『アフタヌーン』2015年10月、『good!アフタヌーン』2015年9月

アフタヌーン』2015年10月号

アレグロ」三都慎司
 ――木下未来27歳は、働きながら大学を受験しようとしていた。刑務所から出てから、「やりたいこと」が勉強だったのだ。「あ そうか 勉強を始めて楽しかったのは 前に進めている気がしたからだ」

 2015四季賞夏のコンテスト四季賞受賞作。正解などなさそうなことに、きちんと答えを用意してあります。作中に出てくる施設のおばちゃんみたいに、作品自体も真摯なのです。バッティングセンターや野球の場面の、生き生きとしていること。ともすればクサくなりかねないけれど、未来の考え方をきちんとたどっているから、↑の台詞のように一つ一つ共感できます。
 

カナリアたちの舟』3「花」高松美咲
 ――教わった通り装置を頭に装着すると、書かれていることが読めるようになった。「M14の目標数捕獲に成功」「予定期日の配布に向け」……落ち着こうと壁にもたれると、壁が開き……。

 二人しかいないのに、信頼と不審を何度も繰り返してみせるストーリーの起伏の付け方に、うまさを感じます。
 

「ミトセンみとり」inono
 ――孤児のみとりは死にかけた人間を嗅ぎつけることができた。同じ施設の幽霊くんから死の匂いがする。喧嘩に負けた吉田くんに復讐しに行って、返り討ちにあってしまうのだろう。

 第2回「出だしで勝負!新人賞」大賞受賞作。最初の8ページが応募部分ですね。そう考えると「幽霊がっ!!」という台詞はあざとい。絵がロリコンっぽくて気持ち悪い。近未来の設定やみとりの能力がさほど物語にとって必要とも思えません。
 

good!アフタヌーン』2015年9月号

「妖怪ノススメ」秋津そたか
 ――僕の目には変なものが見える。笑われるから見えないフリをすることにした。なのに、また変なものが現れた。そのお姉さんはパンツを脱ぎ出し……。

 2015四季賞春のコンテスト佳作受賞者。「真夏のエロスカーニバル」特集の一篇ということで、下ネタギャグ。妖怪尻目。
 

HOTEL」加納梨衣
 ――壁紙を張りかえることになったホテルの一室。グラマーな女の絵を剥がそうとしたところ、女が壁から抜け出てきて、「わたしを剥がさないで……」と懇願した。

 四季賞出身者による、「エロスカーニバル」の一篇。絵が上手いです。最初から最後までラブホテルが舞台という、よく考えるとすごい漫画です。
 

「おんなのこ」山口つばさ
 ――言っとくけど俺は変態じゃない。エロ本には音がない。だから女のマネしてあえぎ声を録音していただけだ。それを聞かれてしまい、父親のAVから録音したと言い訳したら、評判になり……。クラスメイトの朝比奈は妹尾先生とエンコーしているという噂がある。

 2015年5月号に「ヌードモデル」が掲載された、四季賞佳作作家による、「エロスカーニバル」の一篇。この人の描くちょっと屈折した目つきや、主人公のちょっと変態入っているところは、確かに妙に色っぽい。

   


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