「京鹿子娘道成寺」「空飛ぶ悪魔――機上から投下された手記――」「ある完全犯罪人の手記」「ながうた勧進帳」「両面競牡丹」「撮影所殺人事件」「静かな歩み」酒井嘉七(青空文庫)「京鹿子娘道成寺」酒井嘉七(1937)★★★★☆ ――わたくしがあの興行を見物に参り…
『ある詩人への挽歌』マイクル・イネス/桐藤ゆき子訳(現代教養文庫) 『Lament for A Maker』Michael Innes,1938年。 アプルビイものの第3作。 キンケイグ村に住み詩集も出しているエルカニー城主ラナルド・ガスリーは昔から変人だったが、特に最近は頭…
『ドッペルゲンガー宮 《あかずの扉》研究会流氷館へ』霧舎巧(講談社文庫) 1999年初刊。メフィスト賞を受賞した霧舎巧のデビュー作です。 再読ですが何もかもすっかり忘れていたのでほぼ初読に近い感覚でした。 事情により二年遅れで大学に入学したカケル…
『閉ざされた夏』若竹七海(光文社文庫) 1993年初刊。 学芸員が主人公の文学記念館が舞台のミステリです。探偵役はミステリ作家でもある妹が務めています。 後半になると浅木知佳ばかりが目立ってくるので、ほかの同僚や職場に悲劇が訪れてもあまり悲愴感が…
『死体を買う男』歌野晶午(講談社文庫) 1991年初刊。 『月刊新小説』に分載された未発表作『白骨鬼』。江戸川乱歩の未発表作かと紛うその作品は、乱歩に心酔する若者の手によるものだった。それを読んだ幻の大作家・細見辰時は、細見のファンでもあるとい…
『ぼくらはアン』伊兼源太郎(東京創元社) 2021年刊。 何とも印象深いタイトルです。平易な言葉なのに謎めいています。『赤毛のアン』を連想させるこのタイトルに惹かれて手に取りました。結論から言うと『赤毛のアン』は無関係でした。タイトルになってい…
『動く家の殺人』歌野晶午(講談社文庫) 信濃譲二三部作の最終作。1989年初刊。 信濃譲二が殺された。六月十五日のことだ。頭部強打による脳挫傷。四月十三日、信濃はレジで消費税について文句をたれていた。その翌々日から市之瀬徹はインドに滞在し、帰国…
『乱れからくり』泡坂妻夫(角川文庫) 泡坂妻夫の第一長篇。再読。 わたしが読んだのは角川文庫の電子書籍版ですが、創元推理文庫版には英題『Dancing Gimmicks』が付されています。 ボクサー崩れの勝敏夫が入社した宇内経済研究会は、社長の宇内舞子一人し…
『白い家の殺人』歌野晶午(講談社文庫) 信濃譲二ものの二作目です。1989年初刊。 資産家猪狩家の別荘で、長女の静香が殺されるという事件が起こります。首を絞められた静香は両足首を縛られて自室の天井のシャンデリアから吊るされていました。扉と窓には…
『二冊の同じ本 日本推理作家協会編 最新ミステリー選集1〈愛憎編〉』松本清張他(光文社カッパ・ノベルス)「二冊の同じ本」松本清張(1971)☆☆☆☆☆ ――古書目録に目を通していると、『欧州ことにロシアに於ける東洋研究史』というのに視線が止まった。「書…
『メルカトル悪人狩り』麻耶雄嵩(講談社ノベルスkindle) 悪人狩りというタイトルなので、てっきり「囁くもの」一作で中絶していた「メルカトル鮎 悪人狩り」以降の新作短篇集かと思っていたのですが、単行本未収録の旧作+『メフィスト』に連載されていた…
『短編ミステリの二百年3』マクロイ、エリン他/小森収編(創元推理文庫) 第3巻はEQMMコンテスト受賞作&受賞作家が収録されています。さすがに力作・傑作揃いでした。 「ナボテの葡萄園」メルヴィル・デイヴィスン・ポースト/門野集訳(Naboth's Vi…
『掌の中の小鳥』加納朋子(創元推理文庫) 『Egg Stand』加納朋子,1995年。 二十代のクールで利発的な男と勝気でエキセントリックな女が、バー「EGG STAND」を舞台に、謎解きを通して絆を深めてゆく連作短篇集。えぐるところとハートウォーミングなところ…
『バベル島』若竹七海(光文社文庫) 単行本未収録作品のなかからホラーテイストのものを選んで集めたもの。古典的な怪談からミステリ味のあるものまで、幅広い作風ではあるのですが、小粒なものが多くあまり印象に残りませんでした。 「のぞき梅」(1994)★…
『島田荘司選 日華ミステリーアンソロジー』陳浩基・知念実希人・他(講談社) 2021年刊。 まるで経済成長に合わせるかのように、乗りに乗っていた中国ミステリ&SF。アジア圏ミステリの紹介では先鞭をつけていた島田荘司氏による日華競演アンソロジーが満…
