『文豪ノ怪談ジュニア・セレクション 夢』東雅夫・編/山科理絵・絵(汐文社)★★★★★

タイトル通り十代向けの文豪怪談アンソロジー。挿絵・総ルビ・註釈つき。「夢十夜」夏目漱石(1908)★★★★★ ――こんな夢を見た。あおむきに寝た女が、もう死にますという。「死んだら、埋めてください。大きな真珠貝で穴を掘って、そうして星の破片を墓標に置…

『夜明けの空を掘れ』沢村凜(双葉文庫)★★★☆☆

『笑うヤシュ・クック・モ』改題。 作者が沢村凜で「ヤシュ・クック・モ」なんてタイトルだから、てっきりファンタジーかと思ってましたが、純然たるミステリーでした。 それぞれに屈託を抱えている5人の同窓生のうち、高等遊民的な生活を送る皓雅が中心と…

『アルマ』3、『ハコヅメ』13、『ビューティフル・エブリデイ』2

『アルマ』3 三都慎司(集英社ヤングジャンプコミックス) いよいよアルマに乗り込んだレイ、ルキアナたちと、共闘する甲《ジア》、迎え撃つギジンたち。死を目前にしてアルマに接続した甲のシンイェンが見たデータによれば、アルマはかつて札幌の科学者が死…

『ミステリマガジン』2020年7月号No.741【藤田宜永追悼&冒険小説の新時代】

コロナの影響で一か月遅れの7月号です。 マーク・グルーニー『レッド・メタル作戦始動』刊行に伴う冒険小説特集。掲載されているのは思い出話ばかりで「新時代」と言えるのは『レッド・メタル作戦始動』関連の一記事のみ。エッセイには霜月蒼・月村了衛・福…

『翼のジェニー ウィルヘルム初期傑作選』ケイト・ウィルヘルム/伊東麻紀他訳(アトリエサード/書苑新社)★★☆☆☆

SF

河出文庫の『20世紀SF』に「やっぱりきみは最高だ」が収録されていたケイト・ウィルヘルムの短篇+中篇集ですが、今となってはだいぶ古びてしまっているのは否めません。 「翼のジェニー」佐藤正明訳(Jenny with Wings,Kate Wilhelm,1963)★☆☆☆☆ ――翼が…

『いつか、ふたりは二匹』西澤保彦/トリイツカサキノ絵(講談社ミステリーランド)★★★☆☆

同時期に出た森博嗣『探偵伯爵と僕』となぜか事件の内容が似てしまっています。偶然なのか、それとも当時現実にモデルになるような似たような事件でも起きていたでしょうか。 こちらは主人公の精神が猫に憑依するというファンタジーですが、甘いところは微塵…

『探偵伯爵と僕』森博嗣/山田章博・絵(講談社ミステリーランド)★★★★☆

ミステリーランドのなかでは、もっとも子どもに向けて(子ども向けという意味ではなく)書かれている作品でした。死刑制度の問題、人が人を殺すという問題、ミステリィと現実の違い、ゲームやクイズと現実の違い……伯爵の正体について思わせぶりにしておきな…

『七月に流れる花』『八月は冷たい城』恩田陸/酒井駒子・絵(講談社ミステリーランド)★★★☆☆

自然消滅したかと思われていた〈ミステリーランド〉の最終配本。 7・8とタイトルにあるので心配ないとは思いますが、読む順番を間違えるとネタバレになってしまうのでお気をつけ下さい。 恩田陸らしい、閉ざされた空間内での少年少女たちの日々が幻想的に…

『しちふくじん』立川志の輔・作/中川学・絵/倉本美津留・監修(岩崎書店 お笑いえほん)★★★☆☆

放送作家が監修した〈お笑いえほん〉シリーズの一冊。ほかに笑い飯&川崎タカオや板尾創路&片山健もあるようです。 中川学のイラスト目当てで購入しました。ストーリーは立川志の輔の落語「七福神」がもとになっているようです。 これまで泉鏡花や柳田國男…

『その雪と血を』ジョー・ネスボ/鈴木恵訳(ハヤカワ・ポケット・ミステリ1912)★★★★☆

『Blood On Snow(原題Blod på snø)』Jo Nesbø,2015年。 ポケミスなのに一段組の薄い形での登場です。映画化がすでに決定しているようです。 七〇年代ノルウェーを舞台に、パルプ・ノワールを再現した作品、とのことですが、血と暴力というよりはファム・…

