『挑発する少女小説』斎藤美奈子(河出新書) 少女小説9篇について、大人の目で、そして現代の目で読み直したものです。わたしが少女小説を好きなのは、思春期特有の繊細な心理描写であったり、健気で凜とした芯の通った主人公が格好いいからであったりしま…
『英語文章読本』阿部公彦(研究社) 文章読本とはあるものの、作文指南でも名文案内でもなく、英文の特徴をとっかかりにした作品鑑賞というべきものです。同じ著者による『英詩のわかり方』と同様、わかりやすく書こうとしているのか却ってまどろっこしく、…
『トラベル・ミステリー聖地巡礼』佳多山大地(双葉文庫) 名作トラベル・ミステリーの現場を訪れ、現地に則して作品を紹介しつつ、作品の現代的意義などでまとめた紀行書評です。 好きな評論家であり、編者を務めた『線路上の殺意 鉄道ミステリ傑作選〈昭和…
『死刑執行人の苦悩』大塚公子(角川文庫)★☆☆☆☆ 前書きも何もなくいきなり本文が始まります。なぜ本書を書くにいたったのかという動機も何もないため、スタートから取り残されてしまいました。 取り残されたところに、死刑執行が秘密裡におこなわれるのは「…
『本と幸せ』北村薫(新潮社)★★★☆☆ 自作朗読CD付き。 各種媒体に発表された短めの書評が中心となっているので、通常のエッセイ集だと思って読むと統一感もないし、内容的に物足りなさを感じる文章もありました。 それはそれとして。 北村薫の文章をいつか…
『小説という毒を浴びる 桜庭一樹書評集』桜庭一樹(集英社) 各種媒体に発表した解説、読書日記、書評、対談を収録。 「解説」 もっとも“重要な”少女小説ということで『甘い蜜の部屋』『第七官界彷徨』『聖少女』の名が挙げられていますが、「重要」の意味…
『翻訳問答2 創作のヒミツ』鴻巣友季子編著(左右社) 一冊通して片岡義男との対談だった『1』とは違い、本書では作品ごとに5人の作家と対談しています。一章ごとに対談相手が違うとやはり不完全燃焼気味に感じるようなところがありました。 「I AM A CAT…
『読書で離婚を考えた。』円城塔・田辺青蛙(幻冬舎文庫) 夫婦作家である二人がお互いに薦めた本を読んでその本についてのエッセイを書く読書リレーです。 てっきり読書感想文や書評による往復書簡なのかと思っていたのですが、のっけから二人とも課題図書…
自己啓発本でした。「第I章 道徳の猥褻さ」 「1 タダ乗り偽善」 男女の「口先ばかりで何もしてくれない」という言い争いを例に、道徳とは自分が得するために他人に押しつけるものだと唱え、そういうときにはなぜ相手にそれを求めるのか自分の内側を点検し…
『翻訳問答 英語と日本語行ったり来たり』片岡義男×鴻巣友希子(左右社) 片岡義男と鴻巣友希子が翻訳について対談したり名作の一部を訳し合ったりしています。この手の本はひどいものだとただの思い出話だったり抽象論だったりするのですが、お二人とも訳し…
2004年以降の書評エッセイを中心に編まれた作品集です。 冒頭からではなくまずは岸本佐知子との対談から読みました。「女子にお勧め」というテーマなのに全然そんな感じじゃなくて笑えます(^^;。読んだことのあるのは『世界の涯まで犬たちと』とハムルス…
作家・上橋菜穂子が誕生するまでの、幼いころの思い出から研究者としての経験を経てデビューするまでを綴った、エッセイ風インタビュー集。 わたしが期待したような、書物にまつわる記述は意外と少なく、文字通り生い立ちの記録といった内容でした。作家の伝…
桜庭一樹読書日記その3。 ジョン・サザーランドの「謎」シリーズ(pp.12~17)は、古典のペーパーバック用の気軽な解説を集めたものだったんですね。 近藤史恵は好きな作家なのだけれど、時代小説『にわか大根』はいまいちでした。が、12ページのK島氏によ…
『日本の1/2革命』池上彰・佐藤賢一(集英社新書) フランス革命を二段階の革命と捉え、対して日本は明治維新以来いまだ1/2の革命史か経験していない――という佐藤氏の持論に基づく対談集。初版は2011年6月の発行なので、民主党による政権交代と東日本…
去る三月に亡くなった久世光彦氏の書評集。第一部がいきなり《名文句を読む》である。久世氏の名文と名文句で綴られる、名文句についての書評。こんなぜいたくな話はないんではないでしょうか。当然のごとく、引かれる名文句は、久世氏の文章に負けぬ強者た…
カンブリア紀の大爆発はなぜ起きたのか? この生命進化史の謎に迫るのが本書である。原題『In the Blink of an Eye』Andrew Parker,2003年。読みやすい科学読み物。ノンフィク系って文芸にくらべるとまだまだ訳文が硬いイメージがあったのだけれど、本書は…
「金嬉老元服役囚 女性を脅し逮捕」(北海道新聞 2000年9月4日) 「金嬉老が身元引受人僧侶と『絶縁』していた!」(週刊文春 2000年1月20日新春特別号) 本書を読んで感銘を受けたわたしにとって、この二つのニュースは正直に言ってショックだった。しかし…
探偵小説についての評論ほど面白いものはない!と言ってしまう。なにしろ30章全編が名探偵の推理によるクライマックスなのだ。こんなことを言うと、探偵小説内における「探偵の論理」と「現実の論理」を一緒にしてもらっちゃ困ると怒られるかもしれないけれ…
これは面白い。類書がないだけに、今でもこのジャンルの通史かつ入門書として高い価値を有しています。あまりに本格ミステリ寄りの著者の体質が気になりはするけれど。 でもフランスにはもともと本格ミステリなんて少ないから、紹介しているのはミステリ作家…
鴻巣氏の翻訳がらみのエッセイ集。ということで読んでみたのですが、翻訳「小説」(史)についての話と「翻訳」そのものについての話が半々といったところです。 「翻訳」そのものについてもっと筆を割いてほしかったなァ。新書という性質上やむを得ないのだ…
鴻巣氏の翻訳がらみのエッセイ集。ということで読んでみたのですが、翻訳「小説」(史)についての話と「翻訳」そのものについての話が半々といったところです。 「翻訳」そのものについてもっと筆を割いてほしかったなァ。新書という性質上やむを得ないのだ…