『シフォン・リボン・シフォン』近藤史恵(朝日文庫)★★★★☆

「第一話」★★★★☆ ――帰り道にあった書店が閉店し、ランジェリーショップになっていた。佐菜子の母親は背骨を折ってからリハビリを怠けていたため、寝たきりになってしまった。駅前の書店まで寄り道している時間はない。胸の大きさにコンプレックスのある佐菜…

『もしもし、還る』白河三兎(集英社文庫)★★★★☆

目覚めたらサハラ砂漠。落ちてくる電話ボックス。 荒唐無稽な導入ながら、内容や語り口はいたってシリアスです。 主人公は田辺志朗(シロ)。 電話だけでつながっているもう一人の「遭難者」や119番の相手口とのやり取りが繰り広げられる現在パートからは…

『最後のトリック』深水黎一郎(河出文庫)★★★☆☆

メフィスト賞受賞作『ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!』改題文庫化。 冒頭から明らかになるように、「読者が犯人」に挑んだ作品です。常識的に考えてそんな作品など不可能なわけですから、本書もある特定の条件があって初めて成立するものです。だから…

『お好みの本、入荷しました 桜庭一樹読書日記』桜庭一樹(創元ライブラリ)★★★★☆

桜庭一樹読書日記その3。 ジョン・サザーランドの「謎」シリーズ(pp.12~17)は、古典のペーパーバック用の気軽な解説を集めたものだったんですね。 近藤史恵は好きな作家なのだけれど、時代小説『にわか大根』はいまいちでした。が、12ページのK島氏によ…

『窓 〈フィルム・ノワール ベスト・コレクション〉』株式会社ブロードウェイ(米,1949)★★★☆☆

コーネル・ウールリッチ原作。テッド・ラズラフ監督。ボビー・ドリスコール、アーサー・ケネディ、ポール・スチュアート出演。 ニューヨークのアパートで両親と暮らすトミー少年は、日頃から自分の空想した作り話を人に聞かせては両親を困らせていた。ある蒸…

『氷菓』米澤穂信(角川文庫)★★★☆☆

米澤穂信のデビュー作。「古典部」シリーズ第一作。 『さよなら妖精』が古典部シリーズの一作として構想されていたという話は知っていましたが、なるほど何となく共通項や似た雰囲気がありました。 序章を除く最初の二章が一話完結式でそれぞれ「部室に外か…

『その可能性はすでに考えた』井上真偽(講談社ノベルス/講談社文庫)★★★☆☆

とある事情により奇蹟があることを証明しようと、名探偵がトリックの可能性を否定する――ひねくれた設定のようですが、どうしてどうして、ワトソン役の迷推理を探偵役が否定する――と考えれば、ごく普通のミステリとさして変わりはありません。 しかしながらこ…

『殊能将之読書日記 2000-2009』殊能将之(講談社)★★★★☆

殊能将之のウェブ日記より、読書日記の部分を抜き出したものです。「リーディング」という形式を取って(当時の)未訳小説が紹介されています。 解説で法月綸太郎氏が瀬戸川猛資氏の名前を出していますが、紹介されている作品よりも紹介文の方が面白い(面白…

『浪花少年探偵団』東野圭吾(講談社文庫)★★☆☆☆

美人でがさつで強気な小学校教師・しのぶセンセが、生徒にかかわりのある事件やたまただ遭遇した事件に首を突っ込み、生徒たちを巻き込んで暴れ回る短篇集。しのぶ先生はひらめきはするけど解決はしない、そんなスタンス。 推理ものや少年探偵団ものというよ…

『ジャイロスコープ』伊坂幸太郎(新潮文庫)★★★★☆

文庫オリジナルの短篇集。巻末に収録作についてのインタビューあり。 「浜田青年ホントスカ」 アンソロジー『晴れた日は謎を追って がまくら市事件』(→)で既読。 「ギア」★★★☆☆ ――広漠とした荒地をワゴンが走っていく。数か月で町は消えてしまった。運転手…