『処刑人』シャーリイ・ジャクスン/市田泉訳(創元推理文庫)★★★★☆

『Hangsaman』Shirley Jackso,1951年。 空想癖のある少女、新しい環境の洗礼、人に言えない過去、独善的な父親、憧れの教師……道具立ては王道の少女小説ですし、作品を覆っているある種の息苦しさはまさに少女時代特有のものだとも言えます。自分の世界に逃…

「メルカトル・ナイト」麻耶雄嵩(『メフィスト』2019年vol.3)

「メルカトル・ナイト」麻耶雄嵩 ★★★★☆ ――作家の鵠沼美崎のところにトランプのカードが毎日一枚ずつ送られてきた。美崎のイメージカラーの赤に合わせて、ダイヤのKからカウントダウンされ、もうすぐハートのエースが近づいていた。不安を感じた美崎はメルカ…

『幻想と怪奇』2【人狼伝説 変身と野性のフォークロア】(新紀元社)

表紙イラストは第1号に続きひらいたかこですが、普段の作風とは違い狼がリアルなので気づきませんでした。「A Map of Nowhere 02:「人狼」のハルツ山地」藤原ヨウコウ「人狼映画ポスター・ギャラリー」「人狼」野村芳夫「人狼(『人狼ヴァグナー』第十二章…

『鬼神伝 鬼の巻・神の巻』高田崇史(講談社ミステリーランド)★★★☆☆

ミステリーランドの第3回・第4回配本です。〈きじん〉ではなく〈おにがみ〉と読むのですね。 平安時代にタイムトリップさせられた中学生の天童純は、雄龍霊(オロチ)を操れる一族の末裔であることを見込まれて、藤原基良らから鬼退治を命じられます。しかし…

『S-Fマガジン』2020年6月号No.739【英語圏SF受賞作特集】

「鯨歌」劉慈欣/泊功訳(1999)★★★☆☆ ――麻薬組織のボス・ワーナーおじさんは考え込んでいました。ニュートリノ探知機が発明されてからというもの、アメリカに密輸しようとした麻薬がことごとく見つかってしまうのです。アメリカで勉強していた息子が天才を…

『四つの署名』アーサー・コナン・ドイル/延原謙訳(新潮文庫)★★★☆☆

『The Sign of Four』Arthur Conan Doyle,1890年。 ホームズもの第二作です。事件そのものや推理そのものは『緋色の研究』同様、まださして面白いものではありません。異国趣味や怪奇趣味という、その後の作品にも見られる特徴が顔を出しています。 特筆す…

『J・G・バラード短編全集1 時の声』柳下毅一郎監修(東京創元社)★★★★☆

アメリカで刊行された短篇全集の邦訳版らしいです。「プリマ・ベラドンナ」「時間都市」「スターズのアトリエ5号」は創元SF文庫『時間都市』(→感想)の宇野利泰訳で読んでいました。 「序文」J・G・バラード「序文」マーティン・エイミス「プリマ・ベ…

『緋色の研究』アーサー・コナン・ドイル/延原謙訳(新潮文庫)★★☆☆☆

『A Study in Scarlet』Arthur Conan Doyle,1887年。 記念すべきシャーロック・ホームズもの第一作です。かなり久々に読み返しました。 一。死体を棒で叩いていることや、例の「アフガニスタン」発言や、のちのホームズものでも見られる芝居がかった犯人逮…

『棺のない死体』クレイトン・ロースン/田中西二郎訳(創元推理文庫)★★★☆☆

『No Coffin for the Corpse』Clayton Rawson,1942年。 ロースンというと結末がしょぼい記憶があったのだけれど、読み返してみるとけっこう面白かった。確かに派手なトリックがない分しょぼく感じてしまうとは思うけれど。 死を恐れ死後の世界の研究をさせ…

『緑のカプセルの謎』ジョン・ディクスン・カー/三角和代訳(創元推理文庫)★★★☆☆

『The Problem of the Green Capsule』John Dickson Carr,1939年。 目撃者の証言の信憑性を題材にした作品で、人間の目が信用できないと主張する素人心理学者がそのテストの寸劇の最中に毒殺されてしまうという事件が起こります。観客たちは騙されないよう…

