『ピクニック・アット・ハンギングロック』ジョーン・リンジー/井上里訳(創元推理文庫)★★★★★

『ピクニック・アット・ハンギングロック』ジョーン・リンジー/井上里訳(創元推理文庫) 『Picnic At Hanging Rock』Joan Lindsay,1967年。 カルト的人気の名作映画の原作、初の邦訳ということですが、映画自体が1975年作で本邦公開が1986年とかなり昔の…

『夜の夢見の川 12の奇妙な物語』中村融編(創元推理文庫)★★★★☆

奇妙な味を中心としたアンソロジー第2団。『街角の書店』以上に「理屈では割り切れない余韻を残す」作品を重視したとのこと。 「麻酔」クリストファー・ファウラー/鴻巣友季子訳(On Edge,Christopher Fowler,1992)★★★☆☆ ――ナッツを噛んで歯が砕けてしま…

『処刑人』シャーリイ・ジャクスン/市田泉訳(創元推理文庫)★★★★☆

『Hangsaman』Shirley Jackso,1951年。 空想癖のある少女、新しい環境の洗礼、人に言えない過去、独善的な父親、憧れの教師……道具立ては王道の少女小説ですし、作品を覆っているある種の息苦しさはまさに少女時代特有のものだとも言えます。自分の世界に逃…

『ドラキュラ戦記』キム・ニューマン/梶元靖子訳(創元推理文庫)★★★★☆

『The Bloody Red Baron: Anno Dracula 1918』Kim Newman,1996年。 第一作『ドラキュラ紀元』の最後でイギリスを追われたドラキュラが、ドイツに渡って反撃を開始した、というのが本書のおおまかな内容です。時は第一次世界大戦。ドイツ軍基地の偵察を命じ…

『なんでもない一日』シャーリイ・ジャクスン/市田泉訳(創元推理文庫)★★★★☆

『The Smoking Room and Other Stories: A Collection』Shirley Jackson。 死後発見された未発表原稿および単行本未収録作品を集めた『Just An Ordinary Day』から、水準に満たない作品を除く短篇23篇およびエッセイ5篇・序文・エピローグを選び再編集し…

『街角の書店 18の奇妙な物語』中村融編(創元推理文庫)★★★★☆

「肥満翼賛クラブ」ジョン・アンソニー・ウェスト/宮脇孝雄訳(Glady's Gregory,John Anthony West,1963)★★★☆☆ ――グラディスのグレゴリーは結婚して丸三年になるのに、体重はほとんど変わっていませんでした。グラディスを責めないでください。フットボ…

『胸の火は消えず』メイ・シンクレア/南條竹則編訳(創元推理文庫)★★★☆☆

この人の怪談には現世欲(主に色欲)の強い幽霊が出てきてばかりで、怖いというより滑稽な印象が強く、あまり好きではない作家なのですが、以前アンソロジーで読んだ「水晶の瑕」だけは傑作だったのでほかの作品も読んでみることに。以前つまらないと感じた…

『ゴースト・ハント』H・R・ウェイクフィールド/鈴木克昌他訳(創元推理文庫)★★★★★

『Ghost Hunt and Other Ghost Stories』H Russell Wakefield 国書刊行会『赤い館』の増補改訂版。「赤い館」(The Red Lodge)★★★★★ ――ぼくは妻子を連れてその館で三か月の休暇をとることになった。緑色の泥の塊が落ちているのを見つけた。息子のティムが落…

『ドラキュラ紀元』キム・ニューマン/梶元靖子訳(創元推理文庫F)★★★★☆

ドラキュラ伯爵がヴァン・ヘルシングとの戦いに勝利し、ヴィクトリア女王と結婚して英国を支配下に置き、吸血鬼たちの世界が訪れた――という「もう一つのイギリス」で、吸血鬼の娼婦を狙った連続殺人鬼・切り裂きジャックが跳梁し、ロンドンの町は恐怖におの…

『怪奇小説傑作集1』平井呈一訳(創元推理文庫)★★★☆☆

ほとんど内容を忘れていたので久々に再読。さすがに何度も読んでいる「猿の手」「炎天」は今回はパスしましたが。「幽霊屋敷」ブルワー・リットン(The Haunters and the Haunted,Bulywer Litton,1857)★★★☆☆ ――「幽霊屋敷なら、かねがね一度泊まってみた…

『妻という名の魔女たち』フリッツ・ライバー/大瀧啓裕訳(創元推理文庫)★★★★★

『Conjure Wife』Fritz Leiber,1969年。 メタ・ホラーとでもいうのでしょうか、ちょっとひねった魔女小説。 大学教授のノーマンはふとしたきっかけから、妻のタンジイが魔術に凝っているというショッキングな事実を知ってしまいます。仕事も生活もうまくい…

『金剛石のレンズ』フィッツ=ジェイムズ・オブライエン/大瀧啓裕訳(創元推理文庫)

