『S-Fマガジン』2014年10月号No.703【いまこそ、PKD。】

「SF COMIC SHORT-SHORT」(9)野村亮馬

「PKD総選挙、結果発表!」
 フィリップ・K・ディックのベスト作品投票企画です。AKBになぞらえたのは単なる悪ノリなのか、ジャンル外の読者を取り込もうという積極性なのか、SFファン=オタクという排他的なものなのか、よくわかりません。

「地図にない町」フィリップ・K・ディック大森望(The Commuter,Philip K. Dick,1953)★★★★☆
 ――小柄な男は疲れたようすだった。「新しい定期券をください」「どちらまで?」「メイコン・ハイツ」「……そんな駅はありませんよ」「ばかな――」とつぜん小男の姿が消えた。あとかたもなく消えてしまった。駅員のペインは恋人のローラに会い、図書館で古い地図帳や新聞を調べてくれるよう頼んだ。

 新訳。何の前触れもなくいきなり、ただの駅員が「過去の時空連続体に変更が加えられたのか?」と考え出すことにとてつもない違和感を感じてしまいます。その点を除けば、世界が変わってしまったことに自分も気づかない(つまりわたしたちも現実が変わっていることに気づいていないのかもしれない……)ことにぞくっとした気分を味わえる好篇です。
 

ハーラン・エリスン編『危険なビジョン』向きの、すべての物語の終わりとなる物語」フィリップ・K・ディック大森望(The Story to End All Stories for Harlan Ellison's Anthology Dangerous Visions,Philip K. Dick,1968)★★★★☆
 ――水爆戦争により荒廃した社会で、グラマーな女たちが未来の動物園に赴き、檻の中にいる、人間ならざるさまざまな異形の生物と性的交渉を持つ。この物語では、数人の女たちの損傷した肉体を継ぎ接ぎしてつくられたひとりの女が……

 遊び心で書かれた作品ということではありますが、けっこう好きです。
 

「評論 4つの時代のPKD」高橋良平
 

「PSYCO-PASS LEGEND レストラン・ド・カンパーニュ」吉上亮
 

「書評など」
レイ・ヴクサヴィッチ『月の部屋で会いましょう』、ケリー・リンク『プリティ・モンスターズ』

アイスランドジュール・ヴェルヌを考えていた」椎名誠ニュートラル・コーナー
 『地底旅行』の火山、『十五少年漂流記』のモデルとなった島。ヴェルヌは当時フランスにいながらにしてどうやって詳細な地図を手に入れたのか――答えは次回?

『エピローグ(6)』円城塔

「近代日本奇想小説史 大正・昭和篇(15)さまざまな翻訳・翻案その2」横田順彌

「乱視読者の小説千一夜(41)戦後のピアノ弾き」若島正

「SFのある文学誌(34)予告された未来――それぞれの明治二十三年(1)」長山靖生

「エンタメSF・ファンタジイの構造(7)山田悠介はなぜ「中高生がもっとも好きな作家」なのに叩かれるのか?――「知的さ」を捨てる戦略」飯田一史

「〈F&SF〉誌 2014.1/2〜2014.3/4」橋本輝幸

「サイレンの呪文」オキシタケヒコ
 ――聞く者の意志を操るメロディの謎に挑む、若き日の佐敷と武藤。武佐音研シリーズ第3弾!

  


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