『江戸の妖怪革命』香川雅信(角川文庫ソフィア)★★★★☆

河出書房新社から出ていた単行本を削除改訂したもの。「妖怪玩具」「からくり的」の章が削除され、「妖怪娯楽の近代」後半が大幅に改訂されています。 伝承妖怪とフィクションの妖怪のあいだに横たわる関係性を起点として近世と近代の二度にわたる「妖怪革命…

『大江山千丈ヶ嶽 酒呑童子由来』村上政市監修/鬼ヶ茶屋 版木/福井朝日堂 挿絵(アットワークス)

先日たまたま目にした学研ムックの『日本歴史伝説傑作選』に紹介されていた鬼首の絵がたいへんにインパクトがあったのでどうしてもそのすべてを見たくなりました。キャプションには「大江山絵詞巻物」とあったので確認してみるも、『日本の絵巻』の「大江山…

『妖怪学講義』菊地章太(講談社)★☆☆☆☆

『東大の教室で『赤毛のアン』を読む』もそうでしたが、対象年齢が低すぎるのでは。『東大アン』の方は、語り口はともかく内容はしっかりしたものでしたが、本書の方は内容も踏み込んだものではなく、「円了『妖怪学講義』復活」という話題先行の感も。 「水…

『幕末明治百物語』一柳廣孝他編(国書刊行会)★★★☆☆

ハーン作品の原拠も収録。幕末明治の実話怪談百物語会。 資料的価値・歴史的価値は高いのでしょうが、大半が幽霊譚なので多様性がなくて一本調子です。ほかに「実は怪異ではなかった話」「残酷譚や奇談」「化物の出てくる話」がいくつか。 10・12・14は手の…

『河鍋暁斎 暁斎百鬼画談』安村敏信監修・解説(ちくま学芸文庫)★★★☆☆

今までちゃんと興味を持ったことのない画家だったので、「きょうさい」と読むことや、明治の人でもあったことなどを、初めて知りました。 『暁斎百鬼画談』全図に、参考図版がいくつかと、小松和彦の前書きと岡島奈音による図版解説を収録。監修者は暁斎本人…

『邪魅の雫』京極夏彦(講談社文庫)★★★★★

『IN★POCKET』も購入。『陰摩羅鬼』がなかなか刊行されなかったのは『ファウスト』太田のせいだったようです(^_^;。 今回は意識的にある程度〈キャラ〉を封印していた作品でした。榎木津は暴れないし益田は調子出ないし関口はしっかりしてるし、木場はほ…

『続百物語怪談集成 叢書江戸文庫27』太刀川清校訂(国書刊行会)★★★★☆

品切れだったのが復活したので、重版がかかったのかと思ったらそうでもないらしい。奥付を「初版」のまま変えずに刷ったのか、どこかに仕舞ってあったのを蔵出ししたのか。『古今百物語評判』 これは識者のところに集まってみんなで怪談話をして、それを先生…

『百鬼夜行抄 18』今市子(朝日新聞社・眠れぬ夜の奇妙なコミックス)

「雨戸仙人」 ――人間に寄生する妖魔を自らの身体に封じ込めていた僧正が、臨終を迎えた。僧正の死とともに身体から抜け出る妖魔を木偶に取り憑かせて霧散させようと、いんちき占い師の八代が呼ばれていたが……。 お母さん大活躍の話です。お母さんって、とき…

『百鬼夜行絵巻の謎』小松和彦(集英社新書ビジュアル版)★★★★☆

これまで知られていなかった絵巻の発見により、百鬼夜行絵巻成立の謎が明らかに――といっても文芸評論のような華麗なレトリックを駆使した、快刀乱麻を断つごとき快著ではありません。新書なのに手を抜かずにけっこう学術的な手順を踏んでゆく――ぶっちゃけて…

『妖怪画本・狂歌百物語』多田克己編(国書刊行会)★★★★★

飽くまで「画本」、なおかつ京極夏彦による「解説なんて野暮」な序文……とはいえ、狂歌についての語釈や解説がほとんどないのは、あまりにつらい。 というわけで、気に入った歌(○)のほか、よくわからない歌(ω)についても、いくつかメモしておきます。残念…

