『シャーロック・ホームズの栄冠』北原尚彦編訳(創元推理文庫)★★★☆☆

「第I部 王道篇」「一等車の秘密」ロナルド・A・ノックス(The Adventure of the First-Class Carriage,Ronald A. Knox,1947)★★★★☆ ――リューマチで仕事を辞めたヘネシー夫妻は、田舎屋敷の番小屋に住み込み、スウィシンバンク夫妻の世話をすることにな…

『福家警部補の再訪』大倉崇裕(創元推理文庫)★★★☆☆

福家警部補シリーズ第二集。第一話の切れ味が一番よかったため、やや尻すぼみな印象でした。「倒叙ミステリ」についての解説者の考察が腑に落ちます。 「マックス号事件」(2006)★★★☆☆ ――豪華客船マックス号の船室内で、原田はかつて恐喝の相棒だった直巳を…

『鳥居の密室 世界にただ一人のサンタクロース』島田荘司(新潮社)★☆☆☆☆

京大時代の御手洗が登場する進々堂シリーズの長篇です。 数ある御手洗もの長篇のなかでもぶっちぎりの失敗作でした。 ぼくという語り手が透明すぎて存在感がなく、地の文でも心情をほとんど発することがないため、小説といよりも御手洗の台詞だけが書かれた…

『7人の名探偵 新本格30周年記念アンソロジー』文芸第三出版部編(講談社ノベルス)★★☆☆☆

新本格30周年を記念した〈名探偵〉がテーマの書き下ろしアンソロジー。シリーズ探偵を登場させたのは7人中4人。そのうえ真剣に取り組んだ作品というよりもお祭り用のやっつけ仕事が多く期待はずれでした。 「水曜日と金曜日が嫌い――大鏡家殺人事件――」麻耶…

『連城三紀彦レジェンド 傑作ミステリー集』綾辻行人他編(講談社文庫)★★★★☆

綾辻行人・伊坂幸太郎・小野不由美・米澤穂信それぞれの一押しと、第二第三候補のなかから綾辻・伊坂が相談して決めた二篇を収録。 「依子の日記」(1980)★★★☆☆ ――殺人。私から夫までも奪おうとしているあの女を殺害する以外にもう残された道はない。辻井薫…

『悪女イヴ』ジェイムズ・ハドリー・チェイス/小西宏訳(創元推理文庫)★★★★★

『Eve』James Hadley Chase,1945年。 悪女ものには最低限ふたつの要素が必要でしょう。男を絡め取る魅力のあるファム・ファタールと、絡め取られるに相応しい弱みを持っている男です。 この『悪女イヴ』では悪女の魅力よりもとりわけ語り手クライヴ・サース…

『盲目の理髪師』ジョン・ディクスン・カー/三角和代訳(創元推理文庫)★☆☆☆☆

『The Blind Barber』John Dickson Carr,1934年。 新訳を機に読み返してみましたが、やはりしんどかったです。新訳のおかげで笑いどころがわかりやすくなっていることを期待していたのですが、台詞が新しく軽くなったせいで空々しさが際立つ結果になってい…

『葬式組曲』天祢涼(双葉文庫)★★★☆☆

政府により葬式が禁じられ、直葬が当たり前になった世界で、唯一葬式の伝統が残された県で葬儀社が執りおこなう葬儀の顛末を描いた連作ミステリです。 デビュー作の『キョウカンカク』が素晴らしかっただけに、著者には過度な期待を持ってしまいます。それで…

『粘土の犬 仁木悦子傑作短篇集』仁木悦子(中公文庫)★★☆☆☆

なぜか中公文庫から日下三蔵編のミステリ短篇集がいろいろと出ています。第一短編集『粘土の犬』と第二短篇集『赤い痕』の合本。 「かあちゃんは犯人じゃない」(1958)★★☆☆☆ ――とうちゃんが昼寝している間に、昨日どなっていたシャボンを見つけ、ズボンのポ…

『ペンギンは空を見上げる』八重野統摩(東京創元社 ミステリ・フロンティア)★★★★☆

とてもいびつなのに実は隅々まで計算され尽くした作品でした。 主人公は宇宙に憧れているのに宇宙飛行士ではなくエンジニアを目指しています。確かに考え方としてはありかもしれませんが小学生の発想とは思えません。 過去に何かあったらしいとはいえ、同級…

