『黒いダイヤモンド』ジュール・ヴェルヌ/新庄嘉章訳(文遊社)★★★☆☆

SF

『Les Indes noires』Jules Verne,1877年。 かつて〈黒いインド〉と呼ばれ炭坑町として栄えた、スコットランド地方。そんな炭鉱町のひとつアーバーフォイルでは十年前に石炭を掘り尽くし、今では廃坑となっていた。ところが技師のジェームズ・スターの許に…

『二年間のバカンス』ジュール・ヴェルヌ/横塚光雄訳(集英社文庫)★★☆☆☆

SF

『Deux ans de vacances』Jules Verne,1888年。 従来『十五少年漂流記』の邦題でお馴染みの、ヴェルヌ代表作の一つです。 ページを開くと、嵐のなか漂流している少年たちが必死で船の操縦を試みているところからスタートします。そして次々と(文字通り)顔…

『チャンセラー号の筏』ジュール・ヴェルヌ/榊原晃三訳(集英社文庫)★★★★★

SF

『Le Chansellor』Jules Verne,1875年。 ジュール・ヴェルヌ作品の面白さは誰もが認めるところですが、物語が佳境に入るまでが停滞しているというのも、ときに指摘される欠点でした。 その欠点を見事にクリアしているのが本書です。 8人の乗客と14人の乗組…

『気球に乗って五週間』ジュール・ヴェルヌ/手塚伸一訳(集英社文庫)★★★☆☆

SF

『Cinq semaines en ballon: voyage de découvertes en afrique par trois anglais』Jules Verne,1863年。 記念すべき驚異の旅シリーズ第一作です。 果敢な冒険に沸き立つ人々と、無謀だと反対する友人。冒頭からすでに後年のヴェルヌらしさが見られます。 …

『アドリア海の復讐』(上・下)ジュール・ヴェルヌ/金子博訳(集英社文庫)★★★☆☆

SF

『Mathias Sandorf』Jules Verne,1885年。 冒頭でデュマ・フィスに(というよりもその父親に?)捧げられており、デュマ・フィス自身も父親の『モンテ・クリスト伯』の名前を出してそれに答えています。デュマの『モンテ・クリスト伯』はめっぽう面白い作品…

『インド王妃の遺産』ジュール・ヴェルヌ/中村真一郎訳(集英社文庫)★★★★☆

SF

『Les 500 millions de la Bégum』Jules Verne,1879年。 インド王の未亡人と結婚していた大伯父/大叔父の遺産を受け継いだ二人の科学者が、それぞれの理想を掲げて都市を築きます。フランス人科学者サラザン博士は人間が長生きできる衛生的な都市フランス…

『短篇ベスト10』スタニスワフ・レム(国書刊行会 レム・コレクション)

読者投票および編者および著者によって選ばれたベスト15の原書から、2015年現在日本語での入手が容易な『未来学会議』『完全な真空』収録作を除いた全10篇が収録されています。収録順は原書通り、読者投票の人気順。 ちょっと思ってたのと違いました。ノ…

『タイムリープ あしたはきのう』(上・下)高畑京一郎(電撃文庫)★★★☆☆

SF

意識だけがタイムトリップするという設定が珍しいのですが、そのほうが矛盾なく辻褄を合わせるには好都合で、そうでもなければここまで複雑なことはできなかったでしょう。 主人公の翔香は危険が身に迫ると無意識に安全な時間に移動してしまうため、一週間を…

『黒い破壊者 宇宙生命SF傑作選』中村融編(創元SF文庫)★★★★☆

「狩人よ、故郷に帰れ」リチャード・マッケナ/中村融訳(Hunter, Come Home,Richard Mackenna,1963)★★★★☆ ――この惑星じゃ木は死にやしない。だから薪で火を熾すことができない。恐獣グレート・ラッセルを殺した者だけが、成人男子と見なされた。だが人口…

『緑の光線』ジュール・ヴェルヌ/中村三郎・小高美保訳(文遊社)★★★☆☆

SF

『緑の光線』(Le Rayon-vert,Jules Verne,1882)★★★☆☆ ――サムとシブ・メルヴィル兄弟の生き甲斐は、姪のミス・キャンベル(ヘレーナ)を幸福にしてやることだった。ミス・キャンベルの結婚相手として二人のめがねにかなったアリストビューラス・ウルシク…

