『御子柴くんの甘味と捜査』若竹七海(中公文庫)★★★☆☆

倒叙作品集『プレゼント』に出てくる探偵役の小林警部補の部下、御子柴刑事が主人公です。長野県警から警視庁に出向し、そこで遭遇する5つの事件を描いた短篇集。タイトルになっている「甘味」とは、県警からは東京みやげを、東京の人間からは長野の名物を…

『完全犯罪に猫は何匹必要か?』東川篤哉(光文社文庫)★★★★☆

豪徳寺邸で起こった十年前の未解決殺人事件、探偵による豪徳寺家の猫さがし、十年前と同じビニールハウスでの殺人事件、どれも無関係ではないに決まっているのだけれど、少なくとも序盤では関連性は明らかになりません。 それどころか鵜飼と砂川警部もなかな…

『刑事コロンボ完全版』vol.1 DISC 1(ユニバーサル)★★★★☆

刑事コロンボ廉価版の1枚目。「殺人処方箋」(Prescription: Murder,1967)★★★★☆ ――結婚十年になる精神科医フレミングは女優のジョーンとの浮気がばれて、妻のキャロルに離婚を切り出されて名声と財産も失う危機に陥った。サプライズの結婚記念旅行を計画…

『親指のうずき』アガサ・クリスティー/深町真理子訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★★☆

『By the Pricking of My Thumbs』Agatha Christie,1968年。 正確に言えば「積ん読」ではありません。大好きなトミーとタペンス・シリーズは全部で5冊しかないので、わざと大事に取っておいたのです。これで残るはあと1冊……。 クリスティーの巻頭言がうれ…

『11枚のとらんぷ』泡坂妻夫(角川文庫)★★★☆☆

泡坂氏の長篇は、奇想に溢れる短篇と比べると、手堅いという印象を持ちます。本書にしてもそれは例外ではありませんでした。 公民館でのアマチュア奇術ショウで披露される十一の奇術に加えて、作中人物の著述『11枚のとらんぷ』に書かれた十一の奇術、という…

『象牙色の嘲笑 新訳版』ロス・マクドナルド/小鷹信光・松下祥子訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★☆☆

『The Ivory Grin』Ross Macdonald,1952年。 なるほど詩的表現といっても、チャンドラーのようなインテリ嫌味なところを楽しむような意地の悪い面白さではなく、修辞技法がすっと溶け込んでいるので、読んでいて引っかかりを覚えることがありません。それが…

『ガソリン生活』伊坂幸太郎(朝日文庫)★★★★☆

本書ではなんと自家用車が語り手を務めます。 とうぜん視点に限りがあるので、情報は断片的にしか伝わってこない――かと思いきや、車には車のネットワークがあるらしく、自動車間の噂話を主に駐車場で仕入れており、むしろある部分では人間よりも情報通だった…

『シャーロッキアン!』1~4 池田邦彦(双葉社ACTION COMICS)

家の整理をしていたら出てきたので久しぶりに読み返しました。 シャーロッキアンの大学教授・車路久と女子大生・原田愛里がホームズにまつわる事件を通して、人の心の機微に触れ、ホームズ物語の謎や周りの人たちの悩みを解決してゆくストーリー。 以前に読…

『無花果とムーン』桜庭一樹(角川文庫)★★☆☆☆

もしかすると角川書店から出版されるものは意図して少女小説のカラーを強めに出しているのでしょうか、深刻な悩みも体当たりな反応も思春期くさすぎて今のわたしにはまぶしすぎました。 作中にもちらっと顔を見せていましたし、あとがきに書かれているところ…

『現代華文推理系列 第一集』稲村文吾訳(kindle)★★☆☆☆

中国&台湾のミステリ作家の作品四篇が収録されています。水天一色の作品が目当てでした。単品でも購入できるのですが、未知の作家の作品も読みたいので短篇集を読みました。 「人体博物館殺人事件」御手洗熊猫(人体博物館謀殺案,御手洗熊猫,2008)★★☆☆☆ …

