『アフタヌーン』2017年3月号「サカサノインシ」門脇夏生、『春と盆暗』、「シホちゃん死なないで」つばな

アフタヌーン』2017年3月号(講談社

ヴィンランド・サガ』135「バルト海戦役11」幸村誠
 殺し屋ガルムに追いつかれたトルフィン。

青野くんに触りたいから死にたい』2「歌の練習」3「青野くんの友達」椎名うみ
 音痴な優里は一人だけ歌の追試を受けることになり、ピアノを弾ける青野くんと居残り練習をすることに。青野くんの友だち藤本と話をした優里。シリアスと不思議とギャグのバランスがホント独特です。

『あやつき』7「怪彰の件2」寺田亜太朗
 ムカデのサンジョウに同化した人間であることがばれてしまった月丘。だがサンジョウはそれをばらそうとはしなかった。

『発症区』13「死闘」いとまん
 触れるものをみな切り裂く迫田の前になすすべもない安田たち。だが迫田の能力と性格を分析し……。読み切り時の能力者が登場しました。

『聖域コンシェルジェ』7「ギミ・ギミ・ショック・トリートメント」鈴木ミニラ
 泉さんとのせっかくのデートに風邪をひいてしまった充。ミルフィが体に乗り移ることで乗り切ろうとするが……。

「サカサノインシ」門脇夏生
 ――赤井伊吹は見知らぬ高校生から「紺野」と呼びかけられる。その直後、同じ顔をした少女が目の前に真っ逆さまに落ちてきた。生きる価値を見いだせない伊吹は、死んだ少女に成り代わることにした。だが実は紺野はいじめられっ子だった。

 2016冬のコンテスト四季大賞受賞作。わりとリアルな絵柄なのに人物入れ替わりという非現実的な出来事が起こるせいで萎えてしまいます。方やクズ親の娘の不良、方やお嬢様でいじめられっ子、まるで立場は違うのにどちらも生きる意味を見いだせないという共通点のある少女たち。何から何まで陳腐なんですが、なぜか引き込まれてしまいます。
 

『春と盆暗』熊倉献(講談社アフタヌーンKC)
 帯にある「ぼんくら男子と不思議女子の「片思い」連作集!」という惹句がぴったりの作品です。「月面と眼窩」「水中都市と中央線」「仙人掌使いの弟子」「甘党たちの荒野」に描き下ろしおまけ漫画を加えた作品集。

 第一話「月面と眼窩」バイト先のサヤマさんの笑顔の秘訣は、モヤモヤしたことがあると月面を思い浮かべてそこに向かって道路標識を思いっきり投げること。そんなサヤマさんに惹かれてしまったゴトウ君は、何とかサヤマさんを理解しようとします。この作品ではちょっとサヤマさんの不思議ぐあいが際立ちすぎていたきらいがありましたが、第二話「水中都市と中央線」では、息苦しいときに水面ギリギリで息をするチビの女性という、比較的おだやかな奇癖が同情しています。中央線の謎解きと、斬首の表現が見事でした。

 第三話「仙人掌使いの弟子」が個人的にはベストです。こんな感じの意味不明の冗談を言う人、いますよね。従姉のさや姉は自称「仙人掌使いの弟子」で恐竜マニア。ススム君にツツジはトウガラシの味だと教えてくれた人でもあります。こうしたさや姉のエピソードが、ススム君の同級生のいじめられっ子の話に回収されるとは思いも寄りませんでした。

 第四話「甘党たちの荒野」。友人からアニメ映画の背景を頼まれたホシノは、廃墟をイメージするために「早送り」の特技を身につけました。ケーキのレシピを知りたい大友さんは、「巻き戻し」はできないのかと目をつけます。

 おまけ漫画では、本篇では一人だった矢野君にも相手が出来ました。
 

飛ぶ教室』48「シホちゃん死なないで」つばな(光村図書)
 ロボットのシホちゃんに心はあるのか?

飛ぶ教室』48には、ほかに『それ町』が完結した石黒正数と『空が灰色だから』の阿部共実のインタビューが掲載されています。石黒正数インタビューでは『それ町』最終回について著者本人による解説がありました。14歳で「自我が固まって」「漫画に描くために観察するようになり」、さまざまなエピソードについて「意図的に覚えてきたことも多い」って、何だかとてつもない人でした。

    


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