『カラマーゾフの兄弟 全5巻』ドストエフスキー/亀山郁夫訳(光文社古典新訳文庫)★★★☆☆ 『Братья Карамазовы』Ф. М. Достоевский,1880年。 『罪と罰』と並ぶドストエフスキーの代表作、ではありますが、曲がりなりにも初めからピカレスクや犯罪小説風の…
『梁塵秘抄』後白河法皇編纂/川村湊訳(光文社古典新訳文庫) 梁塵秘抄の超訳です。「今様」とは「現代風」「当世風」という意味なのだから、「現代風」に現代語訳しようという試みは評価できます。過去に『桃尻語訳 枕草子』や『恋ノウタ』や『チョコレー…
『罪と罰3』ドストエフスキー/亀山郁夫訳(光文社古典新訳文庫)★★★★☆ 『Преступление и наказание』Федор Михайлович Достоевский,1866年。 最終巻も第2巻と同様に雑多なエピソードが集まっていますが、第2巻ほど散漫な印象はなく、一つ一つのエピソー…
『罪と罰2』ドストエフスキー/亀山郁夫訳(光文社古典新訳文庫) 『Преступление и наказание』Федор Михайлович Достоевский,1866年。 2巻はかなり取っ散らかっていました。 前巻でドラマチックに登場した母と妹ですが、家族の口からもラスコーリニコフ…
『罪と罰1』ドストエフスキー/亀山郁夫訳(光文社古典新訳文庫) 『Преступление и наказание』Федор Михайлович Достоевский,1866年。 冒頭で「あれ」の実行を前に逡巡する主人公ラスコーリニコフの姿は、なるほど倒叙ミステリのようで、そういう評価が…
『アラバスターの壺/女王の瞳 ルゴーネス幻想短編集』ルゴーネス/大西亮訳(光文社古典新訳文庫) 『El vaso de alabastro/Los ojos de la reina』Leopoldo Lugones。 日本オリジナルの傑作選。河出文庫『ラテンアメリカ怪談集』にルゴネスの表記で「火の…
『千霊一霊物語』アレクサンドル・デュマ/前山悠訳(光文社古典新訳文庫) 『Les Mille et un fantômes』Alexandre Dumas,1849年。 角川文庫の怪奇小説アンソロジーに「蒼白の貴婦人」が単独で訳載されていたので、てっきり本書も怪奇小説短篇集だと思い込…
『L'Assassinat du Pont-Rouge』Charles Barbara,1855年。 “フランス版『罪と罰』”というのは単なるキャッチコピーなので措いておいて。 金のために自分を殺して働いているだけで恩人をすら軽蔑しているというのは、極端ではあるけれど、むしろ大多数の人間…
新訳ということで、「いやー」「あ、どうぞ」「このバカ殿」といった俗っぽい表現が用いられています。 解説者も訳者もこの作品の現代的な意義を力説していますが、本書における思想的な対立の存在しない現代のこの日本でアクチュアルな作品だと言い張るのは…
『不思議屋/ダイヤモンドのレンズ』フィッツ=ジェイムズ・オブライエン/南條竹則訳(光文社古典新訳文庫) 新訳を機に再チャレンジしたものの、やはり苦手な作家でした。「ダイヤモンドのレンズ」(The Diamond Lens,Fits-James O'Brien,1858)★★★☆☆ ――…
『Things Fall Apart』Chinua Achebe,1958年。 アフリカ文学の父と称されるナイジェリア作家の代表作の新訳です。 意図するとせざるとにかかわらず、現代日本人の目から見ると、第一部はファンタジー小説として読めてしまうようなところがありました。アフ…
『砂男/クレスペル顧問官』ホフマン/大島かおり訳(光文社古典新訳文庫) オペラ『ホフマン物語』の原典となった三篇の新訳。「砂男」(Des Sandmann,E. T. A. Hoffmann,1816)★★★★★ ――「さあ、子どもたち! ベッドへ! 砂男がきますよ」婆やが話してく…
『ひとさらい』ジュール・シュペルヴィエル/永田千奈訳(光文社古典新訳文庫) 『Le Voleur d'enfants』Jules Supervielle,1926年。 自己欺瞞を認めようとしないロリコンが苦悩するという狂気の内容を、なぜかリリカルに描いた変態小説。 裕福な家庭の息子…
『地底旅行』ジュール・ヴェルヌ/高野優訳(古典新訳文庫) 『Voyage au centre de la terre』Jules Verne,1864年。 高野優氏による大胆な古典新訳ヴェルヌ第二弾。「リーデンブロック教授とガイドのハンスはドン・キホーテとサンチョ・パンサである」とい…
『Pygmalion』George Bernard Show,1912年。 映画『マイ・フェア・レディ』の原作として名高い、というべきか、著名な劇作家バーナード・ショーの代表作として有名な、というべきか、いずれにしても古典的名作『ピグマリオン』が文庫化されました。 古典新…
