『一九八四年[新訳版]』ジョージ・オーウェル/高橋和久訳(ハヤカワepi文庫) 『Nineteen Eighty-Four』George Orwell,1949年。 ディストピア小説として名高い作品の新訳版。 記録局で記録の改変(修正)の仕事をしているウィンストンは、古道具屋で見か…
『世界が終わるわけではなく』ケイト・アトキンソン/青木純子訳(東京創元社 海外文学セレクション) 『Not the End of the World』Kate Atkinson,2002年。 ゆるく繫がる12のシュールで奇妙な短篇が収められています。 「母さんの誕生日プレゼントを買いた…
『失脚/巫女の死 デュレンマット傑作選』デュレンマット/増本浩子訳(光文社古典新訳文庫) 『Der Sturz/Das Sterben der Pythia』Friedrich Dürrenmatt,2012年。 白水Uブックス『ドイツ幻想小説傑作集』に「犬」が収録されていて読んだことがありまし…
『四十日と四十夜のメルヘン』青木淳悟(新潮文庫)「四十日と四十夜のメルヘン」(2003,2005,2009)★★★☆☆ ――日記さえまともに書けてはいない。何となく七月四日から日記をつけはじめ、たったの四日間で力尽きた。しばらくしてからふたたび七月四日と日付…
『歩道橋の魔術師』呉明益《ウー・ミンイー》/天野健太郎訳(河出文庫) 『天橋上的魔術師』吳明益,2011年。 台湾の中華商場という商業施設を舞台に、そこで暮らす各商店の子どもたちの生活を、歩道橋でマジックを披露する〝魔術師〟を狂言回しにして描い…
『ヌマヌマ はまったら抜けだせない現代ロシア小説傑作選』沼野充義・沼野恭子編訳(河出書房新社)「空のかなたの坊や」ニーナ・サドゥール/沼野恭子訳(Занебесный мальчик,Нина Садур,1992)★★★★☆ ――地球の中心、地球の心臓部、マグマの深奥、私たちの…
『深淵と浮遊 現代作家自己ベストセレクション』高原英理編(講談社文芸文庫) アンソロジーが「どこまでいってもこの自分の視点からしか見られない」ことから、作家自身に作品を選んでもらい、収録順も五十音順に並べただけという、果たして編者のことを編…
『通達/謁見』ヴァーツラフ・ハヴェル/阿部賢一・豊島美波訳(松籟社 東欧の想像力20) チェコの劇作家でのちの大統領による戯曲2篇。 「通達」(Vyrozumění,Václav Havel,1965)★★★★★ ――グロス局長は局長室の机にある手紙を手に取った。『ラ・コ・フツ…
『ユーモア・スケッチ傑作展1 ユーモア・スケッチ大全』浅倉久志編訳(国書刊行会) 1978年刊『ユーモア・スケッチ傑作展1』に、単行本未収録のユーモア・スケッチ並びにそれに類するユーモア短篇を収録した、アメリカ雑誌黄金時代のユーモア短篇傑作選で…
『椿姫』デュマ・フィス/西永良成訳(光文社古典新訳文庫) 『La Dame aux camélias』Alexandre Dumas fils,1848年。 高級娼婦マルグリット・ゴーティエが亡くなり、家と家具が競売に掛けられる場面から物語はスタートします。これがまた大仰な描写で、ま…
『文豪たちが書いた「犬」の名作短編集』彩図社文芸部編纂(彩図社) やたらと即物的なタイトルですが、どうやら「文豪たちが書いた~」シリーズというのが出ている模様。 「硝子戸の中」夏目漱石(1915)★★★☆☆ ――私がHさんからヘクトーを貰った時の事を考…
『カラマーゾフの兄弟 全5巻』ドストエフスキー/亀山郁夫訳(光文社古典新訳文庫)★★★☆☆ 『Братья Карамазовы』Ф. М. Достоевский,1880年。 『罪と罰』と並ぶドストエフスキーの代表作、ではありますが、曲がりなりにも初めからピカレスクや犯罪小説風の…
『罪と罰3』ドストエフスキー/亀山郁夫訳(光文社古典新訳文庫)★★★★☆ 『Преступление и наказание』Федор Михайлович Достоевский,1866年。 最終巻も第2巻と同様に雑多なエピソードが集まっていますが、第2巻ほど散漫な印象はなく、一つ一つのエピソー…
『罪と罰2』ドストエフスキー/亀山郁夫訳(光文社古典新訳文庫) 『Преступление и наказание』Федор Михайлович Достоевский,1866年。 2巻はかなり取っ散らかっていました。 前巻でドラマチックに登場した母と妹ですが、家族の口からもラスコーリニコフ…
『罪と罰1』ドストエフスキー/亀山郁夫訳(光文社古典新訳文庫) 『Преступление и наказание』Федор Михайлович Достоевский,1866年。 冒頭で「あれ」の実行を前に逡巡する主人公ラスコーリニコフの姿は、なるほど倒叙ミステリのようで、そういう評価が…
