『天来の美酒/消えちゃった』A・E・コッパード/南條竹則訳(光文社古典新訳文庫)

「消えちゃった」(Gone Away,1935)★★★★★ ――三人の男女がスピードの速い自動車に乗って、フランスを旅していた。ジョン・ラヴェナムと妻のメアリー、友人のアンソンという三人連れで。メアリーが地図を見ながらたずねた。「どのくらい走ったの、ジョン?」…

「Weep Not My Wanton」A. E. Coppard(『Adam and Eve and Pinch Me』より)

丘は豚の鳴き声でやかましい。男が一人、それに男の子が歩いている。「この阿呆がきゃあ!」小柄な子どもを揺すって男は繰り返した。「阿呆んだらが! ほんに何さらすだか!」七、八歳だろう。少年は声を立てずに泣いていた。「六ペンス失くしてか。誰の世話…

「Father Raven」A. E. Coppard(『The Collected Tales of A. E. Coppard』より)★★★★★

「Father Raven」 ――レイヴン神父は教区の住人をつれて海辺にでかけていた。ハットフォール家の子供たちが楽器を演奏している。気づくとレイヴン神父は鼓笛隊長のように先頭に立って行進していた。四十人の教区民も続いた。天国を目指して。だが天国は遠かっ…

「Judith」A. E. Coppard(『The Collected Tales of A. E. Coppard』より)

「Judith」(1926短篇集『The Field of Mustard』) ――これは一介の庶民に対して大きな間違いを犯した貴婦人の物語である。ジュディス・リーワードの夫サー・ガリスタンはアフリカに狩猟旅行に行っていた。ジュディスがサイクリング中に足をくじたときに通り…

「My Hundredth Tale」「Ring the Bell of Heaven」「Nixey's Harlequin」A.E.Coppard

「My Hundredth Tale」★★★☆☆ コッパード自身を思わせる小説家ジョン・フリンが問わず語りに語る、幼い頃の思い出、自分にとっての書くという行為、恋、恋、恋。『The Collected Tales of A. E. Coppard』収録作のうち、「The Cherry Tree」「The Presser」に…

「The Presser」A.E.Coppard(コッパード) ★★★★☆

十歳のジョニー・フリンは母元を離れて伯母に預けられていた。貧乏なジョニーは学校にも行かず仕立屋で働いている。仕立屋にはサルキーというアイロンがけ職人がいた。ほかの従業員は女ばかり。ジョニーはヘレン・スミザースさんのことが好きだった。店主の…

「The Old Venerable」A. E. Coppard(『The Collected Tales of A.E.Coppard』より)★★★★☆

オールド・ディックは森はずれに住む浮浪者。自分のロバを持つのが夢だった。今までは狩猟管理人とも“共存共栄”してきた。管理人家の子犬をもらい受けて、ロバの代わりに可愛がってもいた。だが新しい管理人がきてすべては変わってしまった。 コッパードの短…

「The Ballet Gril」A. E. Coppard ★★★★★

靴屋の小僧シンプキンズは大学に集金に向かったのだが、からかわれてたらい回しに。ようやくファズ教授に引き合わされたが、教授はお金のことは取り合わず奇天烈な話ばかりを聞かせるのだった。戸惑いながらも、大学で勉強しないかという教授の言葉に心動か…

「The Poor Man」A. E. Coppard

「Poor Man」とは「貧乏な男」であり「心貧しき男」であり「哀れな男」のこと。 コッパードの複雑な宗教観がよくあらわれている作品。 牧師の忠告にもかかわらず、飲酒も賭事も密猟もやめようとしない男はやがて……。 心から忠告をする牧師に向かって、「おれ…

「The Cherry Tree」A. E. Coppard(1922)

これぞコッパード! 出だしがいいよね。町は騒ぎに包まれていた。誰もが不安になった。数週間前に殺人があったばかり――叫びが聞こえた。「このガキんちょ!」機関車好きのおじさんというちょっと変わった人物が登場するのもコッパードっぽくていい。ハートフ…

「The Higgler」A. E. Coppard

コッパードの代表作の一つ。ということで期待して読んだんだけれど、ちょっとイメージと違いました。わりと普通の恋愛小説。 行商人のウィトロウは、あるとき荒野の一軒家を訪れた。そこには美しい母娘が住んでいた。娘に魅かれたウィトロウは、婚約者のある…


防犯カメラ