『ブエノスアイレスに消えた』グスタボ・マラホビッチ/宮崎真紀訳(ハヤカワ・ミステリ1895)★★★☆☆

『El jardín de bronce』Gustavo Malajovich,2012年。 原タイトル『青銅の庭』。 ファビアンとリラのダヌービオ夫妻の関係はうまく行っていません。夫が真剣に向き合おうとしても、妻はギリシアの詩人を持ち出して煙に巻くばかり。そんな折り、一人娘のモイ…

『六人目の少女』ドナート・カッリージ/清水由貴子訳(ハヤカワ・ミステリ1867)★★★★☆

『Il Suggeritore』Donato Carrisi,2009年。 刑務所に収容されている、明らかに重大犯罪者であるらしき正体不明の男の記録――。 森のなかから、失踪した五人の少女の左腕だけが発見される。だが、見つかった腕は六本あった――。 魅力的な書き出しに続いて、子…

『地上最後の刑事』ベン・H・ウィンタース/上野元美訳(ハヤカワ・ポケミス1878)★★★★☆

『The Last Policeman』Ben H. Winters,2012年。 半年後に地球が滅びるかもしれないときに、人を殺してまわること(そしてそれを捜査すること)に意味はあるのか――明らかになったのは、極限状態によってひときわ浮き上がらせたシンプルな問題でした。 そん…

『ジャック・リッチーのあの手この手』ジャック・リッチー/小鷹信光編訳(早川書房ポケミス1877)★★★☆☆

すべて初訳の日本オリジナル短篇集第一弾。「謀之巻 はかりごと」「儲けは山分け」高橋知子訳(Body Check,1981)★★★★☆ ――「まちがいなくレイゼンウェルを殺したのか?」「一発でしとめた」「マスコミがふれてないということは、まだ死体が発見されてないん…

『首斬り人の娘』オリヴァー・ペチュ/猪股和夫訳(早川ポケミス1864)★★★★☆

『Die Henkerstochter』Oliver Pötzsch,2008年。 骨太な歴史ミステリ。だが「魔女の印」はいただけない。子供たちが団結の印に使った赤鉄鉱の記号が「♀」を逆さまにしたものだったという強引さ。子供たちが孤児だというのと、赤鉄鉱が母親の出血を止めると…

『ブラックアウト』コニー・ウィリス/大森望訳(新ハヤカワSFシリーズ5005)★★★★☆

『Blackout』Connie Willis,2010年。 いくつもウィリス作品を読んでくると、ストーリーをコメディで引き伸ばす、というウィリスの技法にはどうにも食傷気味。ではあるのだけれど、本書の場合にはそれが大戦下のイギリス、ロンドンをじっくり描くことにもつ…

『フリント船長がまだいい人だったころ』ニック・ダイベック/田中文訳(ポケミス1862)★★★★★

『When Captain Flint Was Still A Good Man』Nick Dybek,2012年。 個人的にはこれまでの新生ポケミスのなかで一番のヒット。ガチガチのミステリではなく、肌合いとしては強いて言えば『卵をめぐる』に近い作品です。 印象的なタイトルは、『宝島』の続きを…

『特捜部Q Pからのメッセージ』ユッシ・エーズラ・オールスン/吉田薫・福原美穂子訳(ハヤカワ・ポケミス1860)★★★☆☆

シリーズ3作目。今回はローセがお休みして、ローセの「姉」がお手伝いに。姉妹どちらもウザいことこのうえなし。このシリーズは構成がワンパターンで飽きるのが早い。しかも毎回棚ぼた的な。心理学者モーナ、元同僚ハーディ、前妻ヴィガ、息子イェスパ、同…

『冬の灯台が語るとき』ヨハン・テオリン/三角和代訳(早川ポケミス1856)★★★★☆

『Nattfåk』Johan Theorin,2008年。 スウェーデンの作家による第二作。 田舎が舞台なので(警官が少ないがゆえに)「警察小説」にならないところが独特でした。いちおうの探偵役も、ミス・マープルから好奇心を無くしたような人なので、「探偵小説」という…

『第六ポンプ』パオロ・バチガルピ/中原尚哉・金子浩訳(早川書房 新ハヤカワSFシリーズ5002)

『Pump Six and Other Stories』Paolo Bacigalupi,2008年。 『ねじまき少女』のパオロ・バチガルピ第一短篇集の全訳。 『S-Fマガジン』で既読の作品をのぞく五篇を読む。 「ポケットのなかの法《ダルマ》」(Pocketful of Dharma,1999)★★★★☆ ――浮浪少年…