『挑発する少女小説』斎藤美奈子(河出新書) 少女小説9篇について、大人の目で、そして現代の目で読み直したものです。わたしが少女小説を好きなのは、思春期特有の繊細な心理描写であったり、健気で凜とした芯の通った主人公が格好いいからであったりしま…
『あなたの自伝、お書きします』ミュリエル・スパーク/木村政則訳(河出書房新社) 『Loitering with Intent』Muriel Spark,1981年。 名誉毀損を恐れずに自らの人生を記録したいという俗物たちが、小説家志望の語り手フラー・トールボットを雇って自伝のサ…
『どこか、安心できる場所で 新しいイタリアの文学』パオロ・コニェッティ他/関口英子、橋本勝雄、アンドレア・ラオス編(国書刊行会) 日本オリジナルの21世紀イタリア文学アンソロジー。 小野正嗣による序文が収録されていますが、内容にがっつり踏み込…
『暗闇にレンズ』高山羽根子(東京創元社) 現代を舞台に監視カメラの死角で自撮りする女子学生二人が、やがて「エンバーミング」の映像を撮り始める「Side A」。 明治時代に始まり現代にまで連なる、カメラと映画に関わる嘉納一族の歴史をひもとく「Side B…
『20世紀ラテンアメリカ傑作選』野谷文昭編訳(岩波文庫) 一番新しい作品で1991年、古いものだと今から百年以上前の1912年の作品が収録されています。テーマごとに四つの部に分けられていますが、各テーマの範囲が広すぎてテーマ別に分ける必要性が感じられ…
『夏の花・心願の国』原民喜(新潮文庫) 原民喜というと原爆文学というイメージしかありません。編者の大江健三郎も一作家一テーマという持論によって戦後作品だけを採用しています。わたしの持っている『新潮文庫20世紀の100冊』というシリーズはカバーに…
『アスペクツ・オブ・ラブ ガーネット傑作集II』デイヴィッド・ガーネット/新庄哲夫訳(河出書房新社)★★★★☆『Aspects of Love』David Garnett,1955年。 舞台が散々な結果となり、次の舞台まで文無しで過ごさなければならなくなった女優のローズは、熱心な…
『岡本かの子 アムール幻想傑作集 美少年』長山靖生編(彩流社) 『Beauty Boy』2019年。 復刻アンソロジー・シリーズの一冊。 「豆腐買い」(1934)★★★★☆ ――加奈子は潜戸を勇んで開けた。永年居慣れた西洋の街や外景と何も彼もが比較される。電柱を見上げる…
『眺海の館』ロバート・ルイス・スティーヴンソン/井伊順彦編訳(論創社) 『The Pavilion on the Links and Other Stories』Robert Louis Stevenson,2019年。 本邦初訳や初訳ヴァージョンを含む日本オリジナル短篇集。『寓話』が短篇集なので実質26篇収…
『龍蜂集 澁澤龍彦泉鏡花セレクションI』泉鏡花/澁澤龍彦編/山尾悠子解説/小村雪岱装釘(国書刊行会) 泉鏡花の再評価前、全集も品切れだったころ、種村季弘と澁澤龍彦による鏡花選集の企画が立ち上がったものの、企画は途中で立ち消えとなり、澁澤によ…
『体温 多田尋子小説集』多田尋子(書肆汽水域) 約30年前、芥川賞候補に6度なったことのある著者の、候補作「体温」「単身者たち」+「秘密」の全3作を収録した作品集です。著者あとがきに書かれた復刊の経緯によると、どうやら小説書きを引退しているら…
『『罪と罰』を読まない』岸本佐知子・三浦しをん・吉田篤弘・吉田浩美(文春文庫) 何となくは知っているけれど何となくしか知らない名作を、最低限の知識だけをもとに、読まないままで内容を推し量ってみようという、聞くだけで面白そうな企画です。最後に…
『諸国物語』(上)森鷗外訳(ちくま文庫) 森鴎外訳による世界各国のアンソロジー。 「尼」ヴィーズ("Kyddet",Gustav Wied,1890)★★★☆☆ ――ブレドガアデからの帰道。兄とおれである。歩いていると、尼が二人向うから来た。年上の方は太っていて、若い方は…
『The Collected Fiction of Katherine Mansfield』 不機嫌な女たちという作品が収録されているわけではなく、従来のマンスフィールド観とは一線を画す〈不機嫌な女たち〉というキーワードで編集した日本オリジナル作品集です。作品自体はこれまでの翻訳傑作…
『不在の騎士』イタロ・カルヴィーノ/米川良夫訳(白水Uブックス 海外小説永遠の本棚) 『Il cavaliere inesistente』Italo Calvino,1959年。 鎧のなかに肉体は存在せず意思の力によって存在している――という観念的な設定からは思いも寄らないユーモア小…