『夏、19歳の肖像 新装版』島田荘司(文春文庫)★★☆☆☆

『夏、19歳の肖像 新装版』島田荘司(文春文庫) 昭和! 青春の甘酸っぱさよりも、昭和のおっさん臭さを感じてしまいました。実際、三十代の男が十五年前を回想しているという設定なので、おっさん臭いのも仕方ありません。 入院中に窓の外の家を覗き見ると…

『屋上』島田荘司(講談社文庫)★★★★☆

『屋上』島田荘司(講談社文庫) 『屋上の道化たち』(2016)の改題文庫化です。 U銀行の屋上には、作者をはじめ関係者が次々と怪死しているという曰くつきの盆栽が並べられていました。ある日、行員の岩木俊子が盆栽に水をやりに屋上に行って転落死します…

『ゴーグル男の怪』島田荘司(新潮文庫)★★★★☆

『ゴーグル男の怪』島田荘司(新潮文庫) 解説にもあらすじにも一切書かれてはいませんが、2011年のNHKドラマ『探偵Xからの挑戦状!』の同名原作をもとに加筆して長篇化したものです。 ドラマ原作集に収録されていた短篇の方は、何が何でも奇想を見せちゃる…

『鳥居の密室 世界にただ一人のサンタクロース』島田荘司(新潮社)★☆☆☆☆

京大時代の御手洗が登場する進々堂シリーズの長篇です。 数ある御手洗もの長篇のなかでもぶっちぎりの失敗作でした。 ぼくという語り手が透明すぎて存在感がなく、地の文でも心情をほとんど発することがないため、小説といよりも御手洗の台詞だけが書かれた…

『奇想、天を動かす』島田荘司(光文社文庫)★★★★☆

あまりにも強烈な作品ゆえに動機もトリックもはっきりと覚えてはいたのですが、改めて再読です。便山や主任のような絵に描いたようなクズ警官がいるから相対的に吉敷の身勝手が薄まっていますが、消費税殺人という動機に納得できないからという理由だけで単…

『セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴』島田荘司(新潮文庫nex)★★★☆☆

「セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴」 ――教会で突如倒れた老婆。死に隠れたロシアの秘宝。横浜・馬車道に事務所を移した御手洗潔と石岡は、ある老婦人の訪問を受ける。名探偵への冷やかし客かと思われた彼女の話を聞いた御手洗は、しかしその出来事を“…

『新しい十五匹のネズミのフライ ジョン・H・ワトソンの冒険』島田荘司(新潮社)★★★☆☆

島田荘司によるホームズ・パロディ二作目です。 本書のベースになっているのは『四つの署名』と「赤毛組合」。冒頭でその〈真相〉に触れられつつ、この事件がワトソンの筆で語り直されるところまでが前半です。語り直される――と言っても、内容はほぼ原作通り…

『仮面病棟』知念実希人(実業之日本社文庫)★★★★☆

島田荘司氏が選考委員を務める「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」受賞者による、第五作。 一言で言えば、人質監禁サスペンスの皮をまとった本格ミステリです。 拳銃を持った立てこもり犯の異常性の恐怖に怯えながら(受動的サスペンス)、犯人から身を…

『御手洗潔と進々堂珈琲』島田荘司(新潮文庫nex)★★☆☆☆

『進々堂世界一周 追憶のカシュガル』改題。「進々堂ブレンド 1974」★☆☆☆☆ ――ぼくの名前はサトル。京大を目指して浪人中だ。京大のそばに「進々堂」という珈琲店があって、御手洗さんという人から有意義な話を聞けるのだ。風邪気味だったぼくが借りた喉スプ…

『アルカトラズ幻想』(上・下)島田荘司(文春文庫)★★★★★

猟奇事件からなる第一章、学術論文からなる第二章、アルカトラズの監獄生活からなる第三章、「パンプキン王国」からなる第四章、解決編のエピローグ、以上全5部からなる奇想天外なミステリです。御手洗ものではありません。 第一章「意図不明の猟奇」では、…

