『ちびの聖者 シムノン本格小説選』ジョルジュ・シムノン/長島良三訳(河出書房新社)★★★★☆

『ちびの聖者 シムノン本格小説選』ジョルジュ・シムノン/長島良三訳(河出書房新社) 『Le Petit Saint』Georges Simenon,1965年。 訳本は2008年刊行。 シムノンの非ミステリ作品シリーズ〈シムノン本格小説選〉の第2回配本。 訳者あとがきによれば、多…

『生は彼方に』ミラン・クンデラ/西永良成訳(ハヤカワepi文庫)★★★☆☆

『生は彼方に』ミラン・クンデラ/西永良成訳(ハヤカワepi文庫) 『La Vie est ailleurs』Milan Kundera,1973年。 自伝的小説とは言うものの、どちらかと言うと自伝的要素や歴史的・政治的な出来事よりも、この人は意地が悪いなァ……という感じの文章が面白…

『いつかわたしに会いにきて』エリカ・クラウス/古屋美登里訳(ハヤカワepi文庫)★★☆☆☆

『いつかわたしに会いにきて』エリカ・クラウス/古屋美登里訳(ハヤカワepi文庫) 『Come Up and See Me Sometime』Erika Krouse,2001年。 デビュー短篇集。 新しい価値観を持つ女性が古い価値観の社会と交われば、それだけでドラマが生まれるけれど、結局…

『ぼくは怖くない』ニコロ・アンマニーティ/荒瀬ゆみこ訳(ハヤカワepi文庫)★★☆☆☆

『ぼくは怖くない』ニコロ・アンマニーティ/荒瀬ゆみこ訳(ハヤカワepi文庫) 『Io non ho Paura』Niccolò Ammaniti,2001年。 カルヴィーノやタブッキも受賞したことのある、ヴィアレッジョ賞受賞作とのこと。 ミケーレ少年が罰ゲームで落ちた穴には、誘拐…

『鳥獣戯話/小説平家』花田清輝(講談社文芸文庫)★★★☆☆

『鳥獣戯話/小説平家』花田清輝(講談社文芸文庫)『鳥獣戯話』(1962)★☆☆☆☆ 巻末の「著者に代わって読者へ」「解説」「作家案内」を読むと、これは「小説」であるらしい。しかも、吉本隆明との論争に敗れたことがきっかけかどうかはともかく、評論家だっ…

『スフィンクスは笑う』安部ヨリミ(講談社文芸文庫)★★★☆☆

『スフィンクスは笑う』安部ヨリミ(講談社文芸文庫) 1924年。 安部公房の母による埋もれた名作です。妹がヨリミで姉がハルメとは現代の目から見てかなり個性的な名前なので、芸術家一家なのかなと思ったのですが、父親は村の会計だそうで、あまり関係あり…

『日本SFの臨界点 石黒達昌 冬至草/雪女』石黒達昌/伴名練編(ハヤカワ文庫JA)★★★★★

『日本SFの臨界点 石黒達昌 冬至草/雪女』石黒達昌/伴名練編(ハヤカワ文庫JA)「希望ホヤ」(2002)★★★★★ ――医者でも科学者でもない人間が病気を治す新たな方法を見つけることはできないのだろうか? 今から二十年も前、小児癌に苦しむ娘を見守りなが…

『文學界』2010年10月号【中島京子監修「来るべき世界の作家たち」】

『文學界』2010年10月号【中島京子監修「来るべき世界の作家たち」】「特集 来るべき世界の作家たち」中島京子監修 「プチ・マリク(抜粋)」マブルーク・ラシュディ/中島さゆり訳(Le Petit Malik,Mabrouck Rachedi,2008)★★★★☆ ――《五歳》。ブリュノは…

『サロメ』オスカー・ワイルド/平野啓一郎訳(光文社古典新訳文庫)★★★☆☆

『サロメ』オスカー・ワイルド/平野啓一郎訳(光文社古典新訳文庫) 『Salomé』Oscar Wilde,1893年。 平野啓一郎訳なので何となく不安を抱えていましたが、「私の物書きとしての『我』は、小説執筆で満たされているので、《サロメ》の翻訳では、『平野啓一…

『ダロウェイ夫人』バージニア・ウルフ/土屋政雄訳(講談社古典新訳文庫)★★★★☆

『ダロウェイ夫人』バージニア・ウルフ/土屋政雄訳(講談社古典新訳文庫) 『Mrs. Dalloway』Virginia Woolf,1925年。 訳者のこだわりにより、ヴァージニアではなくバージニア表記です。 開巻早々ダロウェイ夫人クラリッサが随分とうきうきしています。久…

