『シャーロック・ホームズの栄冠』北原尚彦編訳(創元推理文庫)★★★☆☆

「第I部 王道篇」「一等車の秘密」ロナルド・A・ノックス(The Adventure of the First-Class Carriage,Ronald A. Knox,1947)★★★★☆ ――リューマチで仕事を辞めたヘネシー夫妻は、田舎屋敷の番小屋に住み込み、スウィシンバンク夫妻の世話をすることにな…

『7人の名探偵 新本格30周年記念アンソロジー』文芸第三出版部編(講談社ノベルス)★★☆☆☆

新本格30周年を記念した〈名探偵〉がテーマの書き下ろしアンソロジー。シリーズ探偵を登場させたのは7人中4人。そのうえ真剣に取り組んだ作品というよりもお祭り用のやっつけ仕事が多く期待はずれでした。 「水曜日と金曜日が嫌い――大鏡家殺人事件――」麻耶…

『夜の夢見の川 12の奇妙な物語』中村融編(創元推理文庫)★★★★☆

奇妙な味を中心としたアンソロジー第2団。『街角の書店』以上に「理屈では割り切れない余韻を残す」作品を重視したとのこと。 「麻酔」クリストファー・ファウラー/鴻巣友季子訳(On Edge,Christopher Fowler,1992)★★★☆☆ ――ナッツを噛んで歯が砕けてしま…

『耳瓔珞 女心についての十篇』安野モヨコ選・画(中公文庫)★★★★★

安野モヨコ選画シリーズ第2弾。なぜか初出の記載がなくなってしまいました。 「桃のある風景」岡本かの子(1937)★★★★☆ ――肉体的とも精神的とも言い難いあこがれが、しっきりなしに自分に渇きを覚えさせた。「蝙蝠傘を出して下さい。河を渡って桃を見に行く…

『スタートボタンを押してください ゲームSF傑作選』D・H・ウィルソン&J・J・アダムズ編(創元SF文庫)★★★☆☆

『Press Start to Play』Ed. by Daniel H. Wilson and John Joseph Adams,2015。 原書収録の26編から12編を厳選したもの。 「リスポーン」桜坂洋(2015)★★★★☆ ――おれが牛丼屋でバイトをしていると、強盗が現れた。大男の客が正義感を起こした。怯えた強盗…

『幻想と怪奇』4【吸血鬼の系譜 スラヴの不死者から夜の貴族へ】(新紀元社)

このタイミングで吸血鬼をテーマにしたのは別に『鬼滅の刃』にあやかったわけではなく、たまたまのようです。「A Map of Nowhere 04:ネルダ「吸血鬼」のプリンキポ島」藤原ヨウコウ 河出文庫『東欧怪談集』に邦訳のあるヤン・ネルダ「吸血鬼」より。 「パル…

『奇想天外 21世紀版 アンソロジー』山口雅也編著(南雲堂)★★☆☆☆

自分好みの雑誌を作りあげるのは編者の特権ですが、自分語りが頻繁に顔を出すのは勘弁してほしかったところです。 「21世紀版奇想天外小説傑作選[海外篇]」「最上階に潜むもの」アーサー・モリスン/宮脇孝雄訳(The Thing in the Upper Room,Arthur Morr…

『女体についての八篇 晩菊』安野モヨコ選・画(中公文庫)★★★★☆

読書好きで知られる安野モヨコ氏によるアンソロジー第1弾。各篇に挿絵が一葉ずつ描かれています。 「美少女」太宰治(1939)★★★★☆ ――甲府市の近くの音声が皮膚病に特効を有する由を聞いたので、家内を毎日通わせることにした。ともかく別天地であるから、あ…

『文豪ノ怪談 ジュニア・セレクション 呪』東雅夫編(汐文社)★★★★☆

第4巻はテーマも「呪」というだけあってか、カバーイラストも呪いそのまんまで挿絵もストレートに怖い絵になっています。 「笛塚」岡本綺堂(1925)★★★★☆ ――十一番目の男が語る。僕の国では昔から能狂言が盛んだった。武士のうちにも笛をふく者もあった。十…

『奇想天外 復刻版 アンソロジー』山口雅也編著(南雲堂)★★☆☆☆

四期にわたる雑誌『奇想天外』掲載作を抽出し、当時の体裁でまとめたアンソロジー。小説・エッセイともに、B級もしくは歴史的意味のものが大半を占めていて、いま読んで面白いものではありませんでした。。 「『奇想天外』=「謎解きが好き」 「大人になれ…

