『修道師と死』メシャ・セリモヴィッチ/三谷惠子訳(松籟社 東欧の想像力10)★★★★☆

『Derviš i smrt』Meša Selimović,1966年。 弟のハルンが逮捕された修道師アフメド・ヌルディンは、後援者の老人を訪れた。老人の娘が語るには、卑しい結婚をした弟ハサンのことを父親は勘当したがっているから、ハサンのほうから縁を切るように説得してほ…

「NARROW WORLD」澤和佳、「ワールドエンドの童」平ショウジ、『リボーンの棋士』4

『good!アフタヌーン』2019年10月号(講談社)「亜人」72「限界」桜井画門 立ち去った佐藤に、這い上がってきたカイ。予想もつかない展開が待ち受けていました。「ワールドエンドの童」平ショウジ ――「だるいなあ、生きてくの。缶詰飽きたな、一年以上食べ…

『雨の日も神様と相撲を』城平京(講談社タイガ)★★★★☆

相撲好きの両親に育てられながらも、体格に恵まれなかった逢沢文季は、両親の死後、母方の叔父に引き取られ、中三の春から米どころの田舎で暮らすことになる。相撲とは縁が切れたつもりだった……。ところがその村は、相撲好きのカエルを神様と祀る、相撲の盛…

『ナイトランド・クォータリー』vol.18【想像界の生物相】

「Night Land Gallery 国立民族博物館・特別展「驚異と怪異――想像界の生きものたち」」「マンタム選 想像界の生き物図鑑」「塹壕からの「準創造」――『トールキン 旅のはじまり』」岡和田晃「開田祐治インタビュー ノイズの中から生まれるイメージ」「マンド…

『ベスト・ストーリーズI ぴょんぴょんウサギ球』若島正編(早川書房)★★★★☆

年代順の『ニューヨーカー』傑作集全3巻の第一巻になります。 「ぴょんぴょんウサギ球」リング・ラードナー/森慎一郎訳(Br'er Rabbit Ball,Ring Lardner,1930)★★☆☆☆ ――最近は孫たちを野球場に連れ出しても、ただ黙々とお色気小説を読んでいる。試合に…

『S-Fマガジン』2019年10月号No.735【神林長平デビュー四十周年記念特集/ジーン・ウルフ追悼特集】

「鮮やかな賭け」神林長平 四十周年記念、書き下ろし読み切り。「選考文――評者・神林長平の見出した才能」伴名練 『137機動旅団 新・航空宇宙軍史』谷甲州 こちらも四十周年記念の長篇一挙掲載。 『SFのある文学誌(66)佐藤春夫――幻想するノンシャランな…

『ミステリーズ!』vol.96【特集 怪奇・幻想小説の新しい地平】

「私の一冊 シャーリイ・ジャクスン『丘の屋敷』」澤村伊智「怪奇・幻想小説の新しい地平」「騒擾博士」西崎憲「感応グラン=ギニョル」空木春宵「トーテンレーベンの三博士」アレクサンダー・レルネット=ホレーニア/垂野創一郎訳(Die Heiligen Drei Köni…

『二年間のバカンス』ジュール・ヴェルヌ/横塚光雄訳(集英社文庫)★★☆☆☆

SF

『Deux ans de vacances』Jules Verne,1888年。 従来『十五少年漂流記』の邦題でお馴染みの、ヴェルヌ代表作の一つです。 ページを開くと、嵐のなか漂流している少年たちが必死で船の操縦を試みているところからスタートします。そして次々と(文字通り)顔…

『公然の秘密 日本文学100年の名作 第7巻 1974-1983』安部公房他(新潮文庫)★★★★☆

「五郎八航空」筒井康隆(1974)★★★★☆ ――おれとカメラマンの旗山は、無人島取材に訪れた乳島に、台風のため取り残されてしまった。明日までに帰らないと編集長が怖い。地元の人間によれば、船が出せないときには飛行機が迎えに来てくれるという。「操縦士の…

『週刊文春WOMAN』vol.3 2019夏号(志村貴子インタビュー)

「いま百合マンガが面白い!」特集の一環として志村貴子インタビュー掲載。女性同士の関係が気になるようになったきっかけ作品や、現在連載中の『おとなになっても』について答えています。あまりつっこんだ感じの話はありませんでした。「岡村靖幸 幸福への…