『S-Fマガジン700 国内篇』大森望編(ハヤカワSF文庫)★★☆☆☆

書籍初収録を多数収録。「緑の果て」手塚治虫(1963)★★★☆☆ ――最終戦争によって全滅した地球から、からくも逃げのびたわれわれは、密雲の下にある草ばかりの星に着陸した。 なぜ擬態するのか――?という謎に対する解答が、極めて合理的で、単なる「奇想」では…

『S-Fマガジン700 海外篇』山岸真編(ハヤカワSF文庫)★★★☆☆

SFマガジン700号記念のアンソロジー海外篇。著者短篇集に未収録の作品(単行本未収録作品も含む)が選ばれています。敢えて超有名作家のものばかり選んだという方針が残念。 「遭難者」アーサー・C・クラーク/小隅黎訳(Castaway,Arthur C. Clarke,194…

『地底旅行』ジュール・ヴェルヌ/高野優訳(古典新訳文庫)★★★★☆

『Voyage au centre de la terre』Jules Verne,1864年。 高野優氏による大胆な古典新訳ヴェルヌ第二弾。「リーデンブロック教授とガイドのハンスはドン・キホーテとサンチョ・パンサである」という解釈のもとに、常識人である甥のアクセルが教授の無茶苦茶…

『洞窟で待っていた』松崎有理(岩崎書店 21世紀空想科学小説)★★★☆☆

岩崎書店と日本SF作家クラブが組んだジュヴナイルシリーズの一作。 地下道ならぬ洞窟好きの少年少女に、「『へむ』へむさん」なる漫画も登場する、ちょっとしたファンサービスも。 妙に細かい蘊蓄を除けば、子どもたちが世界を救うという変哲のないジュヴ…

『ジャンガダ』ジュール・ヴェルヌ/安東次男訳(文遊社)★★★☆☆

SF

『La Jangada』Jules Verne,1881年。 前半は娘の結婚式のため筏に乗ってアマゾン川を下って町を目指すという、正直に言って冒険小説としてもお世辞にも面白いとは言えない内容でした。 それが後半に入って一転します。何と父親は冤罪をかけられた脱獄囚。無…

『無限のドリフター』樹常楓(電撃文庫)★★★☆☆

SF

SFマガジンで紹介されていた「J・G・バラードの小説が好きなの。この人はとても心地のいい終わりを書く人でね。」という台詞に惹かれて購入。この台詞に代表されるように(※ほかにスタージョンの九割クズ発言を「サド格言」という記述もあり。)、著者の…

『海へ出るつもりじゃなかった アーサー・ランサム全集7』神宮輝夫訳(岩波書店)★★★★☆

『We Didn't Mean To Go To Sea』Arthur Ransom,1937年。 航海から帰ってくるおとうさんに会いに、ハリッジにやって来たウォーカー一家。そこで若者ジム・ブラディングと知り合い、ウォーカー兄弟たちはジムの船に泊まって川上りをすることに。だがジムがガ…

『All You Need Is Kill』桜坂洋(集英社スーパーダッシュ文庫)★★★★☆

SF

ループもの。ギタイと呼ばれる生物(?)を倒す一日を繰り返すようになってしまったキリヤ・ケイジ。何度も、何度も、何度も、戦闘を繰り返し、そのたび仲間を殺され、自分も死に、戦女神リタに助けられ……ギタイの正体とループの理由(植民惑星開発のための…

『R&R』静月遠火(メディアワークス文庫)★★★★☆

タイムリープもの。同じ一日を繰り返すため、何度も試行錯誤を繰り返すその過程と「真相」さがしが、謎解きミステリにも通じる面白さです。そして一気に伏線が回収されるクライマックスは、真相ではないというひねり具合。 ゴールデンウイーク明けの5月7日、…

『ブラックアウト』コニー・ウィリス/大森望訳(新ハヤカワSFシリーズ5005)★★★★☆

『Blackout』Connie Willis,2010年。 いくつもウィリス作品を読んでくると、ストーリーをコメディで引き伸ばす、というウィリスの技法にはどうにも食傷気味。ではあるのだけれど、本書の場合にはそれが大戦下のイギリス、ロンドンをじっくり描くことにもつ…