Fitz-James O'Brien。19世紀の人だということにびっくり。「金剛石のレンズ」(The Diamond Lens,1858) ――わたしは子供のころから顕微鏡に興味があった。だが粗末な顕微鏡で見る世界には限界があった。わたしはいつしか、完璧なレンズを夢見るようになって…

『王妃の首飾り(上)』アレクサンドル・デュマ/大久保和郎訳(創元推理文庫)★★★★★

『Le collier de la reine』Alexandre DUMAS,1849年。 第一部『ジョゼフ・バルサモ』を訳している関係上、第二部である本書も久しぶりに読み返してみました。 序章のはったりかましたようなかっこよさは記憶に残っていたのですが、『ジョゼフ・バルサモ』と…

『第二の顔』マルセル・エイメ/生田耕作訳(創元推理文庫F)★★★★☆

『La Belle Image』Marcel Aymé,1941年。 復刊された。ページがでこぼこしてるということは活字なのか? 懐かしい感じの手触りだった。 ある日突然、美男子になってしまった中年男の悲喜劇……一言で言えばそういう話なのだけれど、ファンタジー要素は意外な…

『怪物ホラー傑作選 千の脚を持つ男』中村融編(創元推理文庫F)★★★★☆

『The Monsuter Bokk』Ed. by Nakamura Toru,2007。 モンスター小説、それもウルトラQ的なものを目指した日本オリジナル編集。『影が行く』『地球の静止する日』に続く中村融アンソロジー第三弾。「沼の怪」ジョゼフ・ペイン・ブレナン(Slime,Joseph Pay…

『ずっとお城で暮らしてる』シャーリイ・ジャクスン/市田泉訳(創元推理文庫F)★★★★★

学研のやつの文庫化だと思っていたら新訳でした。学研版は「姉さん」ではなく「お姉ちゃん」になっているため、語り手の幼児性が際立って気持悪さが増幅されています。でもそれだと怖いというよりちょっと不気味すぎるので、好みでは創元版。 短篇集『くじ』…

『エデンの黒い牙』ジャック・ウィリアムスン/野村芳夫訳(創元推理文庫)★★★☆☆

『Darker Than You Think』Jack Williamson,1948年。 意外と安っぽいノリの話で驚いた。 幻想文学とかホラーというより、ハリウッド映画や海外ドラマのノヴェライズみたいだった。 面白くはあるけれど、作品としては「傑作!」などと騒ぎ立てるほどのもので…

『淑やかな悪夢 英米女流怪談集』シンシア・アスキス他/倉阪鬼一郎他編訳(創元推理文庫)★★★★☆

「追われる女」シンシア・アスキス/西崎憲訳(The Follower,Cynthia Mary Evelyn Charteris Asquith)★★★★☆ ――入院中のミード夫人は強迫的に心を占めている問題について主治医に相談していた。主治医は、有名な精神分析医ストーン医師に診察してもらうこと…

『黒い玉 十四の不気味な物語』トーマス・オーウェン/加藤尚宏訳(創元推理文庫)★★★★☆

『Le Livre Noir des Merveilles: Les Meilleures histoires 'etranges et fantastiques』Thomas Owen,1980年。 ベルギーの幻想小説家による短篇集です。「雨の中の娘」を読んだときは「おっ、これは!」と思ったのですが、後半「黒い玉」以降はちょっと似…

『パニックの手』ジョナサン・キャロル/浅羽莢子訳(創元推理文庫)★★★☆☆

恥ずかしながらジョナサン・キャロル初読書。意外とポップでライトな文章なので驚いた。もっとハードな幻想体質の作品なのかと思ってました。すごく読みやすい。モダンホラーやサスペンスを読むような感じですいすい読めます。それはもちろん、そういうとっ…

『隠し部屋を査察して』エリック・マコーマック/増田まもる訳(創元推理文庫)★★★★☆

『Inspecting the Vaults』Eric McCormack,1987年。 ここのところ東京創元社の海外文学セレクションが(しかも幻想系が)立て続けに文庫化されていて嬉しいかぎり。本書にも悪夢みたいな作品がわんさと並んでいる。「隠し部屋を査察して」(Inspecting the …

『日本怪奇小説傑作集3』紀田順一郎・東雅夫=編(創元推理文庫)★★★☆☆

『日本怪奇小説傑作集』もいよいよ完結。昭和30年代から現代まで。何よりもまず怪奇小説だった『1』、一分の隙もない作品ばかりが並ぶ『2』とくらべると、ややおとなしい。「お守り」山川方夫――君、ダイナマイトは要らないかね? 突然、友人の関口が僕に言…

『ミステリー・ウォーク(上・下)』ロバート・R・マキャモン/山田和子訳(創元推理文庫)★★★★☆

〈幻の傑作ダーク・ファンタジー〉なんて書かれてあるのを見て、レイ・ブラッドベリの『何かが道をやってくる』みたいのを想像して期待してたのですが、意外とモダン・ホラーでした。 マキャモンを読んで、モダン・ホラーだったからがっかりしたというのが、…


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