『アイアン・ハウス』ジョン・ハート/東野さやか訳(ハヤカワ・ポケミス1855)★★★☆☆

『Iron House』John Hart,2011年。 『ラスト・チャイルド』のジョン・ハートの最新作は、組織を抜けて追われる殺し屋の話です。 ――が、そこはジョン・ハート。愛情だの、それゆえの苦しみだのがメインを占め、殺しの世界の様子がピンと伝わって来ません。組…

『特捜部Q キジ殺し』ユッシ・エーズラ・オールスン/吉田薫・福原美穂子訳(ハヤカワ・ポケミス1853)★★★☆☆

『Fasandræberne』Jussi Adler-Orsen,2008年。 シリーズ第二作は、楽しみから人に暴力をふるい殺人を犯すエリート集団の犯罪に挑みます。すでに犯人が自首・服役している事件の資料が、どうして未解決事件の捜査を担当する特捜部に持ち込まれたのか――。 ど…

『リヴァイアサン クジラと蒸気機関』スコット・ウエスターフェルド/小林美幸訳(新ハヤカワSFシリーズ5001)★★★☆☆

『Leviathan』Scott Westerfeld,2009年。 オーストリア皇太子夫妻が「毒殺」された世界――遺伝子操作によって機械ではなく生物を発達させたイギリス等と、蒸気機関を発達させたドイツ諸国。 命を狙われ逃亡する皇太子夫妻の息子アレクサンダー(アレック)と…

『特捜部Q 檻の中の女』ユッシ・エーズラ・オールスン/吉田奈保子訳(早川ポケミス1848)★★★★☆

『Kvinden I Buret』Jussi Adler-Olsen,2008年。 デンマークの作品。 被害者や犯人の視点と捜査側の視点が交互に描かれたり、過去と現在が交差するタイプの作品は多々ありますが、被害者側に五年の年月が流れているというのは驚きました。 政治家のパフォー…

『疑われざる者』シャーロット・アームストロング/沢村灌訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★☆☆

『The Unsuspected』Charlotte Armstrong,1946年。 ロザリーンが首をくくって死んだ。婚約者のフランシスと、フランシスの叔母ジェーンは、遺書が捏造されたものだと見抜き、ロザリーンが秘書として働いていた元演出家グランディスンを疑うが、証拠がない――…

『51番目の密室 〈世界短篇傑作集〉』早川書房編集部編(ポケミス1835)★★★☆☆

『37の短篇』からのポケミス化第二弾。既読のものは今回はいくつかパスしました。今回パスした「魔の森の家」と「ジェミニイ・クリケット事件」(ただしわたしはイギリス版の方が好み)が双璧でしょうか。 「うぶな心が張り裂ける」クレイグ・ライス/小笠原…

『虹の果てには』ロバート・ロスナー/山本俊子訳(ポケミス1302)★★★★☆

『The End of Someone Else's Rainbow』Robert Rossner,1974年。 追われる犯罪者と、それを執拗に追いかける刑事――。 そんなサスペンスの常道ながら、この作品がひと味ちがうのは、犯罪者がすでに二十年の刑期を務めあげているところです。刑期を務めたのに…

『ラスト・チャイルド』ジョン・ハート/東野さやか訳(早川書房ポケミス1836)★★★★☆

『The Last Child』John Hart,2009年。 早川書房創立65周年&ハヤカワ文庫40周年記念作品と銘打って、ポケミス版と文庫版の同時発売。値段は一緒。ポケミス版は記念の金色。 誘拐されたまま一年経っても行方不明のままの妹をさがすため、ジョニーは太古の神…

『逃亡者』ロジャー・フラー/一ノ瀬直二訳(ポケミス0948)★★★★☆

『Fear In A Desert Town』Roger Fuller,1964年。 原作ではなく、ノヴェライゼーションでした。 一つの完結した作品ではなく、テレビシリーズ『逃亡者』の一エピソードという形の作品です。逃亡先の田舎町で巻き込まれた、とある事件。詳しいことはわかりま…

『狼は天使の匂い』デイヴィッド・グーディス/真崎義博訳(ポケミス1735)★★★★☆

『Black Friday』David Goodis,1954年。 古き良きダークなノワール小説。喧嘩には強い、女に惹かれる翳がある、ボスに気に入られる骨もある、でも「プロ」の殺しはできない半人前。むかしの舘ひろしとかが出てきそうな血のしょっぱさ。 かっこよくいえば娑…