『飛騨の怪談 新編綺堂怪奇名作選』岡本綺堂/東雅夫編(メディアファクトリー幽クラシックス)★★★★☆

「飛騨の怪談」★★★★☆ ――昨夜も亦、ワロに鶏を盗られたと云いますよ――。市郎のお祖父さんもワロに殺されたのだ。五十年前の事だ。お祖父さんは日が暮れてから帰って来た。と、路傍の樹の蔭から可怪な者がちょこちょこ出て来た。猿のような、小児のような者で…

『百器徒然袋――風』京極夏彦(講談社文庫)★★★★☆

「五徳猫 薔薇十字探偵の慨然」★★★☆☆ ――幼い頃に別れた母に二十年ぶりに会いに行った美津子は、昔隣人が飼っていたとおぼしき猫に導かれるように、実家を探り当てることが出来た。だが現われた母親の言葉は、「娘の名を騙って、何が狙いだい」というものであ…

『奇想の江戸挿絵』辻惟雄(集英社新書ヴィジュアル版)★★★★★

まずは表紙のイラストをご覧ください。 北斎の手になる読本の挿絵なのですが、初めてこの絵を見た方の多くは、帯に書かれた横尾忠則という名前にも引きずられて、これは現代のデザイナーが北斎の絵を元にコラージュしたものに違いない、と思うのではないでし…

『日本妖怪異聞録』小松和彦(講談社学術文庫)★★★★☆

まえがきを読んでびっくり。少年向けに書かれたものの文庫化なんですね。 ちょっとがっかりしつつ実際に読んでまたびっくり。これが少年向け? 小松氏は一般の妖怪ファンのレベルを高く見積もりすぎなんじゃあ……? 充分に一般向けで通用します。あとがきを読…

『妖怪の理 妖怪の檻』京極夏彦(角川書店)★★★★★

エッセイっぽいものかと思っていたら、けっこうちゃんとした論文でした。「妖怪」という言葉をめぐる考察だけでも二百ページ、圧巻です。 圓了や江馬務、柳田國男といった人々がどんな意図を持ちどんな意味で「妖怪」という言葉を使っていたのかを、くどいほ…

『酒呑童子の誕生』高橋昌明(中公文庫BIBLIO異の世界)★★★★☆

古典の復刻がメインだった〈異の世界〉に現代の、それも論文が登場。もっとこういうの増えてほしいな。 酒呑童子はそんなに好きな妖怪(?)じゃないんで買うのを躊躇していたんだけれど、これは著者自身も書いてるとおり「素人ホームズ」の名推理みたいで楽…

『百物語の怪談史』東雅夫(角川文庫)

評論というよりはガイドブックな感じです。 一応は「百物語」限定ではあるのだけれど、古今の怪談入門といった趣。怪談に興味のある人なら手元に置いておいて損はないでしょう。 「巡物語」の一つとして海外作品にも(ちょこっとですが)言及していたり、映…

『遠野のザシキワラシとオシラサマ』佐々木喜善(中公文庫BIBLIO異の世界)★★★☆☆

なぜだかわからないけれど、大笑いしてしまった。 座敷童(とその類似妖怪)の伝承だけでできた一冊の本が刊行され、あまつさえそれが復刊されてしまうということに嬉しくなってしまったのかもしれない。 それだけに今までのBIBLIO異の世界シリーズ以上に読…

『神野悪五郎只今退散仕る』高原英理(毎日新聞社)★★★★☆

高原英理の妖怪小説というのでどんな作品なのかと思っていたら、ずいぶんとポップな内容なので驚いた。ハリポタ……というのは言い過ぎだけど、結構そんな感じの悪者退治の話。 まあマニアを喜ばせるよりも子どもを楽しませる物語を書く方が難しそうだとは思う…

『百物語怪談会 文豪怪談傑作選特別篇』東雅夫編(ちくま文庫)★★★☆☆

鏡花主催の『怪談会』と雑誌特集『怪談百物語』に、水野葉舟の雑誌に掲載された座談「不思議譚」をプラスしたセット。生に近い実話怪談の雑多な寄せ集めといった『怪談会』に対し、『怪談百物語』は文芸雑誌掲載らしく作品として比較的まとまっているものが…

