『カンディード』ヴォルテール/斉藤悦則訳(光文社古典新訳文庫)★★★☆☆

新訳ということで、「いやー」「あ、どうぞ」「このバカ殿」といった俗っぽい表現が用いられています。 解説者も訳者もこの作品の現代的な意義を力説していますが、本書における思想的な対立の存在しない現代のこの日本でアクチュアルな作品だと言い張るのは…

『不思議屋/ダイヤモンドのレンズ』フィッツ=ジェイムズ・オブライエン/南條竹則訳(光文社古典新訳文庫)

新訳を機に再チャレンジしたものの、やはり苦手な作家でした。「ダイヤモンドのレンズ」(The Diamond Lens,Fits-James O'Brien,1858)★★★☆☆ ――うんと幼い頃から、わたしの関心は顕微鏡で見る世界の研究に向けられていた。長じてから医学を修めるという名…

『崩れゆく絆』チヌア・アチェベ/粟飯原文子訳(光文社古典新訳文庫)★★★★☆

『Things Fall Apart』Chinua Achebe,1958年。 アフリカ文学の父と称されるナイジェリア作家の代表作の新訳です。 意図するとせざるとにかかわらず、現代日本人の目から見ると、第一部はファンタジー小説として読めてしまうようなところがありました。アフ…

『砂男/クレスペル顧問官』ホフマン/大島かおり訳(光文社古典新訳文庫)★★★★☆

オペラ『ホフマン物語』の原典となった三篇の新訳。「砂男」(Des Sandmann,E. T. A. Hoffmann,1816)★★★★★ ――「さあ、子どもたち! ベッドへ! 砂男がきますよ」婆やが話してくれた砂男というのがほんとうの話ではないと悟るほどの年齢にはなっていたけれ…

『ひとさらい』ジュール・シュペルヴィエル/永田千奈訳(光文社古典新訳文庫)★★★☆☆

『Le Voleur d'enfants』Jules Supervielle,1926年。 自己欺瞞を認めようとしないロリコンが苦悩するという狂気の内容を、なぜかリリカルに描いた変態小説。 裕福な家庭の息子アントワーヌは、母から直接的な愛情をふんだんに受けたことはなく、プレゼント…

『地底旅行』ジュール・ヴェルヌ/高野優訳(古典新訳文庫)★★★★☆

『Voyage au centre de la terre』Jules Verne,1864年。 高野優氏による大胆な古典新訳ヴェルヌ第二弾。「リーデンブロック教授とガイドのハンスはドン・キホーテとサンチョ・パンサである」という解釈のもとに、常識人である甥のアクセルが教授の無茶苦茶…

『ピグマリオン』バーナード・ショー/小田島恒志訳(光文社古典新訳文庫)★★★★★

『Pygmalion』George Bernard Show,1912年。 映画『マイ・フェア・レディ』の原作として名高い、というべきか、著名な劇作家バーナード・ショーの代表作として有名な、というべきか、いずれにしても古典的名作『ピグマリオン』が文庫化されました。 古典新…

『消しゴム』アラン・ロブ=グリエ/中条省平訳(光文社古典新訳文庫)★★★★☆

『Les Gommes』Alain Robbe-Grillet,1953年。 定められた逃れられない運命に向かって、細部の異なる複数の視点によって進んでゆく、探偵小説的な物語です。 「消しゴム」や「新聞」や「なぞなぞ」といったピースでゆるく繋がっている断章。すべてが円環状に…

『月を見つけたチャウラ ピランデッロ短篇集』ルイジ・ピランデッロ/関口英子訳(光文社古典新訳文庫)★★★★☆

ピランデッロというから戯曲のような不条理・実験系のものを予想していたのですが、かなり幅広い作風の作品が集められていました。大気のなかでしか飛べない幾多の奇想作家の翼とは違い、著者の空想の翼は宇宙まで旅しています。 「月を見つけたチャウラ」(…

『ブラス・クーバスの死後の回想』マシャード・ジ・アシス/武田千香訳(光文社古典新訳文庫)★★★★☆

『Memórias Póstumas de Brás Cubas』Machado de Assis,1881年。 死者が語る「とんでもなくもおかしい」物語というから、古くさい風刺文学かと期待せずにいたら、無茶苦茶でした(^^;。序文でスターンの名が挙げられていますが、むべなるかな。ただしな…