『カナリヤは眠れない』近藤史恵(詳伝社文庫)★★★☆☆

カード依存症になった茜は、親の助けで借金を完済したあと、二度とカードは使わないと誓ったはずだった。だが玉の輿に乗り、夫からクレジットカードを手渡された茜は、魅入られたように洋服を購入していた。 週刊誌記者の雄大は、寝違えた首を治しに接骨院に…

『ミステリ・オールスターズ』本格ミステリ作家クラブ編(角川文庫)★★☆☆☆

本格ミステリ作家クラブ創立10周年記念の、書き下ろしアンソロジー。気になる作家・作品だけを読みました。 「続・二銭銅貨」北村薫 ★★☆☆☆ ――平井さんが、訪ねて来た。「君からあの話を聞いたとき、これこそ智的小説だと思った。それを書いてみたまえ、と…

『僕の殺人』太田忠司(講談社文庫)★★★☆☆

太田忠司のデビュー長篇。〈殺人三部作〉とは言っても三作間につながりはないようです。 僕はこの事件の犠牲者であり、加害者であり、探偵であり、証人であり、またトリックでもあった。/そして僕は事件の記録者になろうとしている。 ――という趣向が、単な…

『私を知らないで』白河三兎(集英社文庫)★★★★☆

転勤族の息子である黒田慎平は、とても醒めていて、転校してきた学校のクラス内政治を無難に渡り歩くことに、何よりも気を遣っています。転校してきてからも、リーダー格の女子ミータンとの距離を測り、ハブられている暗い美少女キヨコを避けるように過ごし…

『紳士同盟』小林信彦(新潮文庫)★★★☆☆

携帯電話もインターネットもない時代。 著者得意のテレビ・映画業界を舞台にした、詐欺《コン・ゲーム》小説です。 本書には四つの詐欺が描かれています。小手調べ代わりの、銀行の手続きを利用したもの。今で言ういわゆる〈素人〉のテレビ願望と、女優への…

『吸血鬼と精神分析』(上・下)笠井潔(光文社文庫)★★★☆☆

矢吹駆シリーズ第6作、文庫化。 前作の事件の後遺症から鏡を見ることができなくなったナディアは、旧友の薦めで精神分析に通うことにしました。 一方、モガール警視とジャン=ポールは、ルーマニアからの亡命軍人殺人事件と、全身の血を抜き取られた連続女…

『ハートブレイク・レストランふたたび』松尾由美(光文社文庫)★★★☆☆

松尾由美版〈隅の老人〉の続編です。終わり方からすると、第3弾以降も期待できそうです。 「大げさなペンケースの問題」★★★☆☆ ――勝手に書斎がわりに使っているそのファミリーレストランには、幸田ハルさんというお婆ちゃんがいる。実はこの世の人ではない。…

『キョウカンカク 美しき夜に』天祢涼(講談社文庫)★★★★☆

第43回メフィスト賞受賞作です。 実際の共感覚をアレンジした感のある〈能力〉のようなもの、ノベルズ版の表紙に描かれたイッちゃってる感じのイラスト――この二点から、てっきりエキセントリックなキャラクターがぶっ飛んだ言動をするラノベ調の作品なのかと…

『リカーシブル』米澤穂信(新潮文庫)★★★★☆

千里眼なんてあるはずがない――。 だからそんな人間が登場しても大抵は何らかの仕掛けを疑ってしまいます。 本書の場合、未来視の謎よりも、家庭環境に不安のある語り手の女子中学生が慣れない引っ越し先で人間関係にさらに不安を感じてゆく様子が切実に語ら…

「吉原雀」『にわか大根 猿若町捕物帳』近藤史恵(光文社文庫)

「吉原雀」★★★☆☆ ――遊女ばかり三人が死に、伝染病や事件性が疑われたが、店も死因もばらばらでだった。だが遊女の一人が「雀」と言い残していることがわかり……。 見合い相手が陽気な父親と再婚する、馴染みの遊女はいるが手は出さない、そんな真面目一筋の同…

