『Fiction』58(OPTA)

 フランスのSF雑誌。翻訳7篇と創作4篇とエクスポ・レポートと書評を掲載。

「地球の脅威」ロバート・A・ハインライン

「やさしき天使たち」C・S・ルイス

「Le Rival(The Duel)」Joan Vatsek
 

「Un Jour comme les autres」Marcel Battin(いつもと同じ日,マルセル・バタン,1958)★★★☆☆
 ――Rogéと遊びに行こうとしたら、ママから罠を見に行くように言われた。ご飯を食べるためだ。パパは言葉をしゃべれないし、臭いから嫌いだ。

 翻訳家マルセル・バタンの創作デビュー作。『Le Grandiose avenir』の解説でリチャード・マシスンの影響が指摘されていたので読んでみたのですが、本誌解説を読むと正確にはマシスン「男と女から生まれたもの」にインスピレーションを得た作品でした。鼠を食べ、塔に上り、死んだパパを捨てに行く。でもそれは特別ではない「いつもと同じ日」なのでした。種を明かせば何のことはない核戦争後の世界の話です。『猿の惑星』の自由の女神のように、そこがわたしたちの知っている世界であるという象徴として、この作品ではエッフェル塔が用いられていました。
 

「お告げ」シャーリイ・ジャクスン
 

「Plante à tout faire(Love me, love my...)」ログ・フィリップス(Rog Phillips,1958)――Tau Céti IIIへの異動が決まったLie。恋人のLeahがvégéのWnnieを連れて行くと言って聞かないため、密航させることに。人間級の脳を持った植物végéが発見されてから太陽系は酸素で満たされていた。
 

「L'Amoureux du soleil」Jean-Claude Passegand(太陽の恋人,ジャン=クロード・パスガン,1958)★★★★☆
 ――Plume氏は楽しみを求めてさまざまなクラブに入ったが、どれもすぐ飽きてしまった。不細工なので結婚は考えられなかった。だがある日、太陽の光を浴びて、Plume氏は覚醒した。他人にこの光を浴びられたくなかった。

 この作品がデビュー作の文学部学生。解説ではブラッドベリの名が挙げられていますが、どちらかといえば乱歩を連想させる奇想でした。太陽の許には行けないから、太陽の方から来てもらう、というチェスタトンの逆説ばりの狂気に、非凡さを感じました。
 

「Béni soit l'atom」René Barjavel原子力の讃えられんことを,ルネ・バルジャヴェル,1958)

「Les Voix de l'esprit(A Parable of Love)」ロバート・M・コーツ
 

「La Fin d'un monde」Jean-Jacques Olivier(この世の終わり,ジャン=ジャック・オリヴィエ,1958)★★★☆☆
 ――無意味な会議。私は数年前のことを思い出していた。私は地球に派遣され、ある人物に乗り移った。「警告、十五分後に地球は滅びます」カフェの客が立ち去ろうとすると、給仕が金を払えと呼び止めた。

 空疎な議論を聞くにつれ、世界があと十五分で滅びるというのに金を払う払わないでもめていた地球人を思い出す……という、完全な諷刺作品です。
 

「後進性」ポール・アンダースン
 

「Le Monde de demain à L'Exposition de Bruxelles」Jacques Sternberg

 ブリュッセルでおこなわれたエクスポ’58のレポート。
 

「Ici, on désintègre !」J. Bergier, A. Drémieux, I. B. Maslowski, G. Klein

 新刊書評。ジョン・ウィンダム、ルネ・バルジャヴェル、M. A. Rayjean『La Folie verte』など。転送器がらみの冒険というと『鉄腕アトム』の「透明巨人」を連想します。

 Fiction58 


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