『親しい友人たち 山川方夫ミステリ傑作選』山川方夫/高崎俊夫編(創元推理文庫)★★☆☆☆

ミステリ誌に連載された連作集からなる第I部と、それ以外の単発作品を集めた第II部から構成されています。東京創元社から刊行されるくらいですから、「ミステリ」に重きを置いた第I部がメインなのでしょうが、第II部のほうに優れた作品が多かったのも…

「メンタルリリーブズAI」夜鳥よう、『一日三食絶対食べたい』2

『good!アフタヌーン』2019年9月号(講談社)「ON AIR'S」01「チョコとモカ」嘉村田逸名 四季賞出身者の新連載。「捨身-Photographs-」の人です。父親が入院していて妹と貧乏暮らしをしている女子高校生が、お小遣い稼ぎにライブ・アプリに挑戦したことで、…

『残り全部バケーション』伊坂幸太郎(集英社文庫)★★★★☆

各篇は「第○話」ではなく「章」で区切られていますが、それぞれの章は独立して読める作りになっています。チンピラの岡田と溝口を中心とした連作集。時系列的には「4章→2章→1章→3章→5章」の順になっています。 「第一章 残り全部バケーション」 ――父親…

『チャンセラー号の筏』ジュール・ヴェルヌ/榊原晃三訳(集英社文庫)★★★★★

SF

『Le Chansellor』Jules Verne,1875年。 ジュール・ヴェルヌ作品の面白さは誰もが認めるところですが、物語が佳境に入るまでが停滞しているというのも、ときに指摘される欠点でした。 その欠点を見事にクリアしているのが本書です。 8人の乗客と14人の乗組…

『ハヤ号セイ川をいく』フィリパ・ピアス/足沢良子訳(講談社青い鳥文庫)★★★★☆

『Minnow on the Say』A. Philippa Pearce,1955年。 児童文学の名作『トムは真夜中の庭で』の著者フィリパ・ピアスのデビュー作。 家の庭が川に隣接しているという、それだけで魅力的な設定からこの作品はスタートするので、まだ何も始まっていないのにわく…

『ミステリマガジン』2019年9月号No.736【探偵と名言】

「夢中伝―福翁余話(1)」荒俣宏 早川社長の呼びかけに答える形で書かれた、「おもしろすぎた」『福翁自伝』より「もっとおもしろい福沢伝を小説に」書いたもの。「特集 探偵と名言」 寄稿者と探偵&名言のチョイスが微妙すぎました。マーロウの台詞は何十年…

「雨の乙女」、『ハコヅメ』8、『スキップとローファー』2、『金剛寺さんは面倒臭い』4、『おおきく振りかぶって』31

『アフタヌーン』2019年9月号(講談社)「天国大魔境」18「不滅教団」石黒正数 教団に近づいてきました。「おおきく振りかぶって」155「ランチ 2」ひぐちアサ 崎玉とのランチの続き。また新たな目標ができました。「ヴィンランド・サガ」163「シグやんとハ…

『私の嫌いな探偵』東川篤哉(光文社文庫)★★★☆☆

「死に至る全力疾走の謎」★★★★☆ ――微かな振動と「ぶぎゃ」という声を感じて、朱美が黎明ビルの窓から顔を出すと、頭から血を流した男が大の字になって地面に倒れていた。ビルの壁には血の跡が。通行人によれば、男は全力疾走して自分から壁にぶつかったとい…

『12人の蒐集家/ティーショップ』ゾラン・ジヴコヴィッチ/山田順子訳(東京創元社)★★★☆☆

『Twelve Collections and Teashop』Zoran Živković。2007年刊行の英訳本からの翻訳。掌篇連作『12人の蒐集家』に短篇「ティーショップ」を併録したものです。誰が最初にボルヘスになぞらえたのかわかりませんが、ボルヘスとは全然ちがう、ファンタジーらし…

『思い出のマーニー』ジョーン・G・ロビンソン/高見浩訳(新潮文庫)★★☆☆☆

『When Marnie Was There』Joan G. Robinson,1964年。 児童文学の名作が、数年前ジブリ映画化を機に新訳されたので、読んでみることに。 前半はちょっと風変わりで他人と打ち解けられない女の子という王道の主人公が、新しい環境に移されて、そこでマーニー…