『あるキング 完全版』伊坂幸太郎(新潮文庫)★★★☆☆

伊坂幸太郎の『あるキング』の、雑誌掲載版・単行本版・徳間文庫版すべてのバージョンの合本版+折り込みチラシに(本文とは関係のない)掌篇つき。 こういうのは初めに読んだバージョンが記憶に残るものなので、本書の巻頭にある単行本版がいちばんよかった…

『ピピネラ』松尾由美(講談社文庫)★★☆☆☆

とつぜん小さくなる病気になった主婦と、「ピピネラ」という謎の言葉を残して人形を追って失踪した夫をめぐる、サスペンスのような、オカルトフェミニズム小説でした。 とつぜん一メートル前後の身長になってしまう困惑をファッション面から描いてみせたり、…

『賢者はベンチで思索する』近藤史恵(文春文庫)★★★☆☆

「第一章 ファミレスの老人は公園で賢者になる」★★★☆☆ ――久里子は専門学校を卒業したもののデザイナーの就職先が見つからず、ファミレスでアルバイトをしている。国枝という常連の老人は、いつも何日か前の新聞を読んでいる。成り行きから犬を飼うことになっ…

『写楽殺人事件』高橋克彦(講談社文庫)★★☆☆☆

写楽の正体という謎にはあまり魅力は感じません。シェイクスピア別人説なんかもそうなのですが、シェイクスピアはシェイクスピアでいいじゃん、と思ってしまいます。無名の人間が無名だったのは、無名だったからだ――謎というほどでもないことを、むりやり謎…

『あぶない叔父さん』麻耶雄嵩(新潮社)★★★☆☆

金田一耕助を思わせるシルエット――語り手である斯峨優斗の叔父さんは、なんでも屋(という名のプー扱い)をやっていて、よく事件に巻き込まれるところまでかの名探偵にそっくり……と思いきや、巻き込まれるというより引き寄せていました。ぼさぼさの髪型がと…

『人形はライブハウスで推理する』我孫子武丸(講談社文庫)★★★☆☆

人形シリーズはてっきり『人形は眠れない』で打ち止めかと勘違いしていたので、2004年発行(親本は2001年)のシリーズ最新作である本書を、今ごろになって読むことになりました。 「人形はライブハウスで推理する」★★☆☆☆ ――ヤンキーのような男が私の部屋の前…

『あなたに贈る×《キス》』近藤史恵(PHP文芸文庫)★★★☆☆

『あなたに贈る×』★★★☆☆ ――感染から数週間で確実に死に至る病。そのウイルスの感染ルートはただひとつ、唇を合わせること。かつては愛情を示すとされたその行為は、国際的に禁じられ、封印されている。しかし、ある全寮制の学園で一人の女生徒が亡くなり、「…

『仮面病棟』知念実希人(実業之日本社文庫)★★★★☆

島田荘司氏が選考委員を務める「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」受賞者による、第五作。 一言で言えば、人質監禁サスペンスの皮をまとった本格ミステリです。 拳銃を持った立てこもり犯の異常性の恐怖に怯えながら(受動的サスペンス)、犯人から身を…

『ディーセント・ワーク・ガーディアン』沢村凜(双葉文庫)★★★★★

労働基準監督官を主人公にした連作短篇集。「第一話 転落の背景」★★★★☆ ――犬塚志朗という男が死んだ。解体作業中の建築足場の三階部分から転落したのだ。転落場所から離れたところに保護帽《ヘルメット》が転がっていた。犬塚の不注意が招いた事故のようだが…

『紺碧海岸のメグレ』ジョルジュ・シムノン/佐藤絵里訳(論創社 論創海外ミステリ140)★★★☆☆

『Liberty Bar』Georges Simenon,1932年。 戦前に邦訳されたきりだった『自由酒場』の新訳完訳。 メグレはアンティーブの駅で列車を降りた。紺碧海岸《コート・ダジュール》の雰囲気はヴァカンスを感じさせる。メグレはいささか特殊な指令を受けていた。「…


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