『奇想天外 21世紀版 アンソロジー』山口雅也編著(南雲堂)★★☆☆☆

自分好みの雑誌を作りあげるのは編者の特権ですが、自分語りが頻繁に顔を出すのは勘弁してほしかったところです。 「21世紀版奇想天外小説傑作選[海外篇]」「最上階に潜むもの」アーサー・モリスン/宮脇孝雄訳(The Thing in the Upper Room,Arthur Morr…

『友達以上探偵未満』麻耶雄嵩(角川書店)★★★☆☆

著者にしてはとんがってもいないし、犯人当ての趣向ゆえか問題編も地味だし、どういう作品なんだろうこれは……?と訝しみながら読み進めてゆきましたが、最後まで読めば派手でこそないもののやはり著者らしい一筋縄ではいかない作品でした。 「伊賀の里殺人事…

『龍の耳を君に デフ・ヴォイス新章』丸山正樹(東京創元社)★★☆☆☆

手話通訳士である荒井を主人公にした『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』の続編。「騒ぐな、金を出せ」と脅して強盗を働いたかどで起訴されたろう者の裁判を描く第1話「弁護側の証人」、ろう者を狙うろう者の犯罪者集団の取り調べに呼ばれる第2話「風の記…

『涙香迷宮』竹本健治(講談社文庫)★★☆☆☆

囲碁シリーズの最新作?。作中時間がどうなっているのかわかりません。サザエさん方式と一緒で、登場人物は歳を取らないのに時代だけが進んでいるという設定でしょうか。智久君は18歳なのにスマホが存在してるし、登場人物の会話のノリは若作りしたおっさん…

『痛みかたみ妬み 小泉喜美子傑作短篇集』小泉喜美子(中公文庫)★★★☆☆

双葉社から出版されていた『痛みかたみ妬み』全篇に、『またたかない星』収録作から『殺さずにはいられない』には未収録の2篇と、『小説ジュニア』掲載の単行本未収録作2篇を加えた増補復刊短篇集とのこと(解説より)。 「痛み La Peine」(1978)★★★☆☆ ―…

『キャプテンサンダーボルト』(上・下)阿部和重・伊坂幸太郎(文春文庫)★★★★★

意外な組み合わせの合作は、意外なほどにエンターテインメントに振り切ったものでした。何しろタイトルとなっているキャプテン・サンダーボルトというのはオーストラリアに実在した義賊の通り名であり、主人公たちが子どものころ観たイーストウッド主演の映…

『緑ヶ丘小学校大運動会』森谷明子(双葉文庫)★★★☆☆

運動会のプログラム仕立ての目次からもわかるとおり、運動会当日の一日の出来事が描かれています。いいですね、こういうの。 来賓室の優勝杯のなかに降圧剤の入ったピルケースがあるのを見つけたところまでは、まだ日常の不思議の範疇でした。小学生たちが「…

『春から夏、やがて冬』歌野晶午(文春文庫)★★★★★

シリーズものではない作品の魅力は、こういうところにあるのではないかと思います。歌野晶午氏はミステリ作家であり、わたしもミステリを期待して本書を手に取っているにもかかわらず、本書には明確な謎というものが存在しないため物語がどこに転がってゆく…

『悪党どものお楽しみ』パーシヴァル・ワイルド/巴妙子訳(ちくま文庫)★★★☆☆

『Rogues in Clover』Percival Wilde,1929年。 足を洗ったギャンブラーのビル・パームリーが、ポンコツな友人トニー・クラグホーンの求めに結果的に応じて、さまざまな詐欺を暴くことになる短篇集。原書未収録の「堕天使の冒険」新訳版を追加収録(旧訳は創…

『奇想天外 復刻版 アンソロジー』山口雅也編著(南雲堂)★★☆☆☆

四期にわたる雑誌『奇想天外』掲載作を抽出し、当時の体裁でまとめたアンソロジー。小説・エッセイともに、B級もしくは歴史的意味のものが大半を占めていて、いま読んで面白いものではありませんでした。。 「『奇想天外』=「謎解きが好き」 「大人になれ…

