩『目羅博士』試論」佳多山大地(『ミステリーズ!』02、『創元推理』18・6・9…