『The Collected Works of Billy the Kid』Michael Ondaatje,1970年。 全仕事とはいうものの、もちろんビリー・ザ・キッドに著作があるわけではありません。ビリー・ザ・キッドが書いた架空の詩というアイデアを出発点に、写真やインタビューや証言や他人の…
『Земная ось』Валерий Яковлевич Брюсов,1911年。 「地下牢」(В подземной тюрьме,1901-1905) ――征服された軍司令官の娘はスルタンの大宰相になびこうとしなかったため、地下牢に入れられた。牢番に犯され、殴られたが、マルコという青年受刑者と恋に落…
『Memento Mori』Muriel Spark,1959年。 歳を取れば丸くなる。脂っ気がなくなる。――そんなのは嘘です。 何しろ本書に登場する老人たちは、揃いも揃ってわがままで生に執着しています。恋の鞘当てみたいな場面まであって、すべての場面の後ろに(年齢)をつ…
『Die Dritte Kugel』Leo Perutz,1915年。 レオ・ペルッツの第一長篇。ということで、その後の作品に見られるような、予言と逃れられぬ運命といったパターンがすでに現れていました。 小説のなかでわざわざ描かれた呪いですから、成就するに決まっていると…
『Die Andere Seite, Ein phantastischer Roman』Alfred Kubin,1909年。 日常への突然の来訪者から始まり妻とのやり取りや旅路を経て、「夢の国」を目の当たりにするまで百ページ近く。非現実を訪れるまでの手続きを律儀に踏む古いタイプの小説だと思ったら…
ルドルフ二世について書くために蒐集家の心理を取材しようと語り手が訪れたのは、プラハに住むマイセン磁器の蒐集家カスパール・ヨアヒム・ウッツだった――とくれば、蒐集についての偏執狂的な情熱とエピソードが語られるのだ、とばかり思っていました。とこ…
『笑いの錬金術 フランス・ユーモア文学傑作選』[amazon]に「節酒の教え」「ダモクレスの剣」が掲載されているガブリエル・ド・ロートレックの短篇集。1920年発行。 「Les amours de Tom Joë」(トム・ジョーの恋)★★★☆☆ ――久しぶりに会ったトム・ジョーはげ…
「他人の体に」アルフォンス・アレ/竹内廸也訳(Dans la peau d'un autre,Alphonse Allais,1892)★★★☆☆ ――明け方になったもんだから、おれは降霊会を抜け出して、屍体公示所の前を通りかかった。そこで見た最初の屍体が、おれの恋人だったんだ。「あの娘…
「犬」フリードリヒ・デュレンマット/岩淵達治訳(Der Hund,Friedrich Dürrenmatt,1952)★★★★★ ――その町で早速目についたのは、聖書の文句を朗々と唱えているぼろ服をまとった男とそれを取り囲む人垣だった。足もとにいる巨大で恐ろしい犬に気づいたのは…