初期作品の復刊。
回文の名前を持った人物が次々と殺されて――。って、ありえねー。泡坂妻夫という作家性を前提としたミスディレクションじゃないですか。
凄まじい大傑作、という作品ではないけれど、ヨギ・ガンジーものにも通ずるような、その心意気にしびれます。
犯人がどこにいるのか特定する論理が鮮やかでした。マジシャンが主人公なのに、事件のタネを見抜けないのが悲しい。。。
創元推理文庫は日本の作品にも英題がついているから楽しみなのですが、本書の英題は『Palindrome Syndrome』でした。
上から読んでも下から読んでも「きげきひきげき」――題名に始まり、章乱しや登場人物は回文ずくめ、言葉遊びが随所に鏤められた本書。加えて主人公はマジシャン、紛うかたなき本格ミステリとくれば、斯界の魔術師泡坂妻夫のまさに真骨頂です。動く娯楽場〈ウコン号〉で起こる事件を、知的遊戯に長けた粋人は如何に描いたでしょう。余人をもっては代え難い話芸をご覧じませ。(カバー裏あらすじより)
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