『ハイ・シエラ』W・R・バーネット/菊池光訳(ハヤカワ・ポケット・ミステリ1726 ポケミス名画座)★★★☆☆

『ハイ・シエラ』W・R・バーネット/菊池光訳(ハヤカワ・ポケット・ミステリ1726 ポケミス名画座) 『High Sierra』W. R. Burnett,1940年。 ハンフリー・ボガードの出世作『ハイ・シエラ』の原作小説。 大物の手筈で刑務所を出所した銀行強盗ディリンジ…

『パリ警視庁迷宮捜査班―魅惑の南仏殺人ツアー―』ソフィー・エナフ/山本知子・山田文訳(早川書房ポケミス1960)★★★★☆

『パリ警視庁迷宮捜査班―魅惑の南仏殺人ツアー―』ソフィー・エナフ/山本知子・山田文訳(早川書房ポケミス1960) 『Rester groupés』Sophie Hénaff,2016年。 パリ警視庁迷宮捜査班シリーズ第二作です。ユーモアミステリみたいな副題はどうにかならなかった…

『ディオゲネス変奏曲』陳浩基/稲村文吾訳(早川書房 ポケミス1942)★★★★☆

『ディオゲネス変奏曲』陳浩基/稲村文吾訳(早川書房 ポケミス1942) 『第歐根尼變奏曲』陳浩基,2019年。 香港の作家。部屋に籠って小説を書く物書きを樽のなかのディオゲネスになぞらえ、組曲の形で編纂した自選集です。さまざまなタイプの作品が収められ…

『呼び出された男 スウェーデン・ミステリ傑作集』ヨン=ヘンリ・ホルムベリ編/ヘレンハルメ美穂他訳(早川書房ポケミス1922)★★☆☆☆

『呼び出された男 スウェーデン・ミステリ傑作集』ヨン=ヘンリ・ホルムベリ編/ヘレンハルメ美穂他訳(早川書房ポケミス1922) 『A Darker Shade of Sweden』John-Henri Holmberg,2014年。 編者前書きによれば、原書はスウェーデン・ミステリの英訳アンソ…

『カルカッタの殺人』アビール・ムカジー/田村義進訳(早川書房ポケミス1945)★☆☆☆☆

『カルカッタの殺人』アビール・ムカジー/田村義進訳(早川書房ポケミス1945) 『A Rising Man』Abir Mukherjee,2017年。 インド系イギリス人による、英国統治下のインドを舞台にしたミステリです。 主人公はイギリスから赴任したばかりのウィンダム警部と…

『ネルーダ事件』ロベルト・アンプエロ/宮崎真紀訳(早川書房 ポケミス1883)★★☆☆☆

『ネルーダ事件』ロベルト・アンプエロ/宮崎真紀訳(早川書房 ポケミス1883) 『El caso Neruda』Roberto Ampuero,2008年。 私立探偵カジェタノ・シリーズの第6作にして代表作。カジェタノ最初の事件です。依頼人はノーベル文学賞も受賞したチリの国民的…

『悪魔とベン・フランクリン』シオドア・マシスン/永井淳訳(早川書房 ポケミス720)★☆☆☆☆

『悪魔とベン・フランクリン』シオドア・マシスン/永井淳訳(早川書房 ポケミス720) 『The Devil and Ben Franklin』Theodore Mathieson,1961年。 歴史上の人物が探偵役を務める短篇集『名探偵群像』の著者による、やはり歴史上の人物が探偵役を務める長…

『影の子』デイヴィッド・ヤング/北野寿美枝訳(早川書房ポケミス1931)★☆☆☆☆

『影の子』デイヴィッド・ヤング/北野寿美枝訳(早川書房ポケミス1931) 『Stasi Child』David Young,2015年。 英国推理作家協会賞の歴史ミステリ賞を受賞、冷戦下の東ドイツを舞台にした作品ということで、重厚な歴史ものを期待していたのですが、驚くほ…

『そして夜は甦る』原尞(原リョウ)(早川書房ポケミス1930)★★★☆☆

『そして夜は甦る』原尞(原リョウ)(早川書房ポケミス1930) 『...And the Night Falls Again』1988年。 デビュー30周年を記念したポケミス版。文庫のカバーが変なイラストになってしまったこともあり、こちらを購入。まあ本書のイラストも充分ヘンなんで…

『アンダルシアの友』アレクサンデル・セーデルベリ/ヘレンハルメ美穂訳(早川書房 ポケミス1879)★☆☆☆☆

『Den andalusiske vännen』Alexander Söderberg,2012年。 出オチです。プロローグ、激しいカーチェイスと銃撃戦。 あとは無駄に長いだけでした。 始まりはグスマン一家とラルフ・ハンケ一家という犯罪組織の対立でした。グスマン一家の息子エクトルがハン…