『新・幻想と怪奇』仁賀克雄編訳(早川書房ポケミス1824) ★★★☆☆

大傑作もなかったけれど凡作もない。こういうのも珍しい。「マーサの夕食」ローズマリー・ティンパリー(Supper with Martha,Rosemary Timperley)★★★★☆ ――金曜日の夜、いつものように愛人のエステルを訪れた。マーサは理想的な妻だった。野暮な勘ぐりはさ…

『二壜の調味料』ロード・ダンセイニ/小林晋訳(ポケミス1822)★★★☆☆

『The Little Tales of Smethers and Other Stories』Lord Dunsany,1952年。短篇集なのでちまちま読んでちまちま感想をメモした。読み返してみたら走り書き過ぎて自分でもよくわからんくなってる。「二壜の調味料」(The Two Bottles of Relish)★★★☆☆ ――そ…

『帽子から飛び出した死』クレイトン・ロースン/中村能三訳(ポケミス287)★★★☆☆

『Death from a Top Hat』Clayton Rawson,1938年。 クレイトン・ロースンの第一作。 広告代理店で働くロス・ハートがアパートの部屋で仕事をしていると、「この部屋には死人がいる!」という声が聞こえた。あわてて廊下に出ると、サバット博士の部屋の前で…

『天外消失 世界短篇傑作集』早川書房編集部編(ポケミス1819)★★★☆☆

さすがにこれはあまりにも時機を逸した遅すぎる復刊……ですが、ことさらに傑作揃いなのを期待せず普通のアンソロジーだと思って読めばやはり粒ぞろいです。「ジャングル探偵ターザン」E・R・バロウズ/斉藤伯好訳(Tarzan,Jungle Detective,E. R. Burroug…

『ハリウッド警察25時』ジョゼフ・ウォンボー/小林宏明訳(早川書房ポケミス1803)★★★☆☆

『Hollywood Station』Joseph Wambaugh,2006年。長い長い会話だけから成る冒頭。話しているのは愚にもつかない無駄話――と思ったらあながち無関係なわけでもなかったのだね――と思った瞬間またも場面は変わって無駄話。 こんな感じで、気取らない警官の日常を…

『ダルジールの死』レジナルド・ヒル/松下祥子訳(ポケミス1810)★★★★☆

『The Death of Dalziel』Reginald Hill,2007年。 警察小説はやっぱり面白い。娯楽ミステリの中では一番面白いんじゃないだろうか。何しろ謎解きでもあればキャラクター小説でもあるしサスペンスや冒険、イアン・ランキンみたいにハードボイルドだったりも…

『上海から来た女』シャーウッド・キング/尾之上浩司訳(早川書房ポケミス1799)★★★★☆

『If I Die Before I Wake』Sherwood King,1938年。 なんでポケミス映画座ではないのだろうと思ったら、訳者の持ち込み企画なのか。 映画は未見ですが、ミステリではすっかりお馴染みになった偽装殺人(偽装自殺)ネタなので、途中までの話の展開は何となく…

『苦いオードブル』レックス・スタウト/矢沢聖子訳(ポケミス1797)★★★☆☆

『Bad for Business』Rex Stout,1940年。 スタウト作品の魅力と言えば、アーチーとウルフのキャラクター。それに尽きます。 ところがなぜか、『手袋の中の手』『苦いオードブル』と、二作続けてポケミスからは非ウルフものが刊行されました。 感想はという…

『ヴェルサイユの影』クリステル・モーラン/野口雄司訳(ポケミス1796)★☆☆☆☆

『L'ombre du soleil』Christelle Maulin,2005年。 『悪魔のヴァイオリン』に引き続いての〈パリ警視庁賞〉受賞作だが、ダメだろ、これは……。出来から言えば、やる気のない2時間サスペンス・レベル。 まず文章が下手っぴい。文法の教科書のような台詞をし…

『異人館』レジナルド・ヒル/松下祥子訳(ハヤカワ・ポケット・ミステリ1795)★★★★☆

『The Stranger House』Reginald Hill,2005年。 面白い。が、それは帯にあるように「あらゆる要素を詰め込んだ」というほどではなく、強いて言えば警察官ではない人間が主人公の警察小説、あるいはハリウッド映画的な謎解きサスペンスもの、という方がしっ…


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