『シャーロック・ホームズの失われた災難』ジュリー・マキューラス他編/日暮雅通訳(原書房)★★★☆☆

『The Missing Misadventures of Sherlock Holmes』ed.Julie McKuras etc,2016年。 エラリイ・クイーン編『シャーロック・ホームズの災難』にさまざまな理由で収録されなかった作品を集めたものです。資料的な価値しかないのだろうなと、さして期待していな…

『謎の館へようこそ 黒 新本格30周年記念アンソロジー』はやみねかおる他(講談社タイガ)★★☆☆☆

新本格30周年記念の館ものアンソロジー第2弾です。新本格のスタートという位置づけの『十角館』にちなんでの館ものなのでしょう。同じく30周年記念の『7人の名探偵』が新本格第一世代の作家たちであるのに対して、この『謎の館へようこそ』は孫・曾孫世代…

『謎の館へようこそ 白 新本格30周年記念アンソロジー』東川篤哉他(講談社タイガ)★★★☆☆

副題にあるとおり新本格30周年を記念した、館がテーマの書き下ろしアンソロジーです。綾辻行人的な〈館〉ものもあれば、舞台となるのが文化会〈館〉なだけのものもありましたが、意外なことに一族のお屋敷ものやクローズド・サークル的な意味での〈館〉もの…

『文豪ノ怪談 ジュニア・セレクション 恋』東雅夫編/谷川千佳絵(汐文社)★★★☆☆

「幼い頃の記憶」泉鏡花(1912)★★★☆☆ ――五つくらいの時と思う。船に乗って、母の乳房を摘み摘みしていたように覚えている。そばに一人の美しい若い女のいたことを、私はふと見出した。今思ってみると、十七ぐらいであったと思う。いかにも色の白い、瓜実顔…

『文豪ノ怪談ジュニア・セレクション 獣』東雅夫編/中川学絵(汐文社)★★★☆☆

挿絵は泉鏡花の絵本でおなじみ中川学です。 「山月記」中島敦(1942)★★★★☆ ――隴西の李徴は博学才穎であったが、賤吏に甘んずることを潔しとせず、ひたすら詩作に耽った。しかし文名は容易にはあがらず、ついに発狂したまま二度と戻ってはこなかった。翌年、…

『ボロゴーヴはミムジイ 伊藤典夫翻訳SF傑作選』高橋良平編(ハヤカワSF文庫)★★☆☆☆

副題どおり伊藤典夫がSFマガジンに訳載した作品から選ばれた作品集ですが、さすがに内容が古くさ過ぎるのは否めません。「ボロゴーヴはミムジイ」ルイス・パジェット(Mimsy were the Borogoves,Lewis Padgett,1943)★★★☆☆ ――未来の科学者の実験によって…

『文豪ノ怪談ジュニア・セレクション 夢』東雅夫・編/山科理絵・絵(汐文社)★★★★★

タイトル通り十代向けの文豪怪談アンソロジー。挿絵・総ルビ・註釈つき。「夢十夜」夏目漱石(1908)★★★★★ ――こんな夢を見た。あおむきに寝た女が、もう死にますという。「死んだら、埋めてください。大きな真珠貝で穴を掘って、そうして星の破片を墓標に置…

『ディナーで殺人を(下)』ピーター・ヘイニング編(創元推理文庫)★★★☆☆

『Murder on the Menu』Peter Haining,1991年。 「第二部 歴史風のアントレ(承前)」「唐辛子の味がわからなかった男」G・B・スターン/田口俊樹訳(The Man Who Couldn't Taste Pepper,G. B. Stern)★★★☆☆ ――チャールズとフアンはドゥルーズという一人…

「オリエンテーション」ダニエル・オロズコ『居心地の悪い部屋』岸本佐知子編訳(河出文庫)

「オリエンテーション」ダニエル・オロズコ/岸本佐知子訳(Orientation,Daniel Orozco,1995) ――あちらに並んでいるのが個室で、こちら側がブースです。あなたの電話はこれです。決して出てはいけません。電話の応対はすべて自動応答システムがやります。…

『それはまだヒミツ 少年少女の物語』今江祥智編(新潮文庫)★★★★☆

以前に新潮文庫から出ていた『新潮現代童話館』全2巻から、抜粋再編集したもの。親本の目次を確認してみると、「黄色い目の魚」佐藤多佳子、「ぼくは海賊」寺村輝夫、「ジョーカー」あまんきみこ、「キクちゃん」角野栄子、「コンクリ虫」皆川博子、「鮎」…

