『Foxfire: Confessions of a Girl Gang』Joyce Carol Oates,1993年。 他言の罪は死をもてあがなうんだよ、マディ・モンキー。でもあれから長い月日がたっている。だから話してしまおう。わたし自身、掟作りに加わった一人だ。わたしはフォックスファイアの…
魅力的なタイトル。でも残念なことに中身は普通のエッセイでした。翻訳そのものについてではなく、翻訳をきっかけに日常を語るとか苦労話とかいうような。 後半の「いまは早くも死語なれど」もそういうエッセイと翻訳豆知識が半々くらいか。 二十年くらい前…
原題『Mystery Stories』Stanley Ellin,1958年。 あまりにも有名な「特別料理」「決断の時」などを除けば、以外と普通のショート・ミステリの書き手でした。もっと“重い”作家だという印象があったので構えて読み始めたのですが、拍子抜けするほどまっとうな…
ポケミス名画座の一冊。ウェスタンなんて、映画はともかく小説は初めて読んだ。『明日に向って撃て!』とか『夕陽のガンマン』は好きなんだけれど、これはニューシネマとマカロニ・ウェスタンだし、ジョン・ウェインとかは大っ嫌いだからどうなのだろうと不…
『Le Livre Noir des Merveilles: Les Meilleures histoires 'etranges et fantastiques』Thomas Owen,1980年。 ベルギーの幻想小説家による短篇集です。「雨の中の娘」を読んだときは「おっ、これは!」と思ったのですが、後半「黒い玉」以降はちょっと似…
【女性作家特集】 少なくともフィクションの世界においてはもはや女性も男性もないと(一読者としては)感じるのだけれど、いまだに「女性作家特集」と聞くと佳品が多そうだと期待してしまうし、「男性作家特集」というのがないことに違和感も感じない――とい…
ジョージ・P・ペレケーノス特集。 ポケミスで読むのを除けば、現代海外ミステリなんてほとんど読まないのでまったく知らなかった作家。「ペレケーノスの至福」北上次郎「移民国家アメリカを描く大きな作家」豊崎由美「ワシントンDC育ちの音楽マニア、四十…
「ミダスの仮面」チェスタートン/若島正訳(The Mask of Midas,G. K. Chesterton,1935?)★★★☆☆ ――小さな店に一人の男が立っていた。脱獄の手助けをした疑いがもたれている。その男を眺めていた三人の男がいた。警察署長グライムズ大佐がめずらしく大衆の…
SF翻訳家・浅倉久志のエッセイ集。とはいっても大半を文庫解説(訳者あとがき)が占める。 後半はSF入門として読めるので万人向け。前半のディックとヴォネガットの文庫解説は著者のファン向けかな。ディックとヴォネガットに特に思い入れのない人間にと…
恥ずかしながらジョナサン・キャロル初読書。意外とポップでライトな文章なので驚いた。もっとハードな幻想体質の作品なのかと思ってました。すごく読みやすい。モダンホラーやサスペンスを読むような感じですいすい読めます。それはもちろん、そういうとっ…
本書はビリー・ワイルダーの伝記というのとはちょっと違って、正確に言えばビリー・ワイルダーのインタビューを編年体に構成したものです。作品や監督業についての話だけではなく少年時代や青年時代のエピソードも本人の口から語られているので、ワイルダー…
『植物怪異伝説新考』というタイトルから、植物にまつわる妖怪や怪談を紹介して考察しているのかな、と思ったのですが、(少なくとも上巻は)古典籍に記されている突然変異や奇形についての考察でした。妖怪好きが期待するような話は下巻[bk1・amazon]の後…
多田克己氏と村上健司氏を名前と外見のモデルにしたこのシリーズは、石燕の創作妖怪がモチーフとなっています。創作なんだから当然、創作される以前の歴史は背負ってない。ゆえに京極堂シリーズでは確かに使いづらいのかなぁという気もします。サブタイトル…
『Inspecting the Vaults』Eric McCormack,1987年。 ここのところ東京創元社の海外文学セレクションが(しかも幻想系が)立て続けに文庫化されていて嬉しいかぎり。本書にも悪夢みたいな作品がわんさと並んでいる。「隠し部屋を査察して」(Inspecting the …
ダン・シモンズ特集です。SFを系統立てて読んできたわけではないので、『夜更けのエントロピー』くらいしか知りませんでした。「超弩級作『イリアム』――その壮大なる三世界」 新作長篇『イリアム』についての簡単な紹介。今月号にはその『イリアム』の前日…