『死んでも治らない――大道寺圭の事件簿――』若竹七海(光文社カッパ・ノベルス) 2002年初刊。 退職した元刑事・大道寺圭は、知り合いの編集者にせっつかれて『死んでも治らない』という本を出版します。現役時代に遭遇した間抜けな犯罪者について面白おかし…
『奇商クラブ』G・K・チェスタトン/南條竹則訳(創元推理文庫) 『The Club of Queer Trades』G. K. Chesterton,1905年。 新訳版。チェスタトンの著作としてはかなり初期の作品です。強いて言えばユーモア小説ということになるのでしょうが、ドタバタが…
『日曜は憧れの国』円居挽(創元推理文庫) 『Sanday Quartet』Van Madoy,2016年。 カルチャー教室で出会った学校も性格も違う中学二年生4人が遭遇する日常の謎5篇。『10月はたそがれの国』みたいなタイトルですが、「憧れの国」とはカルチャー教室を主宰…
『刑事コロンボ 13の事件簿――黒衣のリハーサル』ウィリアム・リンク/町田暁雄訳(論創社 論創海外ミステリ108) 『The Columbo Collection』William Link,2010年。 刑事コロンボの脚本家であるウィリアム・リンクによるコロンボものの短篇集。限定版付属の…
『矢上教授の夏休み』森谷明子(祥伝社文庫) 2018年初刊。『矢上教授の「十二支考」』改題。 大学のレポートのテーマに十二支を選んだ御牧咲は、十二支にちなんだ十一の神社が町を守るように囲んでいるこぶし野町に来ていました。その町で日常の謎から殺人…
『一の悲劇』法月綸太郎(祥伝社文庫) 1991年初刊。法月綸太郎シリーズの第四作。 誘拐被害者の父親である山倉史郎の一人称で綴られています。タイトルの一とはその一人称およびダイイング・メッセージに由来するようです。 広告代理店部長の山倉史郎の職場…
『シャーロック・ホームズの帰還』アーサー・コナン・ドイル/延原謙訳(新潮文庫) 『The Return of Sherlock Holmes』Arthur Conan Doyle,1905年。 「空家の冒険」(The Adventure of the Empty House,1903)★★☆☆☆ ――ロナルド・アデヤ卿殺害事件の調書を…
『されば愛しきコールガールよ 私立探偵パーデュー・シリーズ①』ロス・H・スペンサー/田中融二訳(ハヤカワ・ミステリ文庫) 『The DADA Caper』Ross H. Spencer,1978年。 何かのミステリ・ベスト本で紹介されていて、短い章のすべてにアンダーウッドじい…
『プラスマイナスゼロ』若竹七海(ポプラ文庫) 葉崎市シリーズ第5作。ピュアフル版は2008年ジャイブ版に書き下ろし「卒業旅行」を加えたもの。ポプラ文庫の新装版にはそれに加えてさらに書き下ろし掌篇「潮風にさよなら」が収録されています。 容姿端麗で…
『ふたたび赤い悪夢』法月綸太郎(講談社ノベルス) 著者あとがきによれば、『頼子のために』の続編であり、『頼子のために』『一の悲劇』『ふたたび赤い悪夢』で三部作を成し、さらには『雪密室』の後日談という話です。 なるほど登場人物とその過去の因縁…
『石の繭 警視庁殺人分析班』麻見和史(講談社文庫) シリーズタイトルの「殺人分析班」とは、警視庁捜査一課第十一係のメンバー5人が捜査会議では出来ない推測や議論を、居酒屋で話し合う集まりにつけた名前です。 主人公は新人刑事の如月塔子。病死した警…
『猫島ハウスの騒動』若竹七海(光文社文庫) 初刊2006年。 猫ばかりの島、通称・猫島。高校生の虎鉄は海岸でナイフを突き立てられた猫の剥製を見つける。たまたま観光で島を訪れていた葉崎署の刑事・駒持は、猫アレルギーに苦しみながらも事件の背後に何か…
『秘密(下)』ケイト・モートン/青木純子訳(創元推理文庫) 『The Secret Keeper』Kate Morton,2012年。 ローレルは事件について弟のジェリーに相談するとともに、ヴィヴィアンについて調査を進めてゆきます。そうして明らかになるドリーの噓、ヴィヴィ…
『秘密(上)』ケイト・モートン/青木純子訳(創元推理文庫) 『The Secret Keeper』Kate Morton,2012年。 ケイト・モートンの第四作。 一九六一年、弟ジェリーの誕生日の日、ボーイフレンドとの約束の時間を待っていた十六歳のローレルは、見知らぬ男が訪…
『九月は謎×謎修学旅行で暗号解読 私立霧舎学園ミステリ白書』霧舎巧(講談社ノベルス) 霧舎学園シリーズ第六作。2005年9月刊行。 タイトルに暗号解読とあるように、メインとなる謎は暗号による宝探し/人捜しですが、ほかにもアリバイ、叙述トリック、二人…