『フランケンシュタイン』メアリ・シェリー/小林章夫訳(光文社古典新訳文庫)★★★★★

『Frankenstein: Or, The Modern Prometheus』Mary Shelley,1831年。 ホラーの古典ですが、「おれを哀れと思わない人間に、なぜおれが哀れみをかけなければいけない?」というあたりの怪物の告白・訴えを読むと、差別やいじめや正義の問題についての記述に…

『盗まれた細菌/初めての飛行機』ウェルズ/南條竹則訳(光文社古典新訳文庫)

H・G・ウェルズ(Herbert George Wells)のユーモア小説を集めた短篇集。 「盗まれた細菌」(The Stolen Bacillus,1894)★★★☆☆ ――コレラ菌の標本を無政府主義者に盗まれた細菌学者は必死で後を追うが……。 内容自体は他愛もないのですが、着の身着のままで…

『天来の美酒/消えちゃった』A・E・コッパード/南條竹則訳(光文社古典新訳文庫)

「消えちゃった」(Gone Away,1935)★★★★★ ――三人の男女がスピードの速い自動車に乗って、フランスを旅していた。ジョン・ラヴェナムと妻のメアリー、友人のアンソンという三人連れで。メアリーが地図を見ながらたずねた。「どのくらい走ったの、ジョン?」…

『グランド・ブルテーシュ奇譚』オノレ・ド・バルザック/宮下志朗訳(光文社古典新訳文庫)

「グランド・ブルテーシュ奇譚」(La Grande Bretèche,Honoré de Balzac,1832)★★★★☆ ――「ルニョーと申します。ヴァンドームで公証人をしております。失礼ですが、グランド・ブルテーシュの庭に散歩に行かれるのは、りっぱな犯罪ですぞ……」メレ伯爵夫人は…

『母アンナの子連れ従軍記』ベルトルト・ブレヒト/谷川道子訳(光文社古典新訳文庫)★★★★☆

ハヤカワ演劇文庫と光文社古典新訳文庫から文庫で戯曲が出されるようになって、ずいぶんと戯曲を手に取りやすくなりました。 この劇のなかで、運命が占いによってあらかじめ定められているのは、どういう意味があるのだろう。型といえば型なんだろうけれど。…

『八十日間世界一周』(上・下)ジュール・ヴェルヌ/高野優訳(光文社古典新訳文庫)★★★★☆

『Le tour du monde en quatre-vingts jours』Jules VERNE,1873年。 古典新訳文庫のなかには、わざわざ新訳しなくてもいいだろうというような作品もあるのですが、これもなぜ『八十日間世界一周』の新訳を?と不思議な感じがしました。ですが、解説・あとが…

『黄金の壺/マドモワゼル・ド・スキュデリ』E・T・A・ホフマン/大島かおり訳(光文社古典新訳文庫)★★★★☆

『Der Goldene Topf/Das Fräulein von Scuderi』E. T. A. Hoffmann。 幻想小説一篇に探偵小説一篇に音楽小説二篇という組み合わせ。「黄金の壺」(Der Goldene Topf,1814)★★★★★ ――美しい金緑色の蛇に恋した大学生アンゼルムスは非現実の世界に足を踏み入…

『愚者が出てくる、城寨が見える』ジャン=パトリック・マンシェット/中条省平訳(光文社古典新訳文庫)★★★★★

『Ô Dingos, Ô Châteaux!』Jean-Patrick Manchette,1972年。 おかしな邦題は、ランボーのもじりらしい原題を、中也訳ランボーでもじったものとのこと。〈古典新訳文庫〉というブランドが確立されているからこそ採用できたんでしょうね、単発でこの邦題は勇…

『天使の蝶』プリーモ・レーヴィ/関口英子訳(光文社古典新訳文庫)★★★☆☆

『Storie Naturali』Primo Levi,1966年。 イタリアの作家とそりが合わないのか、訳者とそりが合わないのかはわからないけれど、同じ古典新訳文庫の『猫とともに去りぬ』もこの『天使の蝶』もどうにもピンとこない作品集でした。 巻頭「ビテュニアの検閲制度…