『むずかしい年ごろ』アンナ・スタロビネツ/沼野恭子・北川和美訳(河出書房新社)★★★★★

『Переходный возраст』Анна Старобинец,2005/2011年。「むずかしい年ごろ」沼野恭子訳(Переходный возраст)★★★★★ ――いったいいつからだっただろう? 二年? 三年前? 最初のうちは息子がぼんやりするようになっただけだった。それから外に出るのを嫌がり…

『惑星クローゼット』4、『ハコヅメ』12

『惑星クローゼット』(4)つばな(幻冬舎バーズコミックス) 最終巻。クローゼットといえばナルニア国、というわけで漠然と「別の惑星と行き来できる出入口」くらいの意味だと思っていたのですが、ここに来てしっかりクローゼットを描いてきました。意思を…

『暗い越流』若竹七海(光文社文庫)★★★★☆

「蠅男」★★★☆☆ ――六年前に死んだ祖父の遺骨を取ってきてほしい。初めに頼んだ「彼氏」は十万円を持って姿を消していた。あろうことかその「彼氏」、葉村晶が以前に仕事に同行したことのある男だった。依頼を受けた葉村は、幽霊屋敷だと評判の故・心霊研究家…

『夏への扉』ロバート・A・ハインライン/福島正実訳(ハヤカワ文庫SF)★☆☆☆☆

『The Door into Summer』Robert A. Heinlein,1956年。 彼女にふられて冷凍睡眠に入る。飲食店に猫を連れ込んで悪びれない。子どもっぽいというか何というか、絵に描いたような自分大好き人間です。さて、冒頭でこんなしょーもない人間に描かれた主人公が、…

『ディナーで殺人を(下)』ピーター・ヘイニング編(創元推理文庫)★★★☆☆

『Murder on the Menu』Peter Haining,1991年。 「第二部 歴史風のアントレ(承前)」「唐辛子の味がわからなかった男」G・B・スターン/田口俊樹訳(The Man Who Couldn't Taste Pepper,G. B. Stern)★★★☆☆ ――チャールズとフアンはドゥルーズという一人…

『ラスト・ウェイ・アウト』フェデリコ・アシャット/村岡直子訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★☆☆

『La última salida』Federico Axat,2016年。 二児の父であるテッドが悪性腫瘍をはかなみ自殺を試みようとしていたところ、すべての事情を知る組織の人間リンチが現れ、法で裁けない悪人殺しを持ちかけられる――。 衝撃的とはいえある意味ではベタベタのミス…

『狙った獣』マーガレット・ミラー/雨沢泰訳(創元推理文庫)★★★★☆

『Beast In View』Margret Millar,1955年。 裕福で孤独な独身女性ヘレン・クラーヴォーを突如として襲った悪意。エヴリン・メリックと名乗る女性は、その後つぎつぎに人を不幸に陥れようと悪意ある電話や訪問をしてゆきます……。 偏執的な復讐心から人を破滅…

『小説新潮』2017年12月号【ファンタジー小説の現在】

勝山海百合の作品「落星始末」目当てで買ったのですが、読まずにいるうちに『短篇ベストコレクション 現代の小説2018』に収録されてしまったので、ほかの作品だけ読みました。……と言ってもあまり読むものがありません。『隣のずこずこ(抄)』柿村将彦 ――隣…

『GOSICK RED』桜庭一樹(角川文庫)★★★☆☆

旧大陸から新大陸に舞台を移し、探偵になったヴィクトリカと新聞記者になった一弥が活躍する、GOSICKシリーズの新シーズン第一作です。 ヴィクトリカの許に、こともあろうにギャングが依頼に訪れます。抗争で命を落とすギャングも多いなか、動機もわからない…

『少年十字軍』マルセル・シュオッブ/多田智満子訳(国書刊行会『マルセル・シュオッブ全集』)★★★★☆

『少年十字軍』(La Croisade des enfants,1896) 時を同じうしてあらゆる地域の村々町々より、児どもらが、走りゆきたり。何処へ行くやと問はるれば、イエルサレムへ、とこたへぬ。今日なほ、かれらが何処へたどりつきしやつまびらかならず。かれら、出奔…


防犯カメラ