『殊能将之未発表短篇集』殊能将之(講談社)★★★★☆

生前講談社編集部に送っていた「再発見」された短篇三篇に、知人宛ての日記/私小説で没後メフィストに掲載された一篇を加えたものです。 「犬がこわい」★★★★☆ ――世の中の人間は、犬がこわい人間がいることを理解していないらしい。そうでなければ住宅地の真…

「都市伝説パズル」法月綸太郎(講談社文庫『法月綸太郎の功績』より)

「都市伝説パズル」★★★☆☆ ――先輩を起こさないように暗闇のなか忘れ物を取って戻った翌日。先輩は死体で発見され、壁には「電気をつけなくて命拾いしたな」の文字が。都市伝説そのままに起こった殺人事件。法月警視の話を聞いた綸太郎は、メッセージを書くこ…

『琅邪の鬼』丸山天寿(講談社文庫)★★☆☆☆

古代中国を舞台にした――というと、すぐに伝奇小説を連想しましたが、本書にはさほど伝奇要素はありません。 確かに巫医は登場し、卦を立てたり思念を聞いたり五里霧を起こしたりします。忍者のような戦闘集団も登場します。真相はどろどろしたものでした。 …

『その女アレックス』ピエール・ルメートル/橘明美訳(文春文庫)★★★★☆

『Alex』Pierre Lemaitre,2011年。 道を歩いていた女が白いバンに連れ込まれ誘拐監禁されたが、犯人の素性も被害者の身許も不明――。妻を誘拐殺害された経験を持つ警部カミーユが、あろうことか誘拐事件の指揮を執ることになってしまいます。監禁されたアレ…

『シャーロック・ホームズの愉しみ方』植村昌夫(平凡社新書)★★★★☆

著者がブログで発表していたホームズ関係の文章から主要なトピックを抜粋してまとめたものです。 著名人のホームズ・エッセイ&論考。「バリツ」とは何か? 「プロの美女」「アーミー・コーチ」の訳語の問題。大まかに言ってこの三部から構成されています。 …

『銀髪少女は音を視る ニュクス事件ファイル』天祢涼(講談社タイガ)★★★☆☆

タイトルからも窺えるように、『キョウカンカク』の音宮美夜が再登場する作品です。 この作品から、講談社文庫から講談社タイガに移籍したようです。 すわミステリ色よりもキャラクター色が強まったのかな……?と勘繰りたいところですが、そんな心配は無用で…

『かまいたち』宮部みゆき(新潮文庫)★★★☆☆

「かまいたち」★★★★☆ ――江戸の町は辻斬りに怯えていた。医者である父親・玄庵の帰りが遅いのを心配したおようは、提灯を手に父を迎えに出た。そこでおようは辻斬りの現場を目撃してしまう。ずれた頭巾から見えた若い顔……。 ミステリ流に言うなら死体消失の謎…

『雨の日も神様と相撲を』城平京(講談社タイガ)★★★★☆

相撲好きの両親に育てられながらも、体格に恵まれなかった逢沢文季は、両親の死後、母方の叔父に引き取られ、中三の春から米どころの田舎で暮らすことになる。相撲とは縁が切れたつもりだった……。ところがその村は、相撲好きのカエルを神様と祀る、相撲の盛…

『残り全部バケーション』伊坂幸太郎(集英社文庫)★★★★☆

各篇は「第○話」ではなく「章」で区切られていますが、それぞれの章は独立して読める作りになっています。チンピラの岡田と溝口を中心とした連作集。時系列的には「4章→2章→1章→3章→5章」の順になっています。 「第一章 残り全部バケーション」 ――父親…

『ハヤ号セイ川をいく』フィリパ・ピアス/足沢良子訳(講談社青い鳥文庫)★★★★☆

『Minnow on the Say』A. Philippa Pearce,1955年。 児童文学の名作『トムは真夜中の庭で』の著者フィリパ・ピアスのデビュー作。 家の庭が川に隣接しているという、それだけで魅力的な設定からこの作品はスタートするので、まだ何も始まっていないのにわく…

