『ミステリー・ゾーン DVDコレクション』54・55(アシェット)

ミステリーゾーン』54「すべては彼の意のままに」「沈黙の世界」「灰色の影」

「すべては彼の意のままに」(A World of His Own,1960.7.1,ep036)★★★★☆
 ――小説家のグレゴリー・ウェスト氏はメアリーに夢中。そこにビクトリア・ウェスト夫人が帰ってきた。問いつめられたグレゴリーは、登場人物が生きているように動き出し始めたのだ、と話し始める。

 第1シリーズ。リチャード・マシスン脚本。ラルフ・ネルソン監督。キングやハートリーのおかげでホラーの題材という印象の強いテーマですが、この作品はロマンチックなコメディに仕上がっています。冷静に考えればちょっとキモイおっさんの願望充足型の話なのですが、グレゴリーに愛嬌があってビクトリアの気が強くて、どこか憎めない作品です。
 

沈黙の世界(The Silence,1961.4.28,ep061)★★★★★
 ――クラブでおしゃべりをして金策にいそしむ若者テニソンは、それを快く思わないアーチー・テイラー大佐から違法ではない賭け事を提案される。一年間クラブの娯楽室で監視された状態で一言もしゃべらなければ、50万ドルやろうと言うのだった。

 第2シリーズ。ロッド・サーリング脚本。ボリス・セーガル監督。テイラー大佐がセコい手を使うのですが、それもしっかり伏線になっていました。勝負の行方にばかり気を取られてしまいますが、最後に明らかになる結論は「ギャンブルは割に合わない」。名誉と金、プライドと意地、登場人物の駆け引きが見事でした。
 

「灰色の影」(Nightmare as a Child,1960.4.29,ep029)★★★★★
 ――教師のヘレン・フォリーが家に帰ってくると、階段に少女が座っていた。無表情で大人びた口を利く少女は、マーキーと名乗り、ヘレンのことなら何でも知っていた。しばらくすると母親の知り合いだというピーター・セルデンという男が訪ねて来て、昔の話をするが、母親を殺されたショックでヘレンには子どものころの記憶がなかった。

 第1シリーズ。ロッド・サーリング脚本。アルヴィン・ガンツァー監督。登場人物が少ないこともあるし、そもそもストーリー自体が単純なこともあり、話のからくりは明らかなのですが、なにしろサスペンスが半端じゃありません。マーキーの絡みつくような声やクールな表情、イケメン紳士風のセルデンの胡散臭さ、この二つが抜きん出ています。いい話で終わりそうになりながら、まさか恐怖で終わるのか――と思わせておいて、やっぱりきっちりといい話で終わらせる結末も完璧です。マーキー役がテリー・バーナム、セルデン役がシェパード・ストラドウィック。
 

ミステリーゾーン』55「天よりの使者」「陳列された目」「敗北者」

「天よりの使者」(The Gift,1962.4.27,ep097)★★★☆☆
 ――未確認飛行物体が丘に墜落し、調べに行ったサルバドール巡査が死んだ。何かが逃げていったという証言に、村じゅうが怯えていた。そんな折り、酒場に見知らぬ男が現れた。怪我をしている男を、居合わせたペドロ少年と医者が治療すると、男は侵略者ではなく訪問者だと言い、ペドロに贈り物を手渡した。

 第3シリーズ。ロッド・サーリング脚本。アレン・H・マイナー監督。エピソードガイドによれば、サーリングはのちに映画化を考えたとありますが、確かに25分では説明不足でバタバタしすぎで、そのうえ詰め込みすぎです。孤独な子どもと孤独な宇宙人が心を通わすという設定はなくてもよかったような……。それでもそのおかげか、人間の無知や集団心理を糾弾するのではなく、物悲しい作品になっていました。
 

「陳列された目」(The New Exhibit,1963.4.4,ep115)★★★☆☆
 ――ベテラン博物館員のマーティンは殺人犯の蝋人形展示室を担当していたが、館長から閉館を知らされる。諦めきれないマーティンは、蝋人形を自宅の地下室に引き取ることにしたが、妻のエマはそれに我慢がならない。

 第4シリーズ(50分)。チャールズ・ボーモント(ジェリー・ソール)脚本。ジョン・ブラーム監督。マーティン・バルサム主演。蝋人形というだけで充分に不気味なのですが、飽くまで序盤は館長とマーティンの苦悩や夫婦仲の確執に費やされており、恐怖のクライマックスは中盤まで持ち越されています。当然ながら予想通りなのですが、人形が動く様子を見せたりするような安っぽい演出がないため、興をそがれることがありません。何で第三のときには動いちゃったんだろうなあ。。。
 

「敗北者」(A Story at Willoughby,1960.5.6,ep030)★★★☆☆
 ――ガート・ウィリアムズは重大な会議の場で部下に逃げられ窮地に立たされた。失意のなか列車に揺られるウィリアムズは、ウィロービーという名の駅に、1888年7月に到着していた。目覚めると11月。無事に家に戻ったが、競争のない生活がしたいと言うと妻に呆れられてしまった。

 第1シリーズ。ロッド・サーリング脚本。ロバート・パリッシュ監督。ミステリー・ゾーンに迷い込んで中から理想郷を描くのではなく、現実世界から見た理想郷という記号を描いているのが、『ミステリーゾーン』にしては珍しいタイプの作品だと思います。奥さんの台詞「結婚した相手の人生の夢がハックルベリー・フィンだなんて(to get married to a man whose big dream in life is to be Huckleberry Finn)」という言い回しも秀逸ですが、最後にトムとハックみたいな子どもが出てくるところにもニヤリとしました。ウィロービーのある場所も皮肉が効いています。
 

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