『ダ・ヴィンチ』2016年6月号【「御手洗潔」特集】

「島田荘司ロングインタビュー」 目新しいことはあまりありませんでしたが、「(御手洗を)将来的には帰国させてもいいと思っているんですよ」「やっぱり書いていて石岡君がいないと、寂しい」といううれしい一言が! その一方で「『屋上の道化たち』を書い…

『星籠の海(上・下)』島田荘司(講談社)★★★☆☆

面白い! ぶ厚い上下巻を一気読み……ではありますが、御手洗ものなのに大トリックがないのが物足りません、食い足りません。 対黒船兵器「星籠」の謎よりも、辰巳洋子が起こした狂言強盗の意外な展開と真相がミステリ的には一番の見どころでした。でもこれ、…

『写楽 閉じた国の幻』(上・下)島田荘司(新潮文庫)★★★☆☆

皮肉な見方をすれば、なるほど島田荘司だからこそ思いつけた真相だなあ、と。コインパーキングにまで日本人論を持ち出すところはさすがに失笑しましたが。 歌麿の記述を傍証にして写楽の正体を比定してゆく手つきは、推理作家ならではの跳躍力のある手並み。…

『探偵Xからの挑戦状3』貫井徳郎他(小学館文庫)

「殺人は難しい」貫井徳郎 ★★★☆☆ ――拓馬が浮気をしているのではないかという疑いに駆られて携帯をチェックすると、ミホから何通ものメールが届いていた。 テレビドラマ前提なのに、敢えてこういう叙述ものっぽい作品にするとは、ドラマ版も見てみたい気にさ…

『天に還る舟』島田荘司・小島正樹(南雲堂SKKノベルス)★★★☆☆

あとがきも何もないので作品ができるまでの経緯も何も不明ですが、読んだ感触では、『御手洗くんの冒険』と同じように、原案・島田荘司、執筆・小島正樹という組み合わせなのかな、と感じました。 『火刑都市』事件を解決して妻とともに休暇で秩父を訪れてい…

『嘘でもいいから誘拐事件』島田荘司(集英社文庫)★★★☆☆

「嘘でもいいから誘拐事件」★★★☆☆ ――軽石三太郎とボクらは、「こんばんワン」と鳴く犬を求めて東北の秘境、鬼首村に乗り込んだ。レポーターの美穂ちゃんがロープウェイから姿を消し、オニから身代金が要求された……。 ロープウェイからの人間消失という謎は魅…

『確率2/2の死』島田荘司(光文社文庫)★★★☆☆

プロ野球スター・プレーヤーの子供が誘拐された! 身代金は一千万円。犯人の指示で赤電話から赤電話へ、転々と走り回る吉敷刑事。が、六度目の電話を最後に、犯人は突然、身代金の受け取りを放棄、子供を解放。釈然としない捜査一課。犯人の目的は何か? 誘…

『蝶の夢 乱神館記 アジア本格リーグ4』水天一色/大澤理子訳(講談社)★★★★☆

中国ミステリ。 期待していませんでしたが、かなりよかったです。これまでの四作のうちではベストでしょう。 解説を読んでみると、インターネットで欧米や日本の新本格の海賊版翻訳を読み、テレビで『コナン』や『金田一少年』を観て育ったまったく新しい世…

『美術館の鼠 アジア本格リーグ3』李垠/きむふな訳(講談社)★★☆☆☆

韓国ミステリ。 これはわたしには読むのが辛かった。 「(韓国人名に馴染みのないせいで)登場人物の名前が覚えにくい」+「どんな人物なのかが文章からだけでは窺い知れない」+「翻訳文が教科書的」なせいで、男も女も若者も年寄りもみんな同じに見えるう…

『二つの時計の謎 アジア本格リーグ2』チャッタワーラック/宇戸清治訳(講談社)★★★★☆

『The Time for Dead』Jattawaalak,2007年。 タイ・ミステリ。アジア本格リーグの第一弾二作目。作者名のアルファベット表記がジャバウォッキーみたいでやたらとかっこいい。ホームズもの『四つの署名』のタイ語訳題をそのままペンネームにしたそうです。 …

