『ほかに踊りを知らない。東京日記2』川上弘美(平凡社)★★★★☆

 これはもう帯に引用された部分を読んでもらえばわかりますというか読んでもらうしかありませんというか。

 七月某日 雨 ひさしぶりに、俳句をつくってみる。破調の句である。「ごきぶり憎し噴きつけても噴きつけても」

 三月某日 晴 電車に乗る。隣に座っている人が、熱心にメールを打っている。つい、のぞきこむ。「愛されることへの覚悟が、私にはないのかもしれません」という文章だった。びっくりして、思わずじっとその人の横顔を見る。不思議そうに見返される。そんなにびっくりするいことも、ないのかな。思い悩む。やっぱりびっくりした方がいいんじゃないかな。思いなおす。

岸本佐知子ほどオカシくはないけれど、やっぱりどこか、ヘン。円城塔みたいな言い捨てギャグではなくて、たたずまいがある。
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