『イビクス――ネヴゾーロフの数奇な運命』パスカル・ラバテ/古永真一訳(国書刊行会 〈BDコレクション〉)★★☆☆☆

『イビクス――ネヴゾーロフの数奇な運命』パスカル・ラバテ/古永真一訳(国書刊行会 〈BDコレクション〉) 『IBICUS』Pascal Rabaté,1998-2001/2006年。 アレクセイ・ニコラエヴィッチ・トルストイ「イビクス」を原作としたバンド・デシネです。 1917年、…

『トラウマ文学館 ひどすぎるけど無視できない12の物語』頭木弘樹編(ちくま文庫)★★☆☆☆

『トラウマ文学館 ひどすぎるけど無視できない12の物語』頭木弘樹編(ちくま文庫) 『絶望図書館』に続くアンソロジー2冊目。「絶望して、まだ当分、立ち直れそうもないとき、その長い《絶望の期間》に読むための本」だった『絶望図書館』とは違い、「絶望…

『一九八四年[新訳版]』ジョージ・オーウェル/高橋和久訳(ハヤカワepi文庫)★★★★☆

『一九八四年[新訳版]』ジョージ・オーウェル/高橋和久訳(ハヤカワepi文庫) 『Nineteen Eighty-Four』George Orwell,1949年。 ディストピア小説として名高い作品の新訳版。 記録局で記録の改変(修正)の仕事をしているウィンストンは、古道具屋で見か…

『世界が終わるわけではなく』ケイト・アトキンソン/青木純子訳(東京創元社 海外文学セレクション)★☆☆☆☆

『世界が終わるわけではなく』ケイト・アトキンソン/青木純子訳(東京創元社 海外文学セレクション) 『Not the End of the World』Kate Atkinson,2002年。 ゆるく繫がる12のシュールで奇妙な短篇が収められています。 「母さんの誕生日プレゼントを買いた…

『失脚/巫女の死 デュレンマット傑作選』デュレンマット/増本浩子訳(光文社古典新訳文庫)★★★★☆

『失脚/巫女の死 デュレンマット傑作選』デュレンマット/増本浩子訳(光文社古典新訳文庫) 『Der Sturz/Das Sterben der Pythia』Friedrich Dürrenmatt,2012年。 白水Uブックス『ドイツ幻想小説傑作集』に「犬」が収録されていて読んだことがありまし…

『四十日と四十夜のメルヘン』青木淳悟(新潮文庫)

『四十日と四十夜のメルヘン』青木淳悟(新潮文庫)「四十日と四十夜のメルヘン」(2003,2005,2009)★★★☆☆ ――日記さえまともに書けてはいない。何となく七月四日から日記をつけはじめ、たったの四日間で力尽きた。しばらくしてからふたたび七月四日と日付…

『歩道橋の魔術師』呉明益《ウー・ミンイー》/天野健太郎訳(河出文庫)★★★☆☆

『歩道橋の魔術師』呉明益《ウー・ミンイー》/天野健太郎訳(河出文庫) 『天橋上的魔術師』吳明益,2011年。 台湾の中華商場という商業施設を舞台に、そこで暮らす各商店の子どもたちの生活を、歩道橋でマジックを披露する〝魔術師〟を狂言回しにして描い…

『ヌマヌマ はまったら抜けだせない現代ロシア小説傑作選』沼野充義・沼野恭子編訳(河出書房新社)★★★★☆

『ヌマヌマ はまったら抜けだせない現代ロシア小説傑作選』沼野充義・沼野恭子編訳(河出書房新社)「空のかなたの坊や」ニーナ・サドゥール/沼野恭子訳(Занебесный мальчик,Нина Садур,1992)★★★★☆ ――地球の中心、地球の心臓部、マグマの深奥、私たちの…

『深淵と浮遊 現代作家自己ベストセレクション』高原英理編(講談社文芸文庫)★★★★☆

『深淵と浮遊 現代作家自己ベストセレクション』高原英理編(講談社文芸文庫) アンソロジーが「どこまでいってもこの自分の視点からしか見られない」ことから、作家自身に作品を選んでもらい、収録順も五十音順に並べただけという、果たして編者のことを編…

『通達/謁見』ヴァーツラフ・ハヴェル/阿部賢一・豊島美波訳(松籟社 東欧の想像力20)★★★★☆

『通達/謁見』ヴァーツラフ・ハヴェル/阿部賢一・豊島美波訳(松籟社 東欧の想像力20) チェコの劇作家でのちの大統領による戯曲2篇。 「通達」(Vyrozumění,Václav Havel,1965)★★★★★ ――グロス局長は局長室の机にある手紙を手に取った。『ラ・コ・フツ…

