『エソルド座の怪人 アンソロジー/世界篇 異色作家短篇集20』若島正編(早川書房)★★★★☆

「容疑者不明」ナギーブ・マフフーズ/今本渉訳(Didd Majhul,Naguib Mahfouz,1962)★★★★★ ――異常は特になく、捜査の糸口になりそうなものも見当たらなかった。被害者の男性は縊られたとみて間違いない。担当刑事は隅々まで物色したが得るものはなかった。…

『棄ててきた女 アンソロジー/イギリス篇 異色作家短篇集19』若島正編(早川書房)★★★★☆

派手さのない、じっくり読める作品が多い。カーシュとかエイクマンとか、個性的な作家がいてもかすんでしまうほど、落ち着いた雰囲気の作品集でした。「時間の縫い目」ジョン・ウィンダム/浅倉久志訳(Stitch in Time,John Windham,1961)★★★★☆ ――ハロル…

『狼の一族 アンソロジー/アメリカ篇 異色作家短篇集18』若島正編(早川書房)★★★★★

収録作家の名前だけ見ると、もっとSFっぽい作品集なのかな、と思っていたのだが、読んでみれば意外と『異色作家短篇集』ぽかった。どうしたって何某かの先入観を持って読んでしまうため、拍子抜けしたり意外だった作品もあったが楽しめた。「ジェフを探し…

『壁抜け男 異色作家短篇集17』マルセル・エイメ/中村真一郎訳(早川書房)★★★★★

『Le Passe-Muraille et Le Vin de Paris』Marcel Aymé。 収録作七編中四編は、他の出版社から出ている文庫にも収録されているので新味はないけれど、中村真一郎の訳もよい。「壁抜け男」(Le Passe-Muraille)★★★★★ ――モンマルトルのオルシャン街七五番地乙…

『嘲笑う男 異色作家短篇集16』レイ・ラッセル/永井淳訳(早川書房)★★☆☆☆

「サルドニクス」(Sardonicus)★★★☆☆ ――サルドニクス城は九十九折りの山道を登りつめた行きどまりに位置していた。長身の男を一瞥しただけで、一瞬のうちに多くのことが理解された。わたしの目の前に現れた男は、何かの恐ろしい病気のために、唇が常に開い…

『メランコリイの妙薬 異色作家短篇集15』レイ・ブラッドベリ/吉田誠一訳(早川書房)★★★☆☆

『A Medicine for Melancholy』Ray Bradburry,1959年。「穏やかな一日」(In a Season of Calm Weather)★★★★☆ ――ジョージ・スミスとアリス・スミスは、ひと泳ぎして砂のうえで甲羅を干していた。「お願いですから休養してくださいな。たしかにピカソは来て…

『虹をつかむ男 異色作家短篇集14』ジェイムズ・サーバー/鳴海四郎訳(早川書房)★★★★★

「虹をつかむ男」(The Secret Life of Walter Mitty)★★★★☆ ――「行くと言ったら行くんだ!」中佐の声は割れるような響きだった。「とても無理です。艦長」シリンダーの音が速さを増す。タ・ポケタ・ポケタ・ポケタ……「そんなに飛ばさないで!」妻の声で我に…

『レベル3 異色作家短篇集13』ジャック・フィニイ/福島正実訳(早川書房)★★★★☆

ほとんどすべての作品で、同じようなアイデアが核になっているんだけれど、そんなの全然気にならない。ノスタルジー、ロマンス、ユーモア、優しさ、温かさ。肯定的なことばかりの小説があったっていい。『The Third Level』Jack Finney,1957年。「レベル3…

『夜の旅その他の旅 異色作家短篇集12』チャールズ・ボーモント/小笠原豊樹訳(早川書房)★★★★★

ハヤカワ文庫『幻想と怪奇』に収録された二作(第一短篇集より)はそれほどいいとは思えなかったのでまったく期待していなかったのだけれど、めちゃくちゃよかった。著者は『ミステリー・ゾーン』の脚本も担当していたそうで、本書には実際いかにも『ミステ…

「一角獣の泉」「ビアンカの手」シオドア・スタージョン/小笠原豊樹・若島正訳(『一角獣・多角獣 異色作家短篇集3』『海を失った男』より)★★★★★

再読です。以前に読んだときよくわからないところがあったので時間をおいて再チャレンジしてみました。やっぱりわからなかったけど。以下、ネタバレというかあらすじバレです。「一角獣の泉」(The Silken-Swift)★★★★☆ ――デルはリタに夢中だった。リタにか…