『錯誤配置 アジア本格リーグ1』藍霄/玉田誠訳(講談社)★★★☆☆

『錯置體』藍霄,2004年。 しばらく前から動きのあったアジアの本格ミステリ紹介が「島田荘司選」の名のもとに、とうとう形になって刊行されました。講談社というのがびっくり。もっとマイナーな出版社の気がしていました。 第一弾は台湾ミステリ。 何という…

『島田荘司全集2』島田荘司(南雲堂)★★★☆☆

全集第二巻は、超傑作!という作品はないけれど、いい意味でバラエティに富んでいる作品集です。『寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁』★★★☆☆ ――双眼鏡で覗きをしていた男が、豪華マンションの浴室で顔の皮をはがされた若い女の死体を発見! だが、割り出された…

『Classical Fantasy Within 4〜7(第二部)』島田荘司(講談社BOX)★★☆☆☆

なんだこりゃ(^ ^;。 別に「ファンタジー」ってこういうことではないと思うのですが。。。『ネジ式ザゼツキー』とか『リベルタスの寓話』とかみたいなのでいいのに。神話の英雄譚か何かをイメージしているのかもしれませんが、これではただのとんちクイ…

『御手洗潔対シャーロック・ホームズ』柄刀一(創元推理文庫)★★★★☆

「青の広間の御手洗」★★★☆☆ ――ストックホルム大学からのファックスを読んで、私の口はあんぐりと開いてしまった。ノーベル賞! 御手洗のチームの受賞が決定したのだ。 初出は『御手洗潔攻略本』。いかにも「最近の」島田御大が書きそうな話ではあるが、どう…

『Classical Fantasy Within 第三話 火を噴く龍』島田荘司(講談社BOX)★★★★☆

戦争が激しくなってきて、日本人論もますます激化してくる。母の様子はますますおかしくなってゆく。 取りあえず第一部完だそうです。ミステリ的には怪力光線砲の正体が何なのか、でしょうか。改めてみると「ミツグ伯父さん」と片仮名で(しかもあらすじ文で…

『Classical Fantasy Within 第二話 怪力光線砲』島田荘司(講談社BOX)★★★★☆

いよいよ怪力光線砲が動き出す! あまりにもあまりな展開なので、ファンタジーなのか?SFなのか?と不安になる。ヘタなサスペンスよりよっぽど緊張する。 さすがに人は複製されなかったみたいなので、ミステリなのだろうなとひとまずほっとしたのですが。 …

『Classical Fantasy Within 第一話 ロケット戦闘機「秋水」』島田荘司(講談社BOX)★★★☆☆

戦時中が舞台、子どもが語り手を務める。軍人を父に持ち、母はモンペをはかずに着物姿、いまだに軍からもらった米の飯を食べている等々のため、町内からは疎まれ恨まれている。戦時中が舞台であるため、これまで以上に日本人論が説得力を持っている点が目を…

『島田荘司 very best 10』島田荘司(講談社BOX)★★★☆☆

チープさには定評のある講談社BOXだけど、こういうのならありかな、と思いました。この分厚さでパステルな真っ黄色と真っ青の組み合わせだと、チープさが活かされてます。チープなのには変わりないんだけどさ。 読者セレクトが「数字錠」「糸ノコとジグザ…

『21世紀本格宣言』島田荘司(講談社文庫)★★★☆☆

これまで以上に寄せ集め感が強い。本格ミステリー観はこれまでの繰り返しだし。 読みどころは、福山文学館が選ぶ島田作品に寄せた自作解説、文庫解説として書かれた作家論、金田一少年問題あたりか。 『御手洗潔攻略本』掲載の「御手洗潔、その時代の幻」の…

『リベルタスの寓話』島田荘司(講談社)★★★★☆

「リベルタスの寓話」★★★★☆ ――中世クロアチアの自治都市、ドゥブロブニク。ここには、自由の象徴として尊ばれ、救世主となった「リベルタス」と呼ばれる小さなブリキ人間がいた――。ボスニア・ヘルツェゴヴィナの一都市モスタルで、心臓以外の臓器をすべて他…


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