『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ トム・ストッパードIII』トム・ストッパード/小川絵梨子訳(ハヤカワ演劇文庫42) 『Rosencrantz and Guildenstern are dead』Tom Stoppard,1966年。 シェイクスピアの本篇ではハムレットの陰謀(?)の犠牲…
続・ハロルド・ピンター全集とでもいうべき、後期戯曲集が演劇文庫から全3巻で刊行。全集も文庫化してほしいなあ……。 「温室」(The Hothouse,Harold Pinter,1980)★★★★★ ――病院とおぼしき国営収容施設。患者6457号が死に、6459号が出産していたという報告…
『Caligula』Albert Camus,1958年。 確かに傑作ではあるのだけれど、こういうのが若い人に今売れる、というのが時代の危うさを感じて嫌である。「カリギュラへの批判的な視点」を読み取らずに、字面だけ都合よく解釈するような人たちが、やれ革命だやれ不条…
「海の沸点」★★★★☆ ――男は国体で日の丸を燃やし抗議した。戦争中の悲惨な集団自決はなぜ起きたのか、なぜ自分の土地を米軍施設が占拠するのか……。(カバー裏あらすじより) 沖縄の人間が読んだらまた違った印象を受けるのかもしれないけれど、標準語圏の人間…
読んだあとで感想を途中までメモっていたのに続きをメモるのを忘れてしまったらしく、自分が読んでさえ何だかわかりません。でも★5つ付けているし、面白かったことは確かです。 昭和17年を最後に、それからはカットバック風に舞台は進み、昭和21年になって…
『L'Alouette』Jean Anouilh,1953年。 異端審問官の「人間狩り」という言葉がグロテスクだなあ。「神」ではなく「人間」主体(自己・自意識)の発言は、異端という文脈ではあるのだが、今の目で読むとやはりどきりとする。 ジャンヌ・ダルクに近代的個を見…
北村薫『謎のギャラリー』にも収録されているものを、そのまま底本にして再刊、しかも北村薫解説という、何だかわからない本である。まあ『謎ギャラ』は早くも絶版だというのもあるんだろうけど。 ところで、解説で竹中半兵衛のことを当時は常識だったみたい…
サローヤンは三浦朱門のとんでも訳ととんでも解説で読んだだけなので、かなりイメージが悪い作家だった。今回改めて読んでみたけれど、やはりあまり好きではない。「わが心高原に」(My Heart's in the Highlands,William Saroyan,1939)★☆☆☆☆ ――貧しい父…
タレントとしての顔、女優としての顔、脚本家としての顔、すべてにおいて同じイメージをもたらす確乎たる個性とスタンスというのは見事なものだ、と思うけれど、あまり好きではない。「光る時間」★★☆☆☆ ――老親との家族旅行先でくつろいでいると、見知らぬ客…
「壊れた風景」★★★☆☆ ――食べ物からパラソルに蓄音器まで用意された素敵なピクニックの場に通りがかった他人同士。不在の主に遠慮していたはずだ、ついひとつまみから大宴会へ。無責任な集団心理を衝いて笑いを誘う快作「壊れた風景」。(裏表紙あらすじより)…
何よりもこれが戯曲だということに驚きました。映画のシナリオとかじゃないんだものなあ。「読んで」いるだけじゃあわかりづらいけれど、初めて舞台で実際に見た人たちはびっくりしただろうなあ。いや逆にこれは見るより読む方が適しているかも。町とか家と…
これはさすがに「読む」のには無理があるなあ。登場人物が多い群像劇だもの。ストーリーの起伏は少ないくせに、登場人物の出入りは激しいので、読んでいるとこんぐらかってくる(^_^;。 舞台の上で世界を構築するのではなく、舞台というフレームで日常を…
これまではどちらかと言えば、いわば古典の文庫化が占めていた演劇文庫に、バリバリの現役作家作品が初単行本化でお目見えです。「屋根裏」★★★★★ ――狭く天井の低い、閉ざされた空間「屋根裏キット」。これを使って人々は現実から身を守ろうとする。不登校や…
冷たい言い方をすればウィリアムズの戯曲は「負け犬の遠吠え」。ロマンチックな言い方をすれば、マッチ売りの少女の見た夢。どん底の人間があげる呻きや叫び。「しらみとり夫人」(The Lasy of Larkspur Lotion,1941)★★★☆☆ ――家賃支払を迫られ、南米に所有…
読み出してしばらくしてから気づいた。映画版を観たことがあった。これほどすっかり忘れていることなんて珍しい。よほど印象に残らなかったのか、年のせいか。 映画版でいえば、『おかしな二人』では神経質なジャック・レモンにいらいらさせられる役のウォル…
「署名人」★★★★★ ――讒謗律に触れる新聞雑誌の署名や投獄を、大金で肩代わりする署名人。民権運動の憂国の志士と同房に……。(裏表紙あらすじより) 素晴らしいな。安部公房に絶賛されたというのもむべなるかな。真っ先に連想したのが安部公房の戯曲だった。 …
『The Zoo Story and the Other storiy』Edward Albee。「動物園物語」(The Zoo Story,1959)★★★☆☆ ――「あのね、動物園へ行ってきたんだ!」「は?……私に話しかけたんですか?」「動物園へ行ってね、ここまで歩いてきたんですよ。こっちは北ですか?」「北…
ウォルター・マッソーとジャック・レモン主演の映画を見たことがありました。神経質なフィリックスを演じるジャック・レモンがあまりに適役すぎて、オスカーを演じるウォルター・マッソーに同情してしまい、それほど無邪気には笑えなかった記憶があります。 …
今となっては、アメリカに暮らす、ごく当たり前の家族のお話でした。ほとんど私小説的自然主義文学。だからこそ胸を打たれる、ということもあるだろうし、だからこそ退屈だ、ということもあるだろう。わたし自身はこの手のアメリカ的父親像自体に否定的なの…