『yom yom ヨムヨム Vol.2』(新潮社)

チェンジ・オブ・ペース佐藤多佳子

「新訳『星の王子さま』をヨム×8」森絵都

 これは読破レポではなく、個人的に読んだ本の感想エッセイ。
 

「四度目の浪花節川上弘美 ★★★★☆
 ――央子さんとは、十五年前に出会った。当時俺は二十歳、央子さんは三十五歳だった。すぐに夢中になった。央子さんと別れたのは、央子さんが店を移った時だ。「でもあれは、廉ちゃんに悪いと思ったからだったのよ」それから三年後、よりが戻った後に言った言葉だ。「だってあたし、ずいぶんと年上だし。年上のよさを知っちゃうと、若い子とつきあえなくなっちゃうでしょ」「俺みたく若くていい男を、年上の女がエサにしちゃ申し訳ない、とかいう意味じゃなかったの?」聞き返すと、央子さんは大笑いした。「あたし、そういう浪花節みたいな感じ、にがて!」

 未練。という言葉も、考えてみると浪花節っぽい(^_^;。「ばか」という言葉も。「板前すから」とか。おでん屋とか。浪花節のガジェットで、「恋愛」を描いた作品です。「恋は遠い火の花火ではない。」の逆パロディみたいな。
 

「マダム・リーと夜更けの小人」沢村凜 ★★★☆☆
 ――CAFE BITは大通りから二本入った路地にある、一見ありきたりの喫茶店だ。「ようこし、CAFE BITにいらっしゃいました。当店は、お客様に心よりおくつろぎいただくため、いっさいのIT用品の持ち込みをご遠慮願っております。ご面倒をおかけして恐縮ですが、すべてこちらのロッカーでお預かりいたしますので、ご協力くださいませ」

 この人は知らないので読んでみた。日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作家ということだが、女性誌らしい日常エッセイ風ネタにファンタジーをうまくからめようと苦心している跡が窺える。
 

「僕の小説の読み方」森博嗣

 何て絵に描いたような森博嗣らしい読み方なんだ(^_^;。あまりにイメージぴったり過ぎる。

ヨムヨムとキクキク」北村薫

 CDブックの紹介だから。

「泡」「スニーカー」「子供たちに混じって」バリー・ユアグロー柴田元幸

 一応のところは書き下ろし小説とエッセイなのだが、やはりこーゆーヒトの書くものはエッセイだろうと小説だろうと変わらない(^_^)。犬に向かって自作朗読会なんだもの。
 

「誰も祝福しない星のガイドブック cage」嶽本野ばら★★★★☆
 ――ある日、気が付くと井戸の横に彼はしゃがみ込んでいました。持ち物は棺桶くらいの大きさの黒い円筒のみ。「そこで何をしている」「休んでいるのです」「嘘をつくな。それは何だ」「檻です。これをずっと転がしながら、二年くらい旅をしているのです」「中には?」「もはや脱出する気力も体力も奪われた、可哀相な女性が一人」「よほどの罪人なのだな」「私が愛したにも拘わらず、私を微塵も愛してくれなかったのですよ」

 寓話のようでいて寓意を脱臼させる。むむむ。似たようなタイプ、どこかで読んだことあるなあとあれこれ頭をひねったら思い出した。コッパードだ。もちろん似ているのは、寓話のようでいながら寓意がスライドする、というところだけなんだけれど。
 

「特集 石井桃子の百年」

 ふぎぃ。メンバーが豪華なわりには中身が薄かった。石井桃子インタビューと中川李枝子、今江祥智梨木香歩江國香織ら作家のエッセイと、編集者(?)の思い出話と、評論家千野帽子による紹介文。

「初めての古書店街」酒井順子

「華麗なる一気!」吉野万理子

 山崎豊子の六長篇をイッキ読み。よくぞまとめた。あらすじを凝縮しつつ、読みどころも紹介。職人技です。

「小説中毒者に贈る’07新春新作コレクション」大森望

 そうか(^_^;、文字の少ない小説誌というのがヒットのポイントなのか……。

「カエルとダザイ」西川美和

 映画監督さんなんだけど、太宰と安吾の魅力と本質をすっげぇ的確にまとめてくれている気がします。

「消える本棚」椎名誠

 う〜ん。。。シーナさんにしてはギャグがおとなしい……。お行儀がよすぎる。

「隣の嫉妬に気をつけろ!」大平健・倉田真由美

 なんかすごく身近なことを例にとってくれるんですごくわかりやすい。なんというのだろう。インチキっぽくないところがいい(^_^)。ワイドショーっぽいネタをもとに快刀乱麻の名探偵という感じで楽しい。快眠入浴法も必読だ。
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  『yomyom』Vol.2
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