『私の嫌いな探偵』東川篤哉(光文社文庫)★★★☆☆

「死に至る全力疾走の謎」★★★★☆ ――微かな振動と「ぶぎゃ」という声を感じて、朱美が黎明ビルの窓から顔を出すと、頭から血を流した男が大の字になって地面に倒れていた。ビルの壁には血の跡が。通行人によれば、男は全力疾走して自分から壁にぶつかったとい…

『シフォン・リボン・シフォン』近藤史恵(朝日文庫)★★★★☆

「第一話」★★★★☆ ――帰り道にあった書店が閉店し、ランジェリーショップになっていた。佐菜子の母親は背骨を折ってからリハビリを怠けていたため、寝たきりになってしまった。駅前の書店まで寄り道している時間はない。胸の大きさにコンプレックスのある佐菜…

『もしもし、還る』白河三兎(集英社文庫)★★★★☆

目覚めたらサハラ砂漠。落ちてくる電話ボックス。 荒唐無稽な導入ながら、内容や語り口はいたってシリアスです。 主人公は田辺志朗(シロ)。 電話だけでつながっているもう一人の「遭難者」や119番の相手口とのやり取りが繰り広げられる現在パートからは…

『最後のトリック』深水黎一郎(河出文庫)★★★☆☆

メフィスト賞受賞作『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!』改題文庫化。 冒頭から明らかになるように、「読者が犯人」に挑んだ作品です。常識的に考えてそんな作品など不可能なわけですから、本書もある特定の条件があって初めて成立するものです。だから…

『お好みの本、入荷しました 桜庭一樹読書日記』桜庭一樹(創元ライブラリ)★★★★☆

桜庭一樹読書日記その3。 ジョン・サザーランドの「謎」シリーズ(pp.12~17)は、古典のペーパーバック用の気軽な解説を集めたものだったんですね。 近藤史恵は好きな作家なのだけれど、時代小説『にわか大根』はいまいちでした。が、12ページのK島氏によ…

『窓 〈フィルム・ノワール ベスト・コレクション〉』株式会社ブロードウェイ(米,1949)★★★☆☆

コーネル・ウールリッチ原作。テッド・ラズラフ監督。ボビー・ドリスコール、アーサー・ケネディ、ポール・スチュアート出演。 ニューヨークのアパートで両親と暮らすトミー少年は、日頃から自分の空想した作り話を人に聞かせては両親を困らせていた。ある蒸…

『氷菓』米澤穂信(角川文庫)★★★☆☆

米澤穂信のデビュー作。「古典部」シリーズ第一作。 『さよなら妖精』が古典部シリーズの一作として構想されていたという話は知っていましたが、なるほど何となく共通項や似た雰囲気がありました。 序章を除く最初の二章が一話完結式でそれぞれ「部室に外か…

『その可能性はすでに考えた』井上真偽(講談社ノベルス/講談社文庫)★★★☆☆

とある事情により奇蹟があることを証明しようと、名探偵がトリックの可能性を否定する――ひねくれた設定のようですが、どうしてどうして、ワトソン役の迷推理を探偵役が否定する――と考えれば、ごく普通のミステリとさして変わりはありません。 しかしながらこ…

『殊能将之読書日記 2000-2009』殊能将之(講談社)★★★★☆

殊能将之のウェブ日記より、読書日記の部分を抜き出したものです。「リーディング」という形式を取って(当時の)未訳小説が紹介されています。 解説で法月綸太郎氏が瀬戸川猛資氏の名前を出していますが、紹介されている作品よりも紹介文の方が面白い(面白…

『浪花少年探偵団』東野圭吾(講談社文庫)★★☆☆☆

美人でがさつで強気な小学校教師・しのぶセンセが、生徒にかかわりのある事件やたまただ遭遇した事件に首を突っ込み、生徒たちを巻き込んで暴れ回る短篇集。しのぶ先生はひらめきはするけど解決はしない、そんなスタンス。 推理ものや少年探偵団ものというよ…


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