室生犀星は大好きな作家なので楽しみでした。とはいえ読むのは久しぶり。収録されているのは初期短篇ばかり。「童話」★★★★★ ――「お姉さま、――」小さい弟は何時の間にか石段に腰をかけ、目高をすくっている姉に声をかけた。「お前、いつの間に来たの……よく来…
童話作家以前の未明を、ということではあるけれど、第一部は「幼年期の幻想」作品だからでしょうか、童話っぽい作品が多い。そのなかでは巻頭の「過ぎた春の記憶」が大傑作。読み終えてみればある型の怪談なのですが、それをこういう視点から語られると新鮮…
せっかくなので怪談としてのみ評価してます。「朝顔」★★★★☆ ――私の妹は終戦の年に腸チフスで死んだ。私は妹を大そう愛していたので、その死は随分とこたえた。妹の死後、私はたびたび妹の夢を見た。夢の中では妹は必ず生きていた。 またびっくりするくらいの…
柳田作品を文芸作品として評価する、というスタンスのもと、『遠野物語』がまるまんま収録されていたりするのだけれど、さすがに『遠野物語』など一部のものを除けば、ほとんどの作品を「文芸作品」と呼ぶのは無理があります。 逆に文芸っぽいものほどつまら…
評論というよりはガイドブックな感じです。 一応は「百物語」限定ではあるのだけれど、古今の怪談入門といった趣。怪談に興味のある人なら手元に置いておいて損はないでしょう。 「巡物語」の一つとして海外作品にも(ちょこっとですが)言及していたり、映…
「京都に潜む〓か」綾辻行人×森見登美彦 ふつうにふつーの会話なので二人のファンなら楽しく読めるのだけれど、たまたま二人が京大出身だというだけで、特集としては弱いどころではない。「京都花街怪談」森山東 ――怖い話どすか? はあ、それならここら辺に…
鏡花主催の『怪談会』と雑誌特集『怪談百物語』に、水野葉舟の雑誌に掲載された座談「不思議譚」をプラスしたセット。生に近い実話怪談の雑多な寄せ集めといった『怪談会』に対し、『怪談百物語』は文芸雑誌掲載らしく作品として比較的まとまっているものが…
第一特集は圓朝。圓朝そのものというよりも、圓朝の魅力を外堀から埋めていくような特集でした。累伝承はともかくとして、他は映画『怪談』関係者の対談と、落語家&講談師インタビュー。もちろん尾上菊之助×京極夏彦、平山夢明×『怪談』監督という豪華さは…
ラヴクラフトが苦手なくせに、いや苦手だからこそ参考になればと思い購入。 クトゥルー自体には興味がなくとも作家事典は重宝だし、作品紹介や作家紹介のページは東氏のコラム集としても読める。 これ読んでるとクトゥルーちゃん人形がほしくなった。日本じ…
「高桟敷」★★★★☆ ――遥な空に、家の二階があって、欄干もともに目に附いた。けれども二階ではなかった。崖の頂辺から桟橋の如く、宙へ釣った平家なのである。その縁の曲角に、夕視めと云う、つれづれ姿で、絵の抜出したらしい婦がいた。 たたみかけるような怪…
ようやく読みました。もうVol.7が出てしまったよ(^^;。おお、第一特集が「江戸の怪」ということで、小口の印刷が和綴じ本のようになってます。これもやっぱり祖父江慎なんだろうか。偉い。「耳袋と江戸の怪」宮部みゆき×京極夏彦★★★★☆ 「たとえば『耳袋…
「生霊」★★★★☆ ――菊治は、落葉松の林の奥にぽつんと見えている空別荘に上り込んでリュックサックを下した。(ここへ今晩泊るかなあ、どうせ空いてるんだ)。しばらく滞在しているうちに、初めて人に打突った。「やあ坊ちゃん、いつお見えでした」 ジェントル…
「常談」ファルケ(Gustav Falke)★★★★★ ――ゆうべの事だ。窓を開けて見てゐると、羽の生えた子が一人雪道をよろけて行く。 詩。翻訳だから原作があるとはいえ、鴎外のイメージからは思いも寄らぬファンタジー掌篇。 「正体」フォルメラー(Karl Gustav Vollm…
「片腕」と『掌の小説』は新潮文庫で手軽に読めるので知っていました。どちらも好きな作品なのですが、それだけにどういう系統の作品か見当がついてしまう(と思っていた)のでそれほど過度な期待はしてませんでした。いや、失礼いたしました! すごい。怪談…
「エクステ怪談」園子温・加門七海・東雅夫 園子温監督映画『エクステ』と髪の毛怪談にまつわる鼎談です。他人の髪の毛を身につけるという感覚はまさにホラー。ファッションアイテムとして流通している以上は髪の毛が大量に入ったコンテナがあるはずだ、とい…
創刊以来はじめて、第一特集が作家ではなくテーマによる特集です。「猫の怪」。猫と怪談は相性がいい。と思って期待したんですけどね。。。結論を申せばかなり期待はずれでした。猫怪談なんて手あかがつくほど紹介されているゆえに搦め手から、というのはわ…
「猫火花」加門七海★★★☆☆ ――散歩から戻った葉月に元気がない。湿気っている。どうやら静電気を盗まれてしまったらしい。 宮沢賢治だったか誰かの作に、パワーみなぎる猫がパチパチと毛皮から火花を散らすものがあったように記憶しています。猫と静電気はワン…
『日本怪奇小説傑作集』もいよいよ完結。昭和30年代から現代まで。何よりもまず怪奇小説だった『1』、一分の隙もない作品ばかりが並ぶ『2』とくらべると、ややおとなしい。「お守り」山川方夫――君、ダイナマイトは要らないかね? 突然、友人の関口が僕に言…
最初に発売案内を見たときは、「妖怪文藝」とはなんぞや? と思いましたが、つまるところ「妖怪小説・エッセイ等」のアンソロジーです。「月は沈みぬ」南條範夫――これぞモノノケ大合戦。忍法帳のように、異能の者たちがそれぞれの特殊能力を尽くして戦う娯楽…