『ミステリーズ!』vol.81【泡坂妻夫「酔象秘曲」未発表短篇一〇〇枚一挙掲載】

「私の一冊 桜庭一樹少女には向かない職業』」芹沢央

「胎土の時期を過ぎても」円居挽
 

米澤穂信 講演会レポート――一文に願いを託す――」
 太刀洗万智と読みが同じ大刀洗町での講演会です。別の日に講演のあった金沢ゆかりの作家、犀星と鏡花と徳田秋声のうち、徳田秋声は未読で「鏡花に殴られたひと」のイメージだという話。創元推理文庫太刀洗シリーズにつけられた英題に込めた意味。などについて語られています。
 

「酔象秘曲」泡坂妻夫
 ――高校の将棋部OBである中岡の許に、温泉で酔象将棋の名人戦を開催しましょうという案内状が届いた。現代の小将棋とは違い、酔象という駒が一つあるだけで一気に複雑さが増す。旧友たちが集まったが、不思議なことに主催者は不明だった。恩師の伊藤先生は亡くなっていたので、代わりに娘の肖子が参加した。白熱した勝負の夜が明け、名人戦に姿を見せていなかった獅子尾が温泉の本館で殺されているという報せが届いた。

 構想ノートに残されていた作品で、長篇を念頭に置いて執筆されていたことがメモから窺えるそうです。「剣の舞」「駈落」「補陀落往生」「くれまどう」の草稿と同じノートに書かれていることから1984年の執筆と推定され、長篇では『妖女のねむり』(83)、『花嫁は二度眠る』(84)、『死者の輪舞』(85)、『猫女』(85)の時期に当たるそうです。そのころの作品ということもあり、堂々たるミステリでした。クイーンの有名作を、薬で眠らされている間に……という不自然な遣り口ではなく、時間も忘れる将棋狂の集まりという設定で実現させようとしたアイデアが面白いです。
 

『ミステリ・ライブラリ・インヴェスティゲーション 魅惑の翻訳ミステリ叢書探訪記』(32)「世界秘密文庫編 その3」川出正樹
 何でもかんでもお色気と殺人に翻案してしまうシリーズの、実はロバート・ブロックやジョン・D
マクドナルドやC・S・フォレスターが原作の作品が紹介されています。

  


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