『紙魚の手帖』vol.13 2023 OCTOBER【第33回鮎川哲也賞&第1回創元ミステ短編賞】「第33回鮎川哲也賞 選評」辻真先・東川篤哉・麻耶雄嵩 麻耶氏の選評、「状況の深刻さよりも謎解きを優先するスタイルは個人的に好みです」だったり、「キャラクターのリアリ…
『驚愕遊園地 日本ベストミステリー選集』日本推理作家協会編(光文社文庫) 2010~2013年のあいだに発表されたミステリー短篇のなかから選ばれたアンソロジー。麻耶雄嵩による木更津もの「おみくじと紙切れ」目当てで購入しました。作家自選(の二作から編…
「中・後期クイーン座談会」有栖川有栖×綾辻行人×法月綸太郎×麻耶雄嵩(司会・千街晶之) 参加者が五十音順じゃないのが気になります。クイーンのことなら綾辻氏よりも有栖川氏ということなのか、有栖川氏の持ち込み企画なのか――。ライツヴィルの名は数年前…
新本格30周年を記念した〈名探偵〉がテーマの書き下ろしアンソロジー。シリーズ探偵を登場させたのは7人中4人。そのうえ真剣に取り組んだ作品というよりもお祭り用のやっつけ仕事が多く期待はずれでした。 「水曜日と金曜日が嫌い――大鏡家殺人事件――」麻耶…
自分好みの雑誌を作りあげるのは編者の特権ですが、自分語りが頻繁に顔を出すのは勘弁してほしかったところです。 「21世紀版奇想天外小説傑作選[海外篇]」「最上階に潜むもの」アーサー・モリスン/宮脇孝雄訳(The Thing in the Upper Room,Arthur Morr…
著者にしてはとんがってもいないし、犯人当ての趣向ゆえか問題編も地味だし、どういう作品なんだろうこれは……?と訝しみながら読み進めてゆきましたが、最後まで読めば派手でこそないもののやはり著者らしい一筋縄ではいかない作品でした。 「伊賀の里殺人事…
再読。講談社文庫版も持っているのですが、今回は集英社文庫版で読みました。 「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」(1992)★★★★☆ ――昨夜初めて紹介されたときには何も感じなかったのに、その日の佑美子はまったく違って見えた。遊歩道沿いの杉林のなかで、転…
「メルカトル・ナイト」麻耶雄嵩 ★★★★☆ ――作家の鵠沼美崎のところにトランプのカードが毎日一枚ずつ送られてきた。美崎のイメージカラーの赤に合わせて、ダイヤのKからカウントダウンされ、もうすぐハートのエースが近づいていた。不安を感じた美崎はメルカ…
100号記念でくらりシール付きです。「私の一冊」加納朋子 これは当然という感じで、北村薫『空飛ぶ馬』でした。 「心理的瑕瑾あり【問題編】法月綸太郎「紅葉の錦【解答編】」麻耶雄嵩 説明されると本当に単純な消去法なのでわからなかったのが口惜しい。本…
「紅葉の錦【問題編】」麻耶雄嵩 ――美作の温泉宿に卒業旅行に来た6人。そこにはチュウルウという神様の言い伝えがあり、山のふもとと頂上に二つの祠があった。チュウルウは洞窟を通って下の祠から上の祠に死者の魂を連れてゆくと言われていた。上の祠に行く…
金田一耕助を思わせるシルエット――語り手である斯峨優斗の叔父さんは、なんでも屋(という名のプー扱い)をやっていて、よく事件に巻き込まれるところまでかの名探偵にそっくり……と思いきや、巻き込まれるというより引き寄せていました。ぼさぼさの髪型がと…
何の関連性もない児童書と映画の特集に原リョウの小特集という合わせ技。テーマ特集ではなく編集者の好きなものを前面に押し出した感じでしょうか。おしりたんてい特集の翻訳作品は、なぜかフランス・ミステリ特集でした。「ひと組の男女」マルセル・エイメ…
『あいにくの雨で』麻耶雄嵩(集英社文庫) かなり以前に講談社文庫版で読んだときには、『翼ある闇』や『夏と冬の奏鳴曲』の派手さに隠れてまったく記憶に残っていませんでしたが、再刊を機に読み返してみたところ、充分ヘンテコでぶっとんでいました。 高…
『化石少女』麻耶雄嵩(徳間書店) 生徒会に部活を潰されそうになっている少女が、犯人は生徒会の人間に違いない!と決めつけて「推理」するが、後輩に諫められて――という趣向はともかく、その「推理」自体を楽しめば普通のミステリです。探偵の推理なんて1…
『さよなら神様』麻耶雄嵩(文藝春秋) あの問題作『神様ゲーム』の続編。「少年探偵団と神様」★★★★☆ ――「犯人は上林護だよ」俺、桑町淳の前で神様は宣った。二学期に越してきた鈴木太郎は、自分は神様だと言った。隣の小学校の青山先生が、帰宅途中に背中を…
