『文豪ノ怪談ジュニア・セレクション 夢』東雅夫・編/山科理絵・絵(汐文社)★★★★★

タイトル通り十代向けの文豪怪談アンソロジー。挿絵・総ルビ・註釈つき。「夢十夜」夏目漱石(1908)★★★★★ ――こんな夢を見た。あおむきに寝た女が、もう死にますという。「死んだら、埋めてください。大きな真珠貝で穴を掘って、そうして星の破片を墓標に置…

『ディナーで殺人を(下)』ピーター・ヘイニング編(創元推理文庫)★★★☆☆

『Murder on the Menu』Peter Haining,1991年。 「第二部 歴史風のアントレ(承前)」「唐辛子の味がわからなかった男」G・B・スターン/田口俊樹訳(The Man Who Couldn't Taste Pepper,G. B. Stern)★★★☆☆ ――チャールズとフアンはドゥルーズという一人…

「オリエンテーション」ダニエル・オロズコ『居心地の悪い部屋』岸本佐知子編訳(河出文庫)

「オリエンテーション」ダニエル・オロズコ/岸本佐知子訳(Orientation,Daniel Orozco,1995) ――あちらに並んでいるのが個室で、こちら側がブースです。あなたの電話はこれです。決して出てはいけません。電話の応対はすべて自動応答システムがやります。…

『それはまだヒミツ 少年少女の物語』今江祥智編(新潮文庫)★★★★☆

以前に新潮文庫から出ていた『新潮現代童話館』全2巻から、抜粋再編集したもの。親本の目次を確認してみると、「黄色い目の魚」佐藤多佳子、「ぼくは海賊」寺村輝夫、「ジョーカー」あまんきみこ、「キクちゃん」角野栄子、「コンクリ虫」皆川博子、「鮎」…

『バタフライ和文タイプ事務所 日本文学100年の名作 第10巻2004-2013』(新潮文庫)★★★★☆

「バタフライ和文タイプ事務所」小川洋子(2004)★★★★★ ――学会シーズンを迎えて、事務所は忙しくなってきました。私以外のタイピストは二十年以上のベテランです。その日、糜爛の糜の活字が欠けてしまいました。「活字管理人に新しいのを出してもらいなさい…

『楽しい夜』岸本佐知子編訳(講談社)★★★★☆

『変愛小説集』1&2、『居心地の悪い部屋』『コドモノセカイ』に続く、岸本佐知子による編訳集。「ノース・オブ」マリー=ヘレン・ベルティーノ(North Of,Marie-Helene Bertino,2007)★★★☆☆ ――その年の感謝祭、わたしは実家にボブ・ディランを連れて帰…

『アイロンのある風景 日本文学100年の名作 第9巻 1994-2003』(新潮文庫)★★★☆☆

「塩山再訪」辻原登(1994)★★★★☆ ――どこかへつれてってよ、と有子にせがまれ、電車にとび乗った。車掌が来て、私は塩山までの切符を買い直す。「エンザン?」「どこかへつれてゆけというから、つれてってやるのさ」有子に向かって、この町で私は生まれたの…

『薄情くじら 日本文学100年の名作 第8巻 1984-1993』池内紀他編(新潮文庫)★★★☆☆

「極楽まくらおとし図」深沢七郎(1984)★★★☆☆ ――本家の孫のカンちゃんというのが「コテン」を開くという。妙な絵があって題が“まくらおとし”と書いてあった。まくらおとしとはヒイじいさんが死んだときの病気の名だ。本家のジイさんは、まくらおとしで死に…

『ベスト・ストーリーズI ぴょんぴょんウサギ球』若島正編(早川書房)★★★★☆

年代順の『ニューヨーカー』傑作集全3巻の第一巻になります。 「ぴょんぴょんウサギ球」リング・ラードナー/森慎一郎訳(Br'er Rabbit Ball,Ring Lardner,1930)★★☆☆☆ ――最近は孫たちを野球場に連れ出しても、ただ黙々とお色気小説を読んでいる。試合に…

『公然の秘密 日本文学100年の名作 第7巻 1974-1983』安部公房他(新潮文庫)★★★★☆

「五郎八航空」筒井康隆(1974)★★★★☆ ――おれとカメラマンの旗山は、無人島取材に訪れた乳島に、台風のため取り残されてしまった。明日までに帰らないと編集長が怖い。地元の人間によれば、船が出せないときには飛行機が迎えに来てくれるという。「操縦士の…

