『ミレニアム・ピープル』J・G・バラード/増田まもる訳(創元SF文庫) 『Millennium People』J. G. Ballard,2003年。 20世紀の作家というイメージがあったので、9・11に影響を受けて2003年に書かれた作品だということに驚きました。 そうは言っても…
『ハロー、アメリカ』J・G・バラード/南山宏訳(創元SF文庫) 『Hello America』J. G. Ballard,1981年。 気候の大変動により灼熱の砂漠と化して崩壊したアメリカ。放射能漏れの原因究明と残された資源を求めてヨーロッパからニューヨークに上陸した探…
『半分世界』石川宗生(東京創元社) 『Cloven World and Other Stories』2018年。 第7回創元SF短編賞受賞作を含む四篇収録。ワンアイデアを提示してその設定をひたすら詳細に書き連ねるだけで、アイデアからの発展は何一つありません。出オチをどこまで…
『My Real Children』Jo Walton,2014年。 二つの過去を思い出す認知症の女性、という発端からは、ただの多重人格もの?という一抹の不安がよぎりました。けれど選択による分岐以前――パッツィの子ども時代を読んだだけで印象はがらりと変わります。 オックス…
『Wings of the Bones』2013年。 たった一人で、戦艦を含む百隻以上の飛行艦に戦いを挑む――。これだけ聞けば荒唐無稽としか思えません。こんな無謀な戦いが成り立っているのは、敵側が戦闘をまったく想定していないというのもあるでしょう。外部から据え置か…
『Sturgeon Is Alive And Well...』Theodore Sturgeon,1971年。 かつてサンリオSF文庫から刊行されていた『スタージョン健在なり』の改題復刊。 「ここに、そしてイーゼルに」(To Here and the Easel,1954)★★★☆☆ ――ここ岩塩坑では丸太棒が一か所につか…
『Among Others』Jo Walton,2011年。 イギリスがナチスに降伏した時代を描いた名作・ファージング三部作の著者による、ヒューゴー賞・ネビュラ賞・英国幻想文学大賞受賞作です。 まだ邦訳が出ていなかったころに、SFマガジンの英米受賞作特集で紹介されて…
『Somewhere A Voice』Eric Frank Russell,1965年。 2013年の復刊フェア本。短篇「ちんぷんかんぷん」でヒューゴー賞を受賞したイギリスの作家。78年歿。 「どこかで声が……」(Somewhere a Voice,1951)★★★★☆ ――ZM17第六惑星ヴァルミアに不時着したのは…
『結晶世界』J・G・バラード/中村保男訳(創元SF文庫) 『The Crystal World』J. G. Ballard,1966年。 バラード作品の印象を一言でいうなら「けだるさ」ということになるでしょうか。曇っているわけではないのにどんよりと暗いマタールの港は、その倦…
『黒い破壊者 宇宙生命SF傑作選』中村融編(創元SF文庫)「狩人よ、故郷に帰れ」リチャード・マッケナ/中村融訳(Hunter, Come Home,Richard Mackenna,1963)★★★★☆ ――この惑星じゃ木は死にやしない。だから薪で火を熾すことができない。恐獣グレート…
すべてが書籍初収録の、『時の娘 ロマンティック時間SF傑作選』に続く、時間SFアンソロジー第二弾。 「真鍮の都」ロバート・F・ヤング/山田順子訳(The City of Brass,Robert F. Young,1965)★★☆☆☆ ――ビリングスは定期的に時間を逆行して歴史的重要…
タイトルが気になって購入。表題作はそれほどでもありませんが、「地獄はみずから大きくなった」「あとで」「猫を描いた男」は傑作だと思います。 「みんな行ってしまう」(Everybody Goes)★★★☆☆ ――きのう男を見た。ぼくはマットとジョーイと三人で荒地から…
『Running Wild』J. G. Ballard,1988年。 新興住宅街で起こった何者かによる大人鏖殺と子ども誘拐事件。解決の目処も立たないまま、事件は首都警察精神医学副顧問グレヴィル博士に引き渡された――というミステリ仕立てで本書は幕を開けます。 まるで現実の猟…
創元のアンソロジーのシリーズ。今回は「ロマンティック」「時間SF」というかなり縛りのきつい作品集。こういうのはちょこっとあるからいいと思うんだけど……。ドがつくほどのロマンチストでないと、まとめて読むのはつらい。 「チャリティのことづて」ウィ…
『Billenium』J.G. Ballard,1962年。「至福一兆」(Billenium)★★★★☆ ――ウォードの部屋は四・五平方メートルあり、法規で定められた広さから〇・五平方メートル超過していた。こんな広い部屋が見つかるとは運がいい。人口は一年間で百万人ふえる計算で、居…
『幻詩狩り』なんていうタイトルのくせに、狩るのがメインではなくて、幻詩が生まれてから蔓延するに至るまでの物語でした。なかなか大胆な、と思ったものですが、あとがきを読むとなるほどもともとそういうアイディアから生まれた作品だったのか、と納得。 …
こういうタイプの作品は、どうしたって「バビロニア・ウェーブ」という設定を活かした展開を期待してしまいます。露骨な言い方をすれば、著者は何のためにこういう設定を採用したのかなっていうところに、SF作品的な必然性を期待してしまうわけです。 にも…
松尾たいこのカバー画も素敵な、もはや古典の初カップリング。「グリーン・レクイエム」(1980)★★★☆☆ ――子供の頃の記憶。まよいこんだ夕刻の山道。ピアノの音を頼りに辿りついた草原の先には古びた洋館と温室があり、そこで彼は“緑色の髪をした少女”に出会…
「過去が自在に変えられてしまう世界で、探偵に何ができるというのだろう?」という惹句から、ハードSF+本格ミステリみたいなのを期待していたのだけれど、実際にはSFアクション+俗流ハードボイルドだったというところで肩すかしを食ってしまいました…
ディック作品にはまるっきり人間味がありません。ディックのテーマからすれば当然――というより、もともとそういうオカシナ感性の持ち主だったからこそそんなテーマばかりを描いたんじゃないかって思えてきます。ディック作品を読んで思い浮かべるディックっ…
「趣味の問題」レイ・ブラッドベリ/中村融訳(A Matter of Taste,Ray Bradbury)★★★★☆ ――銀色の船が舞い降りてきた。われわれが友好的な態度で集まっているのに、誰も出てこようとはしない。われわれと性質が異なっているせいで恐れを成しているのかもしれ…
映画『サウンド・オブ・サンダー』公開に合わせた文字の大きな新装版。「「ウ」は宇宙船の略号さ」(R is for Rocket)★★☆☆☆ ――そのフェンスにぼくらは顔を押しつけて待っていた。宇宙船。早く大人になりたい。そして選抜してもらわなければ。ぼくはそれを待…
〈SF〉編の『反対進化』がそこそこ面白かったこともあって期待してたんですが……。〈怪奇幻想〉編とはいいつつ、ほとんどが〈秘境冒険〉編でした。カバーイラストは幻想的ですごくいいんですけどね。収録作は幻想的というより神話的なこってり味ファンタシ…