『怪異雛人形』角田喜久雄(講談社大衆文学館文庫コレクション) 戦前戦後に伝奇小説・時代小説・探偵小説をものした作家の、初期捕物帳を集めた作品集。「いろはの左近」もの二篇、「女形同心」もの二篇、その他三篇から成ります。著者が平成6年まで生きて…
『創元推理(10)』1995・秋号(東京創元社) 第六回鮎川哲也賞の受賞作発表号であり、大賞受賞者である北森鴻と佳作受賞者である佐々木俊介と村瀬継弥の短篇が掲載されています。また、創元推理評論賞の発表もおこなわれており、受賞者の千街晶之と佳作の田…
『ヤンのいた島』沢村凜(角川文庫) 日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。 大西洋の南回帰線近く、ジグソーパズルの一片のような形をした通称「ジグソー島」にある小国イシャナイ。その離島である菱島にようやく調査団の入国が認められた。一介の大学…
『悲劇への特急券 鉄道ミステリ傑作選〈昭和国鉄編Ⅱ〉』佳多山大地編(双葉文庫) 第一集がトラベル・ミステリーの作者による傑作集だったのに対し、第二集である本書にはトラベル・ミステリー作家に限らない鉄道ミステリが集められていました。 「探偵小説…
『天使と宇宙船』フレドリック・ブラウン/小西宏訳(創元SF文庫) 『Angels and Spaceships』Fredric Brown,1954年。第二短篇集。どこにも書かれていませんが、「Tukasa」とある扉絵は司修によるものなのでしょう。 「序」(Preface)「悪魔と坊や」(Ar…
『完全犯罪の死角 刑事花房京子』香納諒一(光文社文庫) ハードボイルド作家による倒叙ものです。 沢渡留理は父親から受け継いだ家具会社を守るために、腹違いの兄・要次と秘書である愛人・福田麻衣子を殺し、別れ話のもつれから要次が麻衣子を殺したあと階…
『紙魚の手帖』vol.13 2023 OCTOBER【第33回鮎川哲也賞&第1回創元ミステ短編賞】「第33回鮎川哲也賞 選評」辻真先・東川篤哉・麻耶雄嵩 麻耶氏の選評、「状況の深刻さよりも謎解きを優先するスタイルは個人的に好みです」だったり、「キャラクターのリアリ…
『ドラキュラ紀元一九一八 鮮血の撃墜王』キム・ニューマン/鍛冶靖子訳(新紀元社) 『Anno Dracula: The Bloody Red Baron』Kim Newman,1995/2012年。 増補完全版第二弾。『ドラキュラ戦記』からは割愛されていた一章が追加されたほか、書き下ろし中篇や…
『ドラキュラ紀元一八八八』キム・ニューマン/鍛冶靖子訳(アトリエサード) 『Anno Dracula』Kim Newman,1992/2011年。 創元推理文庫から出ていた『ドラキュラ紀元』の増補完全版。 『ドラキュラ紀元一八八八』(Anno Dracula,1992) 改訳はされているも…
『モップの精は旅に出る』近藤史恵(実業之日本社文庫) キリコ・シリーズ第五作にして最終巻。以前のイラストレーター(飯田貴子)の描いたキリコの方が作中の描写に忠実だったのですが、別のかたに変わってしまいました。 「CLEAN.1 深夜の歌姫」(2014)★…
『中野のお父さん』北村薫(文春文庫) 出版社に勤める女性編集者が、謎解きの得意な高校教師の父親に日常の謎を解いてもらう連作掌篇集です。分量から言っても内容から言ってもとにかく軽い。 円紫さんシリーズの〈私〉はまだ大学生だったので、初めて人間…
『七夜物語(上・中・下)』川上弘美(朝日文庫) 川上弘美による児童文学。 クラスメイトとはうまくつきあっているけれど、本が好きなことは隠している小学四年生の鳴海さよ。エキセントリックで嫌いなものが多い母親にも図書館通いを隠しています。離婚し…
『ミステリマガジン』2023年11月号No.761【ポケミス創刊70周年記念特大号】「特別鼎談 ポケミス創刊70周年によせて」平岡敦×杉江松恋×阿津川辰海 そういえば最近ポケミスあんまり読んでないかも。阿津川氏が装丁も内容も褒めていた『アックスマンのジャズ』…
『傍聞き(かたえぎき)』長岡弘樹(双葉文庫) 日本推理作家協会賞受賞作を含む純粋な短篇集です。あまりにもわざとらしすぎる構成を、巧みだと取るか大根役者だと取るかで評価は別れそうです。 「迷走」(2008)★★★☆☆ ――消防無線のアラームが鳴り、現場へ…
『心のなかの冷たい何か』若竹七海(創元推理文庫) 『Something Cold in My Heart』1991年。 若竹七海の第二作。『ぼくのミステリな日常』と同じく作者と同名の若竹七海が主人公のシリーズです。 女同士の友情から事件の真相を明らかにしようと奮闘する姿は…
