『ミステリーゾーン』36「幻の谷間」「殺してごめんなさい」
「幻の谷間」(Valley of the Shadow,1963.1.17,ep105)★★★☆☆
――道に迷ったフィリップはガソリンを入れにとある町に立ち寄ったが、少女に玩具のようなものを向けられた犬のロディーが消えてしまった。よそものの存在に、町人たちは手だてを講ずる。町から出ようとしたフィリップは、引き留められてしまう。
チャールズ・ボーモント脚本。「閉鎖的な村」と「SF的小道具」がどう繋がるのかが見どころでしたが、ちょっと突拍子のないところがありました(もったいぶったわりには科学的説明がなく、ドラえもんの秘密道具みたいだし)。悪意ではなく善意の村なので、フィリップの方に同情の余地がありません。せっかく一時間あるのだから、フィリップが道具の世界的利用にこだわる背景があればよかったのですが。これではただの正義漢きどりです。
「殺してごめんなさい」(Living Doll,1963.11.1,ep126)★★★☆☆
――エリックは妻の連れ子クリスティに愛情が持てなかった。妻が買ってきたおしゃべり人形ティナのことも気にいらない。邪険にされた人形は、復讐を口にするのだった……。
チャールズ・ボーモント脚本(ジェリー・ソウル)。人形自体が可愛くなく不気味でしかありませんが、それ以上にエリックの人形憎しが度を越しているため、人形は論外として、エリックのことも応援できずに、戸惑ったまま物語が進んでしまいました。最後の最後に人形が本性を現し、母親がショックを受ける場面がストップモーションのようになるシーンが素晴らしかったです。
『ミステリゾーン』37「暗闇の男」「洞窟の予言者」
「暗闇の男」(He's Alive,1963.1.24,ep106)★★★★☆
――ナチズムの信奉者ピート・ボルマーは思想を理解しようとしない人々に苛立っていた。父親代わりの老人ギャンツはそんな若者を優しく諭すが、ピートは苛立ちを募らせるだけだった。そんなピートに聴衆の心理をつかむ演説のこつを教えようとする黒い影が近づいた。
ピート役はデニス・ホッパー。愛情やコンプレックスをバックに、「思想」を擬人化させたところがユニークです。擬人化するにはたしかに適役ではあります。集団心理や弾圧やレイシズムが扱われているだけならただの教訓的な話になっていたでしょうし、「He's Alive」だけならただのオチのある話になっていたでしょう。
「洞窟の予言者」(The Old Man in the Cave,1963.11.8,ep127)★★★★☆
――水爆が落ちてから十年。何が危ないか、何が安全か、洞窟にいる予言者だけがぴたりと当てることができた。町の責任者のゴールドスミスが託宣を聞いてきたから、これまで町人は生きてこれた。そこに軍隊の生き残りフレンチ少佐たちがジープで乗りつけてきた。洞穴から出ようとしない予言者を少佐は引きずり出しに行く。
フレンチ少佐役はジェイムズ・コバーン。フレンチ少佐が単純な悪党というわけではないところがやりきれません。真相には意外性がないどころか、恐らく当時としても手垢にまみれていたことでしょう。だからこそ、自分たちの信じる道を貫き通した対極的な二人の生き方が光ります。ジェイムズ・コバーンに加えて、ゴールドスミス役にジョン・アンダーソン、ジェイスン役にジョン・マーレイ。