『雪が白いとき、かつそのときに限り』陸秋槎/稲村文吾訳(早川書房ポケミス1948)★☆☆☆☆

『当且仅当雪是白的』陆秋槎,2017年。 ポケミスがとち狂った――と言いたくなるような、若者向け小説の表紙のようなイラストです。原書と同じイラストを使用しているらしく、青春小説という触れ込み通りのイラストです。 相変わらず会話が書き割りで読んでい…

『猟犬』ヨルン・リーエル・ホルスト/猪股和夫訳(早川書房 ポケミス1892)★★★☆☆

『猟犬』ヨルン・リーエル・ホルスト/猪股和夫訳(早川書房 ポケミス1892) 『Jakthundene』Jørn Lier Horst,2012年。 ポケミスでは2作目となるノルウェーの作品で、ドイツ語からの重訳です。スウェーデンと違ってノルウェー語翻訳者って育っていないのか…

『パリ警視庁迷宮捜査班』ソフィー・エナフ/山本知子・川口明百美訳(早川書房ポケミス1943)★★★★☆

『パリ警視庁迷宮捜査班』ソフィー・エナフ/山本知子・川口明百美訳(早川書房ポケミス1943) 『Poulets grillés』Sophie HÉNAFF,2015年。 裏表紙のあらすじには「「フランスの『特捜部Q』」と評される」と書かれていますが、どこでそう評されているのか…

『名探偵の密室』クリス・マクジョージ/不二淑子訳(早川書房ポケミス1946)★★☆☆☆

『名探偵の密室』クリス・マクジョージ/不二淑子訳(早川書房ポケミス1946) 『Guess Who』Chris McGeorge,2018年。 テレビの探偵番組で人気の探偵と五人が死体とともにホテルの一室に閉じ込められ、三時間以内に五人のなかから犯人を見つけ出さないとホテ…

『ありふれた祈り』ウィリアム・ケント・クルーガー/宇佐川晶子訳(早川書房ポケミス1890)★★★★☆

『ありふれた祈り』ウィリアム・ケント・クルーガー/宇佐川晶子訳(早川書房ポケミス1890) 『Ordinary Grace』William Kent Kruger,2013年。 少年がある日を境に直面せざるを得ない現実を描いたという点では、同じポケミスの『フリント船長がまだいい人だ…

『拳銃使いの娘』ジョーダン・ハーパー/鈴木恵訳(早川書房 ポケミス1939)★★★★☆

『拳銃使いの娘』ジョーダン・ハーパー/鈴木恵訳(早川書房 ポケミス1939) 『She Rides Shotgun』Jordan Harper,2017年。 日本語タイトルには『拳銃使いの娘』とあるものの父親が拳銃使いというわけではなく、「殺し屋のような目をしている」とか「サムラ…

『生か、死か』マイケル・ロボサム/越前敏弥訳(早川書房ポケミス1911)★★★★★

『生か、死か』マイケル・ロボサム/越前敏弥訳(早川書房ポケミス1911) 『Life or Death』Michael Robotham,2014年。 あと一日で刑期を終えるという日になぜ囚人は脱獄したのか――? このつかみが何よりも強力でした。 男は現金輸送車襲撃事件の生き残りで…

『狼の王子』クリスチャン・モルク/堀川志野舞訳(ハヤカワ・ポケミス1876)☆☆☆☆☆

『狼の王子』クリスチャン・モルク/堀川志野舞訳(ハヤカワ・ポケミス1876) 『Darling Jim』Christian Moerk,2007年。 デンマーク出身の在米作家。 ここまでただ読むだけで苦痛な本は久しぶりでした。 どうでもいいレトリックでだらだらとくだくだしい文…

『元年春之祭』陸秋槎/稲村文吾訳(ハヤカワ・ポケット・ミステリ ポケミス1935)★★☆☆☆

『元年春之祭――巫女主義殺人事件』陸秋槎,2016年。 最近は中国ミステリではなく華文ミステリというようです。 麻耶雄嵩と三津田信三に影響を受けた本格ミステリというから期待は高まります。著者は日本在住。あとがきの日付からすると著者あとがきは邦訳版…

『ラブラバ 新訳版』エルモア・レナード/田口俊樹訳(ハヤカワ・ポケット・ミステリ ポケミス1926)★★★★☆

『La Brava』Elmore Leonard,1983年。 ラブラバの名がタイトルになっているのが皮肉です。何せラブラバは結局のところヒーローにはなり得なかったのですから。そういう意味で主演の地位に君臨していたのは、ラブラバ憧れの女優ジーン・ショーでした。ラブラ…

