『出世の首 ヴァーチャル短篇集』筒井康隆(角川文庫)★★★★☆

「空想の起源と進化」★★★☆☆ ――「若い作家というものは未完成のほんものである。老大家というものは完成されたにせものである」文壇バーでなぜそんなことをわめきはじめたのか。おれはトイレに逃げ出した。おれは川にウンコして……岩のかげからナミが顔を出し…

『くさり ホラー短篇集』筒井康隆(角川文庫)★★★★★

「生きている脳」★★★☆☆ ――死にかけている彼の病室の中は、今、叫び声であふれていた。「あの家はわたしのものです」「だまれ。だまれ。おまえなんかに」彼は医者に泣きついた。「先生。わたしが死んだら会社も財産も競走で食いつぶされてしまう。助けてくだ…

『佇むひと リリカル短篇集』筒井康隆(角川文庫)★★★★★

「ぐれ健が戻った」★★★☆☆ ――あれがおれの家だ。六年ぶりの帰宅だった。「ただいま」妹の節子が茶の間から走り出てきて笑顔になった。「お父ちゃん。健兄ちゃんが帰ってきた」「健か。やっぱり戻ってきたか。入ってこいといってやれ」 こういう古くさい人情ヤ…

『夜を走る トラブル短篇集』筒井康隆(角川文庫)★★★★★

帯に「精神力に自信のない方は読むと危険です!」だなんて書かれているから、どんなオソロシイ話が収められているのかと思ったら、これまでの短篇集のなかで一番笑える。「経理課長の放送」★★★★★ ――って言ったって素人なんだから無理でね。せめて正午までで…

『如菩薩団 ピカレスク短篇集』筒井康隆(角川文庫)★★★☆☆

「コレラ」★★★★☆ ――この記録の筆者、つまり私は、この記録を発表することに、いささかのためらいを感じるものである。なぜならこの記録の内容が、カミュ『ペスト』に酷似しているからなのである。 のっけから笑わしてくれるうえに、全然『ペスト』じゃないの…

『陰悩録 リビドー短篇集』筒井康隆(角川文庫)★★★☆☆

「欠陥バスの突撃」★★★★☆ ――中年男がシートから立ちあがってわめいた。乗客からは〈色情〉という名を与えられていた。〈サラリーマン根性〉が反論する。〈老人〉が割って入った。 深層心理を擬人化し、はやる気持をバスにたとえ、バスそのものがモノそのもの…

『日本以外全部沈没 パニック短篇集』筒井康隆(角川文庫)★★★★☆

「日本以外全部沈没」★★★☆☆ ――地球規模の地殻変動で、日本を除くほとんどの陸地が海没してしまった。各国の大物政治家はあの手この手で領土をねだり、邦画出演を狙うハリウッドスターは必死で日本語を学ぶ。 筒井康隆は色褪せないと思っていたのだけれど、こ…

『ヨッパ谷への降下 自選ファンタジー傑作集』筒井康隆(新潮文庫)★★★★★

「薬菜飯店」★★★★★ ――その店のメニューを見た瞬間、ぐび、とおれののどが鳴った。長ったらしい料理の名前がまことに刺戟的であった上、その効能が現在のおれのからだの具合が悪いところすべてに関係していたからである。 夢のような料理である。もしも病気が…

『ポルノ惑星のサルモネラ人間 自選グロテスク傑作集』筒井康隆(新潮文庫)★★★★☆

「ポルノ惑星のサルモネラ人間」★★★★★ ――地球から学術調査隊が訪れたポルノ惑星で、美人隊員の島崎博士が妊娠した! 原因は妖草ゴケハラミ。その処置を原住民に聞き出しに向かったおれが見た、奇怪な動植物の数々。 これぞ筒井康隆!なハチャメチャワールド…


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