『シフォン・リボン・シフォン』近藤史恵(朝日文庫)★★★★☆

「第一話」★★★★☆ ――帰り道にあった書店が閉店し、ランジェリーショップになっていた。佐菜子の母親は背骨を折ってからリハビリを怠けていたため、寝たきりになってしまった。駅前の書店まで寄り道している時間はない。胸の大きさにコンプレックスのある佐菜…

『となりに』basso(茜新社 EDGE COMICS)

オノ・ナツメのBL名義の新作です。志村貴子のBLは脳内で男女に置き換えようとしても気持ち悪くて読めないのだけれど、basso作品の場合はすんなり読めました。ベッドシーンのある志村作品に対し、basso作品の場合はオノ・ナツメ名義でも基本的にベッドシ…

『気球に乗って五週間』ジュール・ヴェルヌ/手塚伸一訳(集英社文庫)★★★☆☆

SF

『Cinq semaines en ballon: voyage de découvertes en afrique par trois anglais』Jules Verne,1863年。 記念すべき驚異の旅シリーズ第一作です。 果敢な冒険に沸き立つ人々と、無謀だと反対する友人。冒頭からすでに後年のヴェルヌらしさが見られます。 …

『もしもし、還る』白河三兎(集英社文庫)★★★★☆

目覚めたらサハラ砂漠。落ちてくる電話ボックス。 荒唐無稽な導入ながら、内容や語り口はいたってシリアスです。 主人公は田辺志朗(シロ)。 電話だけでつながっているもう一人の「遭難者」や119番の相手口とのやり取りが繰り広げられる現在パートからは…

『コドモノセカイ』岸本佐知子編訳(河出書房新社)★★★★☆

「まじない」リッキー・デュコーネイ(Abracadabra,Rikki Ducornet,1994)★★★★☆ ――頭の中でブーンとハチみたいな音がする。彼は気づいてしまった。宇宙人が盗み聞きしている! 鏡の中の敵を攪乱するために、まじないとして顔をしかめ屁をひった。 子どもが…

『この恋はこれ以上綺麗にならない。』(1)舞城王太郎原作/百々瀬新漫画(集英社JUMP COMICS PLUS)

舞城王太郎の新作は漫画原作。潔癖症の小学生の女の子が殺し屋と出会い、片や“掃除屋”として、片や“君を護りに”交流が始まるという、もともと舞城作品には漫画みたいなところがあるのに、漫画にしてしまうと思ったより地味というか、漫画のなかに混じるとと…

『S-Fマガジン』2019年8月号No.734【『三体』と中国SF】

「天図」王晋康《ワン・ジンカン》/上原かおり訳(天图,王晋康,2017)★★☆☆☆ ――明日の科学に関するものだと言って老人が持ち込んだ図面は、交通事故で生き残った自閉症の少年が書いたものだった。科学者やサイエンスライターの交流を企画する会社社長・易…

『アドリア海の復讐』(上・下)ジュール・ヴェルヌ/金子博訳(集英社文庫)★★★☆☆

SF

『Mathias Sandorf』Jules Verne,1885年。 冒頭でデュマ・フィスに(というよりもその父親に?)捧げられており、デュマ・フィス自身も父親の『モンテ・クリスト伯』の名前を出してそれに答えています。デュマの『モンテ・クリスト伯』はめっぽう面白い作品…

『尾かしら付き。』2 佐原ミズ(徳間書店 ZENON COMICS)

衝撃的な第1巻のラストに続き、2巻も衝撃的な終わり方でした。純粋な人たちの恋愛ものの名手という印象でしたが、こんなにギャグセンスと引きの上手い人だったとは。てか、グレたわけではなくひねくれただけだったんですね。

『最後のトリック』深水黎一郎(河出文庫)★★★☆☆

メフィスト賞受賞作『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!』改題文庫化。 冒頭から明らかになるように、「読者が犯人」に挑んだ作品です。常識的に考えてそんな作品など不可能なわけですから、本書もある特定の条件があって初めて成立するものです。だから…


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