『夜明けの空を掘れ』沢村凜(双葉文庫)★★★☆☆

『笑うヤシュ・クック・モ』改題。 作者が沢村凜で「ヤシュ・クック・モ」なんてタイトルだから、てっきりファンタジーかと思ってましたが、純然たるミステリーでした。 それぞれに屈託を抱えている5人の同窓生のうち、高等遊民的な生活を送る皓雅が中心と…

「メルカトル・ナイト」麻耶雄嵩(『メフィスト』2019年vol.3)

「メルカトル・ナイト」麻耶雄嵩 ★★★★☆ ――作家の鵠沼美崎のところにトランプのカードが毎日一枚ずつ送られてきた。美崎のイメージカラーの赤に合わせて、ダイヤのKからカウントダウンされ、もうすぐハートのエースが近づいていた。不安を感じた美崎はメルカ…

『四つの署名』アーサー・コナン・ドイル/延原謙訳(新潮文庫)★★★☆☆

『The Sign of Four』Arthur Conan Doyle,1890年。 ホームズもの第二作です。事件そのものや推理そのものは『緋色の研究』同様、まださして面白いものではありません。異国趣味や怪奇趣味という、その後の作品にも見られる特徴が顔を出しています。 特筆す…

『緋色の研究』アーサー・コナン・ドイル/延原謙訳(新潮文庫)★★☆☆☆

『A Study in Scarlet』Arthur Conan Doyle,1887年。 記念すべきシャーロック・ホームズもの第一作です。かなり久々に読み返しました。 一。死体を棒で叩いていることや、例の「アフガニスタン」発言や、のちのホームズものでも見られる芝居がかった犯人逮…

『棺のない死体』クレイトン・ロースン/田中西二郎訳(創元推理文庫)★★★☆☆

『No Coffin for the Corpse』Clayton Rawson,1942年。 ロースンというと結末がしょぼい記憶があったのだけれど、読み返してみるとけっこう面白かった。確かに派手なトリックがない分しょぼく感じてしまうとは思うけれど。 死を恐れ死後の世界の研究をさせ…

『暗い越流』若竹七海(光文社文庫)★★★★☆

「蠅男」★★★☆☆ ――六年前に死んだ祖父の遺骨を取ってきてほしい。初めに頼んだ「彼氏」は十万円を持って姿を消していた。あろうことかその「彼氏」、葉村晶が以前に仕事に同行したことのある男だった。依頼を受けた葉村は、幽霊屋敷だと評判の故・心霊研究家…

『GOSICK RED』桜庭一樹(角川文庫)★★★☆☆

旧大陸から新大陸に舞台を移し、探偵になったヴィクトリカと新聞記者になった一弥が活躍する、GOSICKシリーズの新シーズン第一作です。 ヴィクトリカの許に、こともあろうにギャングが依頼に訪れます。抗争で命を落とすギャングも多いなか、動機もわからない…

『死神の浮力』伊坂幸太郎(文春文庫)★★★★★

短篇集『死神の精度』に続く、死神シリーズ第二作の長篇です。 今回千葉が担当になったのは、山野辺遼という小説家です。山野辺の一人娘を殺した本城崇は、人間らしい良心の生まれつき欠如したサイコパスでした。そんな本城が裁判で無罪判決を受け、山野辺の…

『カササギたちの四季』道尾秀介(光文社文庫)★★★☆☆

リサイクルショップにまつわる登場人物名になぞらえた四つの短篇からなる作品集です。店長の華沙々木《かささぎ》が的外れな推理を唱えるも、共同経営者の語り手・日暮がうまく手を回して華沙々木を立てたまま事件を解決する、という基本線だけ見ればユーモ…

『そして名探偵は生まれた』歌野晶午(詳伝社文庫)★★★☆☆

「そして名探偵は生まれた」★★★☆☆ ――影浦逸水は名探偵だった。だが事件記録を発表して名誉毀損で訴えられたことがあるため、世間的にはしがない興信所探偵で通していた。事件解決の褒美に訪れていた雪の山荘で、密室殺人が起こった。だが金にならない事件だ…

