『幽霊の2/3』ヘレン・マクロイ/駒月雅子訳(創元推理文庫)★★★★☆

 『Two-Third of a Ghost』Helen McCloy,1956年。

 ヘレン・マクロイは創元に相応しく(?)地味だけどいい作家です。

 シリーズ探偵ものなのに、謎や名探偵のケレンではなく、サスペンスで読ませるイメージ。損といえば損。ウィリング博士ファンなんて少なそうだしな……。

 題名の「機能美」や「伏線の置き方の巧」さ、「ずば抜けている」技巧については杉江氏の解説と本書現物を読んでいただくとして――。

 冒頭から引き込まれました。瞬殺です。作家に悪影響を及ぼす妻の女優が帰ってくることを知ったエージェントが、作家と女優を遠ざけておこうと二人に手紙を書くのですが、作家に出すはずだった女優の悪口を、間違って女優宛に送ってしまい――どうなることやら(^_^。何て意地の悪い、しかもスリリングな発端なんでしょうか。しかも、女優も作家もエージェント夫妻も、その後の予定では出版社社長宅のパーティーで顔を合わせることになるはずで……。殺人なんか起きなくても、これだけでもう先を読みたくてはらはらしてました。

 そのうえパーティーに現れた「迷惑なピュージー夫人」が余計なもめごとの種を持ち込んで――。よりにもよって、ねえ(^_^;

 もちろん事件後にはびっくりする展開も待ち受けているし、いろいろ伏線があるのも伏線好きのわたしとしてはたいへん嬉しい作品です。「幽霊の2/3」ゲームの答えから、「エイモスは○○だ」という真相が導かれるだけでなく、だから「××は□□だ」というもう一つの推理も導かれるのなんて、基本といえば基本なんでしょうけど、よく考え抜かれているところですよね。幻の傑作にして幻ではない真の傑作でした。

 出版社社長の邸宅で開かれたパーティーで、人気作家エイモス・コットルが、余興のゲーム“幽霊の2/3”の最中に毒物を飲んで絶命してしまう。招待客の一人、精神科医のベイジル・ウィリング博士が、関係者から事情を聞いてまわると、次々に意外な事実が明らかになる。作家を取りまく錯綜した人間関係にひそむ謎と、毒殺事件の真相は? 名のみ語り継がれてきた傑作が新訳で登場。(カバー裏あらすじより)
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