『Les Gommes』Alain Robbe-Grillet,1953年。 定められた逃れられない運命に向かって、細部の異なる複数の視点によって進んでゆく、探偵小説的な物語です。 「消しゴム」や「新聞」や「なぞなぞ」といったピースでゆるく繋がっている断章。すべてが円環状に…
ピランデッロというから戯曲のような不条理・実験系のものを予想していたのですが、かなり幅広い作風の作品が集められていました。大気のなかでしか飛べない幾多の奇想作家の翼とは違い、著者の空想の翼は宇宙まで旅しています。 「月を見つけたチャウラ」(…
『Memórias Póstumas de Brás Cubas』Machado de Assis,1881年。 死者が語る「とんでもなくもおかしい」物語というから、古くさい風刺文学かと期待せずにいたら、無茶苦茶でした(^^;。序文でスターンの名が挙げられていますが、むべなるかな。ただしな…
『Frankenstein: Or, The Modern Prometheus』Mary Shelley,1831年。 ホラーの古典ですが、「おれを哀れと思わない人間に、なぜおれが哀れみをかけなければいけない?」というあたりの怪物の告白・訴えを読むと、差別やいじめや正義の問題についての記述に…
H・G・ウェルズ(Herbert George Wells)のユーモア小説を集めた短篇集。 「盗まれた細菌」(The Stolen Bacillus,1894)★★★☆☆ ――コレラ菌の標本を無政府主義者に盗まれた細菌学者は必死で後を追うが……。 内容自体は他愛もないのですが、着の身着のままで…
「消えちゃった」(Gone Away,1935)★★★★★ ――三人の男女がスピードの速い自動車に乗って、フランスを旅していた。ジョン・ラヴェナムと妻のメアリー、友人のアンソンという三人連れで。メアリーが地図を見ながらたずねた。「どのくらい走ったの、ジョン?」…
「グランド・ブルテーシュ奇譚」(La Grande Bretèche,Honoré de Balzac,1832)★★★★☆ ――「ルニョーと申します。ヴァンドームで公証人をしております。失礼ですが、グランド・ブルテーシュの庭に散歩に行かれるのは、りっぱな犯罪ですぞ……」メレ伯爵夫人は…
ハヤカワ演劇文庫と光文社古典新訳文庫から文庫で戯曲が出されるようになって、ずいぶんと戯曲を手に取りやすくなりました。 この劇のなかで、運命が占いによってあらかじめ定められているのは、どういう意味があるのだろう。型といえば型なんだろうけれど。…
『Le tour du monde en quatre-vingts jours』Jules VERNE,1873年。 古典新訳文庫のなかには、わざわざ新訳しなくてもいいだろうというような作品もあるのですが、これもなぜ『八十日間世界一周』の新訳を?と不思議な感じがしました。ですが、解説・あとが…
『Der Goldene Topf/Das Fräulein von Scuderi』E. T. A. Hoffmann。 幻想小説一篇に探偵小説一篇に音楽小説二篇という組み合わせ。「黄金の壺」(Der Goldene Topf,1814)★★★★★ ――美しい金緑色の蛇に恋した大学生アンゼルムスは非現実の世界に足を踏み入…
『Ô Dingos, Ô Châteaux!』Jean-Patrick Manchette,1972年。 おかしな邦題は、ランボーのもじりらしい原題を、中也訳ランボーでもじったものとのこと。〈古典新訳文庫〉というブランドが確立されているからこそ採用できたんでしょうね、単発でこの邦題は勇…
『Storie Naturali』Primo Levi,1966年。 イタリアの作家とそりが合わないのか、訳者とそりが合わないのかはわからないけれど、同じ古典新訳文庫の『猫とともに去りぬ』もこの『天使の蝶』もどうにもピンとこない作品集でした。 巻頭「ビテュニアの検閲制度…
『Перманентная Революция』Лев Давидович Троцкий,1930年。 評論というよりは、批判に対する反論という形なので、どうかなと思っていたのだけれど、かえって読みやすかった。この思想に賛同するかどうかを抜きにして、ディベートを楽しむみたいな楽しみ方…
『Ondine』Jean Giroudoux,1939年。 「いま、息をしている言葉で」がキャッチコピーの古典新訳文庫ではありますが、これまた思い切った翻訳をしたものです。これまでの古典新訳文庫でいちばんの冒険かも。 というのも何しろ、これではオンディーヌがほとん…
『L'amour for』André Breton,1937年。 難しいな。というより理解できん。 たとえば第三章なんて比較的わかりやすいんですよ。書かれてある内容を理解する、という意味においては。口絵の芸術作品についての解説みたいなところもあるので。しかし、である。…