『永続革命論』レフ・トロツキー/森田成也訳(光文社古典新訳文庫)★★★★☆

『Перманентная Революция』Лев Давидович Троцкий,1930年。 評論というよりは、批判に対する反論という形なので、どうかなと思っていたのだけれど、かえって読みやすかった。この思想に賛同するかどうかを抜きにして、ディベートを楽しむみたいな楽しみ方…

『オンディーヌ』ジャン・ジロドゥ/二木麻里訳(光文社古典新訳文庫)★★☆☆☆

『Ondine』Jean Giroudoux,1939年。 「いま、息をしている言葉で」がキャッチコピーの古典新訳文庫ではありますが、これまた思い切った翻訳をしたものです。これまでの古典新訳文庫でいちばんの冒険かも。 というのも何しろ、これではオンディーヌがほとん…

『狂気の愛』アンドレ・ブルトン/海老坂武訳(光文社古典新訳文庫)

『L'amour for』André Breton,1937年。 難しいな。というより理解できん。 たとえば第三章なんて比較的わかりやすいんですよ。書かれてある内容を理解する、という意味においては。口絵の芸術作品についての解説みたいなところもあるので。しかし、である。…

『宝島』ロバート・ルイス・スティーヴンスン/村上博基訳(光文社古典新訳文庫)★★★★★

『Treasure Island』Robert Louis Stevenson,1883年。 小さいころに学習漫画みたいなもので読んだ記憶はおぼろげにあるのだけれど、もしかするとタイトルが同じだけの別物だったのかもしれない。もっと腕白少年メインの夏休みもの的な冒険譚だと思ってまし…

『寄宿生テルレスの混乱』ローベルト・ムージル/丘沢静也訳(光文社古典新訳文庫)

「ボーイズラブの古典」て(^^;。そりゃそう書いた方が売れるんだろうけどさ。

『人はなぜ戦争をするのか エロスとタナトス フロイト文明論集2』ジークムント・フロイト/中山元訳(光文社古典新訳文庫)★★★☆☆

『Warum Krieg?』Sigmund Freud。 フロイト文明論集2ということですが、その1の『幻想の未来/文化への不満』と比べると、文明論というよりただの精神分析の傾向が強かった。 タイトルは魅力的なんだけどな。でも戦争という相手がでかすぎるのか、なんだ…

『芸術の体系』アラン/長谷川宏訳(光文社古典新訳文庫)★★★☆☆

『Système des Beaux-Arts』Alain,1920年。 一冊の芸術論・思想書というよりも、どちらかというと芸術に関する各論、思い切って『芸術ハンドブック』と呼んでみてもいいような本だと思う。音楽に興味があるなら音楽の章から読んでもいいし、彫刻に興味があ…

『肉体の悪魔』レーモン・ラディゲ/中条省平訳(光文社古典新訳文庫)★☆☆☆☆

『Le Diable au Corps』Raymond Radiguet,1923年。 なんだこりゃ。 一読20世紀の作品だとは信じられません。なぜこれが絶賛を浴びたのかということは、訳者の解説を読めばわかりますが……。わかりますけど……。 三島やコクトーが絶賛というのも(悪い意味で)…

『幼年期の終わり』アーサー・C・クラーク/池田真紀子訳(光文社古典新訳文庫)★★★☆☆

『Childhood's End』Arthur C. Clarke,1953・1990年。 第一章を書き替えた新版の邦訳。といっても変更箇所はほとんどないそうです。まえがきで「だって、これはフィクションなのだから!」などとわざわざ断っているのがクラークらしい。 初めて読んだのだけ…

『1ドルの価値/賢者の贈り物』O・ヘンリー/芹澤恵訳(光文社古典新訳文庫)★★★☆☆

すっかり「ちょっといい話」っぽいイメージのついてしまったO・ヘンリーだけど、今改めて紹介されれば異色短篇作家っぽくていいかもしれない。 けれど訳者の意図はそういうことではなくて、ニューヨーク以外を舞台にした初期の知られざる作品を紹介しようと…

『知への賛歌 修道女フアナの手紙』ソル・フアナ/旦敬介訳(講談社古典新訳文庫)★★☆☆☆

『Las Cartas y una Selecsión de Poemas de Sor Juana de la Cruz』Sor Juana Inés de la Cruz。 スペイン語圏及びアメリカでは名高い17世紀メキシコの詩人、とのこと。 だけど編集方針に釈然としない。 詩がちょびっとだけで、あとは手紙と解説ってのは……?…


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