『特別料理 異色作家短篇集11』スタンリイ・エリン/田中融二訳(早川書房)★★★☆☆

原題『Mystery Stories』Stanley Ellin,1958年。 あまりにも有名な「特別料理」「決断の時」などを除けば、以外と普通のショート・ミステリの書き手でした。もっと“重い”作家だという印象があったので構えて読み始めたのですが、拍子抜けするほどまっとうな…

『破局 異色作家短篇集10』ダフネ・デュ・モーリア/吉田誠一訳(早川書房)★★★★★

「アリバイ」(Alibi)★★★★★ ――ジェイムズ・フェントンは石段をのぼり、ベルを押した。「部屋を貸していただきたいんです」(あなたとお子さんを殺して、死体を埋めるためにですよ)。画家と称してまんまとその部屋に入り込んだ。妻にはクラブで遅くなると嘘…

『無限がいっぱい 異色作家短篇集9』ロバート・シェクリイ/宇野利泰訳(早川書房)★★★★★

原題『Notions:Unlimited』Robert Sheckley,1960年。「グレイのフラノを身につけて」(Gray Flannel Armor)★★★☆☆ ――トマス・ハンリーは一見常識人らしい外貌を示しているが、その皮膚の下にはロマンチックな血潮が打ち騒いでいる青年である。だがロマンス…

『血は冷たく流れる 異色作家短篇集8』ロバート・ブロック/小笠原豊樹訳(早川書房)★★★★☆

「芝居をつづけろ」(The Show Must Go On)★★★★☆ ――かれが行ったときは休憩時間で、劇場のとなりの居酒屋は混んでいた。酔っぱらいがからんできた。役に没入したままムードを壊さず劇場に行かなければならない。 芝居=ショウ。意外な結末を演出するためち…

『キス・キス 異色作家短篇集1』ロアルド・ダール/開高健訳(早川書房)★★★★☆

「女主人」(The Landlady)★★★★☆ ――ビリイ・ウィヴァーが訪れた下宿は破格の値段だった。四十五〜五十がらみの女主人がいるほかは、客の一人もいないようだ。宿帳には二人の名前しかない。確かこの名前には見覚えがあるのだが……。 結末なんて誰にでも予想が…

『炎のなかの絵 異色作家短篇集7』ジョン・コリア/村上啓夫訳(早川書房)★★☆☆☆

“異色作家”の中では正統派に属する作家だと思います。軽妙で正統的な落とし話を得意とする作家――だと思っていたのですが、意外といろいろなタイプの作品があります。でもやっぱり面白いのは軽くてオチのある話でした。「夢判断」(Interpretation of a Dream…

『13のショック 異色作家短篇集4』リチャード・マシスン(早川書房)★★★★☆

「ノアの子孫」(The Children of Noah) ――夜中の三時、田舎道を走らせていたケチャム氏は、スピード違反でパトカーに止められる。警官は罰金を払わせるそぶりも見せずに、ケチャム氏を警察署に連れて行った。のらりくらりとした尋問が続き、解放される気配…

『くじ 異色作家短篇集6』シャーリイ・ジャクスン(早川書房)★★★★★

「酔い痴れて」(The Intoxicated) ――彼が酔いを覚ますために台所に行くと、若い娘がコーヒーを淹れるところだった。 どこかしらサリンジャー作品の一こまを読んでいるような、現代っ子の話(あくまで雰囲気だけですが)。思春期の子どもの、大人に対する怒…

『蠅(はえ) 異色作家短篇集5』ジョルジュ・ランジュラン(早川書房)★★★★☆

「蠅」(La mouche)――弟の妻から電話がかかってきた。夫を殺したから警察に連絡してほしい――。弟は工場の機械で頭をぺしゃんこに潰されていた。妻は白い頭の蠅を探したりと要領を得ない。いったい何が起こったのか。 キワモノホラー&人間ドラマ映画『ザ・…

『一角獣・多角獣 異色作家短篇集3』シオドア・スタージョン(早川書房)★★★★★

いわずと知れた『異色作家短篇集』の新装版。装丁が凝りまくっていていかにもコンプリートしたくなる。原題『E Pluribus Unicorn』。「一角獣の泉」(The Silken-Swift)――デルはリタに夢中だった。リタにからかわれているとも知らずに。バーバラは一角獣を…


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