『狂気の愛』アンドレ・ブルトン/海老坂武訳(光文社古典新訳文庫)

 『L'amour for』André Breton,1937年。

 難しいな。というより理解できん。

 たとえば第三章なんて比較的わかりやすいんですよ。書かれてある内容を理解する、という意味においては。口絵の芸術作品についての解説みたいなところもあるので。しかし、である。う〜ん、これはなあ。こんな冗談みたいなことを真剣に考えてた人たちだったんだなあとは思うものの。まあわたしの感受性が鈍いだけなんだけどさ。

 古川日出男と対談した吉増剛造が「Pink」という単語にやたら過剰に反応していたのを読んだときも、詩人ってのはやっぱり違うなあと思ったものだけど、常人にはわからんわ。

 しかしブルトンの言っていることはわからなくとも、シュールレアリスム作品を見て「いいな」と思うのは確かなのである。

 「愛のどんな敵も、愛がみずからを讃える炉で溶解する」。難解で詩的な表現をとりながら、美とえろす、美的感動と愛の感動とを結びつけ、執拗に考え抜く。その思考実験の果てに、あまりにも美しい娘(と妻)への、究極の愛の手紙が置かれる。(カバー裏あらすじより)
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『オンディーヌ』ジャン・ジロドゥ/二木麻里訳(光文社古典新訳文庫)★★☆☆☆

 『Ondine』Jean Giroudoux,1939年。

 「いま、息をしている言葉で」がキャッチコピーの古典新訳文庫ではありますが、これまた思い切った翻訳をしたものです。これまでの古典新訳文庫でいちばんの冒険かも。

 というのも何しろ、これではオンディーヌがほとんど頭の空っぽな女の子です。「この貝がらに敬語なんて、むり。」とか「はい、あたしはオンディーヌ、水の精です。」とか、これは果たして「いまの言葉」なのかなあ。ツンデレかな。ツンデレだな。騎士ハンスすら「なに、このやりとり。それに、そのけんまく!」ですからね。。。いやはや……。

 原作がロマンティック・コメディなのだとすると、その要素を存分に引き出した名訳というべきなのかなあ。訳者が構成の凄さについて詳細に解説していて、それはとてもありがたいけど。

 ものすごい完成度でものすごいバカなことをするというのは嫌いじゃありませんが。タモリとかモエヤンとかね。いや、そんなレベルの話なのか?

 森のなかの湖畔近くで暮らす猟師の養女オンディーヌ。ある日、騎士ハンスと出会い、恋に落ちる。ハンスも美しい彼女に魅かれ、ともに城での生活を始める。ただ、彼女は人間ではなく、水の精だった――。「究極の愛」を描いたジロドゥ演劇の最高傑作。(カバー裏あらすじより)
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