『コドモノセカイ』岸本佐知子編訳(河出書房新社)★★★★☆

「まじない」リッキー・デュコーネイ(Abracadabra,Rikki Ducornet,1994)★★★★☆ ――頭の中でブーンとハチみたいな音がする。彼は気づいてしまった。宇宙人が盗み聞きしている! 鏡の中の敵を攪乱するために、まじないとして顔をしかめ屁をひった。 子どもが…

『ディナーで殺人を(上)』ピーター・ヘイニング編(創元推理文庫)★★★☆☆

「はしがき」ピーター・ヘイニング/高田惠子訳「第一部 当店のお薦め――有名作家たちの作品」「特別料理」スタンリイ・エリン/田口俊樹訳(The Speciality of the House,Stanley Ellin)★★★★☆ ――ラフラーはコステインをスビロの店に招待した。コステインは…

『ミステリ・オールスターズ』本格ミステリ作家クラブ編(角川文庫)★★☆☆☆

本格ミステリ作家クラブ創立10周年記念の、書き下ろしアンソロジー。気になる作家・作品だけを読みました。 「続・二銭銅貨」北村薫 ★★☆☆☆ ――平井さんが、訪ねて来た。「君からあの話を聞いたとき、これこそ智的小説だと思った。それを書いてみたまえ、と…

『ベトナム姐ちゃん 日本文学100年の名作 第6巻 1964-1973』池内紀他編(新潮文庫)★★★☆☆

「片腕」川端康成(1964) 「空の怪物アグイー」大江健三郎(1964)★★★★☆ ――ぼくはある銀行家から、息子である音楽家Dの外出の付添いに雇われた。Dはときどき怪物にとりつかれるのだという。木綿の白い肌着を着たカンガルーほどもある赤ん坊が空から降りて…

『ファイン/キュート 素敵かわいい作品選』高原英理編(ちくま文庫)★★☆☆☆

ゴシック篇だった『リテラリーゴシック・イン・ジャパン』に続いて、アンソロジー素敵かわいい篇。とにかくかわいければ問題なし、とでも言うかのように、編者による「はじめに」にも「少しつけ加え」にも解説めいたものは一切なく、ほとんど「かわいい」し…

『街角の書店 18の奇妙な物語』中村融編(創元推理文庫)★★★★☆

「肥満翼賛クラブ」ジョン・アンソニー・ウェスト/宮脇孝雄訳(Glady's Gregory,John Anthony West,1963)★★★☆☆ ――グラディスのグレゴリーは結婚して丸三年になるのに、体重はほとんど変わっていませんでした。グラディスを責めないでください。フットボ…

『百万円煎餅 日本文学100年の名作5 1954-1963』池内紀他編(新潮文庫)★★★☆☆

「突堤にて」梅崎春生(1954)★★★★★ ――僕は毎日その防波堤に魚釣に通っていた。常連たちは薄情というわけではない。だが彼らの交際はいわば触手のようなもので、物がふれるとハッと引っこめてしまう。殴り合いを見たのは一度だけだ。当事者の一人は『日の丸…

『変愛小説集 日本作家編』岸本佐知子編(講談社)★★★★☆

変愛小説集日本編――ですが、既存作品のアンソロジーではなく、書き下ろしなんですね……。文庫版には木下古栗の作品が収録されていません。 「形見」川上弘美 ★★★★★ ――夫は今までに三回結婚している。わたしは二回。今までゆうに五十人は子供を育てたろうか。…

『日本文学100年の名作 第4巻 木の都』池内紀他編(新潮文庫)★★★☆☆

「木の都」織田作之助(1944)★★★☆☆ ――故郷に戻ってみると、善書堂という本屋はなくなり、代わりに矢野名曲堂というレコード店があった。見れば学生街の洋食屋の主人だった。懐かしい話をしているうちに、只今とランドセルを背負った少年が入って来た。半年…

『最初の舞踏会 ホラー短編集3』平岡敦編訳(岩波少年文庫)★★★☆☆

岩波少年文庫のホラー・アンソロジー、フランス篇。「青ひげ」シャルル・ペロー(La Barbe bleue,Charles Perrault,1697)★★★☆☆ ――昔々あるところに、大金持ちの男がいた。男のひげは不気味な青色をしていたため、女たちは逃げ出さずにいられなかった。そ…