『冥路の果《めいろのはて》』佐々木俊介(佐々木ミステリ部)

『繭の夏』著者による新作長篇。著者ホームページにて2019年6月12日からほぼ作中の日付と連動して途中まではほぼ毎日連載されていた作品です。徐々に更新は遅れ10月には途絶してしまいました。そして2020年1月5日に著者から正式に「中途半端でストップ」と宣…

『クリスティの六個の脳髄』アガサ・クリスティ/深町眞理子訳(グーテンベルク21)★★★☆☆

もとは講談社文庫から出ていたものの電子化のようです。 「私立探偵エルキュール・ポワロ編」「すずめばちの巣」(Wasps' Nest)★★★☆☆ ――庭にいるジョン・ハリスンのところにポワロが現れた。ハリスンの恋敵ラングトンがすずめばち退治に青酸カリを購入した…

『御子柴くんの甘味と捜査』若竹七海(中公文庫)★★★☆☆

倒叙作品集『プレゼント』に出てくる探偵役の小林警部補の部下、御子柴刑事が主人公です。長野県警から警視庁に出向し、そこで遭遇する5つの事件を描いた短篇集。タイトルになっている「甘味」とは、県警からは東京みやげを、東京の人間からは長野の名物を…

『完全犯罪に猫は何匹必要か?』東川篤哉(光文社文庫)★★★★☆

豪徳寺邸で起こった十年前の未解決殺人事件、探偵による豪徳寺家の猫さがし、十年前と同じビニールハウスでの殺人事件、どれも無関係ではないに決まっているのだけれど、少なくとも序盤では関連性は明らかになりません。 それどころか鵜飼と砂川警部もなかな…

『刑事コロンボ完全版』vol.1 DISC 1(ユニバーサル)★★★★☆

刑事コロンボ廉価版の1枚目。「殺人処方箋」(Prescription: Murder,1967)★★★★☆ ――結婚十年になる精神科医フレミングは女優のジョーンとの浮気がばれて、妻のキャロルに離婚を切り出されて名声と財産も失う危機に陥った。サプライズの結婚記念旅行を計画…

『親指のうずき』アガサ・クリスティー/深町真理子訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★★☆

『By the Pricking of My Thumbs』Agatha Christie,1968年。 正確に言えば「積ん読」ではありません。大好きなトミーとタペンス・シリーズは全部で5冊しかないので、わざと大事に取っておいたのです。これで残るはあと1冊……。 クリスティーの巻頭言がうれ…

『11枚のとらんぷ』泡坂妻夫(角川文庫)★★★☆☆

泡坂氏の長篇は、奇想に溢れる短篇と比べると、手堅いという印象を持ちます。本書にしてもそれは例外ではありませんでした。 公民館でのアマチュア奇術ショウで披露される十一の奇術に加えて、作中人物の著述『11枚のとらんぷ』に書かれた十一の奇術、という…

『象牙色の嘲笑 新訳版』ロス・マクドナルド/小鷹信光・松下祥子訳(ハヤカワ・ミステリ文庫)★★★☆☆

『The Ivory Grin』Ross Macdonald,1952年。 なるほど詩的表現といっても、チャンドラーのようなインテリ嫌味なところを楽しむような意地の悪い面白さではなく、修辞技法がすっと溶け込んでいるので、読んでいて引っかかりを覚えることがありません。それが…

『ガソリン生活』伊坂幸太郎(朝日文庫)★★★★☆

本書ではなんと自家用車が語り手を務めます。 とうぜん視点に限りがあるので、情報は断片的にしか伝わってこない――かと思いきや、車には車のネットワークがあるらしく、自動車間の噂話を主に駐車場で仕入れており、むしろある部分では人間よりも情報通だった…

『シャーロッキアン!』1~4 池田邦彦(双葉社ACTION COMICS)

家の整理をしていたら出てきたので久しぶりに読み返しました。 シャーロッキアンの大学教授・車路久と女子大生・原田愛里がホームズにまつわる事件を通して、人の心の機微に触れ、ホームズ物語の謎や周りの人たちの悩みを解決してゆくストーリー。 以前に読…

