『アフタヌーン』2012年7月号

 恒例の四季賞ポータブル目当てで購入。
 

無限の住人(212)」沙村広明
 槇絵VS偽一たちの戦いに幕。

BUTTER!!!(25)」ヤマシタトモコ
 いつもクール(というか)ぼけらっとしている二宮さんが怒ってます。幸か不幸かそのおかげで下級生たちが成長しそうな。

百舌谷さん逆上する(48)」篠房六郎
 わけのわからない方向に行っていた回想篇からようやく本篇に戻ってきました。

「神様」奥田亜紀子
 ――その時 ワタシは 炊飯器だった。ワタシの持ち主は四時子さんという人だった。たまに恋人が遊びにきた。四時子さんはあまり笑わなかったが、かわりに男がよく笑った。

 四季賞出身者の本誌第二作。どうしても高野文子市川春子を連想してしまう画風作風です。が、絵と同じくらい言葉に比重があるのが、奥田さんの特徴でしょうか。秘密基地の合い言葉を思い出す瞬間や、「〜〜〜〜〜ったら/わたし神様になるわ」という、言葉のチョイスとタイミングに力がありました。炊飯器視点というところにちゃんと意味が。
 

「いずみの唄」十野七
 ――競争に馴染めなくて野球部から遠ざかった後藤は、声の大きさを買われて合唱部部長のいずみ先輩にスカウトされた。

 こちらも四季賞出身者。アニメ絵で善良前向きなストーリー。同じ善良前向きでもポータブル掲載の須藤由華「宇宙のハルモニア」ほどクセがない。合唱についての技術的な説明もないのも物足りませんでした。
 

今日のユイコさん(9)」秀河憲伸
 今回のお題(?)はキス。

「リマスターズ(5)」みやざき明日香
 いつの間にかメンバーが増えていました。何気に「等身大」「ストレート」とdisってます。

「天の血脈(5)」安彦良和
 今いちばん早く単行本にまとまってほしい作品です。

四季賞ポータブル

「千代のくちびる」岩見樹代子
 ――アトピーとにきびが嫌いな ちよ は、大好きな中村先生が同級生の椎名さんとキスをしているところを目撃してしまう。間接キスさせてあげる代わりに、にきびをつぶさせてほしいと椎名さんからもちかけられ……

 以前に「絶交」が四季賞ポータブルに掲載された方です。ドSMだった前作と比べると格段におとなしくなっていますが、それでもやはり危険でエロくて残酷で、恐ろしく表現力があります。40ページや41ページの先生の首の点々は、アトピーの跡、ということなのでしょうか。
 

「宇宙のハルモニア」須藤由華
 ――チカにふられて吹奏楽部をやめた指揮者の相模の代わりに指揮台に立った加賀美は、チカの憧れである勇者アレクサンドルにちょっとだけ似ていた……。

 加賀美がイケメン設定らしいのですが、絵を見ただけではイケメンなのかどうかがわかりづらかったです。線も内容も力強い。
 

「夜に彩雲」佑来那津
 ――小説家の卵・充の隣に引っ越して来たのは、幼なじみの河上姉妹だった。父の死をきっかけに心を閉ざしてかけていた彩子だったが、充にはよくなつき……。

 新人賞というとインパクトの強いものが有利そうなのですが、こういう小ぎれいにまとまった作品が評価されて掲載されるのはありがたいことです。ヘンにシリアスを強調せずに、幸不幸が日常と地続きであるところに好感が持てます。

 

『アバンチュリエ(3)』森田崇(講談社イブニングKC)、『大奥』(6)(7)よしながふみ(白泉社)、『シャーロッキアン!(3)』池田邦彦(双葉社アクションコミックス)、『さすらいエマノン』鶴田謙二(徳間書店リュウコミックス)、『花もて語れ』(4)片山ユキヲ(小学館BIG SPIRITS COMICS)、『銀の匙』(3)荒川弘(小学館サンデーコミックス)

 『アバンチュリエ』ではホームズ(もといショームズ)登場。そしてシリーズ短篇の代表作「赤い絹のショール」も。ルパンのケレンに意味がある「獄中のルパン」や本篇は好きな作品です。

 『大奥』は7巻に入ってようやく吉宗時代に戻ってきました。左京がこれまでの側室たちと比べると粒が小さいためか、江島生島事件は消化不良の気味。

 『シャーロッキアン!』は第3巻に入って、ホームズ蘊蓄よりも登場人物の感情に占める比重が大きくなりました。それはそれで漫画としては正しい在り方。

 『さすらいエマノン』は、以前に冒頭部分だけが大判サイズで出ていましたが、このたび全話収録にて再刊。原作は未読。兄が出てくる。ここでひょっこり兄が出てきたからには、続編も描いてくれるものと期待したい。

 朗読漫画『花もて語れ』第4巻で取り上げられたのは、芥川「トロッコ」。朗読の魅力を絵で表現するという、ミスマッチのようでいて実は効果的な手法が採られた漫画です。第1巻〜第2巻で描かれていた宮沢賢治「やまなし」は圧巻でした。

 『銀の匙』も兄登場。そして豚丼のけじめ。


防犯カメラ