『バタフライ和文タイプ事務所 日本文学100年の名作 第10巻2004-2013』(新潮文庫)★★★★☆

「バタフライ和文タイプ事務所」小川洋子(2004)★★★★★ ――学会シーズンを迎えて、事務所は忙しくなってきました。私以外のタイピストは二十年以上のベテランです。その日、糜爛の糜の活字が欠けてしまいました。「活字管理人に新しいのを出してもらいなさい…

『楽しい夜』岸本佐知子編訳(講談社)★★★★☆

『変愛小説集』1&2、『居心地の悪い部屋』『コドモノセカイ』に続く、岸本佐知子による編訳集。「ノース・オブ」マリー=ヘレン・ベルティーノ(North Of,Marie-Helene Bertino,2007)★★★☆☆ ――その年の感謝祭、わたしは実家にボブ・ディランを連れて帰…

『アイロンのある風景 日本文学100年の名作 第9巻 1994-2003』(新潮文庫)★★★☆☆

「塩山再訪」辻原登(1994)★★★★☆ ――どこかへつれてってよ、と有子にせがまれ、電車にとび乗った。車掌が来て、私は塩山までの切符を買い直す。「エンザン?」「どこかへつれてゆけというから、つれてってやるのさ」有子に向かって、この町で私は生まれたの…

『薄情くじら 日本文学100年の名作 第8巻 1984-1993』池内紀他編(新潮文庫)★★★☆☆

「極楽まくらおとし図」深沢七郎(1984)★★★☆☆ ――本家の孫のカンちゃんというのが「コテン」を開くという。妙な絵があって題が“まくらおとし”と書いてあった。まくらおとしとはヒイじいさんが死んだときの病気の名だ。本家のジイさんは、まくらおとしで死に…

『ベスト・ストーリーズI ぴょんぴょんウサギ球』若島正編(早川書房)★★★★☆

年代順の『ニューヨーカー』傑作集全3巻の第一巻になります。 「ぴょんぴょんウサギ球」リング・ラードナー/森慎一郎訳(Br'er Rabbit Ball,Ring Lardner,1930)★★☆☆☆ ――最近は孫たちを野球場に連れ出しても、ただ黙々とお色気小説を読んでいる。試合に…

『公然の秘密 日本文学100年の名作 第7巻 1974-1983』安部公房他(新潮文庫)★★★★☆

「五郎八航空」筒井康隆(1974)★★★★☆ ――おれとカメラマンの旗山は、無人島取材に訪れた乳島に、台風のため取り残されてしまった。明日までに帰らないと編集長が怖い。地元の人間によれば、船が出せないときには飛行機が迎えに来てくれるという。「操縦士の…

『コドモノセカイ』岸本佐知子編訳(河出書房新社)★★★★☆

「まじない」リッキー・デュコーネイ(Abracadabra,Rikki Ducornet,1994)★★★★☆ ――頭の中でブーンとハチみたいな音がする。彼は気づいてしまった。宇宙人が盗み聞きしている! 鏡の中の敵を攪乱するために、まじないとして顔をしかめ屁をひった。 子どもが…

『ディナーで殺人を(上)』ピーター・ヘイニング編(創元推理文庫)★★★☆☆

「はしがき」ピーター・ヘイニング/高田惠子訳「第一部 当店のお薦め――有名作家たちの作品」「特別料理」スタンリイ・エリン/田口俊樹訳(The Speciality of the House,Stanley Ellin)★★★★☆ ――ラフラーはコステインをスビロの店に招待した。コステインは…

『ミステリ・オールスターズ』本格ミステリ作家クラブ編(角川文庫)★★☆☆☆

本格ミステリ作家クラブ創立10周年記念の、書き下ろしアンソロジー。気になる作家・作品だけを読みました。 「続・二銭銅貨」北村薫 ★★☆☆☆ ――平井さんが、訪ねて来た。「君からあの話を聞いたとき、これこそ智的小説だと思った。それを書いてみたまえ、と…

『ベトナム姐ちゃん 日本文学100年の名作 第6巻 1964-1973』池内紀他編(新潮文庫)★★★☆☆

「片腕」川端康成(1964) 「空の怪物アグイー」大江健三郎(1964)★★★★☆ ――ぼくはある銀行家から、息子である音楽家Dの外出の付添いに雇われた。Dはときどき怪物にとりつかれるのだという。木綿の白い肌着を着たカンガルーほどもある赤ん坊が空から降りて…


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