『第六ポンプ』パオロ・バチガルピ/中原尚哉・金子浩訳(早川書房 新ハヤカワSFシリーズ5002)

『Pump Six and Other Stories』Paolo Bacigalupi,2008年。 『ねじまき少女』のパオロ・バチガルピ第一短篇集の全訳。 『S-Fマガジン』で既読の作品をのぞく五篇を読む。 「ポケットのなかの法《ダルマ》」(Pocketful of Dharma,1999)★★★★☆ ――浮浪少年…

『リヴァイアサン クジラと蒸気機関』スコット・ウエスターフェルド/小林美幸訳(新ハヤカワSFシリーズ5001)★★★☆☆

『Leviathan』Scott Westerfeld,2009年。 オーストリア皇太子夫妻が「毒殺」された世界――遺伝子操作によって機械ではなく生物を発達させたイギリス等と、蒸気機関を発達させたドイツ諸国。 命を狙われ逃亡する皇太子夫妻の息子アレクサンダー(アレック)と…

『あがり』松崎有理(創元日本SF叢書01)★★★★★

SF

第一回創元SF短編賞受賞作「あがり」を含むデビュー作品集。一時期の新本格ミステリは学生ミステリばかりだったけれど、キャンパスSFというのは意外と未開拓かも。「あがり」のインパクトが大きいので同じようなSFオチのある話を期待してしまいました…

『21世紀東欧SF・ファンタスチカ傑作集 時間はだれも待ってくれない』高野史緒編(東京創元社)★★★★★

SFはともかくファンタスチカとはなんぞや?ということになりますが、SF・ファンタジー・幻想小説その他いろいろすべて引っくるめた非リアリズム系の作品だと思えば、当たらずとも遠からず、でしょうか? 編者は例としてレム、エリアーデ、カフカ、チャペ…

『θ 11番ホームの妖精』籐真千歳(アスキー・メディアワークス電撃文庫)★★★★☆

SF

帯の紹介文に書かれた「ハードSF」という言葉に初めはピンと来ませんでしたが、改めて思い返してみれば、なるほど確かにすべてが理詰めです。例えば、かめはめ波を押し戻されて、それを「波〜!」の気合いだけで押し返すというような、強引なシーンはあり…

『地球の静止する日』ハリー・ベイツ他/南山宏・尾之上浩司訳(角川文庫)★★★☆☆

角川文庫の背表紙デザインがまた変わった。誰も望んでないのにね。昔のみたいにヘボくなって懐かしい。 アンソロジーなのに各篇扉に著者名がなくタイトルだけというデザインが斬新。映画原作ものだから、原作者ではなく映画化名をアピールしたのかと思ったの…

『マザーズ・タワー』吉田親司(早川書房Jコレクション)★★★☆☆

SF

『S-Fマガジン』で序章を読んだかぎりでは、ヒロインのために寄り集まった男たちが奮闘する冒険ものだと思ったのだけれど、メインは別のところにありました。 カバーあらすじにも書かれているからバラしてしまうけれど、この小説の肝は「軌道エレベーター…

『おもいでエマノン』鶴田謙二/梶尾真治原作(徳間書店リュウコミックス)★★★★★

原作者も漫画家もお互いに思い入れがあるだけあって、初めからこの原作は本書のためだけに存在していたかのような完成度です。 「女性がタバコを吸うのはよくないと思うよ(中略)第一 あまり見た目がよくないよ…」という台詞はありながら、ほれぼれするくら…

『世界の涯まで犬たちと』アーサー・ブラッドフォード/小川隆訳(角川書店)★★★★☆

『Dogwalker』Authur Bradford,2001年。 『SFマガジン』ではケリー・リンクやジュディ・バドニッツやミルハウザーの名が引き合いに出されていたが、もっとヘンテコでシュールでアホである。「キャットフェイス」(Catface)★★★★☆ ――ぼくは部屋をシェアし…

『虐殺器官』伊藤計劃(早川書房Jコレクション)★★★★★

SF

フィクションという形でだからこそ最大限効果的に現実を描き出すという当たり前のことを、デビュー作で軽々とやってしまいました。 執拗なほど事細かな迫真の戦闘描写、カフカやゴドーになぞらえられる不条理なスパイ活動、くだらないジョーク、超管理社会と…


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