柚木麻子のデビュー連作集。ちょっと悪ノリしすぎのものもある最近の作品とは違い、リアルで地に足の着いた登場人物たちに親しみと共感を覚えます。またシリアスな作品も書いてほしい。 「フォーゲットミー、ノットブルー」(2008)★★★★★ ――一体いつ終わるの…
俳句甲子園に出場する高校生を、章ごとに視点人物を変えて描いた作品で、文学少女や書道経験者に楽器演奏者といった個性的なメンバーがそれぞれの持ち味を活かしてチャレンジするのですが、せっかくの個性がさほど生かされていないように感じました。でもあ…
ミステリでないのはともかく、冒頭60ページにわたって続く五十代おじさんおばさんのだべりを読むのはとてつもない苦行でした。会話を通して古いタイプの映画会社について説明している……という側面もないことはないのですが、ほとんどが同窓会のノリでした…
「バクの見た夢」★★★★☆ ――ふたりが二度と会わないためには、どちらかが死ぬしかないと、結論が出た。心中をすることも、お互いの配偶者をあざむいて密会をつづけることもできない道雄と沙織里だから、そう決めたのだった。デパートの玩具売り場で娘に尋ねら…
沢村凜は非常に幅広い作風の持ち主で、デビューこそファンタジーですが、働く人と労基官に焦点を当てた『ディーセント・ワーク・ガーディアン』、タイトル通り脇役に焦点を当てたミステリ『脇役スタンド・バイ・ミー』、講談社文庫では『タソガレ』と本書『…
タイトルが印象的だった講談社ノベルス『角のないケシゴムは嘘を消せない』の全面改稿版です。別作品といっていいほど変わっているとのこと。 離婚したばかりの「俺」の部屋に逃げ込んできた透明人間との共同生活。組織に追われる透明人間に関わるうちに、主…
相変わらずタイトルだけでグッと来ます。 おまけに、著者の作品のなかでもとりわけ前向き度と本好き度の高い方です。 黒髪のお嬢様と、金髪キャバ嬢の娘――正反対の二人は、大の親友になります。 著者の作品を読んでいつも驚かされるのは、主人公たちの成長を…
2015年の映画化カバー版を購入。正確に言うとカバーではなく、カバーのように書籍全体を覆う大きさの帯が本来のカバーの上にかぶせられていました。こういうのは最近多いですね。「サンタさんの来ない家」★★★★☆ ――その子はいつも給食をおかわりしていたのに…
一応はミステリの形が取られているものの、海外文学希望だったのに女性ファッション誌に配属されてしまった主人公が、偶然から関わりになるカメラマンについて、「本当に撮りたかったのは野生動物だったのかもしれないが、(中略)女性ファッション誌での撮…
「町入能」★★★★☆ ――大工の初五郎は、朝な夕なに江戸城の富士見櫓を仰ぎ見ていた。お城の御用達の大工になれば、お城に入る機会はある。だが長男に大工の修行をさせたかったし、今の親方に恩もある。大家の幸右衛門から、町入能の話があった。勅使に見せる御…
中学最後の公式戦。PK戦を0-2で負けている状況――。 この絶体絶命の状況から、主立ったサッカー部員たちに6人よる回想によって、物語は進んでゆきます。 「全国大会初出場」を目標に掲げていたはずでした。「神様は勝ちたくない者を勝たせない」のだか…
売れない作家が自力で栄光を切り開いてゆく奮戦記です。 コンプレックスをバネに成長してゆく、というのは、『けむたい後輩』や『早稲女、女、男』にも見られるけれど、本書の主人公・加代子ほど上昇志向が強くて逆境にならないと力を発揮できない人間ではあ…
タイトルからもわかるとおり、早稲田の女は女ではないそうです。 いつもの柚木ヒロインのような、何だかんだ迷いながらも、がっぷり正面から人生に挑んでいるような、気持の良い大学生・早乙女香夏子が主人公です。それをそばから支える(たぶん)しっかりも…
クラスのトップに君臨する〈王妃〉。同級生を陥れようとした陰謀がばれて権力の座から失墜した王妃を、地味グループの範子たちが受け入れ先となって迎え入れるが……。 学級を王制になぞらえたこうした筋書きだけでも面白そうで、判官贔屓の日本人にはぐっとく…
