『Nemuki+ ネムキプラス』2017年3月号(朝日新聞出版)

百鬼夜行抄』117「けあらしの足跡」今市子
 ――坂元海は幼い頃から他人には見えないものが見えたが、人前ではそれを口にしないよう口を閉ざしていた。仲良くなったのは海辺の「けあらし」とだった。けあらしに言われるままに、兄の恭一を悪いモノから守ろうとした。

 前回の続きになっており、水脈《みお》の(ということはつまり律の)親戚である海《かい》少年の話です。今回の内容はこれまでの『百鬼夜行抄』とは雰囲気が違い、(少なくとも途中までは)孤独な少年の怪との交流のようなところもあり、海少年がこれから新たな登場人物になるのであれば、作品の幅もぐっと広がりそうです。
 

「恐怖の重層」伊藤潤二
 ――発掘された遺跡からは、人骨を年輪のように何層にも取り巻いている地層が見つかった。21年後、母親と美しい妹を乗せた醜い姉が、運転を誤り事故を起こしてしまう。剥がれた妹の顔の下からは、また別の顔の層が現れた。

 「画業30周年突破記念スペシャル読み切り」とあります。年輪というアイデアと、「考えてみれば当然の事」という、いずれも成長が織りなす恐怖でした。漫画とは別に、上海展覧会の様子も掲載されています。
 

『こんな私がスリランカでゲストハウス!?』東條さち子
 まだ作ってます。。。何だか文明に人間が追いついてない感がすごいです。水洗なのにくみ取り……しかも封印……。
 

『未知庵のきなこ体操』「焼き芋」未知庵
 焼き芋を買ったものの財布を忘れた高校生が、代金がわりに芋掘りを手伝うはめになります。
 

『いついたるねん』「反復」オガツカヅオ
 ――明日香はバスのなかでおかしな夢を見た。何かが天井に落ち、小さな手足が鼻のなかに入り込み……そこでくしゃみして、目が覚めた。「あなたオメデタよ。私ね、勘がいいのよ」。気づくと霊から声をかけられていた。その言葉通り、不妊治療に通っている産婦人科からは妊娠を告げられた。6週目だという。だが先週の診察では……。それからノエの姿が見えなくなった。妊娠して霊感が消えたのだろうか……。

 今回は原作者急病につき『ことなかれ』おやすみです。『いついたるねん』を読むのは「子供」「約束」に続いて三篇目ですが、前の二篇では明日香が体験したのは第三者的な立場による傍観者としての霊体験でした。それに比べて今回の作品は明日香が当事者となり、霊感体質の恐ろしさを感じさせてくれました。『りんたとさじ』のさじも憑かれてしまったことが(よく)ありましたが、あの作品にはりんたがいたので頼もしかった。ノエが孤軍奮闘してくれています。
 

  


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