『The City & the City』China Miévile,2009年。
互いに隣接する――というよりは同一地区に共存している二つの国がありながら、政治的な事情によって二国民は互いの存在を「見ない」ようにしなければならない……。
まるで冗談のような設定の世界で一つの殺人事件が起こります。
二国間を許可なく移動することは重大な犯罪〈ブリーチ〉になるものの、正当に移動してしまえば相手国の人間からは「見えない人」になるため、逃走車の手がかりはなし。〈ブリーチ〉専門組織はブリーチ犯罪に対しては極めて有能で恐れられているが、ブリーチには当たらない正当な二国間移動にはタッチしないという、極めて官僚主義的にしておとぎの国的な仕組み。
そして二国間のどこかにあると噂されている一つの国〈オルツィニー〉をめぐる都市伝説とキナ臭い動き。
クライマックスでは当然のように(?)見えない犯人に堂々と逃亡を企てられ、それでも「見ない/見えない」ことに慣れてしまった両国の警官には犯人をどうすることもできないのでした。
ふたつの都市国家〈ベジェル〉と〈ウル・コーマ〉は、欧州において地理的にほぼ同じ位置を占めるモザイク状に組み合わさった特殊な領土を有していた。ベジェル警察のティアドール・ボルル警部補は、二国間で起こった不可解な殺人事件を追ううちに、封印された歴史に足を踏み入れていく……。ディック-カフカ的異世界を構築し、SF/ファンタジイ主要各賞を独占した驚愕の小説(カバー裏あらすじより)