『無花果とムーン』桜庭一樹(角川文庫)★★☆☆☆

もしかすると角川書店から出版されるものは意図して少女小説のカラーを強めに出しているのでしょうか、深刻な悩みも体当たりな反応も思春期くさすぎて今のわたしにはまぶしすぎました。 作中にもちらっと顔を見せていましたし、あとがきに書かれているところ…

『現代華文推理系列 第一集』稲村文吾訳(kindle)★★☆☆☆

中国&台湾のミステリ作家の作品四篇が収録されています。水天一色の作品が目当てでした。単品でも購入できるのですが、未知の作家の作品も読みたいので短篇集を読みました。 「人体博物館殺人事件」御手洗熊猫(人体博物館謀殺案,御手洗熊猫,2008)★★☆☆☆ …

『殊能将之未発表短篇集』殊能将之(講談社)★★★★☆

生前講談社編集部に送っていた「再発見」された短篇三篇に、知人宛ての日記/私小説で没後メフィストに掲載された一篇を加えたものです。 「犬がこわい」★★★★☆ ――世の中の人間は、犬がこわい人間がいることを理解していないらしい。そうでなければ住宅地の真…

「都市伝説パズル」法月綸太郎(講談社文庫『法月綸太郎の功績』より)

「都市伝説パズル」★★★☆☆ ――先輩を起こさないように暗闇のなか忘れ物を取って戻った翌日。先輩は死体で発見され、壁には「電気をつけなくて命拾いしたな」の文字が。都市伝説そのままに起こった殺人事件。法月警視の話を聞いた綸太郎は、メッセージを書くこ…

『琅邪の鬼』丸山天寿(講談社文庫)★★☆☆☆

古代中国を舞台にした――というと、すぐに伝奇小説を連想しましたが、本書にはさほど伝奇要素はありません。 確かに巫医は登場し、卦を立てたり思念を聞いたり五里霧を起こしたりします。忍者のような戦闘集団も登場します。真相はどろどろしたものでした。 …

『その女アレックス』ピエール・ルメートル/橘明美訳(文春文庫)★★★★☆

『Alex』Pierre Lemaitre,2011年。 道を歩いていた女が白いバンに連れ込まれ誘拐監禁されたが、犯人の素性も被害者の身許も不明――。妻を誘拐殺害された経験を持つ警部カミーユが、あろうことか誘拐事件の指揮を執ることになってしまいます。監禁されたアレ…

『シャーロック・ホームズの愉しみ方』植村昌夫(平凡社新書)★★★★☆

著者がブログで発表していたホームズ関係の文章から主要なトピックを抜粋してまとめたものです。 著名人のホームズ・エッセイ&論考。「バリツ」とは何か? 「プロの美女」「アーミー・コーチ」の訳語の問題。大まかに言ってこの三部から構成されています。 …

『銀髪少女は音を視る ニュクス事件ファイル』天祢涼(講談社タイガ)★★★☆☆

タイトルからも窺えるように、『キョウカンカク』の音宮美夜が再登場する作品です。 この作品から、講談社文庫から講談社タイガに移籍したようです。 すわミステリ色よりもキャラクター色が強まったのかな……?と勘繰りたいところですが、そんな心配は無用で…

『かまいたち』宮部みゆき(新潮文庫)★★★☆☆

「かまいたち」★★★★☆ ――江戸の町は辻斬りに怯えていた。医者である父親・玄庵の帰りが遅いのを心配したおようは、提灯を手に父を迎えに出た。そこでおようは辻斬りの現場を目撃してしまう。ずれた頭巾から見えた若い顔……。 ミステリ流に言うなら死体消失の謎…

『雨の日も神様と相撲を』城平京(講談社タイガ)★★★★☆

相撲好きの両親に育てられながらも、体格に恵まれなかった逢沢文季は、両親の死後、母方の叔父に引き取られ、中三の春から米どころの田舎で暮らすことになる。相撲とは縁が切れたつもりだった……。ところがその村は、相撲好きのカエルを神様と祀る、相撲の盛…


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