『ミステリー・ゾーン DVDコレクション』72・73(アシェット)

ミステリーゾーン』72「ふたつの人生」「クレジットカード」「過去からの手紙」

「ふたつの人生」(The Road Less Travelled,1986.12.28,ep071)★★★★☆
 ――娘のマギーが二階から降りて来た。「部屋に男の人がいる」。安心させようとしたジェフだったが、部屋の明かりを消した途端、ベトナム戦争の風景が現れる。明かりをつけると景色は消えたが、やがて家に現れた車椅子の男を妻のデニースも目撃する。すべては兵役を逃れたツケが回ってきたのだとジェフは言うが……。

 戦争の記憶という点では新シリーズ第1シーズンの「帰還兵」、恐怖が現実に襲ってくるという点では同じく第1シリーズの「現像」を連想させますが、外から悪夢が襲ってくるのではなく兵役忌避による良心の呵責が現象を引き起こすという点で、より内面的な苦悩を描いた作品になっています。そして思いがけない結末。サスペンスや反戦に留まらず、愛情や追憶まで詰め込まれているのは、25分というボリュームに相応しい出来栄えでした。
 

「クレジットカード」(The Card,1987.2.21,ep072)★★★★☆
 ――あらゆるカード会社から利用停止を喰らったリンダは、決済から7日以内に一部を支払うという条件で新しいクレジットカードを作った。ある日、飼い猫の姿が見えないことに気づいたが、夫も子どもも猫など飼っていないと言う。

 悪魔との契約を、カードの恐ろしさとして描いた、新シリーズに相応しい現代的な内容でした。自業自得という点では『笑ゥせぇるすまん』みたいでもあります。
 

「過去からの手紙」(The Junction,1987.2.21,ep073)★★★☆☆
 ――炭鉱夫ジョンは浮気がばれて妻と喧嘩中。古い炭坑で石炭が見つかったため調査に向かったが、落盤が起きて閉じ込められてしまう。真っ暗ななか、誰かの声がする。レイという男も閉じ込められていて、今は1912年だと言うのだった。そのころ妻のマレッサは、牧師から一日遅れで古い手紙を受け取っていた。

 時間ものとしてはありきたりですが、単純だからこそ力強く、感動を呼ぶ作品です。手遅れかと思われた出来事に対して、タイムパラドックスを来すことなくもうひとふんばり(ひとひねり)するところもいっそうの感動を呼ぶ原因となっています。何の理由もなく過去と現在がくっついたり離れたりするのが安易といえば安易ですが。
 

ミステリーゾーン』73「テイラーの車」「シェルター・スケルター」「プライベート・チャンネル」「未来へのレクイエム」

「テイラーの車」(Joy Ride,1987.5.21,ep074)★★☆☆☆
 ――グレゴリとディーナは、兄のアロンゾとエイドリアンに連れられて、亡くなったテイラー老人のクラシックカーに勝手に乗り込み、車を走らせた。見慣れぬ町並みを走っていてパトカーに呼び止められたアロンゾは、あろうことか警官を撃って逃亡する。

 時間ものが多いので、どうしてもほかの作品と比べてしまいます。あっさりしすぎているうえに時間移動も安直なので物足りなさが残りますが、よく言えば、ストーリーや構成よりもスピード感を大事にした作品です。
 

「シェルター・スケルター」(Shelter Skelter,1987.5.21,ep075)★★★☆☆
 ――ハリーは近くにある空軍基地が攻撃されるのを恐れて、自宅の地下に作った核シェルターにこもることが多かった。妻と子どもたちが出かけている間、友人に核シェルターを自慢していると、テレビが緊急事態を伝え、直後に大爆発が起こる。

 3・11で瓦礫処理の問題に直面したあととなって見ると、この終わり方にもしっくりきます。行き過ぎた心配性を描いた作品はオリジナルシリーズにもあったように思いますが、こうした結末は現代的だったと思います。
 

「プライベート・チャンネル」(Private Channel,1987.5.21,ep076)★★★★☆
 ――キースは歩いているときも飛行機のなかでもヘッドフォンで音楽を聴きながらドラムスティックを叩き鳴らしている少年だった。トイレの洗面台でラジオを落としてから、おかしな声が聞こえるようになった。やがて飛行機を爆破するという声が聞こえてきて……。

 まれに見るアホな登場を果たしたキース少年でしたから、まさかこんなシリアスな展開になるとは思っても見ませんでした。前半にはミステリーゾーンには珍しく「笑い」という要素が取り入れられ、後半には現実を目の当たりにした少年の成長(?)と犯人の後悔という二つのドラマが取り入れられており、一粒で二度おいしい作品と言えるかもしれません。
 

「未来へのレクイエム」(Time and Teresa Golowitz,1987.7.10,ep077)★★★★☆
 ――死んでしまった作曲家のビンキー・ブルーストンの前に悪魔が現れ、自分のためにピアノを弾きに来る代わりに望みを叶えてやろうと言う。ビンキーは高校時代のメアリーとセックスしたいと願うが、メアリーは記憶にあるほど魅力的ではなかった。そうしているうち、野暮ったいテレサがこのあと自殺することを思い出した……。

 『The Twilight Zone』誌1982年1月掲載のパーク・ゴドウィン「Influencing the Hell Out of Time and Teresa Golowitz」原作。悪魔との契約、取引材料の願い事、愚かな願い……定番中の定番から、人間ドラマへと変化したあと、ひねりの効いた結末が待っていました。芸術を愛する悪魔という設定がいかんなく活かされています。二重の伏線になっているんですね。原作者は「火がともるとき」で世界幻想文学大賞を受賞したSF・ファンタジー作家です。
 

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