「『道尾』の由来は『道夫』から〜道尾秀介に訊く」
「ミステリマガジン初代編集長の出来るまでとその後」新保博久
「都筑チルドレンの系譜」日下三蔵
「砂絵のセンセーの名前」堀燐太郎
「温泉宿」都筑道夫
――温泉宿をさがす男と女。だが番頭は二人を見るなりおびえた表情をして泊めるのを断った……。
「はだか川心中」の原型短篇。不思議な話、を、人生の機微、みたいな形に収斂させてしまうところが、怪談好きとしては物足りないのですが、普遍性は持ち得ているところなのでしょう。
「女か西瓜か」加田伶太郎
――パラソルの男女が何処からともなく西瓜を取り出して食べ始めた。中学生の雄ちゃんたちは、それをうらやましそうに見ていたが、気づくと女の姿がない……。
都筑道夫曰く「フェアに手がかりが書きこんである」ので考えれば「結末が、わかる」タイプのリドル・ストーリー。著者&都筑による解答は新保教授の解説に。ネット上では別解も。女は(まだ)死んでいないのだから、違っていても「間違いだった」で済む話なのに、このサスペンスは凄いと思う。
「蛇」ジョン・スタインベック/都筑道夫訳(The Snake,John Steinbeck)
――フィリップス博士が海盤車《ひとで》の生殖実験の準備をしていると、背の高い女が現れた。「ガラガラ蛇を売ってくださる? 餌をやりたいんです。鼠を入れてください」
ポケミス『幻想と怪奇2』に収録。同書収録「ミリアム」は文春文庫のアンソロジーで読んで衝撃を受けたものです。敢えて『蛙』「に近いくらい(新陳代謝が)低いらしい」と書くあざとさ、博士自身(著者自身)が「心理学的なセックス・シンボル」の可能性を否定していたりと、原作からして一筋縄ではいきません。
「月は六月その夜闌けに」レイ・ブラッドベリ/都筑道夫訳(A Midnight in the Month of June,Ray Bradbury)
――いつまでも、いつまでも、待っていた。「おやすみ!」と彼女が言うのを聞いた。彼女は近づいてくる。もう一マイル。あと千ヤード。
2012年10月号「山口雅也責任編集」に再録された「町みなが眠ったなかで」の続編。あれの続編をというエラリイ・クイーンも無茶ぶりですが、それに答えてしまうブラッドベリがすごい。
「短篇ミステリがメインディッシュだった頃(12・最終回) 黄金時代の幕切れ」小鷹信光
黄金時代の終わりとともに、連載も最終回。「紙の雑誌の時代はまさに終わりかけているのだ。」という言葉で結ばれます。
「神童」ジョナサン・クレイグ/加賀山卓朗訳(The Prodigy,Johnathan Craig,1966)
――ルイーズはまた悪夢を見た。わたしたちのデビー。読んだものは残らず記憶し、一度聞いただけでピアノを弾ける、天才娘。母親をこれほど無能だと感じさせる娘がいるだろうか。
テレビで見た「天才少年」の両親は、失笑されてるガリ勉みたいな変な空気を醸し出していたけれど、少しぐらい変でなければ耐えられないものなのかもしれません。
「分のいい取り引き」リチャード・デミング/小鷹信光訳(The Better Bargain,Richard Deming,1956)
――妻が浮気していることを知った暗黒街の帝王キング・ルイスは、殺し屋シルヴァーに妻と男の殺害を命じた。
よくできてはいますが――いや、そこじゃないだろ。とツッコミたくなるような落ちに思わず笑ってしまいました。
「フィルム・ノワール ベスト・コレクションDVD-BOX」 滝本誠によるエッセイ掲載。『さよなら、愛しい人』の映画化『ブロンドの殺人者』や、ウールリッチの『黒い天使』
「迷宮解体全書 63 大倉崇裕」村上貴史
福家警部補シリーズは食い足りない印象があったのだけれど、改めて読んでみたくなりました。
「幻談の骨法 33」千野帽子
ソーントン・ワイルダー『サン・ルイス・レイ橋』とアルベール・カミュ『異邦人』
「書評など」
◆『厭な物語』、オーツ『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』。ブームになるとどうしても「単なる後味の悪い話」も湧いてくるなかで、精華集が出るのは嬉しいところ。そして悪意・悪夢とくればこの人、ジョイス・キャロル・オーツの自選短篇集。新藤卓広『秘密結社にご注意を』は、「巧みな構成」「トリッキーな構成」これは読んでみたくなります。
「ミステリ ヴォイス UK(65) 刑事コロンボの誕生」松下祥子 書き下ろし短篇集が論創社から夏に刊行予定。