MWA賞受賞作特集。MWAに限らず、○○賞受賞作特集なんてまず面白くないに相場が決まってるのであまり期待せず。「隠れた条件」ジェイムズ・W・ホール/延原泰子訳(The Catch,James W. Hall,2005)★★☆☆☆ ――「二百ドル? 冗談だろう。五千くらいが相場だと聞…
ミステリ一篇に幻想小説二篇にたわけたのが一篇というところ。普段は完全に書きたいものを書いて、読者サービスとしてミステリ「溺れる人魚」を書き下ろしたという感じだなぁ。 「人魚兵器」「耳の光る児」の二篇は幻想作品とはいいながらも、どちらにも御手…
創刊以来はじめて、第一特集が作家ではなくテーマによる特集です。「猫の怪」。猫と怪談は相性がいい。と思って期待したんですけどね。。。結論を申せばかなり期待はずれでした。猫怪談なんて手あかがつくほど紹介されているゆえに搦め手から、というのはわ…
わしゃ驚いたね。なにしろ場所はロンドン塔、やたらに人が入り込める場所じゃあない。そのうえ、あの医者めは堅牢なそこの一室に閉じ込められ、見張りの兵隊までついておったんじゃから。ところが、夜が明けてみると、ころりと死んでおる。しかも毒殺ときた…
翻訳家・岸本佐知子氏のエッセイ集。北村薫編『北村薫のミステリー館』[bk1・amazon]に収録されているのを読んで以来、絶対に買おう!と思っていた本がこのほど新書化されたのでさっそく購入、読みました。 『ミステリー館』に収録されていた二作はどちら…
ちょうどわたしが幻想文学情報を求めて「牛込櫻会館」を覗き始めたころに、この人が亡くなったはずだ。掲示板に訃報や哀悼が残されていたので、事情のわからないものにとってはただただ戸惑うばかりだった。幻想文学ファンのあいだでその死が話題になる人、…
「シャーロック・ホームズ変奏曲」07中村隆 知らないお名前でしたが、『あなたが名探偵』を手がけると聞いて思い当たる。おお、なるほど。あの点々はたしかにそうです。「私の一冊〜多分、一九七三年頃の『萌え』〜」西澤保彦 西澤氏の一冊はクリスティ『ふ…
タイトルは『続・妖怪図巻』だけれど、編者は『妖怪図巻』[bk1・amazon]の多田克己氏ではなく、『妖怪百物語絵巻』[bk1・amazon]の湯本豪一氏。『妖怪百物語絵巻』は「蕪村妖怪絵巻」目当てで買ったんだけれど、目当て以外の作品は子どもの落書きみたい…
【スタニスワフ・レム追悼特集】★★★★★ 沼野充義・巽孝之・中村融・牧眞司・若島正・関口苑生・石川喬司・西島大介 単なる思い出話なんか誰も書かない。そういう社交辞令的で予定調和な追悼特集なんかではない、読みごたえのある作品論を中心とした、みんなほ…
〈幻想と怪奇〉というとどうしてもポケミスやハヤカワ文庫の『幻想と怪奇』を連想してしまうため、近年の『ミステリマガジン』における特集は期待はずればかりだった。今号もそういう点では期待はずれ。でも単行本では刊行されないようなB級作品を掲載する…
普通ではないかもしれないけれど、奇想コレクションのカラーには合ってない。SFやファンタジーではなく、まるっきりの現代主流文学。いかにも柴田元幸が訳しそうな作品では?、と思ったけど、巻末リストを見たらやっぱり訳してました。奇想コレクションと…
「ティー」と言いたいのに「茶ー(チャー)」と言ってしまう。「スターバックス」に行きたいのに、出てきた言葉は「オートバックス」。そんな言い間違いを集めた読者投稿本(本書の場合、もとはウェブですが)のひとつです。それだけならよくある。大量にあ…
7つの短篇を収録した連作長篇。40歳が主人公の青春小説です。比喩でもなんでもなくまさに青春そのもの。石田衣良の若々しい感性で描かれると、40歳とかいいつつまるっきり10代20代の青春小説でした。なんて瑞々しいんだろう。ショージキまわりにこんな若々…
中篇「ジャングルの虫たち」を中篇「帝都衛星軌道」の前後編で挟み込むという風変わりな構成です。「帝都衛星軌道」を読み終えてみると、この構成もなんとなくわからないでもない。衛星軌道をできるかぎり書籍の形で表現しようとしたのではないかと(カバー…
「アリバイ」(Alibi)★★★★★ ――ジェイムズ・フェントンは石段をのぼり、ベルを押した。「部屋を貸していただきたいんです」(あなたとお子さんを殺して、死体を埋めるためにですよ)。画家と称してまんまとその部屋に入り込んだ。妻にはクラブで遅くなると嘘…