『図説 江戸東京怪異百物語』湯本豪一(河出書房ふくろうの本)★★★★☆

ほんとうに百話あるのが地味に偉いです。欲を言えば九十九話であってほしかったが。 図版と現代語の紹介文が掲載されているのですが、大判なので図版の原文も読むことができます。これがけっこう面白い。講談調(七五調で駄洒落あり)だったり、現代文には書…

『百鬼夜行抄 16』今市子(朝日新聞社 眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)★★★★☆

最新刊です。何かどうにもパッとしない帯なんですが……。「羽擦れの島」「異界の水守り」「襖絵の女」「病み枝」の四編。「異界」と「病み枝」は『ネムキ』で読んでました。「羽擦れの島」は開さん大活躍の話。というかトラブルメーカー(^^;。自分でトラ…

「狐者異」京極夏彦(『続巷説百物語』角川書店より)★★★★☆

『前巷説百物語』を読んだので当然のごとく読み返したくなっちゃいました。読み返してみると、けっこう地味なんですよねえ。『前巷説百物語』の玩具大集合みたいな派手さと比べると、完成度は高いのだろうけれど、かなり地味です。『前』であれだけ又市たち…

『前巷説百物語』京極夏彦(角川書店)★★★★★

お馴染み〈巷説百物語〉シリーズでありながら、同時に〈同心・志方兵吾〉シリーズという新しいシリーズにもなっているテクニックと遊び心が楽しい一冊。志方同心を主人公に新たに捕物帳でも書いてくれないかな、と誰もが思うのではないでしょうか。捕物帳で…

『動物妖怪譚』(下)日野巌(中公文庫BIBLIO異の世界)★★★☆☆

上巻で扱われていたのは完全に想像上の動物だったけれど、下巻になると「狐」とか「猫」とか、現実にも存在する動物が扱われている。けれどやはり著者は植物学の専門家なのだろう、あまり切れ味はよくない。 海蛇はそんなに大きくないから「わに」は海蛇では…

『動物妖怪譚』(上)日野巌(中公文庫BIBLIO異の世界)★★★★☆

『植物怪異伝説新考』と同じ作者だったので、漠然と〈動物編〉なんだろうくらいに思っていたのだけれど、実際のところはかなり違う。『植物怪異伝説“新考”』というくらいだからあちらは研究書なのだが、こちらはあくまで『動物妖怪“譚”』。動物妖怪が登場す…

『見えない世界の覗き方――文化としての怪異』佛教大学文学部編(法藏館)★★★★☆

佛教大学で行われたシンポジウムの模様(講演と座談会)をまとめた、民俗学入門書。京極夏彦、小松和彦、有田和臣、斎藤英喜、山極伸之、司会八木透。 もとが講演だからそんな専門的なものではないのだけれど、民俗学といえば柳田國男で止まってしまっている…

『陰摩羅鬼の瑕』京極夏彦(講談社文庫)★★★★★

「おお! そこに人殺しが居る!」探偵・榎木津礼一郎は、その場に歩み入るなりそう叫んだ――。嫁いだ花嫁の命を次々と奪っていく、白樺湖畔に聳える洋館「鳥の城」。その主「伯爵」こと、由良昂允とはいかなる人物か? 一方、京極堂も、呪われた由良家のこと…

『ろくろ首の首はなぜ伸びるのか 遊ぶ生物学への招待』武村政春(新潮新書)★★☆☆☆

期待していただけに、所詮は新書、というのがショージキなところ。 本書でも触れられている『秘密の動物誌』など類書における徹底ぶり、あるいは『空想科学読本』に見られる遊び心・サービス精神が欠けている。 “どのようなホラを吹くか”と“どのように科学的…

『植物怪異伝説新考(下)』日野巌(中公文庫BIBLIO〈異の世界〉)★★★☆☆

古典籍に記されている突然変異や奇形についての考察を集めた『植物怪異伝説新考』の後半です。下巻には「妖異篇」があるので期待したのだけれど、基本的には上巻と同じような地味な研究でした。 著者はもともと妖怪研究家などではなく植物学者であって、本書…


防犯カメラ