『群青のタンデム』長岡弘樹(ハルキ文庫)★★★☆☆ 警察学校同期でライバルだった戸柏耕史と陶山史香の二人の、つかず離れず共に歩んだ警察官人生を描いた連作長篇。初出は『月刊ランティエ』2010年4月号〜2012年5月号。 「第一話 声色」★★★☆☆ ――パナマ帽の老…
『線の波紋』長岡弘樹(小学館文庫) 誘拐事件と殺人事件を巡る四篇を収めた連作長篇です。 「談合」★★☆☆☆ ――県庁に勤める白石千賀は再婚して以来たびたび疑問を抱いてしまう。三つ年下の哲也はこんなくたびれた中年女に本当に愛情を抱いているのだろうか。…
『ハロー、アメリカ』J・G・バラード/南山宏訳(創元SF文庫) 『Hello America』J. G. Ballard,1981年。 気候の大変動により灼熱の砂漠と化して崩壊したアメリカ。放射能漏れの原因究明と残された資源を求めてヨーロッパからニューヨークに上陸した探…
『家蠅とカナリア』ヘレン・マクロイ/深町眞理子訳(創元推理文庫)★☆☆☆☆ 『Cue for Murder』Helen McCloy,1942年。 解説にも書かれているようにサスペンス派という印象の強かったマクロイですが、本書は至極まっとうな謎解きものでした。 刃物研磨店に夜…
『紙魚の手帖』vol.12 2023 AUGUST【GENESiS 夏のSF特集】「第14回創元SF短編賞 選評」宮澤伊織・小浜徹也(東京創元社編集部)「竜と沈黙する銀河」阿部登龍(2023)★★☆☆☆ ――遙か宇宙の知的文明から届いた〈レコード〉により食糧問題は解決し、家畜は愛玩…
『殺さずにはいられない 小泉喜美子傑作短篇集』小泉喜美子(中公文庫)★★★☆☆ 同題の短篇集に単行本未収録だったショートショート集を収録して復刊したものです。『痛みかたみ妬み』が好評だったための復刊第二弾とのこと。編者による解説と、山崎まどかによ…
『文学少女対数学少女』陸秋槎/稲村文吾訳(ハヤカワ・ミステリ文庫) 『文学少女对数学少女』陆秋槎,2019年。 これまでの二作と比べて訳が格段に読みやすくなっています。訳者の腕が上がったのか、高校生同士の会話劇だと訳しやすいのか。 ただ内容はこれ…
『あと十五秒で死ぬ』榊林銘(東京創元社 ミステリ・フロンティア) ミステリーズ!新人賞佳作「十五秒」を筆頭に、何らかの形で「あと十五秒で死ぬ」状況にある作品4篇が収録された短篇集です。そのため「たのしい学習麻雀」は収録されていません。 「十五…
『幽霊紳士/異常物語 柴田錬三郎ミステリ集』柴田錬三郎(創元推理文庫) 『A Ghost Gentleman/Bizarre Tales』1960年/1961年。 幽霊紳士を狂言回しにしたミステリ集『幽霊紳士』と、奇譚集『異常物語』の合本です。『花嫁首 眠狂四郎ミステリ傑作選』は…
『ミステリマガジン』2023年9月号No.760【追悼 原尞】『それからの昨日』冒頭三章 三章までしか書かれていない遺稿です。とはいえプロットはある程度出来ているようなので、いつか誰かが書き継いでくれるでしょう。 「追悼エッセイ」法月綸太郎・木村二郎他…
『時のきざはし 現代中華SF傑作選』立原透耶編(新紀元社) 『The Stairway of the Time: An Anthology of Chinese Contemporary Science Fiction』2020年。 日本オリジナル編集の中華SF傑作選。「太陽に別れを告げる日」江波《ジアン・ボー》/大久保洋…
『千霊一霊物語』アレクサンドル・デュマ/前山悠訳(光文社古典新訳文庫) 『Les Mille et un fantômes』Alexandre Dumas,1849年。 角川文庫の怪奇小説アンソロジーに「蒼白の貴婦人」が単独で訳載されていたので、てっきり本書も怪奇小説短篇集だと思い込…
『短編ミステリの二百年2』チャンドラー、アリンガム他/小森収編/猪俣美江子他訳(創元推理文庫)★★★☆☆「挑戦」バッド・シュールバーグ/門野集訳(The Dare,Budd Schulberg,1949)★★★☆☆ ――ポールは海を見つめていた。モーターボートと水上スキーの娘が…
『紙魚の手帖』vol.11『いさなとり』(1)熊倉献 ――代々ハンターの家系のぼくは、将来、普通に暮らしたかった……。 『春と盆暗』『生花甘いかしょっぱいか』『ブランクスペース』の熊倉献による新連載。ハンターが獲物になってしまう普通じゃなさと、ポテトサ…
『S-Fマガジン』2023年8月号No.758【《マルドゥック》シリーズ20周年】「《マルドゥック》シリーズ20周年」 「カバーイラストギャラリー」 「『マルドゥック・アノニマス』精神の血の輝きを追い続けて」冲方丁 「20周年対談」冲方丁×寺田克也 「『マルド…