『シャーロック・ホームズの失われた災難』ジュリー・マキューラス他編/日暮雅通訳(原書房)★★★☆☆

『The Missing Misadventures of Sherlock Holmes』ed.Julie McKuras etc,2016年。 エラリイ・クイーン編『シャーロック・ホームズの災難』にさまざまな理由で収録されなかった作品を集めたものです。資料的な価値しかないのだろうなと、さして期待していな…

『Y駅発深夜バス』青木知己(東京創元社ミステリ・フロンティア)★★★☆☆

かつて表題作が『新・本格推理03 りら荘の相続人』に掲載され、年刊アンソロジーにも収録された作家の10年ぶりの作品集。 「Y駅発深夜バス」(2003)★★★☆☆ ――学習参考書の会社に勤めている坂本は、執筆者と終電過ぎまで酒を飲んだ帰り、深夜バスに乗って…

『開化鐵道探偵』山本巧次(東京創元社ミステリ・フロンティア)★★★☆☆

明治初期を舞台にした鉄道(の工事現場)ミステリです。 元八丁堀同心が探偵役を務めますが、捕物帳をリスペクトしているわけではなく、明治期の鉄道を舞台に選んだ関係上、警察官ではない私立探偵ポジションであっても不自然ではない存在として元同心が選ば…

『謎の館へようこそ 黒 新本格30周年記念アンソロジー』はやみねかおる他(講談社タイガ)★★☆☆☆

新本格30周年記念の館ものアンソロジー第2弾です。新本格のスタートという位置づけの『十角館』にちなんでの館ものなのでしょう。同じく30周年記念の『7人の名探偵』が新本格第一世代の作家たちであるのに対して、この『謎の館へようこそ』は孫・曾孫世代…

『謎の館へようこそ 白 新本格30周年記念アンソロジー』東川篤哉他(講談社タイガ)★★★☆☆

副題にあるとおり新本格30周年を記念した、館がテーマの書き下ろしアンソロジーです。綾辻行人的な〈館〉ものもあれば、舞台となるのが文化会〈館〉なだけのものもありましたが、意外なことに一族のお屋敷ものやクローズド・サークル的な意味での〈館〉もの…

『シャーロック・ノート 学園裁判と密室の謎』円居挽(新潮文庫nex)★★★☆☆

探偵士が社会的に認められている世界を舞台に、探偵養成学校に通う少年・成《なる》が遭遇する三つの事件が収録されています。 一話目は新入生に紛れこんだ特待生(特究生)をさがす……というか、特究生を当てる推理ゲーム。 二話目は成がいかにして学園に入…

『メルカトルと美袋のための殺人』麻耶雄嵩(集英社文庫)★★★★☆

再読。講談社文庫版も持っているのですが、今回は集英社文庫版で読みました。 「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」(1992)★★★★☆ ――昨夜初めて紹介されたときには何も感じなかったのに、その日の佑美子はまったく違って見えた。遊歩道沿いの杉林のなかで、転…

『首折り男のための協奏曲』伊坂幸太郎(新潮文庫)★★★☆☆

首を折って人を殺す殺し屋「首折り男」に関連する短篇と、探偵の黒澤が登場する短篇から成る、異なる媒体に発表された短篇を集めてまとめたオムニバス作品集です。 「首折り男の周辺」(2008)★★★★☆ ――定年後の若林夫妻がテレビを観ていて気づいた。「これ、…

『オシリスの眼』R・オースチン・フリーマン/渕上痩平訳(ちくま文庫)★★☆☆☆

『The Eye of Osiris』R. Austin Freeman,1911年。 フリーマン長篇2作目。 男が一人失踪した。希望する場所に埋葬されるという条件を満たせば、財産は弟に、満たされなければ財産は別の人間に――という奇妙な遺言を残して。死んでいるのか生きているのかわ…

『シャーロック・ホームズの冒険』アーサー・コナン・ドイル/延原謙訳(新潮文庫)★★★★☆

『The Adventures of Sherlock Holmes』Arthur Conan Doyle,1892年。 「ボヘミアの醜聞」(A Scandal in Bohemia,1891)★★★☆☆ ――ホームズの許を訪れたのはボヘミア国王だった。若気の至りで女優と交際していたころ、一緒に写っている写真を渡したことがあ…


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