『S-Fマガジン』2018年12月号No.730【ハーラン・エリスン追悼特集】

ハーラン・エリスン追悼特集】

「その頃、ぼくたちはみんなかれのファンだった。」鏡明

「失われた時間の守護者」ハーラン・エリスン山形浩生(Paladin of the Lost Hour,Harlan Ellison,1985)
 ――墓地で出会った白人の老人ガスパールと、黒人の若者ビリー・キネッタ。ならず者に襲われたガスパールをビリーが助けたことで、ふたりは友情を築き、生活を共にするようになる。だが、ガスパールにはある秘密があった……。(解説あらすじより)

「おお、汝信仰うすき者よ」ハーラン・エリスン柳下毅一郎(O Ye of Little Faith,Harlan Ellison,1968)
 ――メキシコ・ティファナを訪れたカップル、ナイヴンとバータ。かれらは堕胎のためにその地を訪れたのだった。ふたりの気持ちはすれ違い、言い合いとなってある横丁に入り込む。そこで呪い師に運勢の占いをもちかけられ……。(解説あらすじより)

「奇妙なワイン」ハーラン・エリスン中村融(Strange Wine,Harlan Ellison,1978)
 ――娘を亡くし、息子は病床に臥せっており、自身の体調の不安も抱え、妻とのあいだにも愛はなく、支払えない請求書をかかえている。ウィリス・コウの人生は暗く、厳しいものだった。かれはここは自分のいるべき場所ではなく、本来の場所から放逐されたのだと考える。そしてある日転機がやってきて……。(解説あらすじより)

 「失われた時間の守護者」は『新トワイライトゾーン』第17話「失われし時の番人」の脚本としても執筆されています。『新トワイライトゾーン』のなかでも名作に属するエピソードでした。
 

ハーラン・エリスン年譜」牧眞司
 鏡氏のエッセイでも、伊藤典夫から聞いたエリスンのゴシップでファンになってしまったと書かれていたけれど、この「年譜」も通常の年譜とは異なり、ゴシップ年代記みたいなことになっていて読みものとして面白いです。
 

「頭脳が生み出す無限の宇宙〜ハーラン・エリスンのTV世界〜」小山正

「もうひとつのエリスン若島正
 

「灰かぶり姫」(『トランスヒューマンガンマ線バースト童話集』より)三方行成
 第6回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作。お伽噺をもとに、最後にガンマ線バーストで締めるというパターンの作品集らしい。
 

「愛を語るより左記のとおり執り行おう」澤村伊智

「書評など」
◆映画『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』は、「典型的な姿をしたゴーストが登場する」「極めて静かな演出が、驚くほど雄弁」な作品。

高島雄哉『ランドスケープと夏の定理』は、第5回創元SF短編賞受賞作を含む作品集。「よくわからんけどスゲエ」という理解でも「本書を楽しむのに支障はない」らしいので助かります。

倉数茂『名もなき王国』。『黒揚羽の夏』の著者の新作。8月に刊行されてたんですね、気づかなかった。

◆ホラーでは「アルゼンチンのホラー・プリンセス」マリアーナ・エンリケス『わたしたちが火の中で失くしたもの』と、ジョイス・キャロル・オーツ『ジャック・オブ・スペード』

筒井康隆、自作を語る』は、SFマガジンに連載されたもの+「自選短篇集に附されたインタビュー形式の自作解説」。SFマガジン掲載作のなかでいちばん面白かったのがこの連載でした。
 

「時の扉」小川哲(2018)
 ――おお、恵み深い王よ、お目にかかれて光栄でございます。「時間の流れ」が仮象ならば、「過去」はどうでしょうか。私はそれが、人間の精神の中にあるものだと確信しております。前置きが長くなりましたが、ある絵描きの男が「時の扉」の力を求めました。歌劇場で出会った女性に恋心を抱き、出会う前から親密になることが決まっていたのだ、と思い込みました。ですがその女性は、絵描きの絵を買ってくれる唯一の画商の妻だったのです。

 「東フランクの王」がユダヤ人迫害や政治家を目指した背景がSF的に明かされています。過去の改変が三つの手段で説明されているのですが、この三つ目の手段(脳の操作)というのが示唆に富んでいました。永遠の勝利が約束された瞬間に抹消された過去を細部まで明らかにすることで遂げられる復讐が残酷でしかたありません。
 

「SFのある文学誌(61)尖端・探偵雑誌としての〈文学時代〉」長山靖生
 

「アニメもんのSF散歩(25)『ペンギン・ハイウェイ』」藤津亮太
 森見登美彦ペンギン・ハイウェイ』とそのアニメ映画。レム『ソラリス』が「原作にヒントを与えた」そうです。
 

 新刊案内ページの新☆ハヤカワ・SF・シリーズ『トム・ハザードの止まらない時間』マット・ヘイグというのがありました。「遅老症」のため16世紀に生まれた男……というあらすじを読むとすごくつまらなそうなのですが、ベネディクト・カンバーバッチ主演映画化決定というところがちょっと気になります。
 

トークイベント採録 平成最後の夏と百合」宮澤伊織×草野原々
 なに言ってるの、この人たち。。。
 

  


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