『怪奇文学大山脈III 西洋近代名作選【諸雑誌氾濫篇】』荒俣宏編(東京創元社)★★★☆☆

「第三巻まえがき」荒俣宏 ――今は忘れられた「愚作」も、当時は「時流に迎合した成功作」だった場合があるのだ。たとえば一〇〇年前には、そうした発掘で陽の目を見たのがレ・ファニュである。レ・ファニュほどの宝はもう望めないかもしれないが、まずは掘り…

『日本文学100年の名作 第3巻 三月の第四日曜』池内紀他編(新潮文庫)★★★★☆

「猫町」萩原朔太郎(1935) 「一の酉」武田鱗太郎(1935)★★★★★ ――おきよが、ちょっと、しげちゃん、あとで話があるんだけど、と云った。「なにさ」生まれつき言葉遣いの悪いおしげはぶっきら棒に云った。「――あんた、この頃、いやにめかすのねえ。無理ない…

『街角で謎が待っている がまくら市事件』秋月涼介他(創元推理文庫)★★★☆☆

『晴れた日は謎を追って』に続き、『蝦蟇倉市事件2』の文庫化です。 「さくら炎上」北山猛邦 ★★★☆☆ ――桜の下に陽子を見つけた。驚かせようとこっそり近づいたとき、駆け寄ってくる男に気づいた。私と陽子が通う蝦蟇倉大学付属高校の生徒だ。二人はどんな関…

『晴れた日は謎を追って がまくら市事件』伊坂幸太郎他(創元推理文庫)★★★☆☆

架空の町「蝦蟇倉市」を舞台にした競作集『蝦蟇倉市事件1』の文庫化。 「弓投げの崖を見てはいけない」道尾秀介 ★★★★☆ ――弓投げの崖には自殺者たちの霊が集まっている。自宅のゆかり荘に帰る途中の安見邦夫は、突然ハンドルを切った前方車両を避けきれなか…

『日本文学100年の名作2 1924-1933 幸福の持参者』池内紀他編(新潮文庫)★★★☆☆

「島守」中勘助(1924)★★★☆☆ ――島にひとりいれば心ゆくばかり静かである。福岡の妹が危篤という電報がきた。昼飯の支度をするのも懶い。ぼんやり寐ころんでいる。朝目をさますと同時に妹を思った。きょうの悲しい最初の思い出である。□□子はまだ生きている…

『黒い破壊者 宇宙生命SF傑作選』中村融編(創元SF文庫)★★★★☆

「狩人よ、故郷に帰れ」リチャード・マッケナ/中村融訳(Hunter, Come Home,Richard Mackenna,1963)★★★★☆ ――この惑星じゃ木は死にやしない。だから薪で火を熾すことができない。恐獣グレート・ラッセルを殺した者だけが、成人男子と見なされた。だが人口…

『怪奇文学大山脈2 西洋近代名作選 20世紀革新篇』荒俣宏編(東京創元社)★★★★☆

「第二巻まえがき 二〇世紀怪奇スクール――夢魔の花咲きほこる」荒俣宏 ★★★★★ ――そもそも、いったいだれが怪奇小説という大山脈に登ってみようと言いだしたのか。ラフカディオ・ハーンである。ところで、この「怪奇小説」なる用語はいつからこのジャンルの呼…

『日本文学100年の名作 第1巻1914-1923 夢見る部屋』池内紀他編(新潮文庫)★★★☆☆

「父親」荒畑寒村(1915)★★★☆☆ ――久しく満州を放浪して居た孝次は、帰って来たと思ったら、一室に閉じ籠ったまま翌日から口もきかなかった。そんな孝次が結婚している長野へと、父親は向かっていた。何でも社会主義の新聞を出すのに、田舎の方が保証金が安…

『大崎梢リクエスト! 本屋さんのアンソロジー』有栖川有栖ほか(光文社文庫)★★★☆☆

「本と謎の日々」有栖川有栖 ★★★☆☆ ――店長は「読書なんかしないよ」と言いながら、本の知識もすごく広い。接客業のくせに明るい笑顔を作れない人だが、推理力は鋭い。「本が傷んでいた方がいい」というお客さんや、同じ本を二冊買って返品するときに「気をつ…

『怪奇文学大山脈 西洋近代名作選 I 19世紀再興篇』荒俣宏編(東京創元社)★★★★☆

「まえがき」荒俣宏 平井呈一の思い出と、氏の海外怪奇文学の受容、本書の編纂意図、海外雑誌に見る怪奇小説の歴史、その日本受容史。 第I部 ドイツロマン派の大いなる影響:亡霊の騎士と妖怪の花嫁「レノーレ」ゴットフリート・アウグスト・ビュルガー/南…


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