『ジャック・グラス伝 宇宙的殺人者』アダム・ロバーツ/内田昌之訳(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)★★★★☆

『Jack Glass』Adam Roberts,2012年。 人類は宇宙へと生活の場を広げ、ウラノフ一族が支配する新しい体制下で――天下に並ぶ者なき殺人者ジャック・グラスに関わる三つの事件が描かれます。 「第一部 箱の中」(In the Box)★★★★★ ――七人の囚人が小惑星に送ら…

『その雪と血を』ジョー・ネスボ/鈴木恵訳(ハヤカワ・ポケット・ミステリ1912)★★★★☆

『Blood On Snow(原題Blod på snø)』Jo Nesbø,2015年。 ポケミスなのに一段組の薄い形での登場です。映画化がすでに決定しているようです。 七〇年代ノルウェーを舞台に、パルプ・ノワールを再現した作品、とのことですが、血と暴力というよりはファム・…

『ジャック・リッチーのびっくりパレード』ジャック・リッチー/小鷹信光編・訳(早川書房ポケミス1903)★★★☆☆

『Jack Ritchie's Wonderland Part 2』 小鷹信光編によるリッチー・ポケミス第二弾です。 「Part I 1950年代」「恋の季節」松下祥子訳(Always the Season)★★★☆☆ ――リンダはタイプの手を休め、法律事務所の窓から外のバス停にいる男をうっとりと眺めた。名…

『ブエノスアイレスに消えた』グスタボ・マラホビッチ/宮崎真紀訳(ハヤカワ・ミステリ1895)★★★☆☆

『El jardín de bronce』Gustavo Malajovich,2012年。 原タイトル『青銅の庭』。 ファビアンとリラのダヌービオ夫妻の関係はうまく行っていません。夫が真剣に向き合おうとしても、妻はギリシアの詩人を持ち出して煙に巻くばかり。そんな折り、一人娘のモイ…

『六人目の少女』ドナート・カッリージ/清水由貴子訳(ハヤカワ・ミステリ1867)★★★★☆

『Il Suggeritore』Donato Carrisi,2009年。 刑務所に収容されている、明らかに重大犯罪者であるらしき正体不明の男の記録――。 森のなかから、失踪した五人の少女の左腕だけが発見される。だが、見つかった腕は六本あった――。 魅力的な書き出しに続いて、子…

『地上最後の刑事』ベン・H・ウィンタース/上野元美訳(ハヤカワ・ポケミス1878)★★★★☆

『The Last Policeman』Ben H. Winters,2012年。 半年後に地球が滅びるかもしれないときに、人を殺してまわること(そしてそれを捜査すること)に意味はあるのか――明らかになったのは、極限状態によってひときわ浮き上がらせたシンプルな問題でした。 そん…

『ジャック・リッチーのあの手この手』ジャック・リッチー/小鷹信光編訳(早川書房ポケミス1877)★★★☆☆

すべて初訳の日本オリジナル短篇集第一弾。「謀之巻 はかりごと」「儲けは山分け」高橋知子訳(Body Check,1981)★★★★☆ ――「まちがいなくレイゼンウェルを殺したのか?」「一発でしとめた」「マスコミがふれてないということは、まだ死体が発見されてないん…

『首斬り人の娘』オリヴァー・ペチュ/猪股和夫訳(早川ポケミス1864)★★★★☆

『Die Henkerstochter』Oliver Pötzsch,2008年。 骨太な歴史ミステリ。だが「魔女の印」はいただけない。子供たちが団結の印に使った赤鉄鉱の記号が「♀」を逆さまにしたものだったという強引さ。子供たちが孤児だというのと、赤鉄鉱が母親の出血を止めると…

『ブラックアウト』コニー・ウィリス/大森望訳(新ハヤカワSFシリーズ5005)★★★★☆

『Blackout』Connie Willis,2010年。 いくつもウィリス作品を読んでくると、ストーリーをコメディで引き伸ばす、というウィリスの技法にはどうにも食傷気味。ではあるのだけれど、本書の場合にはそれが大戦下のイギリス、ロンドンをじっくり描くことにもつ…

『フリント船長がまだいい人だったころ』ニック・ダイベック/田中文訳(ポケミス1862)★★★★★

『When Captain Flint Was Still A Good Man』Nick Dybek,2012年。 個人的にはこれまでの新生ポケミスのなかで一番のヒット。ガチガチのミステリではなく、肌合いとしては強いて言えば『卵をめぐる』に近い作品です。 印象的なタイトルは、『宝島』の続きを…


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