『殺人者と恐喝者』カーター・ディクスン/高沢治訳(創元推理文庫) 『Seeing is Believing』Carter Dickson,1941年。 原書房の森英俊訳以来の再読。 再読なので不可能犯罪のメイントリックをすでに知っているというのがあるにしても、それがなくても「そ…
貴族探偵の続編。探偵は探偵するものでも推理するものでもなく、解決するもの、という存在は銘探偵のメルにも似ているけれど、放りっぱなしのメルとは違い召使が推理してくれる分こちらの方が親切、ではあります。 「白きを見れば」★★★★☆ ――亡くなった師匠の…
乱歩没後50周年だそうで、乱歩特集です。特に『人間豹』に焦点が当てられていて、こうした切り口の特集は編集者の意思が見えて好感が持てます。……とはいえ、「幻想と怪奇」特集すら日本勢に浸食されてしまっているのは悲しい。海外作品の紹介に力を注いだ…
麻耶雄嵩による的を射た解説がついているので、単行本で読んでピンと来なかった方も再読する価値はあります。 本格ミステリが論理もどきであるのなら、こんな裁判もどきも今までないのがおかしかった。ましてや推定無罪や検察側の立証責任なんていまだに日本…
「進々堂世界一周 戻り橋と悲願花」島田荘司 ★★☆☆☆ ――彼岸花を見て、御手洗さんがぼくに聞かせてくれた。戦争中に日本人に非道い目に遭わされた韓国人の話だった。彼岸花の球根には毒がある。ビョンホン少年は姉を乱暴したササゲを殺そうとしたが……。 学生の…
「食書」小田雅久仁 ★★★★☆ ――書店の横の便所の戸を開けると、女が便器の蓋を下ろし、その上に腰かけていた。本を読んでいるわけではない。女はそのページを破り取り、わしゃわしゃと丸めはじめたかと思うと、口に押しこみ咀嚼する様子だ。 本を食べて本の世…
「化石少女(4)移行殺人」麻耶雄嵩 ――廃部の危機にある叡電部は、しがらみのある嵐電部との合併を有利に進めるため、文化祭でポイントを稼ぎたがっていた。だが部員の一人がレールで頭を殴られ、製作途中の展示模型は無惨に壊されているのが見つかった。 本…
麻耶雄嵩の新作が載っていたので購入。「五十二年目の遠雷」伊予原新 ★★★★☆ ――「雷を探してくれ」探偵事務所を訪れた男性はそう言った。五十二年前に神社で起こった火災。火の気がないことから、放火か落雷が原因と思われていたが、それを改めて確かめてほし…
『化石少女』(3)「自動車墓場」麻耶雄嵩 ――考古学部の合宿にやって来たまりあと彰。化石の発掘現場でスコールに降られて合宿所に戻る途中、廃車のなかに、来るときにはなかった死体を発見した。 今回は今までにも増して説得力のないまりあの推理いいがかり…
「化石少女 第二話 真実の壁」麻耶雄嵩 ――まりあと彰が文化祭に向けてエディアカラ生物群のジオラマを作っていると、落雷とともに停電が起こった。照明が回復すると同時に、向かいの体育館の壁に人影が浮かび上がった。女子と思われる人影に短髪の男らしき人…
「化石少女」麻耶雄嵩 ――部員が神舞まりあ先輩と桑島彰の二人しかいない古生物部は、廃部の危機に陥っていた。そんな折り、新聞部部長が殺されて、古生物部にあったシーラカンスのかぶりものをかぶった犯人の姿が目撃されていた。変人のまりあ先輩は、事件を…
麻耶雄嵩のメルカトルものが新連載。綾辻行人『奇面館』・法月綸太郎『キングを探せ』・有栖川有栖〈ソラ〉シリーズについての著者のことば掲載。 「メフィスト初登場ミステリ作家特集」と銘打って、主に創元組の短篇が掲載されています。どうした事情かすべ…
カレーを食べると名探偵になりきって推理を始める記憶喪失の吉田さん。前作の最後でめでたく(?)記憶を取り戻したのですが……。 記憶を取り戻したことによって失った、記憶喪失のころの記憶を甦らせるべく、前作の関係者たちが名探偵になりきって事件を押し…
あれ、本格ミステリ・マスターズじゃないんだ。あの一昔前のリビング的な装幀じゃなくってよかったです。遅筆でよかった。 これまでカギカッコつきの「名探偵」を意識的に描いてきた著者ですが、今回の作品は「探偵」がデビューする事件に居合わせるという設…
「収束」麻耶雄嵩 ★★★★★ ――後に連続射殺事件としてマスコミを賑わすことになる洋館に、メルカトルと私が訪れたのは、九月も半ばのことだった。現在の所有者は小針満英。五年前、突如宗教家に転身し、今は彼を信奉している五人の若者と二人の使用人とともに、…