帯にも“まさかの”と書かれてありますが、福田和代のイメージからはまるで想像のつかない、日常系の、オシゴト系の、小説でした。ただしミステリとしてはかなりゆるく、謎と推理と解決というよりは、騒動とその顛末といった感じです。 あとがきによれば、別作…
アッコさんこと黒川敦子と(元)部下の澤田三智子が、おいしいものを食べて元気を出したり(「ランチのアッコちゃん」)、おいしいものを提供して元気になってもらったり(「夜食のアッコちゃん」)して、みんなが幸せになれる作品です。元気になれば仕事も…
けむたい後輩、というタイトルからすると、あるいは主人公は栞子なのでしょうか。他人とは違う自分をアピールし人からちやほやされ芸術家を気取りたいためにすかしてみせる――そんなかつての「天才少女」に、本気で心酔する後輩が現れるとは。 栞子は自尊心さ…
ミステリーズ!に連載されていた「ねじまき片想い」が面白かったのでほかの作品も読んでみました。ドラマ化されていたようです。それにしてもタイトルのつけかたが上手い作家さんです。『終点のあの子』『嘆きの美女』『私にふさわしいホテル』……。 美女たち…
3冊目である本書から、「2007年版」と相成りました。予定通りに行けば、これからは年に一回出るのかな……? 今回は中原昌也がゲスト。前回の島田雅彦といい、今回もゴシップ的に(も)楽しめる。 本文の方は、対象作品そのものよりも、相も変わらず選考委員…
短篇集『バスジャック』の方を先に読んでいたので、デビュー作である本書はこれが初読になる。パロディ的な状況を、コミカルにではなくシリアスかつおセンチに描き出すのに秀でているのは、変わってない。 非日常(?)をすんなり受け入れるところも。 通常…
新庄もいいけどノムさんもおちゃめでいい(^^;。 メインはやっぱりロングインタビューでしょう。ほんっとに赤裸々に語っちゃってます。 坪井も戻ってきてめでたしめでたしです。----------------THANK YOU新庄剛志日刊スポーツ出版社 (200610下旬…
『となり町戦争』の三崎亜記第二作。異色短篇みたいなものから、ちょっと不思議を扱った日常小説まで、大小の差や深浅の差はあれどどれも奇想が顔を覗かせる短篇ばかり。「短篇ばかり」と書いたけれど、正確に言えば掌篇から中篇まで。「二階扉をつけてくだ…
「ティー」と言いたいのに「茶ー(チャー)」と言ってしまう。「スターバックス」に行きたいのに、出てきた言葉は「オートバックス」。そんな言い間違いを集めた読者投稿本(本書の場合、もとはウェブですが)のひとつです。それだけならよくある。大量にあ…
7つの短篇を収録した連作長篇。40歳が主人公の青春小説です。比喩でもなんでもなくまさに青春そのもの。石田衣良の若々しい感性で描かれると、40歳とかいいつつまるっきり10代20代の青春小説でした。なんて瑞々しいんだろう。ショージキまわりにこんな若々…
新潮文庫〈20世紀の100冊〉の読み残しである。月10冊のペースで出されたんじゃ、とてもじゃないけど読み切れないので、読み残してあった作品を今ごろになって読む。ううむ……わたしにしてみたら、『人生劇場』と大差なかったなぁ。。。時代遅れの青春…
だめだ( ´∀`)。。。いきなり謎の老人が出てきて、主人公について「彼は〜であった。〜であった。」と語り出した時点で読むのをやめてしまったがな。まあ〈伝説〉を語るわけだから、昔話の翁みたいなものなんだろうけど……。山に興味のある人であれば、これか…
あらかじめ馬鹿々々しい作品を期待して読むならツボ。真面目なのを期待して読んだなら、途中で脳内回路をおバカ路線に切り替えられるニュートラルな人じゃないとしんどい。 アホくさい。というのが正直なところ。バットマンとかのぶっとんだ悪役をやってみた…
いやまさかここまでファンタジーど真ん中だとは思わなかった。読む前は例えば江戸を舞台にした『百鬼夜行抄』みたいなのを想像していたのだ。江戸を舞台にした『たるるーとくん』とか『金田一少年』とかそんな感じだった。キャラクターで小説を読む人なら楽…