『ユーモア・スケッチ傑作展1 ユーモア・スケッチ大全』浅倉久志編訳(国書刊行会)★★★☆☆

『ユーモア・スケッチ傑作展1 ユーモア・スケッチ大全』浅倉久志編訳(国書刊行会) 1978年刊『ユーモア・スケッチ傑作展1』に、単行本未収録のユーモア・スケッチ並びにそれに類するユーモア短篇を収録した、アメリカ雑誌黄金時代のユーモア短篇傑作選で…

『椿姫』デュマ・フィス/西永良成訳(光文社古典新訳文庫)★★★☆☆

『椿姫』デュマ・フィス/西永良成訳(光文社古典新訳文庫) 『La Dame aux camélias』Alexandre Dumas fils,1848年。 高級娼婦マルグリット・ゴーティエが亡くなり、家と家具が競売に掛けられる場面から物語はスタートします。これがまた大仰な描写で、ま…

『文豪たちが書いた「犬」の名作短編集』彩図社文芸部編纂(彩図社)★★★☆☆

『文豪たちが書いた「犬」の名作短編集』彩図社文芸部編纂(彩図社) やたらと即物的なタイトルですが、どうやら「文豪たちが書いた~」シリーズというのが出ている模様。 「硝子戸の中」夏目漱石(1915)★★★☆☆ ――私がHさんからヘクトーを貰った時の事を考…

『カラマーゾフの兄弟 全5巻』ドストエフスキー/亀山郁夫訳(光文社古典新訳文庫)★★★☆☆

『カラマーゾフの兄弟 全5巻』ドストエフスキー/亀山郁夫訳(光文社古典新訳文庫)★★★☆☆ 『Братья Карамазовы』Ф. М. Достоевский,1880年。 『罪と罰』と並ぶドストエフスキーの代表作、ではありますが、曲がりなりにも初めからピカレスクや犯罪小説風の…

『罪と罰3』ドストエフスキー/亀山郁夫訳(光文社古典新訳文庫)★★★★☆

『罪と罰3』ドストエフスキー/亀山郁夫訳(光文社古典新訳文庫)★★★★☆ 『Преступление и наказание』Федор Михайлович Достоевский,1866年。 最終巻も第2巻と同様に雑多なエピソードが集まっていますが、第2巻ほど散漫な印象はなく、一つ一つのエピソー…

『罪と罰2』ドストエフスキー/亀山郁夫訳(光文社古典新訳文庫)★★☆☆☆

『罪と罰2』ドストエフスキー/亀山郁夫訳(光文社古典新訳文庫) 『Преступление и наказание』Федор Михайлович Достоевский,1866年。 2巻はかなり取っ散らかっていました。 前巻でドラマチックに登場した母と妹ですが、家族の口からもラスコーリニコフ…

『罪と罰1』ドストエフスキー/亀山郁夫訳(光文社古典新訳文庫)★★★☆☆

『罪と罰1』ドストエフスキー/亀山郁夫訳(光文社古典新訳文庫) 『Преступление и наказание』Федор Михайлович Достоевский,1866年。 冒頭で「あれ」の実行を前に逡巡する主人公ラスコーリニコフの姿は、なるほど倒叙ミステリのようで、そういう評価が…

『挑発する少女小説』斎藤美奈子(河出新書)★★★☆☆

『挑発する少女小説』斎藤美奈子(河出新書) 少女小説9篇について、大人の目で、そして現代の目で読み直したものです。わたしが少女小説を好きなのは、思春期特有の繊細な心理描写であったり、健気で凜とした芯の通った主人公が格好いいからであったりしま…

『あなたの自伝、お書きします』ミュリエル・スパーク/木村政則訳(河出書房新社)★★★★☆

『あなたの自伝、お書きします』ミュリエル・スパーク/木村政則訳(河出書房新社) 『Loitering with Intent』Muriel Spark,1981年。 名誉毀損を恐れずに自らの人生を記録したいという俗物たちが、小説家志望の語り手フラー・トールボットを雇って自伝のサ…

『どこか、安心できる場所で 新しいイタリアの文学』パオロ・コニェッティ他/関口英子、橋本勝雄、アンドレア・ラオス編(国書刊行会)★★★☆☆

『どこか、安心できる場所で 新しいイタリアの文学』パオロ・コニェッティ他/関口英子、橋本勝雄、アンドレア・ラオス編(国書刊行会) 日本オリジナルの21世紀イタリア文学アンソロジー。 小野正嗣による序文が収録されていますが、内容にがっつり踏み込…


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