『S-Fマガジン』2010年3月号No.648【2009年度英米SF受賞作特集】

「オールタイム・SF映画ベスト50座談会」高橋良平・添野知生・柳下毅一郎鷲巣義明渡辺麻紀
 ひっそりと、だけど豪華にボリュームも取られている座談会です。「映画のなかの未来社会って、基本的には現代の話」、『帝国の逆襲』について「連続活劇っていうのは最初も最後もなくて構わないんだ」、『バーバレラ』を「パルプの雑誌の、半裸の――。ああいう世界の未来SF版」等、なあるほど、と思う指摘も多かった。
 

榊一郎『ザ・ジャグル』開幕!」インタビュウ
 

「アードマン連結体」ナンシー・クレス/田中一江訳(The Erdmann Nexus,Nancy Kress,2008)★★★☆☆
 ――老物理学者ヘンリー・アードマンを突如襲った身体的変異。それは大いなる異変の前触れだった……(袖コピーより)

 ヒューゴー賞受賞。『Xファイル』でも『TAKEN』でもいいけど、そっち系の海外ドラマをよく見る人間じゃないとちょっと厳しいかも(というか、ど真ん中のSFが好きかどうか)。徐々にそして頻繁に老人たちを襲う奇妙な発作、物理学者・ヘルパー・刑事・神経科医たちがそれぞれの立場から感じ始める違和感、そういう終末感ただよう何かが起こりそうな雰囲気はいいのですが。その雰囲気とSF的真相の間がぎくしゃくしていました。ゴシック体の部分はいらないのに。仮説は仮説のまま放っておけばいいのに。集合意識云々という定番に加えて、高齢化社会SFという笑えない真相が新しい。今月号のなかのベストではあります。
 

「SFスキャナー特別版」
 ローカス賞『アナセムニール・スティーヴンスン、ディック賞『逆転世界の密使』アダム=トロイ・カストロ世界幻想文学大賞『影の一年』ジェフリー・フォード、のあらすじ紹介。
 

「マン・イン・ザ・ミラー」ジェフリー・A・ランディス/小野田和子訳(The Man in the Mirror,Geoffrey A. Landis,2008)★★★☆☆
 ――採掘のため降り立った小惑星に存在する異様な地形。好奇心にかられた男はそこを訪れるが……(袖コピーより)

 以前に「MAGAZINE REVIEW」で紹介されていて面白そうだと思った作品。「小惑星で見つかったまったく摩擦のない鏡面に足を滑らせ出られなくなってしまった男の話」。実際に読んでみると、物理のなぞなぞというか。。。
 

テッド・チャン・インタビュウ」
 新作についてやAIについてやシンギュラリティについて。
 

「SFまで100000光年 78 夏への回転扉」水玉螢之丞

「SF Magazine Gallery II(9)」加藤直之「時の塔3」

「サはサイエンスのサ 178 ひみつ2」鹿野司
 

「SF BOOK SCOPE」
 ジョルジュ・ペレック『煙滅』、SFマガジン50周年記念『Sync Future』、垂水雄二『悩ましい翻訳語
 

『零號琴(2)』飛浩隆
 ――磐記の街で開催される假劇に参加したトロムボノクたちを待ち受けているものとは?(袖コピーより)

『天国と地獄との狭間(8)シャヘラザード』小林泰三
 

「世界最終戦争論」樺山三英
 ――戦争は一度も途絶えたことがないのだという。今も、そしてこれからも――(袖コピーより)

 今回は石原莞爾『世界最終戦争論』。
 

「おまかせ!レスキュー Vol.141」横山えいじ

「デッド・フューチャーRemix(87)」永瀬唯

「(THEY CALL ME)TRECDADDY(35)」丸屋九兵衛

「SF挿絵画家の系譜(48)A・ソコロフ」大橋博之

「サイバーカルチャートレンド(9)クラウド大野典宏

「SENSE OF REALITY」
 「海から到る道」金子隆一/「努力の条件、それが整う確率」香山リカ

《READER'S STORY》「頭は諦めたが」齋藤想

「MAGAZINE REVIEW」〈アナログ〉誌《2009.7/8〜2009.11》東茅子

堺三保アメリカン・ゴシップ(5)」
 

「ロシア幻想文学作家会議 ストラーニク2009レポート」大野典宏速水螺旋人
 

「26モンキーズ、そして時の裂け目」キジ・ジョンスン/三角和代訳(26 Monkeys, also the Abyss,Kij Johnson,2008)★★★☆☆
 ――エイミーは、一ドルと引き替えに手に入れた26匹の猿たちとショーをして旅していた。(袖コピーより)

 ホーム・カミング・ストーリー。猿がバスタブから消える仕組みはエミリーにもわかりません。「猿がどうして消えるのか」ではなく、「たぶん問題は、どうして猿たちがもどってくるのかだよ」。かなりストレートな内容でした。
 

「光線銃」ジェイムズ・アラン・ガードナー/金子浩訳(The Ray Gun: A Love Story,James Alan Gardner,2008)★★★☆☆
 ――ある日森で光線銃を見つけてから、内気な少年だったジャックの人生は大きく変わった。(袖コピーより)

 光線銃を拾ったがためにヒーローになるためこっそり体を鍛え出します(^^;。「もし実際に光線銃があったら」というifものシミュレーションではなく、むしろ「自分がヒーローだったら」というズレた発想が困りもの。
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 『SFマガジン』2010年3月号


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